明菜「庵治くん遅いな~・・・まさか迷子に?
ちょっと探してこようかしら。
トイレに行ったまま帰ってこない庵治を心配し、明菜は部屋を出る。
―ガチャ・・
明菜「あの・・・友達が遅いんで探してきても良いですか?
黒服「了解しました。我々二人が同行します。
明菜「え?そんな・・・大丈夫ですよ~。
黒服「と、言われましてもこれが我々の仕事ですので・・・
明菜「う~ん・・・ホントに大丈夫なんですけど~。
黒服「トイレの中まで、ついて行ったりはしませんから。
プライバシーは守るように言われております。
あまりに食い下がる黒服に、内心辟易しながらも明菜は了解する。
明菜「ま、私もそこまで拒む理由もないし・・・
じゃあ、お願いしますね。
黒服「了解しました。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
―トイレ前。
―コンコン・・・
明菜「庵治くん?いる?
しかし、返事はない。
黒服「私が見てきましょう。
・・・男がいて良かったでしょ?
どや顔をする黒服。
明菜「あ、はい。お願いします。
(確かに、私がトイレに突撃してバッタリなんかしたら気まずいわね~・・・
ウフフ、でもこのどや顔・・・写メ撮りた~い!
黒服「ん?私の顔に何か?
明菜「あ!いえ!
何でもありませんッ!
トイレに入った黒服が戻って来たが、庵治の姿は無いと報告する。
明菜「やっぱり迷子かなぁ~・・・
余所を探してみても?
黒服「えぇ、構いませんよ。
庵治を探して明菜達は、とある扉の前まで来た・・・
明菜「うわぁ~、すごい扉・・・
入っても良いですか?
黒服「そこは社長の書斎なので駄目です。
そもそも、鍵がかかっていて入れますんから。
明菜「入れますんか・・・
・・・?
入れますん?
黒服「ええ、入れますん。
明菜「入れないのね。じゃあ、他を・・・(いちいちどや顔すんの止めて欲しいわ。
諦めて他へ行こうとした途端、けたたましく警報が鳴り響く!
―キュイキュイキュイキュイ・・!!
明菜「え!えッ?
私何も触ってないわよッ!?
ゴゴゴゴゴゴ・・・
黒服A「分かってます。
これは・・・侵入者かッ!?
黒服B「俺は玄関を見てくる・・・
お前はこの娘を頼む。
黒服A「任せろ。
明菜さんとりあえず、この部屋にッ!
明菜「え?え?ちょッ・・・待・・!
黒服は鍵束を取り出し、扉を開けると明菜を部屋へと押し込む。
―バタンッ!
―ガチャ・・・
明菜「ねぇ!ちょっと!・・外から鍵がかかってる。
開けてよッ!?
開けてッ!!
扉を叩き、叫ぶ明菜。
黒服「安全が確認出来たら開けますので。
しばらく、そこで大人しくしてて下さい。
扉越しにそう答え、声の主は去っていく。
ドドドドドド・・・
明菜「はぁ・・何なのよ、ホント。
――二階エントランス
黒服B「・・・誰もいないか。
静まりかえった辺りを見回した後、仲間に連絡をする。
黒服B「こちら、二階は異常なし。今から玄関に回る。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
黒服B「ん・・・返事が無い。故障か?
別段、気にする様子もなく、黒服は階段を降り始める。
ゴゴゴゴゴ・・・
黒服B「・・待てよ。今・・・警報が鳴っていない?
異常なしなんかじゃない・・・!
異常なしは異常なんだッ!
―バッ!
そう思い立ち、振り向いた黒服の目の前に、見たことの無い男が立っていた。
黒服「なッ!?
―ズギュゥウウンッ!
―ドサッ・・
「なかなか鋭いなぁ?
意外と危なかったから・・・やっぱ解除しとくか。
戻れ、スリーピング・フォレスト・・・
ゴゴゴゴゴ・・・
氷室「・・・みんな、行くぞ。
庵治「ああ・・・。
麻里「あんた達、友達が死んだってのに・・・何でそんなにあっさりしてられる訳ッ!?
―ガッ!
氷室につかみかかる麻里。
准一「よせッ!
麻里「あんたもよッ!
先輩に何かあったら承知しないって言ったじゃないッ!!
何なのよッ!?
約束、守りなさいよッ!!
守ってよッ!!
うあぁ~ん!
あ~~~!!ヒック!
馬鹿~ぁああああ~~ッ!
人目もはばからず泣きじゃくる麻里の手を、氷室は静かにどかす・・・
氷室「柳井は・・仮面を乱童から守る為に、明菜を守る為に死んだんだ。
だったら・・・俺が泣くのは全てを守りきった後だ。
准一「・・・アンタ、格好良いな。
氷室「・・・行くぞ、庵治。
庵治と氷室は、以降言葉を発することなく本館へ向けて歩きだす。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
准一「麻里・・お前先に帰ってろ。
麻里「何よ!?
体よく追い払おうって訳?
准一「違う・・・!
感じるんだ、あの野郎が近づいてくるのを・・・ッ!
麻里「それは乱童様・・乱童が近づいて来てる訳ね。
好都合だわ、先輩の恨み・・・晴らさせてもらいましょうか。
准一「馬鹿ッ!彼を殺した奴は死んだ!
それで充分だろ?
裏切って刃向かったりしたら・・・
麻里「百も承知よ。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
准一「・・・はぁ。
准一は深くため息をついた。
こうなってしまった彼女を止めることは出来ない事を知っているから。
彼にとって麻里はこの世に生まれて
初めての異性であり、
初めての友人であり、
初めての母性なのだ。
彼女が本気でそれを望むのならば、それを助けなければ・・・
准一「分かったよ、俺も手伝う。
ただし、危ないと思ったらすぐ連れて逃げるからな。
麻里「・・・ありがとう。
准一「いいって、気にすんなよ。
先ずは仮面を探し出して、王の力を手に入れる。
その力が何かは分からないけど・・・正直な話、今のままの俺じゃあ、アイツには勝てない・・・
麻里「分かったわ。
・・・柳井先輩、全部終わったら迎えに来ますから。
少しだけここで待ってて下さいね。
亡骸をそっと木の根本に横たわらせ、麻里と准一は再び石仮面の捜索に動き出した。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
幸田「歩けますか?
「問題ない。それにしてもスタンドの力でなく、自分の足で立って歩く事がこんなに気分の良いものだったとはな・・
幸田「傷は治っても筋肉は衰えたままですから、無理はしないようにして下さい。
「すまんな幸田君。
君には何から何まで世話になった。
幸田「関口先生、上城たちですが・・・
幸田と共に歩いていたのは関口・・・遥たちの担任教師だ。
幸田の計らいにより、治癒系スタンド596(さん)に怪我を治してもらったのだ。
関口「・・・矢が敵の手に渡ったのは聞いた。
だが、矢を使ってスタンド使いを増やしているだとかそんな話は、一向に聞かないな。
幸田「恐らく、既に相当な人数が矢によって命を落としています。
ニュースにならないのは、乱童の能力で死体を消しているからだと思います。
関口「触れた物をこの世界はおろか、記憶や記録からも消し去る能力・・・か。
恐ろしい能力だな。
・・とりあえず、一度会って話がしたい。
氷室の家で待っていればいいんだな?
幸田「はい、明日には帰ると思いますので、場所だけ教えておきますから。
明日また、待ち合わせしましょう。
関口「頼むよ、クラスの生徒なら家の場所は大概分かるんだがね。
氷室の家は知らないからな。
二人は、病院から氷室の家に向けて歩いていた。
幸田「こちらで・・・・!?
関口「ん?どうした?
氷室の家の前までたどり着き、関口を入り口に誘導しようとした幸田の表情が凍り付く・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
幸田「な、何でコイツが・・・ッ!?
警備「ガフッ・・た、助けて・・ッ!
―ドサッ。
吊り上げていた男を落とし、ソイツはゆっくりと幸田と関口に向き直る。
ドドドドドドド・・・
乱童「・・・兄弟達が集まっているのを感じたから、来てみたら・・・これは当たりかな?
No,・・失礼、今は幸田と言ったかな?
こんなに早く再会するとはね。
幸田「乱・・・童!
関口「アイツが乱童か。
ちなみにまだ聞いてなかったが、彼・・・うちに在籍とかしてる?
幸田「・・・?
いえ、してない筈です。まだ戸籍もないかと。(ま、それは俺も同じだけど・・・)
関口「ほぉ~・・そうか、そうかッ!
つまり・・・
薄汚ねぇ糞野郎が、俺の教え子に手ェ上げたって事だよなぁーッ!!
コイツは、めちゃ許せんよなァーッ!!?
乱童「・・・何だ?
あの頭の薄い中年は?
・・・ま、やる気なら仕方ないか。
準備運動にはなるかな?
いきり立つ関口は、幸田の忠告も聞かず乱童へ突進するッ!
関口「おぉおおおッ!!
―ダダダダダッ!
幸田「先生ッ!駄目です!!
乱童「・・・スタンド使いか?
まぁどっちでも良いか。
ドドドドドドド・・・
関口「ウシャアァーッ!!
教育的指導ッ!!
【タンジェ・ネ・トリック】!!
乱童「【アクセンスター】・・!!
―バシュバシュバシュッ!!
幸田「関口先生ッ!?
―ドバァアアアッ!!
明菜「これは・・・何かしら?
お面?
ゴゴゴゴゴゴ・・・
机の上に無造作に置かれたソレを、明菜は手に取る。
明菜「ねぇ、ニューオーダー。
これ、何だと思う?
ゴゴゴゴゴゴ・・・
明菜「ニューオーダー?
明菜のスタンドが発現しない。
・・・正確には、発現のための携帯電話が無くなっている。
明菜「何だっけ!?
何かが必要な気がするけど・・・
それが何か・・・
思い出せないッ!?
ドドドドドドド・・・!
庵治「とりあえず上城たちを追うのか?
氷室「そうだな・・・明菜の事もあるし、本館二階には親父の書斎もある。
仮面があるとしたらそこだ。
何せ、ガラクタ集めが趣味みたいな親父だからな。
庵治「仮面?それがここにあるってのか。
何だかわからねえが、もし見つけたらどうするんだ?
氷室「決まってんだろ、ブッ壊すんだよ。
庵治「ブッ壊さなきゃいけない程ヤバいもんか・・・
氷室「まぁな。
仮面を被ると、ソイツは吸血鬼になる。
乱童も吸血鬼になって、世界を支配するつもりらしい。
そうなったら手がつけられねぇ・・・
庵治「吸血鬼ねぇ・・そんなのホントにいるのか?
氷室「いるぜ。今日会った・・・
ついでに言うとゾンビも実在する。
庵治「はぁ・・・ゾンビ・・
そんな話をしながら、二人は本館へと歩む・・・。
ドドドドドドド・・・
乱童「・・・運の良い事だ。
関口「クソッ!あと少しのところで!
乱童と関口の拳が交錯する瞬間、
病み上がりの関口の足がもつれ、乱童の拳に触れずに済んだのだ。
幸田「駄目だ先生!消されてしまうぞッ!!
乱童「相方はああ言ってるが・・・まだやる気かな?
関口「・・触れたら負けだと言うなら、触れなければ良い・・・
ドドドドドドド・・・
関口「そういった類の攻略法は一つ・・・
触れなければ良いんだよ。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
乱童「ほぅ・・大した自信だ。
貴様にそれが出来るとでも?
関口「出来るさ。
俺の仕事を知らないのか・・・?
数学教師だぞ。
乱童「だったら何だって言うんだ?
・・・ォオラァッ!!
―ブォッ!
アクセンスターの腕が振り上げられ、関口に殴りかかるッ!
ドドドドドドド・・・
関口「・・・度、肩・・可動域・・110度。
幸田「先生ッ!?
乱童「フハハハッ!何をブツブツ言っている!?
これで、終わりだーーッ!!
―スカッ・・・
乱童「・・何?
アクセンスターの攻撃は関口に触れる事はかなわなかった。
ドドドドドド・・・
乱童「ちッ!ならば・・・オラオラオラァアッ!
―ドバドバドバァア!
関口「・・・結果は同じだッ!
―スッスッスッ・・
乱堂のラッシュをギリギリでかわす関口!
乱堂「何だとッ!?
ゴゴゴゴゴゴ・・
関口「言っただろう?
俺は数学教師・・・
しかも、特別な能力を持っていてなぁ。
スタンド能力じゃあないぞ?
見ただけで、全てのものの角度が分かるんだよ・・・正確にな。
つまり、お前がパンチを出す前に肩や肘、足腰の角度から狙っている箇所が分かる・・・って事だ。
乱堂「・・・どうやら僕は、アンタをただの中年ハゲと見くびっていたようだな。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
関口「確かに、俺は中年だ。頭も薄い。
健康診断にも毎年引っかかる・・・
しかし、それらは生きてきた積み重ねッ!
年を経た俺と、昨日今日生まれたお前とじゃあ、圧倒的に経験の差があるのだッ!
幸田「・・・(何だか分からないが、今の先生には凄みがあるッ!
イケるかもしれない・・・!!
関口「T・N・Tッ!
ウシャアァーッ!!
―ズバズバァアーッ!!
乱堂「アクセンスターッ!!
―ガッシィイッ!!
お互いが拳には触れず、腕の部分でせめぎ合う。
乱堂「フン・・種が分かればどうという事はないな。
貴様が動いた所を叩けばそれで良い。
―グググ・・・
アクセンスターのパワーに、徐々に押し負けていく関口。
関口「それはそうだがな・・・!
一対一なら勝ち目は薄いが
幸田「俺が居るッ!
【ドロップキック・マーフィーズ】!!
乱堂「ぬッ・・・!
―ドッガァアアッ!!
D・Mに殴りとばされる乱堂。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
関口「お前が何を考えていようが、俺には関係ない。
生徒達に手を上げた報いを・・・
受けてもらうぞ。
乱堂「・・・兄弟共がここへ来ているって事は、捜し物があるって事だ。
モタモタしてられないんだったよ・・・
次の一撃で消し去ると宣言しよう。
幸田「2対1の、圧倒的不利な状況を覆す事が出来るとでも?
乱堂「出来るさ・・・。
―ガシィッ!
警備「ひぃッ!?
―ブオンッ!!
傍らに倒れる警備員を持ち上げ、関口に投げつけるッ!
乱堂「さぁどうする!?
避けるか?
受け止めるか?
警備員の後を追うように駆け出す乱堂。
―ダッ!
幸田「(こいつッ!一般人を盾に距離を詰めるか!)
ドドドドドド・・・
関口「避ける?受け止める?
そんな事はせんッ!
ウシャアァアッ!
―ドゴドゴバギィッ!
警備「ひど・・・いッ!
乱堂「・・・!!
T・N・Tに殴られた警備員は、乱堂を巻き込み吹き飛ばされる。
―ドッガアァアアッ!
幸田「避けるでも、受けるでもなく・・押し返すッ!?
スゴいぞッ!関口先生!!
ゴゴゴゴゴゴ・・・
気絶した警備員の下敷きになり、壁に叩きつけられた乱堂。
乱堂「ククク・・
フハハハハハッ!!
関口「・・・!
幸田「何がおかしいッ!
ドドドドドドド・・・
乱堂「いやいや、失礼。
あまりに偉そうな事言ってたから、期待したんだがね。
・・・期待はずれだよ、とんだ甘ちゃんだ。
―ズバズバズバズバッ・・・!
関口「ッ!?
幸田「なッ!
乱堂の身体の上に乗る警備員の身体が消えていく。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「本物の覚悟があるのなら、
押し返したりせずに
この警備員ごと僕の身体を貫けば、それで済んだ話なのに・・・
幸田「・・・ッ!
先生!!身体がッ!?
関口「・・・何ッ!?
―ズズズ・・
関口の身体は消え去ろうとしていた。
乱堂「僕は、触れさせてもらったよ・・・!警備員の身体ごとな!
ゴゴゴゴゴゴ・・・
関口「ウォオオッ!?
―ズバズバズバッ・・・!!
関口「幸田くん・・・ッ!
上城達を・・・
言い終える前に関口の身体は消え去り、後には何も残らなかった。
それと同時に、この場に居合わせなかった遥たちの記憶からも関口は消えた・・・
幸田「貴様ぁーッ!!
乱堂「向かってくるか・・・力の差を知って尚!
アクセンスターッ!
幸田「ドロップキック・マーフィーズッ!!
―ドォオオオンッ!!
ゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「・・・敵ながら見事な戦い。この事は、この傷の痛みと共に覚えておこう。
誰も居なくなった門の前で乱堂は呟くと、わき腹を押さえながら、敷地内へと歩いて行く・・・。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
関口 健夫
スタンド【タンジェ・ネ・トリック】
――消滅。
スタンド【タンジェ・ネ・トリック】
――消滅。
幸田 (No,7)
スタンド【ドロップキック・マーフィーズ】
――消滅?
スタンド【ドロップキック・マーフィーズ】
――消滅?
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