ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「そろそろ来るかな・・・
炎がくすぶる林の中で、乱堂が呟く。
明菜「痛ッ!離してよ~!!
傍らには、アクセンスターに腕を取られもがく明菜の姿があった。
乱堂「彼女たちが来ればすぐ離すさ・・・
明菜には目もくれず、地面に座ったまま
遥から奪った【矢】を指先で弄ぶ乱堂。
乱堂「(スタンド能力を開花させる矢・・・
スタンドの能力を持つ者に素質があれば、スタンドの先の能力を得る事が出来る・・・
僕は仮面を手に入れ、未来の先へと進む。
そして、更なる能力を得て・・・
何をするんだ?
世界を支配する・・・
人類を幸福へ導く・・・
天国を目指す・・・
だがそれは、DIOの意志なのか僕の意志なのか・・
僕は彼のクローンだが、彼とはスタンドが違う。精神が違うのだ。
彼を目指し、彼の遺志を継ぐのが僕の生まれた理由なのは分かっている・・だが、僕は彼に成り得るのか?
仮になれたとしたら、今ある僕の意思はどうなるんだ?
明菜「・・ねぇ。
乱堂「ん?
明菜「悩んでるみたいな顔してるけど、どうかしたの?
乱堂「・・・まぁ、君には関係ない話だ。
明菜「そう?私には相談したくて仕方ない顔に見えたけど~。
乱堂「・・そんな顔、してたかい?
明菜「してたわよ~!
ま、何悩んでるか知らないけどさ。
とりあえずやってみてから考えてみたら?
やる前から悩んだって仕方ないじゃない。
あ、悪い事をするか・・って悩みならしない方が良いわよ?
乱堂「やってみてから考えるか・・・
ありがとう。参考にさせて・・・・
・・来たか。
明菜「え?
乱堂がゆっくりと立ち上がる。
遥「・・・明菜を返してもらうわよ。
ドドドドドドド・・・
乱堂「来ると思っていたから、必要ないとは思ってたけど。
念のため・・ね。
もう行っていいよ、手荒な真似して悪かったね。
そう言って乱堂は明菜を解放する。
氷室「明菜ッ!怪我はないか!?
明菜「・・大丈夫!
悠「随分あっさり解放するんだな。
俺達が逃げるって頭は無いのか?
乱堂「その心配はいらない・・・
仲間を三人も消されて、君たちが僕を見逃すとは思えない。
例え記憶が消されても
【魂に刻まれた記憶】は消えはしないからね。
・・・ところで、君たちがここに居るって事は、僕がここにいる理由を知っているのかい?
それとも偶然か?
遥「・・アンタが吸血鬼になりたがっているのは何となく分かる。
そして、私たちはソレをブチ壊しに来た・・・!
乱堂「フン・・・出しゃばらなければ良いものを。
今の僕の目的は【仮面】只一つ。
君らがソレを破壊すると言うのなら・・・消えてもらうしかないな。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「スター・ゲイザーッ!!
―ゴォッ!!
屈強なスタンドの拳が乱堂に迫る!
乱堂「来るかッ!
アクセンスターッ!!
―ガッシィイッ!!
乱堂「・・ぬッ!?
殴りかかると見えた両拳は一転して開かれ、アクセンスターの両手首を掴む。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「怖いのはこの拳・・・触れさえしなければ、アンタなんかッ!!
乱堂「・・僕がふりほどけないとでも?
―グンッ!
握られた手首を振りほどこうとアクセンスターは力を込める。
乱堂「・・・ッ?
ほどけない!?
ドドドドドド・・・
遥「こんな単純な手に引っかかるなんてね・・・!
乱堂「(この女・・!前より、スタンドのパワーが上がっている!!
・・・そういえば、前に矢で手を傷つけていたッ!
これは・・矢のパワーか!?
遥「オラァッ!!
―ズッゴォッッ!!
S・Gの前頭部が、アクセンスターの顔面にめり込む!!
乱堂「ぐあッ!?(ず・・頭突き!
遥「あんた、何でも一撃で終わらせて来たんでしょ?
能力が封じられて戦うのに・・・慣れてないのね。
―ツ・・・
遥の額から血が流れる。
乱堂「(・・ならば、波紋を流し込んでやるッ!!
遥「ッ!?
―ガッキャアァアッ!
遥の身体に電流のようなものが流れるッ!
しかし・・・
―バゴォッ!
唐突に遥の後ろにある樹木が裂ける。
乱堂「・・・!?
何だと・・?
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「今のは・・何?
乱堂「バカなッ!波紋を直接身体に流し込まれて、無事でいられる筈がないッ!!
悠「ヌファファ・・・!
スペース・カウボーイ。
どっかで聞いたようなセリフだなぁ?乱堂ッ!!
乱堂「貴様・・ッ!
ドドドドドドド・・・
遥の足下にはスタンドの縄がかかっていた。
縄は悠を経由し、林にある樹木やなどに繋がっている。
乱堂「・・・避雷針の役目か。
悠「受けた感じ、電気ショックみたいだったんでな。
もしかしたらと思ったが・・・正解だったみたいだな!
乱堂「・・・!
・・・ハッ!?
准一「イースタン・ユースッ!!
准一が突如飛び出し、防御のできない乱堂へと突撃する!
―バッギィイッ!!
―ドスドスドス・・・ッ!!
遥「っぐあッ!?
悠「ぐは・・・ッ!
准一「・・何だぁッ!?
准一の眼前に、破裂した樹木の無数の破片が迫る!
准一「ウオォオオォッ!!?
―バシバシバシッ!
E・Uを使い、その破片を打ち落として行く准一。
―グンッ!
不意に、准一と乱堂の距離が詰まる!
准一「んなぁッ!?
乱堂「お前との距離を消し飛ばしたぞッ!
破片を払うために腕を伸ばしきったE・U。
次の一撃を放つ為には一度腕を引かねばならない・・・が、
アクセンスターの拳は既に発射態勢が整っている。
准一「(ま、間に合わねえッ!
乱堂「・・お前は裏切ると思っていたよ。
さよならだ、弟。
「レッド・ホットォォオッ!!
乱堂「ッ!!
―ドゴォオッ!
死角・・・背後からの一撃に、驚異的な反応を見せた乱堂は
肩で攻撃を受け止めてみせた。
その一瞬の隙をつき、准一は乱堂と距離を取る。
ドドドドドドド・・・
遥「痛ッ・・ぐ!
肩に深々と突き刺さる破片を引き抜き、膝をつく遥に明菜が駆け寄る。
明菜「遥ッ!!
悠「・・・ぐッ!
あの野郎!俺の縄を通して木をブッ壊しやがった!
悠もまた腕に破片が突き刺さっている。
ゴゴゴゴコゴゴ・・・
准一「4対1でこれかよ・・!?
乱堂「フフ・・・押さえ込まれた時は、僕もチョイと肝を冷やしたが・・・
窮地に陥いると、人間は成長するものだね。
ところで・・・炎のスタンド使いの姿が見えないが、お前の手の中にいるんだろ?
ゴゴゴゴゴゴゴ・・
准一「・・・さあね。どうだろう?
乱堂「フン、まぁいいさ・・
さぁ、次の手を見せてくれ。まさかこれで終わりって事はないんだろう?
―バンッ!
手近な木に波紋を流す乱堂。
―ビキ・・ビキキ・・
―バギャアァンッ!!
破裂した木が再度、准一に襲いかかるッ!
准一「ウロァアアアァッ!!
―バギバキバキッ!
E・Uはその破片を一つ残らずたたき落とす!
・・・だが
―ドズゥッ!
准一「・・ぐあッ!?
たたき落とした筈の破片が腕に突き刺さっている。
准一「ぐッ・・・一つ残らず叩いた筈ッ!!
あの一瞬で破片を消したのかッ!?
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
すでに日は沈み、辺りは暗い。
燃える木々を背景によく見えないが、准一には乱堂が笑っているように見えた。
准一「なぜ・・殺さない?
乱堂「さっきも言っただろう【窮地に陥ると成長出来る】と。
君たちのおかげで、今、僕は急速に成長しているんだ。
君たちには・・まだまだ、僕のために出来る事があるはずだ。
准一「・・くそがッ!
明菜「遥・・血がたくさん出てる!
遥「大丈夫よ、明菜・・それより早く逃げて。
遥はそう言い、血に濡れた手で明菜の洋服を掴む。
―ジャキィイイッ!
遥「!?
明菜「!?
その瞬間、明菜の服から無数の針が飛び出す。
―・・ゴト。
明菜の破れた服から何かが落ちた。
遥「・・・・?
悠「あ、あれは・・まさかッ!?
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「・・なるほどね。
既に見つけていた、と言う訳か。
明菜「あ・・お面!
そう言えば返すのを忘れて・・・!
―ダッ!!
乱堂「そいつを寄越せッ!!
明菜の方向へ走り出しながら、アクセンスターの拳が空間を消し去るッ!
悠「(マズいッ!!
あの空間が閉じたら一瞬で間合いを詰められるッ!
准一「行かせるかぁーッ!!
イースタン・ユース!!
―バシュバシュッ!!
乱堂「アクセンスターッ!!
追いかける、准一のラッシュを捌きかわそうとする乱堂。
乱堂「無駄だァッ!!
―ドッゴォ!
衝撃音が響き渡り、乱堂の身体が空中高く投げ出されるッ!
乱堂「何ィッ!?
・・・こ、これは!
―ボボボボボ・・・!!
衣服の肩部分、先ほどR・Hの攻撃を受けた箇所からR・Hの腕が現れる。
E・Uの拳の隙間から氷室が姿を覗かせる。
―ガシィッ!!
三度、押さえ込まれる乱堂。
乱堂「やはり手の中か。
だが・・そんな事より、二度ならず、三度もこの僕が押さえられるとはッ!
―バシュバシュッ!!
乱堂「ッ!
アクセンスターの両腕に縄が掛かる。
乱堂「この縄は・・・ッ!!
「YEAHHHHAッ!!
―バッギャアァッ!!
乱堂「つぁッ!?
悠「・・ぐあッ!!
―・・ドザッ!
ドドドドドドドド・・・
両腕から血を流し、地面に落ちる乱堂・・・
と、同じく両腕から血を流す悠。
悠「ヌファファ・・・肉を斬らせて骨を断つッてな!
乱堂「・・・ぐッ!
この僕が・・地ベタを舐めるような姿を!?
両腕を破壊され て這いつくばる乱堂・・・
―・・・ザッ
遥「・・・アンタをブン殴るわ。思いっきりね。
多分、死ぬと思うから先に謝っておく。
・・・悪いわね。
空間の穴がふさがった事で、乱堂の落ちた先は遥の目の前である。
側には悠と明菜。
反対側には准一、氷室の姿。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
強力なスタンド使い4人に囲まれ、両腕も自由に振るえない・・・
乱堂が体験する、未だかつてない窮地である。
乱堂「・・・フフ。
悠「?
遥「何がおかしいの?
氷室「・・気でも触れたか?
乱堂「フハハハハハハッ!!!
いいぞ!
面白いッ!!
准一「・・・!
強がったところで、お前には絶望的な状況だぜ・・・!!
確かに、乱堂にとって決して良い状況ではないが・・・
その目に敗北の色は見えず、
むしろ爛々と目を輝かせている。
まるで、この窮地を楽しんでいるかのように見えた。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「・・・!(まだ、何か隠してる?
乱堂「フフ・・・いや、失礼。
つい興奮してしまってね・・・。
この窮地を乗り切れば、更に成長出来るかと思うと楽しくて。
僕は、頂点を目指す!!
迷うより、まず頂点に立ってそこから見える景色を見て、何を始めるか決めようッ!!
明菜「・・・あ。
氷室「・・・変態野郎がッ!!
お前はここで死ぬんだッ!
レッド・ホット!!!
―ゴアッ!!
炎の拳が、乱堂へと放たれるッ!!
乱堂「フフフ・・・
アクセンスター。
―ドグシャアァッ!!
―ポタ・・・
―・・ポタッ
R・Hの拳は胴体を貫通し、その男の体は宙吊りにされていた。
氷室「・・・・
准一「やった・・!
明菜「やっくん!
悠「・・・・!?
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。