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第六章『いばらの世界』その②

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orisuta

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廃業したバーのホールに3人の男女が立っていた。

一之瀬紅葉、ディザスターのメンバーの西都十三、そして杜王町に再び舞い戻り、紅葉の窮地を救った……杖谷模。

紅葉「ったく……よくも散々殴ったり蹴ったりしてくれたなあ……覚悟しやがれ、今度はこっちの番だッ!」

西都「………ッ!」

西都(クソ……来たのが五代や九堂だったらまだ対処のしようがあったが……『杖谷模』……

   こいつは厄介だ。なにしろ、『能力がまったくわからない』……。)



ディザスターは、首領ディエゴ・ディエスが率いる本隊が杜王町に上陸する前に、

先遣部隊としてキル・シプチルと衛藤清多夏を送り杜王町のスタンド使いの調査をしていた。

その調査によりディザスターが杜王町で確認したスタンド使いは、11年前の吉良の事件に関わっていた者以外では

一之瀬紅葉、五代衛、四宮藤吉郎、九堂秀吉の4人で、いずれもキルの送った刺客(鎌倉銀次郎や三田村盾子など)により能力のほとんどを把握されていた。

その後衛藤により、紅葉と五代の仲を取り持った人物……杖谷模の存在が確認され、衛藤は模の「他人の世界に入門する能力」も知る。

しかし衛藤はその後キルに造反した為に、模の能力まではディザスターには知られなかったのだ。

ちなみに林原温子も模と同様にキルには存在を確認されていなかったものの、本隊の刺客であるレイヴンやC・Rには姿を見られているため

いまとなってはディザスターに存在を知られているが、能力(精神力如何で何でも斬れる剣)までは知られていない。

(もっとも、彼女の場合は能力を知られる事のデメリットはほとんどないのだが。)

そして桐生零は元ディザスターの人間ではあるが、ディザスターにおいて彼女は『死んだ』ことになっており、

今紅葉たちの司令塔として杜王町にいる事もディザスターは知らない。

(在籍時も彼女は『死んでも死なない』能力を隠していたため、ディザスターは能力も知らない。)



即ち、西都は杖谷模の存在は知っていたものの、能力はまるでわからないため未知の敵と同等だった。

その杖谷模と、一之瀬紅葉を前にして西都が取った行動は……


西都「…………!」ダッ!

西都は一瞬で体重移動をしてバーの入り口に向かって駆け出し、外へ出た。

模「逃げるなッ!」ダダッ!

バーを出て路地裏を走る西都を模は追いかけた。







西都は走りながらインカムを取り出し、

西都「本部……本部、応答してくれ!」

西都の呼びかけに、低い声の男が応えた。

???<西都、どうした?君が捕捉したという紅葉は始末できたのか?>

西都「……!あと一歩だったんですが、仕留め切れませんでした。ヤツが、杖谷模が現れました!!」

???<杖谷模だと……!わかった、君は身を隠せ。本来君の任務は監視だ、今回の事で責任を問われる事はないだろう。>

西都「そうしたいんですが、杖谷に追われています。……能力もまだわかりません、応援を要請します!」

???<……わかった、君の位置はGPSで把握している。いますぐ向かおう。>

西都「……感謝します。ですが早……!」

そのとき、西都は何かに足を『引っ張られ』、バランスをくずした。

西都(くっ………何が……!)

西都は自分の足に何かが巻きついているのを見た。それは……『いばら』。


ググッ!

西都「ぐおっ!」

ドタン!

西都は足に巻きついた「いばら」に足を引かれ、倒れた。

西都の視線の先、いばらが伸びている方向には……杖谷模が立っていた。腕にいばらを巻きつかせ、手の甲の上から西都に向けていばらを伸ばしていた。

右手を前にかざし、模は地面に倒れた西都を見下ろしている。……足を怪我していた紅葉も追いついた。


                          ハーミット・パープル
模「サウンド・ドライブ・セクター9『第四』の世界、『いばらの世界』……!」



紅葉(………第四?)

西都「く……くく……それが杖谷模、貴様の能力か?……恐るるに足らないな。」

模「逃げられるものなら逃げて見ろ。このいばらはスタンドだ。ナイフで切る事もできないし、スタンドで引きちぎろうとしても手を傷つけるだけだ。」

西都「触る必要はないッ、『フェアウェル・キングダム』、いばらを撃ち抜けッ!!」

ズダァン!!


模「なッ!」

西都「相手が悪かったな杖谷……!」ダダッ


フェアウェル・キングダムにいばらをちぎらせた西都は起き上がって再び走り出した。

紅葉「模、あいつを追………痛ッ!」

模「く、紅葉!」

紅葉「……大丈夫。ごめん、私がいたせいでアイツ、見逃しちゃったね。」

模「仕方ないよ。今あいつを追ってもし見逃したら、残した紅葉が狙われちゃうかもしれないし。」

紅葉「それより模、今のいばらは……」

模「……ああ、おじいさんに教えてもらったんだ。『ハーミット・パープル』。いばらのスタンドだ。」

紅葉「……そう。ところで、そのいばらに波紋を流してアイツの動きを止めるとかは……」



紅葉の問いに模は少しだけ口を紡ぎ、一言だけ言った。

模「………『できないんだ』。」


紅葉「…………そう。」

模「ごめん…………。」


紅葉「……とりあえず、アイツを追おう。大通りのほうへ行ったから、まだ見つかるかもしれない。」

模「……うん。」

模は紅葉に肩を貸し、大通りへ向かって歩き出した。


紅葉(考えてみれば、セクター9は「ひとつの世界を使っている間はほかの世界を使う事はできない」んだったっけ。

   そういえば「波紋」もセクター9の『第一の世界』……その、『いばらの世界』と一緒にはつかえなかったのね……。)


紅葉は自分の中でそう結論付けた。セクター9の性質上、その結論は間違いではない。


しかし、模の言った『できないんだ』という言葉にはそれとは違う理由が隠れていた。

もっとも、紅葉がそれに気づくことは今はできなかっただろう……。







西都「ハァーッ…… ハァーッ…… ハァーッ…… ハァーッ……」

西都は路地裏から大通りへ出たところに立っていた。

西都は模の『いばら』を『取るに足らない』と言っていたが、再びいばらにつかまってしまえば、

今度は簡単に『フェアウェル・キングダム』に撃ち抜かせたりはしないだろう。

西都は再びつかまらないために必死で走って逃げてきた。


西都(一度大通りに出てしまえば次に行く場所の予測は不可能……杖谷模や一之瀬紅葉に見つかる前に……)

西都は周囲を見渡し、隠れられる場所を探した。

西都(…………あれは!)



九堂「ったくよ~~~どこ行ったんだあのジャジャ馬は……」

五代「脚をケガしていたと言っていたから、あまり動いてはいないだろう。」


西都(なぜ……五代と九堂がここに……!?)


九堂「温子は?」

五代「まだ見つけていないらしい。」


紅葉が商店街で遠くから『フェアウェル・キングダム』の狙撃を受けた時、

アッコからの通信を受けていた零は五代と九堂に加勢してもらうために二人に通信機を持たせて向かわせていた。

紅葉とアッコが分断された時に紅葉の行方がわからなくなってしまったので、零は五代と九堂に紅葉を探すように指示していた。


西都(どうする……殺るか?……いや、ダメだ。ヤツらに私の顔はまだ割れていない。ここは戦いを避けるのが得策……!)

西都は五代と九堂から目を背け、二人から離れようと試みた。


五代「…………!」

九堂「……おい、どうした五代?」

ズンズン

五代は西都のほうへ向かって歩み出した。


西都(こ、こっちへ向かってくる!?)

五代「おい、お前……」


五代は西都の前で立ち止まり、言った。

あきらかに西都に向けて話しかけていた。

西都(何故だ!?敵だとわかったのか?)



五代「ずいぶん息を切らしてるが……どうかしたのか?」

西都(……しまった!だが、疑ってはいるものの、確信はないようだ……。)



九堂「おい、どうしたんだよ。」

五代「なに、気になっただけだ。」

西都(どうする……何か適当に理由つけるか……?いや、ここは確実にこいつらから離れるように答えなければ……)


西都「ああ……大変なんです!路地裏で男が暴れていて……逃げてきたんです!女性を人質に取っているようで……」


五代「…………」ピクッ

九堂「おい、本当かよ!?それってもしかして紅葉もそこに……」

五代「待て九堂。……おまえ、そこに居合わせたのか?」

西都「は、はい……」

五代「案内しろ。」


西都(し、しまった!かえって離れることができなくなった……!)

西都の全身にどっと冷や汗が湧き出た……が、しかし

西都(いや……これはむしろチャンスだ!路地裏に二人を誘い込んで、フェアウェル・キングダムで不意をつき一発でひとり仕留めれば、

   一対一なら私だけでもどうにかなる……!)

西都「こ、こっちです……!」

西都は路地裏の方に入り、五代と九堂のほうを見た。

五代「…………」

西都「ど、どうしたんです?立ち止まって……」

五代「アンタ、体力にかなり自信あるだろ?ケンカだって強そうだ。体つきを見りゃわかる。」

西都「………?」

五代「そんなお前が尻尾巻いて逃げ出したというのに、どうして俺たちに助けを求めた?俺たちゃタダの高校生だぜ。」

西都「…………ッ!」

五代「何か、俺たちが特別な力を持っているようにでも見えたのか?初対面のクセによ。」

五代は『ワン・トゥ・ワン』を繰り出して、拳を大きく振りかぶった。

西都「~~~~~~~~~~!!」

五代「どうした?なにビビッてやがるん……だッ!」

グオオオオオオッ!!

ワン・トゥ・ワンは西都に向けて拳を振りぬいた。







西都「おおおおっ!!」バッ

もはやスタンド使いであることを隠しようがない西都はワン・トゥ・ワンの拳を紙一重でかわした。

五代「九堂!怪しいと思ってたが、やっぱりコイツはスタンド使いだ。」

九堂「……ってえコトは敵かッ!」


西都「ままま、待って下さい!たしかに私はスタンド使いですッ!でも、違うんです!私は彼女を助けようとしたんです!

   でも路地裏にいた男は、もっと強いスタンド使いで……私にはとても太刀打ちできなくて……」

九堂「………?」

西都(………っと、とっさに口に出たがこれなら敵だと確信は得ないハズ……)




紅葉「五代、九堂!そいつが敵だ、つかまえろ!!」



路地裏から紅葉が姿を現した。西都が五代と九堂に足止めをくっていた間に追いついたのだ。

九堂「何ィ!」

西都「クッソ、万事休すか……!」


模「早くッ、つかまえて!」

五代「な………模!?」

九堂「えっ、模か!?」




五代と九堂は予想外の模の登場に注意を奪われ、西都から目を離してしまった。その一瞬のスキに西都は……


*「キャアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


模「!」
紅葉「!」
五代「!」
九堂「!」

西都「テメェらはなれやがれ!!」

西都が通行人の女性の首にナイフを当てて、叫んだ。

まわりの他の通行人からも悲鳴とどよめきが起こり、いっせいに西都のまわりから人がよける。

模「何のつもりだッ!」

西都「見ての通りだ!俺を……俺を見逃さねえとこの女を殺すッ!」

九堂「ふざけんな!逃がしてたまるかよ!」


*「きゃああああああああああああ!!!」

西都は女性の太ももにナイフを突き立てた。


ブシュッ!

西都はすぐにナイフを抜き、再び首にナイフをあてがった。

西都「ふざけてこんなことする人間だと思ってるのか俺を……いいか、テメェらが離れない限りすぐこの女を殺して別のヤツを捕まえる!」

*「痛いぃ……痛いぃ……」

紅葉「くそっ………!」


西都「……今すぐだ……今すぐ背を向けて走れ!俺から見えないところまで走れッ!さもなければ!!!」


そのとき、西都の背後の通行人の中から大きな男が現れた。







???「西都……私の目の前で一般人を巻き込むとはどういうつもりだ?」

西都「ッ!?」

背後からの声に気づき、西都が振り返ろうとした時……

棟耶「『エル・シド』!!」


ドグォオオッ!!

西都「ぶぐふぁあっ!!」

ズタ―――ン!!


西都の顔面を大きな体をしたスタンドが殴りぬき、西都はふっ飛ばされた。



西都「ぐ………く……」


紅葉「だ、誰……?」



棟耶「……もう大丈夫です。……おい、誰か救急車を呼んでくれ!」

西都を殴った男……ディザスターの幹部、『棟耶輝彦』は人質にされていた女性を介抱していた。


西都「な……ぜ………と…う……や……」

紅葉「……『とうや』?」

模「く、紅葉ッ!」

紅葉「!!」


紅葉が倒れた西都から視線を上に向けると、その大男が目の前に立っていた。

棟耶「もう一発だ、『エル・シド』!!」

ドゴォン!!!


西都「が………は……」ガクッ


『エル・シド』と呼ばれたスタンドは西都の腹を殴り、西都の意識を失わせた。

棟耶「私の前で一般人に危害を加えるなと言っていただろう。我々が相手にすべきなのはスタンド使いだけなのだ。」


五代「『我々』……?」

九堂「まさか……こいつもディザスターか!『アウェーキング・キーパー』!!」

アウェーキング・キーパー「シャアアアアアアアアアア!!!」

棟耶「無駄だ……『エル・シド』。」

アウェーキング・キーパーと九堂が棟耶に攻撃を仕掛けようと駆け寄る。

棟耶の『エル・シド』は『両の拳を合わせ』て、待ち受けていた……。




ドォ―――――z______ン!




九堂「!?」

棟耶に殴りかかろうとしていたはずの九堂だったが、気づくと九堂は棟耶の目の前で立ち止まっただけだった。

棟耶「……今は君達と戦うつもりはない。」

棟耶は手で九堂の胸を押しのけた。

九堂「……っととと……なんなんだ?」



五代「模……今、ヤツ(棟耶)は何をしたんだ?」

模「わからない……僕には、九堂くんが『その場でパンチを空振って』から『ヤツに近づいた』ことしか見えなかった。」

五代「ああ、それは俺も見たが……」

九堂(なんでだ?……なんで俺、あんな意味わかんねえ行動をしたんだ?)


棟耶は『エル・シド』の能力で時を『ぶれ』させて、九堂が『棟耶に近づく』行動と『パンチをする』行動を入れ替えた。

結果として棟耶以外には九堂が理解不能の行動を取ったようにしか見えなかったのだ。



九堂「クッソ、まだ……」


棟耶「待て、今は戦うつもりはないといっただろう。私はこの男を回収しにきただけだ。

   勿論、君達全員を殺すことは容易いことだが、さすがに全員を相手にしては周りの一般人にも危害が及びかねない。

   ………それは私の本意ではない。」

紅葉(一般人が巻き込まれるのを嫌ってる……?)

棟耶「今日のところは、西都の不徳に免じて君達を見逃してやる。」

九堂「そ、そんなわけにいくかよ!」

棟耶「強がるな九堂秀吉。君達は命拾いをしたということを忘れるな。」

棟耶は気絶した西都を抱えて模たちに背を向けた。


棟耶「私はディザスターの『棟耶輝彦』。……まあ、君達が生きていればまた会うことになるだろう。」


そう言い残して、棟耶は人混みの中に姿を消した。







五代「…………」

九堂「………ちくしょう。」

紅葉「……………」

模「………」


ディザスターのメンバーをみすみす見逃してしまうなど、これまでの彼らにとってはあり得ないことだった。

しかし、実態のわからないスタンド能力の前に4人は何もできなかった。

悔しさと、もどかしさが、沈黙する4人の心中にあった……。





???「………………………~~~~~~~~~~~~~~!!」

九堂「……なんだ?」

それは叫び声だった。はるか遠くから、明るい声がこだまのように響いてきた。



???「……く~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」



遠くからの声はどんどん4人に近づいているようだった。

そして、声が聞こえるにつれ地響きもともないはじめ……





アッコ「バク~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

ズドドドドドドドドドドドドドド!!!



模「うわああああァァ―――――――――ッ!!!!!」


ズゴ――――――――――――ン!!!!!





大通りの遥か遠くからアッコが走ってきて、模に突進するように抱きついた。

ズガガガガガガガガガガ!!!

アッコ「トラ―――――――――――――イ!!!!!!」

模「いだだだだだだだだっ!!アッコ、痛いよ!!」


アッコ「へへ……だって、遠くカラ模を見つけタとき、すっごく嬉しかッタから……」

模「ごめんね……ただいま、アッコ。」

アッコ「心配シテタンダヨ……」

模「はは……もう、わかったから離してよアッコ……」



五代「おい、模……」

模「あ、五代く……」

五代「そーいや、会うのは何週間かぶりだったな。」

ゴンッ!!

模「いでっ!」

五代は模の頭にげんこつを落とした。

五代「ったく、力を貸してくれって言ったのにどっか行きやがってよ……」

模「ご、ごめん……五代くん……」

五代「……ま、結局帰ってきたことだし、これ一発で許してやるよ。」

模「はは…………これからは、だいじょうぶだよ……。」







九堂「おい、おまえが杖谷模だな?」

模「あ、ええと……九堂くんだったよね。」

九堂「なんだかんだで話すのは初めてだな。」

模「そうだね……そういえば、僕が衛藤に不意をつかれたとき、九堂くんが助けてくれたんだよね。……ありがとう。」

九堂「え?………ああいや、そんなこともう忘れちまったよ……。」

模「でも、いいんだ。ありがとう。」

九堂「へっ………そういや、お前いつ戻ってきたんだ?」

模「えっと、ほんとについさっきだったんだけど、ホテルの前で紅葉を見かけて、ただごとじゃなかったから追いかけたんだ。

  そして路地裏のバーで…………!」

模が話しながら紅葉のほうを見たとき、紅葉は地面に倒れて息を絶え絶えに吐き、苦しんでいるようだった。

模「紅葉ッ!!」

模が戻ってきた事での勇気と、西都と戦う精神力で紅葉は立ち続けていたが、戦いの序盤から紅葉は深手を負っていたのだ。

戦いが終わった今、長い時間保ち続けた集中が途切れたのと、傷からの大量の出血の為に倒れてしまったのだ。


九堂「おい、大丈夫かよ!?この腕の傷なんか、早く治療しねえと化膿しちまうぜ!」

紅葉「ヒュー………  ヒュー………」

五代「『波紋』だ模!四宮のときのように、波紋の生命エネルギーとやらを送れ!!」



……しかし模は紅葉に手をかざすそぶりさえ見せなかった。


模「………アッコ。」

アッコ「ナニ?」

模「……紅葉を『武田モータース』へ、陸さんのところへ連れて行こう。陸さんのスタンドならすぐに治せる。」

アッコ「エ、デモ……リクねえちゃんニハまだ……」

模「………お願いだ。」

アッコ「ウ……………」



模「お願いだよアッコ……僕は、治せないんだ……。」



五代(…………!!)


アッコ「……わかッタ。スグにいこう。」

アッコは紅葉の体をゆっくりと背負った。

アッコ「じゃあ、私は先ニ行ってルから、バクもキテね……。」

模「うん、頼むよアッコ。」


アッコは紅葉の体を揺らさないように、かつ急いで走っていった。

そして模もアッコの後を追って走り出した。


五代「どういうことだ?」

九堂「何が?」

五代(模が自分の波紋エネルギーをもったいぶるようなことはしないはずだ。それなのに……)

九堂「……とりあえず俺たちは屋敷にもどろーぜ。」

五代「……ああ。」



五代(俺の思い過ごしならいいんだが………)







その日の夜……西都十三は窓のない、独房のように狭く暗い部屋で目を覚ました。

西都「………!」

西都は立ち上がろうとしたが、自分の手足がロープで縛られていて、身を起こす事はできたが立ち上がることはできなかった。

しばらくすると暗闇の奥から淡い光が差し込み、棟耶輝彦が入ってきた。

棟耶「目が覚めたか西都。」

西都「棟耶さん……申し訳ありませんでした。私としたことが取り乱して……」

棟耶「そのことならいい。それよりも、杖谷模が戻ってきたのだな?……姿は私も見たが。」

西都「はい……明らかな戦意をもって私の前に立ちました。杜王町を離れたとのことでしたが、やはり奴も我々に対抗するようです。」

棟耶「……能力は、見たか?」

西都「能力………杖谷の能力は、予想していたものよりもシンプルなものでした。私が見た限りでは、『いばらを操る能力』……のようです。

   いばらだけでなく、人型のビジョンも現しました。直接組み合ったわけではないので、パワーやスピードは不明ですが。」

棟耶「『いばら』……だと?」

西都「あと、林原温子のスタンドも見ました。あれは剣のスタンド……詳細は不明ですが、こちらは装備型と思われます。」

棟耶「そうか。」

西都「あと、気になる事が……」

棟耶「何だ?」

西都「私がはじめ捕捉したのは一之瀬紅葉と林原温子の二人です。しかし……私が大通りに出たとき、謀られたかのように五代と九堂に鉢合わせました。」

棟耶「…………。」

西都「あまりに上手く行き過ぎているのです。本隊到着後の我々の見解では、

   一之瀬紅葉、五代衛、九堂秀吉、林原温子の4人が結束したものということでした。

   しかし今回、五代と九堂は一之瀬と林原とは別行動を取っていたにもかかわらず、簡単に紅葉のいた場所の近くに来ていたのです。」

棟耶「……何が言いたい。」

西都「私が棟耶さんに応援を要請したように、この4人の、杖谷を含めれば5人のほかに『司令塔』がいたのではないでしょうか?」

棟耶「……!!」

西都「『司令塔』の存在を考えれば、本隊到着後から一之瀬たちが杜王町内で全く姿を見せなくなった理由にも説明がつきます。

   『司令塔』が用意した隠れ家に4人は潜んでいたのではないでしょうか?」

棟耶「………なるほど。かねてから疑問だったのだ。ディザスターの探査能力をもってしても見つからぬ連中……。

   我々における『ヴァン・エンド』の『ピープル・イン・ザ・ボックス』のように、屋敷ごと隠す手段さえあれば杜王町内にいながら潜伏は可能……。」

西都「しかし、潜伏されていたとしても、おびき出す方法はあります。奴らの家族を人質にとるとか……  

   ……………!!」

西都が『人質』といった時、棟耶の表情が変わった。その怒りの表情は仁王を思わせた。


ドドドドドドドドドド………







棟耶「西都……我々が何故一般人に手を出さないかわかるか?」

西都「…………ッ。」

棟耶「『ディザスター』は反社会組織だが、極悪集団ではない。我々は『無法、無政府、無秩序』の混沌の世界……真なる『秩序』を目指しているのだ。

   力を持たぬ市民……非スタンド使い、一般人を手にかけることなどただの極悪人と変わりはない。

   ボスは闇からの支配を目指しているのだ。支配とは統治。統治とは市民なくしてあり得ない。

   必要の無い殺しはしてはならぬのだ。………まあ、殺しをするためだけに入団している輩もいるようだがな。」

棟耶は『エル・シド』を発現させ、西都の首をつかんだ。

西都「ひっ…………」

棟耶「ボスの思想には私も共感している。私はこの作戦が完遂した後、この国の裏の統治を任されることになっている。」


西都「かっ……はっ……離………」

棟耶「…………」


ドサッ

棟耶はエル・シドの手を離させた。



棟耶「西都……君は私の直属のなかでは実に優秀な部下だ。……この作戦が完遂した後、君はどうするつもりだ?」

西都「はあ……はあ……わ、私は、これからも、ずっとあなたの為、働いて参る所存です。」

棟耶「私とともに、日本に残る……と。」

西都「は、はい!」

棟耶「そうか。」



ドズッ!!


西都「ぐふぇっ……!!」

エル・シドの腕が西都の胸を貫いた。

西都は吐き出した自らの血でおぼれたようにごぼごぼと小さな泡を吹いた。


棟耶「私の目指す統治は、『スタンド使いのいない社会』……スタンドとは、力。中途半端な力が散在すると人は近くの力に群がり、争いが起こる。

   スタンド使いは廃絶されるべきなのだ。……わたしという絶対的な力……抑止力を持つ統治者を除いてな。

   だから君が私についてくるというのなら…………殺すほかないだろう。どうせ君はこの作戦ではもう使い物にならない。」


西都「ぐっ…………ぷ………」

棟耶「イカれていると思うかい?………そんなことはないさ。この国を……杜王町を愛してこそさ。」



棟耶は冷たい床に横たわる西都を残して部屋をあとにした。


棟耶「さあて、杜王町を守りたいと思う力……彼らと私ではどっちが強いかな?」





to be continued...



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