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第六章『いばらの世界』その①

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orisuta

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――午前1時、S市総合病院。

その廊下には窓はなく、非常灯の緑色の光だけが床を照らしている。

誰もおらず、静かな廊下……

『集中治療室』と書かれた扉に向かい、杖谷模は立っていた。

母が中にいるのはわかっていた。だが、顔を見ることはできなかった。

会えばきっと……『申し訳ない気持ち』で胸がいっぱいになってしまうだろうから。



模「母さん……ごめんなさい。」

模は中にいる母にむかって、深く頭を下げた。


しばらくしてから模は踵を返し、廊下を歩き出した。



ホリィ<あれパパ、模クンは?>

ジョセフ<出て行ったよ。彼の修行はもう終わった。>

ホリィ<あら、そうなの?……残念ねぇ。どうだったの、修行?>



病院を出ると空には丸い月が浮かんでおり、月明かりが模を照らす。

模のはっきりと見開いた眼には曇り一つなく、表情にも以前の弱々しさは見られない。

模は病院の正門前で立ち止まり、病棟のほうを振り返った。

母の意識が戻るかどうかは、模にはわからない。しかし、だからといって立ち止まるわけにはいかない。

模は再び正門のほうへ向きなおした。



ジョセフ<……彼は、強くなったよ。前だけを見て、後悔なく進みたいそうだ。

     彼に突きつけられた選択は、自分の人生を左右するほどの大きな選択だった。

     一度引き下がった彼は再び進みだす事を決めたんじゃ。だが彼が選んだのは『いばらの道』。

     辛く、険しい道じゃ。かつてのわしらの冒険と同じくらいな……。

     だが、彼ならきっと乗り越えられるだろう。>



模は病院の正門から外へ一歩足を踏み出し、歩きはじめた。

彼の澄みきった瞳は何を見ているのか、彼がこれからどこへ向かうのか。

それは模自身にしかわからない。



ジョセフ<きっと何にだって立ち向かえるだろう。…………『波紋が、使えなくても』。>








第六章 -いばらの世界-



杜王町の某所にあるひとつの館。その館は『あたりまえのように』誰の目にも見えるところに建っていたが、

だれもが『そこにあるのを知らぬ』館だった。紅葉たちが本拠地としている幻の小道の屋敷とは別の、もうひとつの幻の館。

その館の入り口に一人の男が立っている。髭を生やした、長身の男。

入り口から中へ入ると、ロビーにいた2人の男が銃を髭の男に向けた。

*「誰だ貴様は!!何故ここに入った!?」

*「ここがどういう場所かわかっているのか!?」

銃を向けられた男はあわてる様子もなく、両手を前に出してなだめるような仕草をとった。

髭の男「銃をおろしなさい、『ディザスター』の同志よ。無駄な血は流したくない。私は『迎え入れられたんだ』。」

*「…………?」

*「………あ、あなたは!!ディザスター幹部のひとり、『棟耶輝彦(トウヤ テルヒコ)』様!た、たた大変し、失礼致しましたッ!!これで……お詫びをッ!!」

青ざめたその男は銃を床に落として跪き、腰に下げたナイフを首に当てて一気に引き裂いた。

ブシュウウウウウウウウウ!!!!

棟耶「……バカめが、無駄な血は流したくないと言っただろう。」

棟耶がそう言った次の瞬間、首をナイフで斬ったはずの男の創はなくなり、男はただナイフだけを握っていた。

首を斬ったその男が何かしたわけではなく、棟耶の意思により瞬間的に『そうなった』のだ。

*「?……??」

棟耶「キルは、こっちの部屋かな?」

棟耶は何事もなかったかのように男に問いかけた。

*「は……はい、そのとおりです。」

棟耶「そう、ありがとう。」

*「………お、お情け感謝いたしますッ!!」




棟耶が部屋に入るとそこには机に向かうキル・シプチルと、ソファに座る老人の男がいた。

棟耶が扉を閉めるやいなや老人の男が棟耶に語りかけた。

老人の男「……遅かったじゃないか棟耶。15分も遅れた。おかげで間違ってここに入った浮浪者を2人ほど殺してしまう羽目になったよ。」

棟耶「…………ああ、誰かと思ったら『ヴァン・エンド』か。今日はその格好なのか?」

ヴァン「『今日は』じゃない、『今日も』だ。ここにいるうちは変装を統一しろとキルがうるさいもんでな。

    そんなことより、なぜ遅れた棟耶。」

棟耶「なに、ずいぶん久しぶりに来たからな『杜王町』には。懐かしくなって、見回っていたんだ。」

ヴァン「まったく、ふざけおって……。」

棟耶「そう怒るな、ヴァン。おまえの『ピープル・イン・ザ・ボックス』は私だけがこの館を認識できるようにはできないのか?」

ヴァン「できるんならそうしているわ。わしが出来るのはこの館をだれにも『認識させないか』『させるか』の二つだけだ。

    指定した時間に来なければ誰でもこの館に入ることが出来るんだ。時間は守れ。」

キル「しかし、これで今回の作戦に参加する幹部は全員そろった。」

キルがソファに近づき、会話に割って入った。手にはコーヒーの入ったポットとカップを3つ持っている。

棟耶「やあキル。ボスはいないのか?」

キル「ボスは……外出中だ。」

棟耶「外出?めずらしいな。」

キル「きょう、11年前の『吉良吉影の事件』のことを聞かれてな。」

棟耶「『吉良吉影』……そこまで調べていたとはな。公にはされていないというのに。」

ヴァン「侵略するのだから過去のスタンド使いが関わった事件を調べるのは当然だ。」

キル「その事件に関わったスタンド使いについて聞かれたんだ。」







ディエス「キル……『吉良吉影の事件』に関わったスタンド使いは今、杜王町にはどれだけいるんだ。」

キル「はい、小林玉美、トニオ・トラサルディー……」

ディエス「戦闘に向かない者はいい。」

キル「失礼致しました。………ええと、東方仗助はS市総合病院に入院中。虹村億泰、広瀬康一は現在この街には住んでいません。

   岸辺露伴はフランスへ長期旅行中……etc.  吉良に対峙した者達は皆杜王町にはおりません。」

ディエス「………吉良に加担した者ではどうだ?」

キル「加担した者……ですか?」

ディエス「一時でも加担した者であっても、その実正義の為に動く者であった可能性はある。」

キル「……なるほど。…………ひとり、いました。吉良に加担していた者で、戦闘に向いた能力を持つ者です。」

キルは手に持っているファイルをディエスに差し出した。

ディエス「……わかった。では、私が殺しに行こう。」

キル「……!?……おそれながら、どういうおつもりなのでしょうか。」

ディエス「……反抗の芽はつぶさねばならぬ。おまえはそれがわからなかったというのか。」

キル「そうではありません。なぜ、ボス自ら向かうのでしょうか。私の手下にお任せ下さい。」







棟耶「それで、ボスは何と?」

キル「『吉良の事件に関わったスタンド使いは経験と実力のある者だと考えられる。

    それと戦う事は私にとって良い〝試練〟となるだろう』……と言って出ていかれた。」

棟耶「『試練』……か。あのお方の口癖だ。」

キル「しかし困ったものだ。もう少し玉座にどっしりと構えていてもらっても良いのだが。」

ヴァン「しかしそうやって自らも剣を取り戦うからこそ、我々はボスを慕い、お仕えしているのだ。」

棟耶「……たしかにそうだな。」

キル「なんにせよ、我々はこれからボスとともに戦い、ボスをお守りせねばならない。

   まずは反抗分子となるスタンド使いを殲滅すること……これが最優先だ。」



キルはそう言って持っていたカップをテーブルに置いた。

キル「コーヒー、飲むか?」

ヴァン「わしはいらん。」

棟耶「いただこう。」

キルはテーブルに置いたカップから黒と赤の2つを寄せて、手前にある黒のカップからコーヒーを注いだ。

棟耶「なんだ、自分のからか?」

キル「細かいヤツだな、どっちからだって変わりないだろう?」

棟耶「…………」

コポポポポ……



キルが黒のカップに注ぎ終わったと思ったそのとき、急に黒のカップからコーヒーが『なくなった』。

キル「ム…………」

棟耶「キル、ありがとう。」

棟耶は『赤のカップ』を手に持ち、口へ運んだ。ズズズッとコーヒーをすする音がした。

キルはまだ手も触れていなかった赤のカップに『いつのまにか』コーヒーを注いでいたのだ。

そして、注いでいたはずの黒のカップには一滴もコーヒーが注がれていなかった。『キルの気づかぬうちに』。

棟耶「…………焙煎が濃いな。」ズズズッ




キル「『エル・シド』か……ご挨拶だな。」

キルはフフッと笑って再度コーヒーを黒のカップに注いだ……。






【スタンド名】
エル・シド
【本体】
棟耶輝彦(トウヤ テルヒコ)『ディザスター』幹部。

【タイプ】
近距離型

【特徴】
黄色を基調とした鎧を纏った人型。

【能力】
時を「ぶれさせる」能力。
時が「ぶれる」ことによって、1秒後に起きる事象とそのさらに数秒後起こる事象の順番が入れ替わる。
例えば、「三人の男に襲撃された剣士」が、初斬で「Aを斬って」、次に「Bの攻撃を剣で防ぎ」、次に「Cに蹴撃を加える」と言う順序なら、
Bは攻撃を開始していないのに、二番目の工程たる「Bの攻撃を剣で防ぐ」を先に行わせることが可能。

破壊力-A
スピード-A
射程距離-D

持続力-E
精密動作性-B
成長性-D






午前4時、杜王町商店街裏路地、クラブ「Shooting Star」前

店の前に、ホステスの女を見送る男が立っていた。27歳の若き店主、ぶどうヶ丘高校の卒業生でもある『墳上裕也(フンガミ ユウヤ)』だ。

ホステス「裕ちゃあん、お疲れ様~!」

墳上「おまえのおかげで今日も繁盛したぜチヨミ。お疲れさん。」

ホステス「ホント~!!ねぇ裕ちゃん、ごほーびにプラダのバッグ買ってヨォ。」

墳上「えぇ?こないだ買ってやったばっかりじゃねえかよ。」

ホステス「限定版が出たの~!ね、お願い!!」

墳上「ッたくよー、少しはガマンを……ん?」

ホステス「……どーしたの?」

墳上「少し黙れ、チヨミ…………クンクン」

墳上は目を閉じて嗅覚のみに意識を集中させる。彼はスタンド能力『ハイウェイ・スター』のほかに、猟犬以上の優れた『嗅覚』を持っていた。

墳上が嗅ぎ取ったのは、確実に近づきつつある『危機』であった。

墳上「これは………『血のにおい』。」

ホステス「裕ちゃん?」

墳上「チヨミ………逃げろ、俺から離れろ!!」

墳上(なんだこれ……血のにおいと一緒に感じるこの『どす黒い』気配は……!)

ホステス「どうしたの……こわい顔して……」

墳上「走れ!はやく逃げろ!!」

ホステス「だ、だれかくるの……?裕ちゃん……。」

ホステスは墳上を心配しながらも、駆け足で大通りの方へ向かっていった。



……が、しかし。



ドグァン!!

ホステス「ぐえっ!!!」

墳上「!!!」

ホステスが大通りに出る前に、建物のカゲから太い腕が飛び出し、ホステスの腹を貫いた。

ホステス「チッ、チヨミ!!!」

ホステスの体を貫いた者は、ホステスを放り投げて建物のカゲから姿を現した。

フルフェイスメットをかぶったような頭に、紅と黒の網目の体。体は墳上の『ハイウェイ・スター』と模様が似ていたが、体の大きさが一回り以上も違った。

ディエゴ・ディエスのスタンド、『ミレニアム・チョーク』だ。

ディエス「貴様が墳上裕也だな?」

墳上「…………」

ホステス「ヒュー……ヒュー……」

墳上はディエスの奥で倒れているホステスに目をやった。

血がとめどなく流れ、うつろな目でこちらを見ていた。

すぐに救急車を呼ばなければ……いや、あの様子では助からない……墳上はディエスを睨みつけた。

墳上「『スタンド使い』は『スタンド使い』にひかれあう……なぜ見ず知らずのおまえが俺を狙ってきたがしらねーがよ、

   チヨミは『スタンド使い』じゃあねー。無関係の、ただの人間だ。『何も知らぬただの人間だ』。

   おれと一緒にいたせいで死んだチヨミは……無関係なんだ。そんなヤツの命をうばったおまえを生かしておくことは

   カッコ悪いことだぜッ!『ハイウェイ・スター』!!」

墳上の傍らに『ハイウェイ・スター』が現れた。

ディエス「フン、逃げぬ……か。この『ミレニアム・チョーク』を前にして。」

墳上「ただおまえが現れてきただけなら逃げてるさ。戦う理由もない、生きるのに必死さ。

   だがな……自分の女が目の前でやられて黙っていられるわけがねーだろうがッ!!」

ハイウェイ・スターが無数の足跡の形になり、ディエスのほうへ飛びついていった。

ビシッ! ビシッ! ビシッ!

ディエス「グ……『速い』……!!」

『足跡』は次々とディエスの体に食い込んでいった。

墳上「養分を吸い取れッ、『ハイウェイ・スター』!!」

ズギュン! ズギュン!

無数の足跡はディエスの体をほとんど覆いつくした。

ディエス「なるほど、この感覚……『養分を吸い取る』……か。力を奪うという点では我が能力と似ているか……。」

墳上「ブツブツしゃべってんじゃねー、さっさとくたばりやがれ!!」

ディエス「だが……圧倒的ではないな……!」
 
体中から『ハイウェイ・スター』に力を奪われているはずのディエスだったが、ゆっくりと墳上に向かって歩き始めた。

墳上「何……!立っている事さえできねえはずなのに!!」

ディエス「『ミレニアム・チョーク』…………私は常に血液の流れを強化し赤血球による酸素供給を加速する事で、常人の4倍以上の体力を持っている。

     『たかが養分を吸い取る能力』……私の足元にも及ばないッ!!」

ガシッ!!

ミレニアム・チョークは墳上の首をつかんで持ち上げた。







墳上「がっ、しまっ………」

ディエス「墳上裕也よ、私から逃げ出さず立ち向かった勇気を讃え、貴様を我が能力によって葬ってくれよう。」

墳上「ぐ……く……」

ディエスの体を覆っていたハイウェイ・スターはすべて消えていた。

ディエス「私が自らにかけている『赤血球の酸素供給の加速』……これの反対は何かわかるか?

     赤血球の比率を減少させ、酸素の供給を止めると……『細胞は疲労する』。」

墳上「な………っ……あっがっ…………」

ディエス「どうだ、わかるか?休息に全身の力を奪われる感覚は?貴様は今、筋肉も内臓も脳までも、全身が疲労困憊に襲われている。」



ドサッ

ミレニアム・チョークは墳上の体から手を離し、墳上の体はアスファルトの地面に崩れ落ちた。

墳上「うぐ……ぐ……」

ディエス「そして、『赤血球の比率を下げた影響』は、それだけに及ばない。」

墳上(なんだ……急にめまいが………)

墳上「うぷっ……うぶおぅええええっ」バチャバチャ

墳上は地面に倒れたまま、胃のなかのものをすべて吐き出した。

ディエス「減った赤血球の変わりに、『白血球が増えたのだ』。貴様に医学の知識があるとは思えんから教えてやろう。

     白血球には血液中の病原菌などの異物を排除する役割がある。しかし、必要以上に白血球が増えてしまうと

     白血球は異物だけに及ばず赤血球までも食いつぶすようになる。

     養分や酸素を運ぶ赤血球は数が増えず、白血球の割合がどんどん増えていく悪循環……所謂『白血病』。」

墳上「ぐえっ………ごほっ……!」

ディエス「……といったところで貴様には聞く気力も残ってはいないか。

     この裏路地では朝まで見つかることもないだろう。貴様はもう助からない。苦しみながらのたれ死ね、墳上裕也。」



そう言ってディエゴ・ディエスは墳上を残して裏路地を去っていった……。




――午前5時。

裏路地にいるのは、すでにうごかなくなったホステスと、墳上裕也だけだった。

墳上(ちくしょう、体が寒い……『ミレニアム・チョーク』だと?何が……何がおきてんだ?この杜王町に………。)

墳上は地面にはいつくばったまま顔を上げた。空はしだいに明るくなり始めている。

墳上(助け……助けか……。俺が、『用心深い性格』でよかったぜ……。)



ブロロロロロ…………

遠くで、バイクのエンジン音が聞こえる。

墳上(ヤツに首根っこをつかまれたとき、俺は苦しくて『ハイウェイ・スター』を解除したんじゃあない。

   ある場所に……『ハイウェイ・スター』を発現させたんだ。俺のスタンドは遠距離型だからな……。)



キキィッ!

バイクが墳上のいた裏路地に近づき、止まった。

そして、足音が近づいてくる……。



武田陸「……先輩ッ!何があったんですか!!」

墳上「よお、陸………来てくれて、感謝するぜ。」

陸は墳上裕也の2コ下の後輩だった。その上、バイク乗りを趣味とする墳上は陸と親交があり、陸のスタンドのことも知っていた。

墳上は『ハイウェイ・スター』を武田モータースに姿を現したのだ。ハイウェイ・スターが眠っていた陸を起こした後、墳上はディエスの攻撃を受けた。

墳上のダメージをフィードバックしたハイウェイ・スターの苦しむ様子を陸は見て、墳上が危険にさらされている事を察知したのだ。

そして、陸は自前のバイクでクラブ「Shooting Star」に向かった。

墳上(これで……助かるかもしれねえな……。)

そして墳上は陸が来てくれたことで安心し、気を失った。






【スタンド名】
ピープル・イン・ザ・ボックス
【本体】
ヴァン・エンド。『ディザスター』の幹部で、変装の達人。

【タイプ】
物質同化型

【特徴】
両手だけのスタンド。全部の指に指輪がはめられている。

【能力】
建物に取りつき、その建物の空間を外の世界から切り離す能力。
外からは建物内で何が起こっても見ることもできないし、関心も持たなくなる。
その建物に行こうと思っていた者はスタンドが発動した瞬間にその目的を忘れるか別行動をとることになる。
建物内にいる者は外界との関係を断たれ、外に出ることはできないし、連絡をとることもできない。
スタンドが解除された時、「建物の状態」はスタンドを発動した時の状態に戻る。本体は建物の中にいる必要はない。
警察が『ディザスター』のシッポをつかめないでいるのは『ディザスター』の作戦を秘密裏に行うことと、
作戦を終えたメンバーの雲隠れのためにこのスタンドが一役買っているからである。

破壊力-なし
スピード-なし
射程距離-A

持続力-A
精密動作性-なし
成長性-C






母親「……………ちゃん……紅葉ちゃんッ!!」

少女「……はっ……マ、ママ!!」

少女が目を覚ますと、周りには粉塵と黒煙が舞い、あちらこちらで大きな炎があがっているのが見えた。

そのとき、少女は自分が身動きがとれないことに気づく。

自分の足元をみると、母親と自分の脚に巨大な瓦礫がのしかかっていて、力を入れることさえできなかった。

少女「うわっ、うわああああああああああああ………」

痛みと恐怖に耐えかね、少女は大声で泣き出した。母親がそばにいても、こわくてこわくて仕方がなかった。

少女はそれまでの人生で初めて死を想った。

少女「がほっ……がほっ……」

粉塵と黒煙が少女の肺を襲う。すぐに逃げなければ呼吸ができなくなる。しかし、動く事ができなかった。

少女はめまいがするようになり、意識が朦朧となった。




――――だれかきて、たすけて――――




そう、少女が祈った次の瞬間、黒い服を着た男が目の前に現れた。

*「クレイジー・ダイヤモンド!!」

クレイジー・D「ドラアアアアアアアアアアッ!!!」



少女の意識はここで途絶えた。





2000年12月11日、カメユーマーケット二階のフードコートで、ガス爆発が起こる事故があった。

すでに老朽化がすすんでいた建物が崩れ、多くの客と従業員が巻き添えになった。

しかし何百人もの人がいたにもかかわらず、死者はゼロ。怪我人もほとんどいなかった。

救助された人の中には、「2人の高校生が助けてくれた」という人がちらほらいたが、

この高校生が誰であったのかはわかっていない……。

倒壊したカメユーマーケットはその後再建され、現在の5階建てとなった。







C・Rと戦った日から1週間が経った。

その間、紅葉たちは小道の屋敷からは一歩も外へは出ていなかった。

もちろん、『ディザスター』に襲われないために。

しかし、そうしている間にもディザスターの侵攻は確実に広がりつつあった。



TVニュース<……では、次の話題です。今日の明け方未明、杜王町の飲食店『クラブ Shooting Star』で働く尾栗千代子さんが

    店の前で遺体で発見されました。尾栗さんの胴体には何ものかで貫かれたような穴が空いており、警察は殺人事件とみて捜査を進めています。

    また、この店の店主『墳上裕也』さんも行方不明となっている事から、事件に何らかの関係があるとみて、

    同時に墳上さんの捜索もはじめています……。>

紅葉「……………」

テレビの前で紅葉は頬杖をついて黙ってテレビを眺めていた。誰の目にも不機嫌である事はあきらかだった。

その後ろで五代と将棋を指していた九堂がつぶやいた。

九堂「墳上裕也……ってたしかぶどうヶ丘高校の卒業生じゃなかったか?」

五代「たしか……暴走族やってたって人だな。……そら、てめえの番だ。」パチ

九堂「うわっ…………また囲いやがって……いいかげん攻めること考えてくれよなぁ……。」

紅葉「……あんたたち何も思わないの?」

九堂「は?」

紅葉「こんなの、普通の殺し方じゃあない。スタンド……もしかしたらディザスターの連中がやったのかもしれないんだよ?」

九堂「そりゃあ、そうかもしんねーけど……」

五代「ここのところ、杜王町で殺人事件が立て続けに起こっている。俺たちを誘い出そうとしているのかもしれねーな。」

紅葉「誘い出そうとしてるって言ったって…………このまま黙ってるわけにはいかないだろ!」

紅葉は語気を荒げて五代に迫る。

紅葉「無関係の人間が殺されて……アンタは何にも思わないのか……ッ!」

九堂「あ、あのよー紅葉…………」

五代「じゃあ今すぐここを出て、迎え撃とうっていうのか?敵の数だってわからないのに、何の作戦も持たずにか?

   がむしゃらに戦って、一般人の犠牲者が出ないと言い切れるか?それでもしアッサリ俺たちが倒されたら、誰がヤツラの侵攻を止めるんだ?」

紅葉「…………ッ」

五代「………それに紅葉、俺とおまえでは目的が違う。おまえは杜王町を守りたいかもしれないが、俺は弓と矢の男を倒したいだけだ。

   それ以外のことなんか………」

バキッ!

九堂「あっ、紅葉……」

紅葉が五代の頬を殴った。紅葉は唇をきゅっと締め、五代を睨んでいる。

五代「てめえ……」

紅葉「なんだ、女とケンカするつもりなのか?」

五代「手を出したのはてめえだろうが。」

紅葉「ああ゛……?」



零「紅葉ちゃんッ!!」

紅葉「!!」

談話室の入り口には零と、零のかげに隠れてアッコが立っていた。

紅葉「……………」

零「落ち着いて紅葉ちゃん…………」

紅葉「零さん、私ちょっと行ってくる。」

九堂「はぁ!?」

零「ちょ、ちょっと待って!!」

紅葉「大丈夫、犯人捕まえて戻ってくるから……。それで居場所を吐かせればいいでしょ。」

そういって紅葉は談話室から屋敷の玄関に向かい、振り返らずに出て行った。

九堂「はあ……ブチ切れてるよあいつ……。」

零「温子、紅葉ちゃんについていってあげて。」

アッコ「エ……」

零「あなたがついていれば居場所はわかるし、連絡だってつけやすいでしょ?」

アッコ「ア………うん、わかっタ……。」

タタタタ……



零「…………」

五代「なあ、連中の居場所はまだわからないのか?」

零「杜王町の中にいるのは間違いない。だから、ローリング作戦で一軒一軒しらみつぶしに調べてるんだけど、『おかしいの』。

  どこにも見つからないのよ。もう全ての物件は調べたというのに、まるで手がかりもない。

  もはや消去法の段階なのに、あと一歩がつかめないのよ……。」

五代「…………チッ。」

九堂「はあああ~~~………もうスタンドのしわざなんじゃねーの……。」







杜王町の商店街……その中を早歩きで進む紅葉をアッコが追っていた。

アッコ「ネ~紅葉ぁ、まってよー!」

紅葉「あなたは帰ってもいいんだよ、私に関わるとロクなことがないだろうから。」

アッコ「だカラってほっとけないッテー!帰るナラ一緒ニ帰ろうよー!」

紅葉「帰れるわけないじゃない。」

アッコ「ゴダイならたぶんもう気にしてナイってー!ゴダイだってヒドいコト言ったンダからー……」

紅葉「…………違うよ。」

そう言って紅葉は足を止めた。アッコは紅葉の横に立ち、紅葉の横顔を見た。

少しうつむいた紅葉は、目に涙を浮かべているようだった。



紅葉「許せないんだよ……街を穢すディザスターもそうだけど、何も出来ず、ただ見てただけの自分がさ……。」

アッコ「クレハ……?」

紅葉「スタンド能力なんてもの持っててもさ、色々な使い方する人がいるわけじゃない?

   仕事に活かしたり、金儲けに使ったり、ヤツらのように殺しに使ったり……

   私は、『守る為に』……『杜王町を守る為に』使おうと決めたのに……結局、守れてないじゃない。」

アッコ「『守る為』……ニ……。」

紅葉「私は……誓ったのに。『あの人』がいない間、私がこの街を守るって……誓ったのに!」

アッコ「クレハ!」

紅葉「!!」

アッコ「クレハ……わかルよ!……いや、全部ハわからなイカモしれない、でも『守りたい』ッテのはスゴクわかる。

    デモ、焦っチャだめなんダ。クレハは十分戦えテルよ。でもね……」

紅葉「…………」

アッコ「死んだら、なんにもならないんだから……。」

紅葉「…………温子?」

アッコ「ネ、ひとまずは戻ろウ?零さんと一緒に屋敷で調べられるダケ調べて、それカラ戦おう?」

紅葉「……うん、わかった。………ごめんね温子。」

アッコ「じゃあサッサと帰ろ!ア、クレハもアタシのこと『アッコ』って呼んでイーよ!」

紅葉「そう?……じゃあ行こうかアッコ。」

アッコ「お菓子買ッテこう!」

そう笑ってアッコは来た道を飛び跳ねていった。紅葉もフフッと笑ってそれについていく。





…………遠くから銃口が、彼女を狙っていることも知らずに。







バスッ

紅葉「!!!」

ドシャッ!

紅葉は急に足に痛みが走り、驚いて転んでしまった。

足を見ると……ふくらはぎが切れていた。なにかが『かすった』ように。

アッコ「………ク、クレハ!?」

紅葉「な、何が………!!」


ドドドドドドドドドドド………



紅葉のいる位置から200mの距離にあるホテルの一室の窓から、『ディザスター』第三の刺客……西都十三(サイト ジュウゾウ)が倒れた紅葉を見下ろしていた。

西都「あれは一之瀬紅葉……クイーンが出てきたか。もうひとりいるが……とりあえず目標は彼女だ、『フェアウェル・キングダム』。」

F・キングダム「………………………」

フェアウェル・キングダムと呼ばれたそのスタンドは、右手と同化したスナイパーライフルを構え、再び狙撃体制をとる。

西都十三は窓から半身を出して紅葉とアッコを見下ろした。

                  フェアウェル ・ キングダム
西都「おまえたちのいる場所は『告 別 の 王 国』の領地。

   『告別の王国』、その国では梟でさえ空へ飛び立つ事は許されない。

   『告別の王国』、その国では闇から矢が突き刺さり、

   『告別の王国』、その国では矢が黄泉への切符となる。

   抗うな、魔弾の射手を疑うな。すべての矢を受け入れろ。『フェアウェル・キングダム』!!」

ジャギャッ!!

フェアウェル・キングダムが銃弾をリロードし、スコープを覗いた。

西都「一之瀬紅葉、『良き旅を』。」






【スタンド名】
フェアウェル・キングダム
【本体】
西都十三(サイト ジュウゾウ)

【タイプ】
自動操縦型

【特徴】
スコープのような目で、右腕はスナイパーライフルに同化している。

【能力】
簡単に言えば『持ち運びできる狙撃兵』
スタンド自体は本体が指定したターゲットを狙撃するだけ。
右腕のライフルの性能もスタンドの狙撃の腕前も一般的な軍隊の狙撃兵と同じレベル。
自動操縦型だが、精密動作性は高く、本体の意志でスタンドを出し入れできる。
しかし、知能性は低く、スタンドは発動位置での狙撃体制からは全く移動しないし、
ターゲットの変更をするには本体が直接スタンドに伝えなければならない。
だが、狙撃をスタンドが自動で行うことで、本体が周囲を見回していつでもスタンドを出し入れできるということの意義は大きい。

破壊力-C
スピード-C
射程距離-A

持続力-A
精密動作性-A
成長性-C






紅葉「クッ……!」

商店街のど真ん中で紅葉は膝をついた。買い物中の大勢の住人が紅葉のほうに視線をうつす。

紅葉の傷を見た人の悲鳴とどよめきが混じりあう。

アッコ「クレハ、大丈夫!?」

紅葉の脚からは血が流れ出ている。しかしそれほど傷は深くないようだ。

紅葉「だ、大丈夫………とりあえずは身を隠そう。アッコ、肩貸して。」

アッコ「ウ、ウン!」

アッコは紅葉の体を支えて建物の陰に隠れた。

紅葉「近くに敵らしき人はいる?」

アッコ「えト………ううん、武器を持ってイル人モ、スタンドを出しテいる人モ見当たらなイ。」

紅葉「…………ちくしょう。」

零<待って、温子。>

アッコが腰につけた無線に零からの通信が入った。

アッコ「レイさん?」

零<今あなたの視覚カメラからこっちでも同じ映像をみているわ。温子、紅葉が攻撃を受けた場所の地面を見てみなさい。>

アッコ「アレハ……小さな穴が空いてる?」

零<まわりにスタンド使いはいないのね?武器を持った非スタンド使いがいることも考えられるけど、

  あなたたち2人のスタンド使いに勝てる見込みは薄い。……おそらくは銃による狙撃よ。>

アッコ「狙撃!?コンナ街中で?」

紅葉「銃くらい、奴らのこと考えたらあってもおかしくはない。サイレンサーを使っているならここからじゃ銃声も聞こえない……。」

アッコ「じゃあ、身をカクして正解だっタネ……。」

紅葉「あそこで私を上から狙える場所といったら……あのホテルか。いこう、アッコ。」

零<だめです、すぐに戻りなさい!それに同じ場所にずっといるとは限りません。>

アッコ「そうダヨ、クレハ。レイさんに帰り道を監視シテもらいながら……」



紅葉「イヤだ……。」

アッコ「クレハ!」

紅葉「私達がここで身を隠したらどうなる?……私達をおびきだそうとヤツらは関係のない人たちを殺してしまうかもしれない。」

アッコ「デモ………」

紅葉「零さん、聞こえてる?あなたは杜王町を守るためにディザスターを追い出すことが目的なんでしょ……」

零<………ええ、私も紅葉と同じ。杜王町を守る為にディザスターをこの町から……>


紅葉「私は……少し違う。ディザスターどうこうじゃあない。『杜王町を守る』……そのシンプルな一つだけこそが私の戦う目的なんだ。

   後にディザスターを倒す為に今退くことは……杜王町の人たちを危険にさらす事は、私の目的にそぐわないッ!!」


紅葉は傷の痛みに耐えながらヨロヨロと立ち上がった。

紅葉「私は突撃部隊でいい、特攻隊でいい、ただの一発の砲弾でいい……それで街の人を一人でも守れるなら。」

アッコ「…………クレハ。」

紅葉「ごめんねアッコ。たしかに死んだらなんにもならないかもしれない。でも、私が生きる為に誰かが死ぬんなら意味がない。

   私の為に死んでいい命なんかない。」



零<…………わかりました、紅葉。こちらで敵を探してみます。

  スナイパーライフルのような荷物……解体してもアタッシュケースくらいの大きさの荷物を持っている人間ならそう多くないはず。>

紅葉「ありがとう、零さん…………痛ッ!」

アッコ「クレハ……撃たれたのガ私だったら良かっタのニ……私は痛ミを感じないから……。」

紅葉「大丈夫よアッコ……。とりあえず、私達はホテルの周辺を探そう。監視カメラのない場所だってあるだろうから。」

アッコ「ウン、でも無理はしないでネ。」

紅葉「わかってる。脚の痛みも慣れてきたし……一人で歩けるよ。」


紅葉とアッコは建物の陰からそのまま路地裏を通ってホテルの方角へ向かった……。

紅葉(こんなとき……きっとあなただって逃げずに立ち向かうでしょうね…………東方さん。)





零にはひとつ誤算があった。それは紅葉を狙った敵はスナイパーライフルを持っていなかったということ。

しかし、敵がスナイパーライフルと同化したスタンドの使い手だと想像する方が難しいだろう……。

ホテルの正面入り口のカメラはホテルから西都が出てくるのをしっかりととらえていた。

零もそれを屋敷のモニター室で見ていたが、その人物が敵だと気づくことはできなかった……。


2010年3月  今から3ヶ月前……



紅葉「ハァッ、ハァッ、ハァッ……。」

紅葉は深夜の住宅街を走っていた。……見知らぬ敵に追われて。

男「待ちやがれ『一之瀬紅葉』!逃げてもムダだぜえ~~!!」

紅葉「なん……なのッ!私が何したっていうのよ!!」



紅葉が模と出会う2ヶ月前……紅葉は弓と矢の男によってスタンド使いになった男に命を狙われていた。

彼女にとってはじめてのスタンド使いとの戦いである。


紅葉「……ッ!行き止まり……!!」

男「ハハッ、つかまえたああ~~!!」

男のスタンド「シャッシャアアア~~~~!!」

紅葉「ブ、『ブラック・スペーd……」

ドゴオォン!!

紅葉がスタンドを出す前に男が自身のスタンドで紅葉の腹を殴った。


紅葉「がはっ……ぐ…………!」

男「おいおい、おまえホントにスタンド使いかよ?全然使いこなせてねえぜ!」

男は倒れた紅葉に馬乗りになった。



紅葉「はっ……はっ……」

男「悪いナァ、おまえを倒せば俺の望む事なんでもかなえてくれるってあの人に言われてたんだよ。」

紅葉「……た……たすけ………」

男「ハハハッ、なぁにいってるかぜぇんぜんわかんねえぇ!!ぶっ殺ぉぉぉおおす!!」



紅葉が死を覚悟した瞬間……男の背後にもうひとり……大きな人影が現れた。

???「おめー、なにやってんだぁ?」

男「ッ!?」

そして、男が振りかえるやいなや……

???「『クレイジー・ダイヤモンド』!!」

クレイジー・D「ドラァァッ!!」

ドゴォォォオオン!!!

男「ぶぐシェ―――――――ッ!!」



クレイジー・ダイヤモンドの拳にふっ飛ばされた男は民家の塀に頭を打ちつけて気絶した。

紅葉「…………」

紅葉は目をぱちくりさせて急に現れた男を見ていた。

???「あーもしもし……はい、オレッス。通報にあった男見つけました。…………はい……了解ッス。」

紅葉「……………クレイジー・ダイヤモンド?」

???「大丈夫か、おじょーちゃん。」

紅葉「………は、はい。」

???「どうやらアンタ、スタンド使いみてーだな。自分の身を守るには自分のスタンドくらい使いこなせてたほうがいいぜ。」

紅葉「あのっ、あなたは………。」


???「ただの町のおまわりさんッスよ。……そんじゃ気ィつけて帰んなよ。」


そういって男は気絶した男を抱えて去っていった……。



紅葉「あの人もしかして…………」



紅葉はその後、自分を助けたのは杜王町交番に勤める巡査『東方仗助』であること、

そして自分が幼いころ、カメユーマーケットの爆発事故に巻き込まれたときに助けてくれたのも東方仗助であったことを知った。

しかし紅葉の命を二度も救ったその男は、紅葉がお礼を言いに訪れた時にはすでに他の町の交番へ異動になっていた。




紅葉は街を守るスタンド使いの警察官……東方仗助の生き方にあこがれを抱くようになった。

それからというもの、彼女にとって『ただそこにいるだけ』だったブラック・スペードは、彼女にとっての『誰かを守る力』になった。

東方仗助の『クレイジー・ダイヤモンド』が、紅葉を、街の治安を守っていたように……。



紅葉「…………」

アッコ「……ドウ?」

紅葉とアッコは建物の陰からホテルの入り口付近を監視していた。

紅葉「ここからはそれらしい人間は見えないわね。道路に出てみればもっとよく見えるんだけど。」

アッコ「アブないよ、遠くから狙ってルかもしれないんだから……。」

紅葉「く………関係のない人たちが銃口を向けられてると思うとどうも落ち着いていられない……。」

アッコ「……レイさんもまだ見つけられナイっテ。」



紅葉「…………いいこと思いついた。『ブラック・スペード』!」

紅葉は自分の側にブラック・スペードを発現させる。


紅葉「私が姿を現さなきゃいいんでしょ?それなら……『スタンド』で見ればいい。」

アッコ「エ?でも、そんナことしたらますます目立ッテ……あ!」

紅葉「そう、『スタンドはスタンド使いにしか見えない』。狙撃手からは見えないし、

   もしブラック・スペードに気づく人間がいればほぼ間違いなく敵のスタンド使いだからね。」

アッコ「ナルホド……」



ブラック・スペードを通りに立たせて、周りを監視する。

いつもと変わらぬ杜王町の風景……通行人はまばらだが、かえって探しやすかった。

周りに見えるのはホテルのほかには民家ばかり……あとはコンビニとスーパー、オフィスビルくらいだった。

紅葉「……だめね。別の場所に行ったか、さっきの一発で仕留められなかったから今日は引き上げたのかな。それはそれでメンドウだけど。

   もしいるとすれば……住宅地の空き家とか?」

ブラック・スペードは住宅が立ち並ぶ方に視線を向けた。




アッコ「…………!」



そのとき、零も紅葉も気がつかなかった誤算に、アッコが勘付いた。

非スタンド使いの狙撃手なら、ブラック・スペードに気づけない。

スタンド使いが近くにいるならブラック・スペードが見つけられる。

しかし……スタンド使いが遠くから狙っているとしたら?

スタンド使いがわざわざ一般人に見つかる恐れのある狙撃銃は使わないだろう。

ただ、もし狙撃する事のできる遠距離タイプのスタンドだったら?

これまで遠距離向けのスタンド使いは現れなかったため、零も紅葉もそのことに気づけなかったが、

アッコはいち早く気づくことができた。

アッコは思った。……それがもし、正解だったなら?




銃口が、はるか遠くからブラック・スペードの後頭部を狙う――――

ブラック・スペードは住宅街のほうを注視している。すぐに動く事はない。

そして、『フェアウェル・キングダム』は引き金を引いた……







バスッ


紅葉「ッ!!!」



紅葉の左腕……肘の下の部分を銃弾が貫いた。

正確には、ブラック・スペードのだが。

紅葉「うああああああああああっ!!!」



ブラック・スペードに攻撃は命中した……が、フェアウェル・キングダムはうかない表情を見せた。

『後頭部を狙った狙撃』が『左腕に当たってしまった』……。

……ブラック・スペードの背後に、林原温子が『ファイン・カラーデイ』を持って立っていた。




アッコ「………もう少シ早く気づけば……ごめんクレハ。」

『狙撃銃のスタンド』の可能性に気づいたアッコは、ブラック・スペードの背中を守ろうとしたが十分には間に合わず、

『ファイン・カラーデイ』の剣先で銃弾をわずかに逸らすことしかできなかった。

銃弾が頭を貫く事はなんとか避けたものの、逸れた銃弾はブラック・スペードの左腕に当たってしまった。



腕の小さな穴からは、赤く粘ついた血が流れ出ている。手は震え、力が入らない。

紅葉はブラック・スペードを見て、「銃弾がスタンドを貫いた」ことを認識した。

紅葉「まさか……『銃のスタンド』!?」

アッコ「ウン……確信した。そしテ、あっちの方向カラ撃たれた……レイさん!」

アッコは無線で零を呼び出した。

零<ええ……銃弾はブラック・スペードの背後、あのオフィスビルから撃たれた!>

アッコ「アタシがあのビルに行ク!紅葉は隠れテテ!」

零<オフィスビル内のカメラの映像はすべてつないである。温子、急いで!>

アッコ「ナビゲートお願イね!」

零<了解!>

アッコはオフィスビルに向かって走り出した……。







紅葉「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

紅葉は建物に寄りかかり、右手で傷を抑えている。

紅葉「悔しいけど、ここはアッコにまかせるしかないか……。この傷じゃあまともに戦う事もできない………ちくしょう。」

紅葉はゆっくりと体を動かして路地裏に入ろうと振り向くと、道の奥で一人の男が立っていた。男は紅葉に問いかけた。


???「おまえの仲間は、狙撃手のほうに向かったな。」

紅葉「!!……あんたは誰?」

西都「西都十三……『ディザスター』の人間だ。」

紅葉「ディザスター……アッコ!!」

西都「無駄だ。もう声も届かぬところへ行っている。」

紅葉「クッソ………今になって現れたということは……」

西都「そうだ、おまえたち二人を分断させるのがはじめから狙いだったのさ。狙撃手がしとめるのがベストだったがな。」


西都は腰からナイフを抜き、ナイフを後ろ手に半身になって構えた。




西都「一之瀬紅葉、貴様には仲間に別れを告げる時間さえ与えない。……たった一人で死ぬのだ。」


紅葉「………結局私はまた一人か。腹据えて戦うしかないか……『ブラック・スペード』!!」




紅葉はブラック・スペードを発現させる。

右腕にダメージはあるものの、戦えるだけの力は十分残っていた。

紅葉(ナイフを持った……?狙撃手とは別のスタンド使いじゃあないの?もしかして非スタンド使い……)

西都「『ブラック・スペード』か……『衝撃を操作する能力』だったか……。」

紅葉(いいえ、スタンドが見えている!間違いなくスタンド使い……ではなぜ?)



西都「一之瀬紅葉……おまえが考えている事はわかる。『私がどんなスタンド使い』か……だろう。」

紅葉「……………。」

西都「先に言っておこう、私のスタンド能力が、『狙撃手』なのだ。おまえを狙う自動操縦の狙撃手はオフィスビルにおいてきた。

   つまり……私はスタンド使いではあるが、今スタンドを使う事はできないのだ。」

紅葉(何を言っているの?……わざわざ『今スタンドが使えない』なんて……)

紅葉「それはご親切にどーも。それなら気兼ねなく戦えるわね。」

西都「……………」



このとき、紅葉は西都の言葉のワナに、思考のワナにかかってしまっていた。

紅葉(わざわざ自分にとって不利な情報を口にするはずがない。……狙撃手は別のスタンド使い。こいつは……別に能力を持っているッ!)

西都(私はただ本当のことを言っているだけにすぎない。しかし、敵はこの言葉によって逆の事を考えてしまうものだ。

   私が別にスタンド能力をもっているとな……。まあ、信じても信じなくてもどちらにせよ私の勝ちに変わりはない。)


西都「遠慮はいらない。……私はスタンド無しでも戦えるからな。」

西都(そして、これも本当のこと。)







杜王町駅前に建つオフィスビル……その1階の正面入り口からアッコが走って入ってきた。

*「な、なんだ……?」

*「高校生……あんな急いでどうしたんだろ。」

アッコ「レイさん!」

零<待って……そのビルに空きテナントはどれくらいある?>

アッコ「えと………」

アッコはエレベーター横の入居事業所の書かれたプレートを眺める。

アッコ「……5階ト8階にアル!」

零<わかりました。それでは階段で上がってそこを調べてきて。敵らしき人間がエレベーターに乗ったらこっちでエレベーターを止めるから!>

アッコ「了解ッ!」


ダダダダダダ……

アッコ「5階ッ!」ガチャッ

アッコは階段から5階のフロアに入り、ひとつひとつの部屋に入る。

ガチャッ!

アッコ「この部屋ニハ……何もナイ!」

ガチャッ!

*「うわっ!なんだ急に!」

アッコ「しっ、失礼シマシタ!」

アッコ(人がいるところにはイナイ、イルはずがナイ……。)






ビル内を走り回ったアッコは再び1階に戻ってきた。

零<………どうでしたか?>

アッコ「ダメだ……ドコにもいない……。」

零<狙撃手はオフィスビルにいるのは間違いない……。だけど空き部屋にも他の一目のつかない場所にもいない……あとは事業所が使っている部屋だけ……>

アッコ「ディザスターが偽装して借りタ部屋トカじゃナイの?」

零<いいえ、それはありえない。どれもディザスターが来る前からある事業所ばかり……。

  それに、こんな表に出る場所にディザスターの情報をおくようなマネはしない。>

アッコ「だったらイッタイどこニ……」

アッコは再び入居事業所のプレートを眺め、零はモニター室でオフィスビルのカメラ映像を見続けた……。







紅葉と西都は対峙したまましばらく動かなかった。

西都は後ろ手にナイフを構え、刃先を紅葉に向けたまま、低い姿勢をとっている。

一方紅葉はブラック・スペードを前に出し、出方をうかがっていた。

紅葉(相手の能力もわからないままで、突っ込むわけにはいかない。銀次郎の能力のように、動きを封じられたら終わり……。)

西都(大方、私の能力が何かあれこれ思考をめぐらせているところだろう。

   そういうとき向こうが先手を出さない事は私の傭兵時代の経験が知っている。ならば……)



ドシュッ!

西都の後ろ手に構えていたナイフの刃が、急に紅葉めがけて飛び出した。

紅葉「ッ!」

不意をつかれたが、紅葉はかろうじてブラック・スペードでナイフの刃をはじいた。

しかし、次の瞬間には西都はすでに自分の懐まで迫ってきていた。


ドゴッ!!

紅葉「……うグッ……!」

西都の蹴りが紅葉のわき腹をとらえる。……が、なんとかブラック・スペードの腕でガードすることができた。

紅葉「刃が飛んできた……?」

西都「『スペツナズナイフ』だ。武器にすこしでも興味があればだれでも知っているような武器だが、実戦では相手の意表をつくことはたやすい。」

紅葉「ドラァァッ!!」

ブラック・スペードは西都の顔面めがけて右の拳で突く。

紅葉「私のスタンドはAクラスのパワーだ!スタンドでなきゃガードは不可能!」

西都「そうだ、ガードは不可能……だが!」バッ!

西都は後ろにステップし、さらに向かってくるブラック・スペードの腕を、横からすばやく押した。

横からの力に促され、ブラック・スペードの拳は西都の顔面をはずした。



紅葉「な…………」

西都「『パリー』だ。敵の攻撃はガードするか、よけるかだけではない。

   攻撃に力を加えて逸らす事は相手のパワーに関係なく容易な事だ、私にとってはな。」

紅葉「くっ………なら、これでどうだ『ブラック・スペード』!!!」

ブラック・スペード「ドラララララララララララララ!!!」

ブラック・スペードは西都に向けラッシュを放つ。しかし……



カッ!!

紅葉「ぐぅッ!!」

西都の真上から激しい閃光が放たれ、紅葉は目がくらみ攻撃を止めてしまった。

西都「『閃光弾』!音も出すタイプもあるが……私にも影響はあるし、一般人に気づかれても面倒だしな。」


ドゴォッ!!

紅葉「がっ………は……!」

西都はうずくまる紅葉の腹を強く蹴った。

紅葉は呼吸ができずに苦しみ、そのまま地面に倒れこんだ。

西都「どうだ、言ったとおりだろう?私はスタンド無しでもここまで戦える。……君達はアマチュアなんだ。

   戦いというものを知らなすぎる。」

紅葉「ヒュー………ヒュー……」

紅葉はお腹をおさえて立ち上がった。まだ紅葉の闘志の炎は消えていなかった。

西都「……だが、スピリットはあるようだ。それでこそやりがいがあるというものだ。」

西都は再び腰からナイフを抜き取った。さっきのナイフよりも刃渡りが長く、不気味だった。

今度はナイフを前に構え、紅葉に向かっていった。

西都「ハァッ!!」

西都はナイフを前に突き出したが、紅葉はバックステップでなんとか攻撃をよけた。

紅葉は次の攻撃に備えたが、西都はナイフを構えたまま、それ以上向かってこなかった。

紅葉「…………?」

西都「出たな……『路地裏から』。」


紅葉は西都のナイフを後ろによけた時、それまで戦っていた路地裏から道の前に姿を現してしまった。

西都「さあ、おびき出したぞ狙撃手……『フェアウェル・キングダム』。

   一之瀬紅葉……おまえが立っているのは『フェアウェル・キングダム』の領地だッ!」

紅葉(しまった!私を狙う狙撃手が…………!!)









一瞬、紅葉は身構えてしまったが、オフィスビルからの狙撃はなかった。

西都「…………『フェアウェル・キングダム』?」







オフィスビル9階、『(株)織星建設 会議室』

アッコ「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」

フェアウェル・キングダム「……………」

シュウウ…


アッコの『ファイン・カラーデイ』に斬りつけられたフェアウェル・キングダムは煙のように消えていった。

紅葉を狙撃する事だけが目的のフェアウェル・キングダムは、狙撃の体制をとったままアッコの攻撃をまともに喰らったのだ。

大きな窓のある会議室には、会議中の会社員達が目を丸くしてアッコを見ていた。

アッコが会議室に入ったとき、中にいたのは会社員達と、狙撃手のスタンドだけだった。


零<木を隠すには森の中、狙撃手を隠すには人目のつかぬ森の中。スタンドの狙撃手を隠すには……スタンドが見えぬ人の中……

  たしかに、スタンドの狙撃手を置くなら、それが見えぬ人たちの中がベストでしょうね。>


アッコ「…………」

アッコは円卓に座る会社員達のほうを向いて、『ファイン・カラーデイ』を発現させた。

会社員達は目を丸くさせたまま動かない。

アッコ「……この人たちの中ニハ、『ファイン・カラーデイ』ニ気づク人ハいない……レイさん、この狙撃手『自動操縦』だ。」

零<………ということは、本体が紅葉のところにいっているかもしれない!急いでもどって温子!>

アッコ「ハイ!」

そしてアッコは猛スピードで会議室をあとにした。

嵐のように突然やってきて、嵐のように去っていった少女に会社員達はあっけに取られていた。







西都「……『フェアウェル・キングダム』は倒されてしまったか。」

紅葉「『ブラック・スペード』!」

紅葉は通りから路地裏の西都に向けてブラック・スペードの拳を振り下ろした。

西都は後退して避け、紅葉の攻撃はかわされた。



西都「…………!」

西都は紅葉に背を向けて走り出した。

紅葉「逃げる気かッ!!」

紅葉も西都のあとを追って走り出した。傷は痛んだが、こらえて走った。

紅葉(ここで逃がすわけにはいかない……ディザスターの人間を野放しにしてはおけない!!)




振り返らず、人っ子一人いない路地裏を西都は走り、紅葉はそれを追っていた。

商店街のはずれの方になると、道のスキマからわずかに見える表の通りにも人は見られなくなった。




西都は廃業して空き店舗になったバーに逃げ込んだ。

紅葉はそれを見逃さず、続けてバーの中に入った。


そして紅葉のはるか後ろにもうひとり……それを見ていた人物がいた。







西都「…………」

西都はバーのフロアの中央で足を止めた。

紅葉「振り切ってここに隠れれば撒けると思った?……追い詰めたよ。もうヘマはしない!」



西都「………………………ブツブツ」

紅葉「?」


西都「……………はぁっ!!」

西都は急に踵を返し、紅葉に飛びかかった。

紅葉「ッ!『ブラック・スペード』!!」

紅葉はブラック・スペードをくりだし、下から拳を振り上げた。

しかし西都は吊り下げられたライトにつかまり、攻撃をよける。

そのまま紅葉の背後に飛び、回し蹴りを放つ。



紅葉「………ッ!」

かろうじてガードしたものの、勢いで体をのけぞらせてしまう。

すかさず西都はナイフを手に取り、紅葉に向けて投げる。


紅葉は体をそらせてよけたが、バランスを崩して仰向けに倒れた。



そして西都は紅葉が立ち上がろうとするうちに近づき……



ドゴォオオッ!!



腹に深く拳を突き入れた。






紅葉「がは……っ……!」ドサッ

紅葉は膝をつき、そのまま倒れた。



紅葉(つ……強すぎ……さっきの路地裏の時よりも圧倒的だ……。)


西都「言っただろう、一之瀬紅葉。『私はスタンド無しでも戦える。』私にとってスタンド能力なんぞは私の補助に過ぎない。

   路地裏では手加減をしていたんだよ。おまえが大声で助けを呼び、周りの人間を集めるのを防ぐ為にわざと善戦を演じていたのだ。」

紅葉「そん……な……」

西都「手負いのおまえが私と張り合えるとはとんだ思い上がりをしたものだな。『追い詰めた』だと?それはこっちのセリフだ。」


紅葉は這いつくばりながら窓のあるほうに顔を向ける。

紅葉「アッ……コ……だれ……か…」

西都「残念だが、ここに助けは来ない。何せここには私が誘導したんだからな。」





紅葉は西都の方をふりむき、戦慄する。


西都の表情には、情けをかけるとか命だけは見逃すとか、そんな予感は一切感じさせなかった。


手に持ったナイフを自分の体に突き立てる……スタンドによる攻撃でない、あまりにシンプルで現実的な殺し方……急に恐怖がこみ上げた。


西都「予告どおりだ。一之瀬紅葉、貴様には仲間に別れを告げる時間さえ与えない。……たった一人で死ぬのだ。」





一歩一歩、ゆっくりと西都が近づいてくる。

紅葉は恐怖に耐えながら、どうにか攻撃を避けようと西都の動きをじっと見つめる。





もう一歩、また一歩と西都が近づいてくる。

攻撃がくる……それでも紅葉の体は動かない。

西都は、ナイフを高く振り上げた。





――――ダメだ。どうやっても動かない。

紅葉はついに、恐怖に耐えかねて目を閉じた……。







死をも覚悟した刹那、紅葉は時間が止まったような感覚を覚えた。


ぎゅっと目を閉じて、体を硬直させて、もはや彼女にできるのは敵の攻撃を受ける事だけだった。


しかし、敵の攻撃はまだ来ない。時は止まり、ただじっと縮こまっているだけ……そう感じた。




しかし、そうではなかった。遠くで車が走る音、路地裏に通る風がうなる音が聞こえた。


時は動いている。だが彼女は攻撃を受けていなかった。


――――――何が起きた?







紅葉はおそるおそる目を開けた。



……目の前にいるのは、西都ではなかった。大きな……背中。


そして、紅葉の全身に鳥肌が立った。







ああ、そうだ。『あなた』は私が危ない時、いつも駆けつけてくれたんだ。


私が動けなくなった時にも、殺されそうになった時も、あなたは私の前に現れてくれた。


………きっとまた、逢えると思っていた。また、助けに来てくれたんだ。






     ――――いちばん、逢いたかった人――――








あなたが、この街に帰ってきた!

  ああ…………ああ!!  



    ああ!!!











模「『サウンド・ドライブ・セクター9』……!」



西都「な………!」

西都の腕は、杖谷模の『サウンド・ドライブ・セクター9』に止められていた。

紅葉「模ッ!!」


模「紅葉……ただいま。」


西都はセクター9の手を振り払い、後退して距離を取った。

西都「おまえは……杖谷模!バカな……リタイアしたのではなかったのか!?」



模「大丈夫?」

紅葉「ああ……うん、模。信じてた、信じてたよ。

   やっぱりあんたは帰ってきた。仲間を……裏切ったりしなかった。」

模「休んでて紅葉。あとは、僕が戦う。」



紅葉「…………いや、それはダメだよ。」

紅葉は壁にすがりながら、脚に残るわずかな力を振り絞って立ち上がる。




紅葉「『一緒に戦おう』。私はあんたを頼る……だから、あんたも私を頼ってよ。『仲間』なんだから。」



模「……そうだ、そうだったね。僕たちは………仲間だ。」



西都(マズい……一之瀬紅葉はダメージが大きいとはいえ数では2対1……。)






模「さあ、一緒にいこう!紅葉!!」

紅葉「ああ、いこう!模!!」





to be continued...



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