ドドドドドド・・・
准一「この・・野郎ッ!!
―チャポッ・・
―ブオンッ!
庵治に殴りかかるE・Uだが、ことごとくかわされる。
准一「ちょこまかと影の中に逃げんじゃねえ!コラッ!!
庵治「ギョギョッ・・!これが俺の戦い方だッ!!
准一「くそがッ・・!
柳井「(殴るしかしてこないところから想像するに・・・単純な近距離パワー型。
能力の相性でやや有利か?
丞久「余所見とは余裕だな?
柳井「ッ!?
―ガシッ・・・
気づかぬ間に接近してきた丞久に折れた腕を捕まれる柳井。
―ゾッ・・
柳井「(・・何だ?この得も知れない恐怖感は・・!)
うわぁあッ!
―バシィッ!
慌てて丞久の手を振り払う!
丞久「フハハハ・・ッ。今のは、ほんのご挨拶だ。
受け取れ、造花だがなかなか綺麗だろう?
丞久の手には花束が握られている。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
柳井「花・・・束?
どこから・・・
丞久「いらないのか?だったら捨てるしかないな。
―ボギィイッ!
丞久は手にした造花の束をへし折る。
柳井「ぐぁああぁあッ!?
その瞬間、柳井の折れた腕に激痛が走る!
無意識に痛む腕を押さえようとした柳井の表情が、苦痛から驚きに変わる。
ゴゴゴゴゴ・・・
柳井「腕が・・・無い?
丞久「クレイジー・クラフトは、触れた物を創り変える・・・ッ!
柳井「ウワアァアアアッ!?
丞久「フフッ・・素晴らしい悲鳴だな。
庵治「柳井ッ!!
・・・・ッ!?
影から姿を現した庵治の視界が不意に薄暗くなる。
庵治「・・・なんだッ?
上を見ると、空ではなく壁のような物が視界を覆っていた。
准一「ぶっ潰れろぉおおーッ!!
―ズオォオオッ!!
庵治「な・・ッ!!
―ドゴオォオオッ!!
地面が揺れる程の衝撃が走る!
ゴゴゴゴゴゴ・・・
准一「くそッ!あと少しだったのに・・・!
まぁ、影はぶっ潰したし・・出てこれそうなのはアソコしかないからな。
出てきた所を叩く!
地面に横たわる大きな石柱に腰を降ろし、スタンドを構える。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
影から影へ移るには一度表にでるか、影が重なる必要がある。
庵治の入っていた影は石柱にふさがれ、新しく石柱の影が出来ていた。
庵治が他の影に移る ためには石柱の影から出る必要があるのだ。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
―キュイキュイキュイ・・・
けたたましいサイレンが鳴る。
今の衝撃でセキュリティにひっかかったのだ。
准一「おわッ!?
丞久「・・・間抜けが!
―ガガッ・・・
麻里「准一ぃいぃ~ッ!!
警備にひっかかったわね!?
バカ!アホ!逃げるわよッ!!
准一「あわわわわ・・悪い!
だけど今は駄目だ!戦闘中なんだよッ!
麻里「戦闘中~ッ?あんた何やってんの!?
柳井「・・・!
その声は、麻里ちゃんかい?
麻里「柳井・・先輩!?
准一!!てめぇ何してくれたんだ!?
そっち行くから待ってなさいよッ!
准一「ち、違う!俺じゃなくて・・・って、切れちゃったよ。・・・はぁ。
丞久「フフ・・お姫様のお守りも 大変だなぁ?
准一「何だとてめぇ!?
庵治「(お?仲間割れか?
何だか知らねえがこれは・・・
柳井「チャンスだッ!!
―ドバァアアーッ!
准一「しまった!
一瞬の隙をつき、石柱の影から飛び出す庵治。
庵治「柳井ッ!一旦立て直すぞ !
柳井「・・分かった!
長く伸びた木の影に庵治が飛び込む。
続いて柳井も、同じ木の影に飛び込むために走り出す!
丞久「逃がすかッ!
―ダッ!
柳井「A・T・Mッ!ァアアアッ!!
―ドガァアッ!
鉤爪の一撃を喰らい、吹き飛ぶ丞久。
柳井「やったぞッ!
倒れた丞久との距離を引き離し、影まであと数歩の場所まで柳井は走る。
丞久「良かったじゃないか。
ここは行き止まりだがな。
が・・・柳井の目の前には、なぜか丞久の姿があった。
柳井「えッ!?
―バッ!
後ろを確認する柳井!
柳井の後ろには、たった今吹き飛ばした丞久の姿がある・・・
だが、よく見ればヒビが入っていた。
―ボロ・・ボロ・・・
そしてその姿は崩壊し、土塊となる。
柳井「変わり身・・・?
丞久「正解だ。
俺の能力は触れた物を何でも好きな形に変えられる。
いずれは生命だって創りだしてみせるさ・・・
さて、覚悟は出来たか?
―グッ・・・
クレイジー・クラフトが拳を握りしめる。
ドドドドドド・・・
麻里「あーもう!本当にツマんないッ!!
見えないから?
信じられない?
私の頭がオカシい?
ウンザリだわッ!!
入学式から一週間ほどたったある日。
屋上で喚く少女が一人・・・
「うるさいなぁ・・・ゆっくりさせてくれないかい?
ではなく、空を見上げる男が一人。
麻里「何よ?ここは屋上よ?あんたの物じゃないのよ!?
喚こうが私の勝手じゃないッ!
「ま、そうなんだけどね。
だけど屋上は君の物でもない。いわゆる公共の場だ。
そんな場所で騒がれたらみんなに迷惑だろ?
麻里「ごもっとも!
「アハハ・・・僕は2年の柳井。君は・・・新入生だね?
麻里「(ヤベ、先輩かよ)私は・・・浅岡 麻里と言います。
柳井「麻里ちゃんね・・・何があったのさ?
麻里「・・・言ったって分からないだろうしッ!あんたには関係ないしッ!
柳井「ま、本人にしか理解出来ない悩みもあるだろうから。
深くは詮索しないけど。
・・・そういう悩みを持つ人って、大体屋上に来るんだよね。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
柳井が手を伸ばし、麻里の目の前で開く。
麻里「・・・何これ!?
柳井の手のひらには、一枚の黒い鳥の羽。
一見カラスの様だが
赤く発光する機械的な筋が走っていた。
柳井「見えるんだね?
スタンド使いは引かれ合う・・・
君が、今日ここに来たのもきっと運命の引力によるものだ。 放課後また来てくれ、能力の使い方を教えるよ。
麻里「・・・・!
ドドドドドド・・・
庵治「柳井ッ!避けろぉ~~ッ!!
准一「丞久!殺すなッ!!
柳井「・・・・!
丞久「ゲームオーバーだ・・・。
―ズォオォオオ・・・!
ゆっくり、非常にゆっくりと敵の拳が柳井に迫る。
柳井「(昼間も・・・こんな事があったなぁ。
さっきは上城が助けてくれたくれたけど、今度はさすがに・・・
―ドゴオオォオッ!!
丞久「・・・!
ゴゴゴゴゴゴ・・・
氷室「・・テメエ、俺の親友に何してくれてんだ?あ゛!?
クレイジー・クラフトの拳はレッド・ホットに捕まれれている。
丞久「形が・・・変えられない?
氷室「それがお前の能力か?
俺のスタンドは炎だ・・・。
そりゃあ変えられねえよなぁ!
ゴゴゴゴゴゴ・・・
柳井「大分スタンドの扱いが上手くなったよね。
麻里「そんな・・・先輩のお陰ですよ~。
それで、もしよかったら・・あの、こ、今度・・ッ!
柳井「そうだッ!
麻里「あ・・・。
柳井「ん?・・何か言い掛けてた?
麻里「い、いや!何でもないですッ!
何ですか?
柳井「次の休み、買い物付き合ってくれないかな?
今度、姉が子供が生まれるからって、帰ってくるんだよ。
それで、姪っ子に・・・あ、生まれてくるのは女の子なんだけど、何かプレゼントしたくてさ。
麻里「~~~(やった!これって一応デートよねッ!?
柳井「麻里ちゃん?・・・顔赤いけど、熱ある?
具合悪かったら、僕一人で行くけど?
麻里「いやいやいや!大丈夫ですッ!
行きましょう!是非ッ!
柳井「じゃ、日曜日に。
麻里「了解です、先輩ッ!
ドドドドドド・・・
丞久「クッ・・!!
(こいつのスタンド・・・強いッ!)
放つ攻撃はことごとく透過してしまうため、スタンドに攻撃する事は出来ない。
ならば、と
本体を狙おうとしても、常にスタンドが壁になるように氷室は移動している。
丞久「(戦い慣れている・・・俺よりも圧倒的に・・・ッ!
ゴゴゴゴゴゴ・・・
丞久「・・非常に不本意だが、一旦引かせてもらう。
氷室「・・・やってみな。
逃げられるモンならよ。
丞久「クレイジー・クラフトッ!!
―ドカドカァッ!
地面を殴りつけ、レッド・ホットとの間に壁を作り出す!
氷室「ウォッ!!?
丞久「一瞬だ・・・一瞬目を離させればそれで良いッ!
それだけあれば逃げてみせるッ!!
丞久の創りだした壁はそこまでの高さも、厚さもない。
ただ目くらましの為だけの壁・・・
彼はそれで充分だと考えた。
いや
考えてしまった。
氷室「馬鹿がッ!!
丞久「な・・しまったッ!
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
丞久の足は、足首まで影に沈んでいた。
庵治「逃がしゃあしねぇよ・・・!
丞久「まさか!・・こんな事がッ!?
―ドゴォオッ
壁に穴が開き、そこから氷室が姿を現す。
氷室「言っただろ?俺のスタンドは炎だと・・・
薄暗い場所で炎の前に、物を置いたら影が出来るなんてのはガキでも分かることだぜ?
丞久「・・・!(やられた!コイツ、スタンドを盾にするだけでなく、この場所まで俺を誘導してたのかッ!
影が重なるこの場所に・・・!!
ゴゴゴゴゴゴ・・・
氷室「覚悟はいいか?
レッド・ホットが拳を握りしめる・・・
丞久「(ま、まだだ!奴のスタンドが炎だというなら、地面から箱を創りだして閉じこめれば・・酸欠で消えるッ!!)
クレイジー・クラフト!!
―ドグシャァァァ
丞久「お、俺の手・・・がッ!?
氷室「おせえ・・遅すぎるぜッ!
丞久「やめろぉ~ッ!?
氷室「ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドララァァアアァーッ!!
―ボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴ・・!
―ドゴシャァアッ!!
丞久「死にたく・・ない・・ッ
俺は・・世界を、変え・・・・
丞久「・・・・・・
氷室「そんな事は、あの世でやんな・・!
柳井「やった・・・
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
丞久の身体は、影の中に沈んでいき
やがて、完全に呑み込まれた・・・
岡本 丞久
スタンド【クレイジー・クラフト】
―死亡。
スタンド【クレイジー・クラフト】
―死亡。
ドドドドドドド・・・
麻里「柳井先輩ッ!
その時、麻里が駆け寄って来る。
なぜか涙目で。
柳井「あ、麻里ちゃん。
やっぱり君だったのか。
准一「・・・・・
庵治「氷室・・・もうやめろ。
氷室「うるせえッ!!まだ死んじゃいねえ!!
コイツをかければ傷は治るんだッ!!
柳井「・・・??
みんなどうしたって言うんだ?
っていうか僕は完全無視ですか?
佇む柳井を無視して、全員が何かを囲んでいる。
柳井はそれが何か確認しようと皆に近寄る。
麻里「先輩・・・ッ!
庵治「~~~ッ・・・!
氷室「起きろッ!傷は治ったぞ!!
起きろよ!!
柳井ィッ!!
柳井「・・・・!
柳井が目にした光景は、倒れている自分の姿。
ドドドドドドド・・・
柳井「そうだ・・あの時、氷室は僕の後ろにいた。
敵の攻撃は僕を貫通して・・・
そこまで思った時、柳井の身体(意識)が空へと登り始めた。
柳井「そうだ・・
僕は死んだんだ。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
柳井「みんな・・!
うなだれていた一同が、空を見上げる。
そこに柳井の姿が現れるような気がして。
氷室「柳・・井?
柳井「ありがとう、みんな。
庵治くん、君と長い付き合いでもないのに色々ありがとう。
麻里ちゃん、しばらくぶりに会えたのに、こんな事になってごめんね。
そこの彼氏、敵に頼むのもおかしな話だけど・・麻里ちゃんの事、よろしく。
彼女、スゴく良い子だから。
氷室・・・上城たちの事、よろしく頼む。
・・・それから、親友って言ってくれてありがとう。
お別れ・・・言い足りないけど、迎えが来たみたいだ。
それじゃあ、またね。
ドドドドドド・・・
柳井の魂は、街を飛び越えて天へと昇り・・やがて、消えた。
氷室「(またな、柳井・・・
後は俺に任せて、ゆっくり休め・・・。
柳井 源太
スタンド【アクロース・ザ・メトロポリス】
―死亡。
スタンド【アクロース・ザ・メトロポリス】
―死亡。
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