―ドバドバァーッ！！
乱堂「フハハハハッ！！身体が軽いぞ！
今までよりも遥かに早いッ！
―ドグシャアァッ！！
乱堂「ぐあッ！？
乱堂の動きは、今までよりも遥かに早く、正確さも増していた・・・
しかし
その拳よりも先に、スター・ゲイザーの拳が彼の顔面を捉える。
乱堂「なッ・・！？
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「言ったはずよ、アンタはここで【終わらせる】って。
乱堂「・・・フフッ。
少年漫画でもあるまいし、仲間が死んでパワーアップとは。
氷室「ドラドラドラドラドラァアーーッ！！
准一「ウロァアアアァッ！！
半テンポ遅れで、Ｒ・ＨとＥ・Ｕのラッシュが到達する。
―ドババババババッ！！
氷室「んなッ！？
准一「何だとッ！？
近距離パワー型２人のラッシュを振り向きもせず、片手で捌く乱堂。
乱堂「三下はすっこんでてくれないか？
―ブンッ！
氷室「はッ！
アクセンスターのそれは、蠅でも払うかのような動きであった。
氷室は咄嗟に受ける事に成功はした・・・が
―バッギィイッ！！
氷室「うわぁああぁッ！？
その身体は、車にでも弾き飛ばされたかのように吹き飛ばされてしまう。
―バキバキ・・
―ザバァアンッ！
乱堂「ん・・・池に落ちたか？
運が良いのか悪いのか・・
ドドドドドドド・・・！
准一「・・・くッ！ 化け物め・・！！
乱堂「安心しろ。
彼はまだ死んではいないよ・・・
准一「・・消さなかったのか？
ゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「正確には、消せなかった・・かな。
自分の能力が恐ろしくて使えないんだ。
彼を消したら、人類が消えてしまうからね。
准一「は？何を言ってやがる・・？
乱堂「分かりやすく言おうか。
僕がパンを消したとすると、世界中のパンが消える・・・
今の僕からすれば、パンも人間も変わらない・・・
【食料】だって事さぁーーッ！！
アアアァアアハハハハハハハハーッ！！
准一「・・イカレてやがる！
遥「・・・！
ドドドドドドドド・・・
乱堂「あぁ・・こんなに笑ったのは、生まれて初めてだよ。
・・・ところで、
いつまで僕の顔に触れているつもりだ？
上城 遥・・・。
遥「くッ・・！
先ほど、乱堂の顔面を殴った際に違和感があったが、遥は意に介さず打ち抜こうとした・・・
だが
Ｓ・Ｇの拳はアクセンスターの頬にピッタリと【くっついて】しまっていた。
遥「何を・・したッ！？
―グッ！
拳を引き剥がそうとするが、押しても引いてもびくともしなかった。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「理解出来ないのも無理はない。
人間じゃあ出来ない技だ。
・・・【気化冷凍法】と言う。
乱堂「簡単に言えば凍ってくっついた訳だ・・・。
さて、と
ちなみに君は、この距離からの攻撃を片手でかわせるかな？
遥「――ッ！
―ボッ！
予備動作無しに、真っ直ぐ。
顔をめがけ拳が放たれるッ！
―ビジィイッ！
何とか皮一枚で避けた遥だが、頬の皮ごと持って行かれる。
遥「痛ゥッ！(だけど・・次が来る！
―ボッ！
遥「ぐうッ・・！(避けるだけで、精一杯・・・
コイツは片手しか使ってないのにッ！！
―バチィイッ！！
遥「しまった！
Ｓ・Ｇのガードをしていた腕が弾かれる！
乱堂「フフ・・・がら空きだぞッ！
オォオラァァッ！！
―ッゴオ！！
遥「・・！(避けられないッ！！
先程までとは、明らかに違う。力の入った攻撃・・・
喰らえば、頭蓋を砕かれ脳漿をまき散らす事になるのだろう。
しかし、遥はその未来を回避する手段を持っていないのだ。
―――死ぬ。
まだ何もしていないのに、すぐに悠の後を追う羽目になろうとは・・・
遥の胸に、悔しさと怒りがこみ上げてくる。
時間は非常にゆっくりと進む。
悠の死に際と同じ様に。
眼前にゆっくりと迫る拳を諦めにも似た気持ちで見ていると・・・
―ッゴオオオッ！
遥「・・・？何か、来る？
遥は、非常にゆっくり流れる時の中で、普段と変わらず動く何かの存在を感じた。
遥「(・・・何？
何か来る？
おかしいわ、時間がゆっくりなのに？
死の間際に一秒が何十秒にも感じられるってアレじゃないの？
しかし、その何かは 確実にもの凄い勢いでこちらへと向かって来ている。
時間がゆっくり流れていると感じているのに、この速度。
実際ならば、目に見えない程の速度なのではないか。
―ッゴッッ！！
そして、遥のわき腹をすり抜け、その何かが飛んでくる！！
遥「・・・銛？
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
金属で作られた銛が、乱堂の体を貫く。
と、同時にその体は銛に引っ張られるように後方へと移動していく。
―ベリベリベリ・・ッ！
遥「いぃッ？・・痛ダダダダァ～ッ！？
凍ってくっついた遥(Ｓ・Ｇ)の拳は引き剥がされ、乱堂の体は遠くへとすっ飛ぶ！！
―ズグシャアァッ！！
銛は放物線を描き、乱堂ごと地面へと突き刺さる。
乱堂「・・・ぐあッ！！？
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「これは・・・
准一「な、何が起こった？
？？「ンフフフ・・・！
危ないところだったわね、遥。
月の光に照らされる影が一つ。
ドドドドドドド・・・
遥「あ、あん・・・あなたはッ！！
お母さん！？
晶「助けに来たわよ。遥・・・
乱堂「ぐは・・・ッ
今のは、何をされた？
この銛を投げただけなら、認識出来ない筈は無い！！
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
―・・・ガシッ！
自身に突き刺さる銛をつかみ引き抜きにかかる乱堂。
乱堂「・・・金属ッ！
消しても良いが・・・地球上の鉱物も消してしまうか？
―・・ズルッ
乱堂「良し、抜け・・・ッ？
―グニャグニャァ・・・
突如、銛が液化するかの様に溶け始め、形を変える！
乱堂「コイツは・・・！！
―ドスドスドスドスッ！！
幾多にも枝分かれした銛が更に乱堂の体を突き刺し、地面へと縫いつけた。
ドドドドドドドド・・・
「メタル・ジャスティス・・・！！
遥「み・・御園ッ！！
御園「・・・やれやれだな。
吸血鬼化しちまってるんじゃあ、これじゃ死なないな。
晶「・・・遥、下がってなさい。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥の窮地を救ったのは
【母】、晶と【元】執行部隊長、御園の２人であった。
准一「アンタら・・・何者だ？
晶「ん・・・初めて見るけど、あなた遥の友達？
准一「違・・ッ！！
晶「・・まぁどうでもいいけどね。
巻き込まれて、怪我したくなかったら・・すっこんでなさい。
准一「な・・・！(何て失礼な女だッ！！
今のは、たまたま上手くいっただけだろうがよぉ～！！
後で泣きべそかいたって助けてやらねえぞッ！？)
御園「晶【博士】。
これを・・・
そう言って、御園は晶に何やら小瓶を渡す。
遥「・・・何？
晶「【抗スタンド薬】・・・
時間がなくて、臨床実験も何もしてないから、効果に不安は残るけどね。
ま、ものは試しって言うでしょ？
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「小賢しいな。
こんな物で僕を捕らえたつもりか？
・・・アクセンスターッ！！
―バッキイィッ！！
アクセンスターが銛をへし折るッ！！
御園「・・・大したパワーだ。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「フン・・どうという事はないさ。
ところで・・・
その、抗スタンド薬とやら・・・
打てるものなら打ってみろ。
僕は、逃げも隠れもしないからなぁーッ！？
銛を打ち込まれた傷もいつの間にか塞がっていることで、
乱堂が完全に人間ではなくなった事を
遥は再認識した。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
晶「ふぅ～・・・分かるわ。
力を手に入れたばかりの時は誰だって
【何でも出来る】って思いこんじゃう物よ。
でも・・・それが、幻想だって教えてあげるわ！！
―ダッ！！
乱堂めがけ走り出す晶。
猛烈なスピードで距離を詰める！！
晶「ＵＵＵＵＲＲＲＹＹＹＹＹＹＡＡＡＡＡッ！！！
乱堂「・・早いッ！？
―ガバッ！
人間の限界を越えた速度に驚き、初撃を受け止めようとガードを固める乱堂。
晶「無駄無駄無駄ァアアッ！！
クロック・ワークスッ！！
―ズッキャアアァアアンッッ！！！
遥「！？
・・・・
・・・・・
・・・・・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「(・・・これは一体？
さっきと同じ感覚・・・！？
全てのものが、止まっている訳ではなかった。
ただ、ゆっくり・・・
非常にゆっくりとだが動いている。
只一人を除いて。
晶「・・あんたには何が起こっているかなんて分からないでしょうね。
ドドドドドドドド・・・
乱堂の瞳がゆっくりと晶を追う。
そして、腕もゆっくりと動いてはいるが・・・
―ドバッギィイッ！！
クロック・ワークスが無惨にもその両腕をへし折るッ！
晶「一秒の長さを３０秒相当まで遅らせた・・・
この世界で普通に動けるのは私だけ。
尤も、何を言ってるのかなんて聞き取れちゃいないでしょうけど・・・
そう言って、小瓶
を握り込み、その手で乱堂の体を貫く。
―ズドオォッ！！
―・・ズルッ
引き抜いた手に、小瓶は握られていない。
ただ少しの破片が血に濡れてキラキラと光を放っていた・・・
晶「ンフフ～！体の中に直接入れさせてもらいました～ッ！
３・・
２・・
１・・
・・時は目覚める。
―ブシャアァアアッ！！
乱堂「ぐ・・・あぁッ！？
―ボタッボタタ・・・ッ！
おびただしい量の血液を滴らせ、膝を着く乱堂。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
乱堂「・・このパワー。まさかお前も・・・！
晶「そうね、あんたよりも１５年長く吸血鬼をやってるわ。
なりたての坊やじゃあ・・・
残念ながら役不足よ。
ドドドドドドド・・・
乱堂「フフ・・・
人間より遥かに優れた能力を得ても、たかが人間の娘の為に働くか・・・！
甘い・・・甘いぞッ！
アクセンスターッ！！
―グオッ！
乱堂の傍らに立つスタンドがその手を振りかざす！
遥「ッ！？
御園「薬は・・ッ！？
晶「まさかッ！？こんなに早く動ける筈が・・！
准一「避けろ！女ァーッ！！
―ドシャアアァッ！！
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