【杜王グランドホテル前:重松side】
ワイアット達が戦闘を行っている場所とは打って変わって、未だパニック状態の人々でごった返している
そんな中、二人の『スタンド使い』は対峙していた
ペーペー「――『キルスイッチエンゲージ』」
男の傍らに現れる孔だらけの『スタンド』
重松「(『車を操るスタンド』か『全く別の能力を持つスタンド』、か)」
重松「(さて、どう戦ったもんか)」
けたたましいクラクションの音と共に、大型トラックが横滑りしながら肉薄する
重松「やはり『車を操る能力』かッ!『アンダー・プレッシャー』ッ!」
重松の背後から現れた絨毯のような『スタンド』がトラックの真上へ来た途端
ドンッ!!と、車体が傾ぎ、コンクリートをぶち抜いて停止した
ペーペー「………」
重松「(車の無い場所に逃げ込めば奴は何も出来ん筈だ……『ホテルの中』で決着をつけてやろう!)」
素早く『アンダー・プレッシャー』の背に乗り込むと、踵を返し、急いでホテルへと向かう
ゆっくりと、ペーペーはその後を追って来る
【杜王グランドホテル内】
ロビーに居る人々は、外の異変に少し色めきだっている
重松「さて…二階まで上がってしまえば、手も足も出せまい」
エレベータへ向かう重松
その背後、入り口に、ペーペーが姿を現した
重松「何……?此処には車は無いと言うのに、何故――」
その疑問は直ぐに解消される
“ロビーの人間が、手に武器を持ち此方を向いた”からだ
重松「な……ッ」
そして何よりも異様なのが
“皆一様に動揺している”ことである
重松「(こ、これは…ッ、『車を操る能力等ではない』ッ!)」
重松「(そして、『人を操る能力』、でもない。これは)」
ペーペー「……行け、『凶器』達よ」
鞄、万年筆、シャープペンシル、カッターナイフ
凶器と成り得る様々な物を持った人間が、まるでそれに引っ張られるようにエレベーター近くに立つ重松へ殺到する
重松「(これは――『生無き物体を操る能力』。『無機物を意のままにする能力』かッ!)」
重松「(そして恐らくは、『再現』。起こる可能性がある事象までも操作していると言うのか……ッ)」
殺到する人間達を『アンダー・プレッシャー』で動けない程度に地面へ縛り付ける
重松「能力射程がある筈だ…射程外へ出れば恐らくこの暴動モドキも収まる」
重松「しかし、クソッ!エレベーターはマズイ、かといって階段も、ましてや外では……」
熟考する時間は無い
『アンダー・プレッシャー』が抑えておける範囲にも限界がある
今頼るべきは、『直感』『経験』そして
重松「(『階段』だッ、『上の階』へ向かう)」
『信念』だ
エレベーター乗り場の脇にある非常階段へ走る
『スタンド』をその場に残し、重松は上階へと上がっていく
ペーペー「『袋のネズミ』。果たして、窮鼠が猫を噛めるのかな」
歩調を変えず、男はゆっくりと後を追う
重松が階段へ消えてから少しすると、それまで人々を抑えていた『アンダー・プレッシャー』が姿を消していた
上階
まだ追手は確認出来ないが、直に追いついてくるだろう
時折響いてくる奇妙な音は、恐らく能力で階段を破壊して逃げ道を無くしているのだろう
しかし、今此処で膝を突いている暇は無い
自らの『位置』を高く、相手の『位置』を低くする為に
重松「何か適当な…ああこれでいい」
私は、他者を『蹂躙』するのが、実は未だに好きなのだ
違和感――
ペーペー「……?」
おかしい、何故奴は私から“距離を取って”いない?
明らかに奴の『スタンド』は近距離型ではなかった
奴が『スタンド』から離れても暫く活動していたのがその証だ
ならば、距離を取ってから『スタンド』で遠距離から攻撃をしかけるのが定石の筈
だが
“何故奴は今、鬼ごっこで鬼をおちょくる子供のように絶妙の距離を保って私を待っているのか”
それに奴の『スタンド』は何処にいった……?
ペーペー「何であろうと、ただボスの意志と共に。『キルスイッチエンゲージ』」
我が『キルスイッチエンゲージ』はスピードこそ並だが、そこそこのパワーと近距離型にしては長めの射程を持つ
この距離ならば『射程内』だッ!
ペーペー「――むッ!」
『スタンド』が肉薄し、重松に届く一歩手前、滑る様に重松の体が後退し、『キルスイッチエンゲージ』の射程ギリギリのところまで移動する
重松「どうした、此処が君の『スタンド』が届く限界の距離かね」
ペーペー「(今、奴の足元に見えた物は……ッ!?い、いや、奴の足元にあるのはこの廊下に敷かれた『絨毯』だけ)」
ペーペー「(奴の『スタンド像』は見えなかったッ!だ、だが、それでは説明がつかない)」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ.....
ペーペー「――ハッ!?」
ハッとしたときにはもう遅い、重松は更に上階へ上るため、反対側の階段へと走り去っていた
ペーペー「『キルスイッチエンゲージ』ッ!チィ…間に合わないか」
後を追うように『絨毯』の上へを走っていく
その時、背後で何かが凹む音がした
ペーペー「……?」
┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛.....
ペーペー「なんだ…?何が――」
突如
ボゴォンッ!!と、“足元が抜けた”
ペーペー「な……ッ?!お、おおおおおおおおおおッ、『キルスイッチエンゲージ』ッ!」
『スタンド』で自分をガードしながら、ペーペーは下階へと落ちて行く
屋上、ドアが開けられないので外には出られないが、まぁ十分だろう
ドアに凭れながら、重松は自分の『スタンド』を介して相手の『スタンド』に向けて言葉を送る
埃が舞う、瓦礫を除けて立ち上がる
ペーペー「グ…クソッ!一体何がどうなって」
重松「君は今、どの『位置』に立っていると思うかね」
脳内に直接響くような声
ペーペー「(これは…一体何処からッ!?奴の『スタンド』が近くに居るはずだッ、しかし何処にッ?!)」
ペーペー「何を言っている!貴様の『スタンド』は何処だッ!」
重松「今現在、君の『人生』の立ち『位置』は最下層と言って差し支えない」
ガゴンッと、先程と同じ様に床が抜ける
ペーペー「う、うおォォォォォォッ!?」
重松「そして、その『位置』は非常に『いい』――」
ペーペー「こ、これは…ッ!『下』か…私が立つこの『床』に……ッ!」
落ち行く中、ペーペーはハッキリとそれを目視した
“口をあけて笑う、奇妙なカーペット”を
そしてそれは、壁をすり抜けて高く高く、昇っていく
ペーペー「(ま、マズイッ、早く、早く着地して――)」
重松はチラリとドアから屋上を見やり、自らの『スタンド』を確認する
重松「――尤も、“私にとっては”だがね」
ドゴガガガガガガガガガガガガガガガガガーーーーーーッ!!!
と、屋上から一階まで、ペーペーの居る範囲だけが強力な力でぶち抜かれていく
ペーペー「キ、『キルスイッチ―――」
落ちてくる大量の瓦礫を何とか操作しようと試みるも、空しく
重圧と瓦礫に押しつぶされ、やがて、思考も止まり、巨大なオブジェの一つとして、ペーペーは最下に君臨した
ドアから離れ、エレベーターに向かって歩み始める
重松「『私が上で――」
開閉ボタンを押し、開いた扉を潜る
重松「――お前が下だ』」
ヴィィィン――と、静かにエレベーターが動き始めた
【スタンド名:キルスイッチエンゲージ】
【本体名:ペーペー】
敗北、再起不能...
【スタンド名:アンダー・プレッシャー】
【本体名:重松重一】
勝利⇒To Be Continued.......
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