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43話「『恐怖』」の巻

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orisuta

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湾太「『最強のスタンド使い』だってっ!?」

放課後の必府高校に湾太の悲鳴が響く。

JOJO「ああ。この街の住人をひそかに消しているスタンド使いがいる。
     俺たちと一緒にそいつを追ってくれないか?」

湾太「……それはつまり……俺たちの街に、『存在』を消し去るスタンド使いがいて…………
    一緒にきみらと消し去られる危険と隣り合わせの生活を送れ……ってことか?」
JOJO「…………。ああ。確かに危険だ。だが、俺たちの街が
     得体の知れねえ奴に食い荒らされてるんだ。黙って見てられるかよ?」

湾太「……だが断る。」
JOJO「………………。」

JOJO「どうにかならないか?」
湾太「何度言われても同じさ。確かに、俺は君たちに会って随分変わったよ。
    少なくとも襲われたときに自衛できるくらいには「立ち向かう意志」を持てた。」

湾太「でもな、みすみす危険に踏み入れるのは正義じゃあなくて蛮勇だぜ。
    悪いことじゃあないが、賢いとは思えないね。少なくとも俺にはできない。」
JOJO「……そうか……。」

湾太「じゃあな。JOJO。」
JOJO「ああ、じゃあな……。」

  •  ・ ・ ・ ・ ・

――必府高校からほど近い公園

アクター「湾太はどうだった?」
JOJO「……やっぱ駄目だった。まあもともとこういうのには向いてない性格だからな……。」
亜希「仕方ないよ。そもそもこんなの「やろう!」って思う方が異常だからねえ……。」
萌「私はお姉さまの為なら!」

JOJO(確かに異常だな……。)

JOJO「にしても、ついに『ディープ・フォレスト』が「樋口耀壱」の援護に回ったから、
     こっちからも仕掛けようってことで有志を集めてるが…………。」

アクター「B組のメンツ以外に集まってくれたのはミキ先生だけか。ある意味当然だな。」
ミキ「私はあなたたちがいることにも不満なのよ?こーいうのは生徒たちがやることじゃあないし……。」

カズハ「あなただけじゃ、役者不足。」

ミキ「悔しいけど、それもそうねえ……。『存在』が消えちゃうんだもの…………。」
雷鳥「まあ、みんなでかかれば大丈夫ね。」

―― 一方その頃、湾太

湾太「そもそも死ぬ危険を犯して争いごとに首を突っ込むっていう思想がおかしいんだッ!そうだッ!
    俺が悪いわけじゃあないぞッ!断じて違う!俺は悪くない!!」

  •  ・ ・

RS『我ガ主…………。』
湾太「……!?『ロンリースタート』!?何故お前発現して……。」

RS『我ガ主、ソレハアナタガ一番分カッテイルハズダ……。私タチハアナタノ「心ノ痛ミ」ニヨッテ生マレル。』

RS『私ガ発現スルトイウコトハ、我ガ主……。アナタガ何カ「気ニ病ムコト」ヲ抱エテルトイウコトダ。』

湾太「……………………。」
RS『自分ノ胸ニ手ヲ当テテ考エテミルノダ……。ソウスレバ、私ハアナタノ「痛ミノ原因」ヲ破壊スル。』

ド ド ド ド ド ド

湾太「俺は…………。」

湾太「俺は、この街に救う「殺人鬼」を許せないッ!この街を、俺をゲスから救ってくれた
    ミキ先生を傷つける「危険」を見過ごすことはできないッ!」

RS『  』ニヤリ

RS『主ナラソウイウト 分カッテイタ……。「覚悟」ガデキテイルノナラ、
   私ハアナタノ「心ノ痛ミ」ヲ破壊スルッ!』 シュバッ

ズブ……ズブ

『ロンリースタート』の腕が湾太の胸に沈み込む。

RS『サア、我ガ主。準備ハ整ッタ。アトハ「立チ上ガル」ダケダ……。』

  •  ・ ・
       ・ ・ ・ ・

――場所は戻り公園

湾太「…………。」

シィィ――ン

湾太「やっぱりというか、もう既に帰っちゃったみたいだな……。もう1時間は経ってるし当然か。
    だがまあ、明日もあるし明日伝えればいいか…………。
    自分で言うのもナンだが、俺の『ロンリースタート』は強力だし、JOJOたちもきっと喜ぶぞ!」

『イヤ、ソレガ叶ウコトハ永久ニナイ…………。』

湾太「!?」

D・F『捨伊比 湾太……。コノ『でぃーぷ・ふぉれすと』ニ反抗スルヨウニナルトハ、
    少シハキサマモ 成長シテイルヨウダナ…………。』
湾太「『ディープ・フォレスト』!?てめえ、よくも一人でノコノコと顔を出せたな……!
    言っておくがお前程度なら俺の『ロンリースタート』の敵じゃあねーぜッ!」

D・F『オット、私ヲ単身デ 切リ込ミニカカルヨウナ『英雄(バカ)』ト 勘違イシテモラッテハ困ルナ……。
    ソウイウ「格好イイコト」ハ私ノスルコトジャアナイ。JOJOニデモ期待シテイレバ イインジャアナイカ?』

ド ド ド ド ド

耀壱「………………。」

D・F『ドウダネ?耀壱クン。君ハすたんどノ「性能てすと」ガ出来、ワタシハ邪魔モノヲ消セル、ぎぶ・あんど・ていくダ。』
耀壱「……きさま、私がお前の掌で踊っているとでも思っているのか?」

D・F『……サア、マサカソンナコトハ』
耀壱「フン……。まあいい。お前は「優先順位」が低いだけだ。いずれ消してやるさ…………。」

D・F『(フフフッ……。マダ気付イテイナイカ……。イズレ気付カセテヤロウ。
     キサマハ釈迦ノ掌ヲ飛ビ回ル 孫悟空デスラナイ、トイウコトヲナ…………。)』

湾太「うおおおおおッ!!きさまがッ!きさまがッ!」

ド ド ド ド

湾太「『最強のスタンド使い』ッ!こんな形で会うことになるとはッ!」
耀壱「……くくく……怖いか?」

湾太「正直言うと、俺は今滅茶苦茶怖いッ!!」
耀壱「!?」

耀壱(いつも、スタンド使いはこういう状況に立たされると決まって『きさま程度ひねり潰してやる!』
    と気丈に振舞うものだが……こいつの場合、マジでビビってる。)

湾太「怖いさ!『存在』が消えちまうんだぜ!?死ぬよりもずっと怖い!両親が!友達が!ミキ先生が!
    俺のことを忘れちまう……。そのことがものすげー怖い……。今すぐ逃げ出したい…………。」

湾太「だがな!それよりももっと恐ろしいことがある!それはお前を残して逃げて!
    昔の「サイテーのゲス」に逆戻りしちまうことだッ!ミキ先生からもらった「気高い魂」を忘れることだッ!」

耀壱(しかし、その上で「恐怖」を克服している……。押さえ込むのではなく、克服……。)

D・F『ワタシハ文字通リ、高ミノ見物……トサセテモラウヨ……。』フワァアア

ド ド ド ド ド

湾太「『ロンリースタート』!」

耀壱「フン!きさまはまだ理解していないようだなッ!「湾太」と言ったか!?
    私のスタンドはきさまごときが敵うスタンドではないのだッ!」

耀壱「『アクセンスター』ッ!」ドーン!

耀壱「いい物を見せてやろう……。」ズララアアア

『アクセンスター』はそう言ってナイフを取り出す。

AS『…………。』バッ!

湾太「なッ!?土を蹴り上げて……煙幕にでもするつもりかッ!だが無駄だッ!『ロンリースタート』!」

ババッ

湾太の体から飛び出すように現れた『ロンリースタート』が土埃を殴り散らす。

   ドシュッ!

湾太「……?今何か音が聞こ……」

ドズズ!

湾太の胸にナイフが突き刺さる。

湾太「え……?何……だって……?バカな……!ナイフなんて飛んでこようものなら、
    この俺が「危険」を察知できないはずがないッ!!」

耀壱「これが『アクセンスター』だ……湾太……。」

耀壱「フン!おそらくカズハが情報源だろうが、何故かきさまらは『存在』を消す能力を知っていたな……。
    だが『存在を消す』というのは不十分な能力の解釈だ。私の能力の真髄は「忘れさせる」ことにある……。」
耀壱「『存在』を消せば!ろうそくは火が灯っていた事実すら「忘れ」!
    母親は子供を産んだという痛みと達成感すら「忘れる」!それが『アクセンスター』!」

耀壱「今回の場合は投げたナイフの『存在』を消し去った……。」

湾太「ぐ……!勝ち誇るのはまだ早い……ぜ……。このくらい、全然致命傷じゃあない!」
耀壱「随分と強がるな……。だが、そのやせ我慢がいつまで続くかな!?」ズララアア

湾太「……!」
耀壱「フン……。「危険」に人一倍敏感なお前は気付いたようだな……。
    このナイフによって、さっきよりも無残な攻撃を受けることになることを!」

湾太「マズイ……ぜ……。なんてことを思いつくんだッ!野郎ッ!」ババッ!

耀壱「『逃げ』の体勢に入って私を視界からはずしたな!その行動が命取りよッ!」

耀壱「くらえェィ!」ビシシッ!

RS『ムオオオオオオオオッ!』ガシィン!
耀壱「なん……だと?」

RS『無駄ダ……。主ガ見テイナクトモ、私ハキサマヲ目撃シテイル……。』

湾太「やはりな……。さっき、お前がわざわざ土埃を巻き上げて攻撃したとき、ピン!と来たんだ。
    前に聞いたよ……。カズハちゃんは、お前が消し去った母親の死を覚えていた。
    「もしかしたら、消滅の瞬間を目撃した者には「忘却」は通用しないんじゃあないか?」
    賭けだったが、見事に勝ったぜ…………。」

耀壱「小細工を……。」

湾太「そして「樋口耀壱」!お前にはもう二度と『消滅』を使う暇は与えないッ!」

ヴン  ヴン

RS×3『ムオオオオオオオオッ!!』

ド ド ド ド

湾太「喰らえッ!最大パワーの『ロンリースタート』のラッシュをッ!」
RS×3『ムウウウオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

ドガガガガガ!!

ド ド ド ド

同時刻、必府プリンスホテル

カズハ「―――!!」

雷鳥「どうしたの?カズハちゃん。」

カズハ「……分からない…………。でも、重大な「つながり」が今、この世から消えた……。」

雷鳥「重大な「つながり」……?何のことかしら……。」
カズハ「分からない……。でも……いやな予感がするッ!」ダッ

雷鳥「あ!カズハちゃん!どこに行くの!?」

ド ド ド ド

湾太「…………。」

湾太「……あれ?俺いったい何やってんだ?」

湾太「確か……そうだ!JOJOたちに会おうと思ってたんだ!何故会おうと思ったのかはイマイチピンとこねーが……。」

湾太「そういえば、そのとき『ディープ・フォレスト』に会ったんだ!『ディープ・フォレスト』は俺の上……!」

D・F『………………。』
湾太「あっ!いやがった!『ディープ・フォレスト』!降りてきやがれ!」

ド ド ド ド

D・F『……マサカ…………コレホドマデトハ……『あくせんすたー』……。本当ニ恐ロシイすたんど……。』

湾太「『アクセンスター』?何言ってやがる!降りてこい!」
D・F『イヤ、ソノ必要ハナイ……既ニ捨伊比 湾太……キサマハ始末サレテイル……。』

湾太「……?何をいって……」


ズボア

異様な音に自分の胸元を見ると、そこには『アクセンスター』の腕があった。

湾太「な……!は……ッ!そんな……!しまった……!『アクセンスター』ッ……!」

耀壱「すぐれたボクサーでも何でも、何かに「攻撃する瞬間」というのは得てして
    『見えているのに』『見えていない』状態に陥るものだ……。だからカウンターというものは有効なのだ。
    攻撃がヒットする瞬間、自分を『消滅』させたおかげで助かったよ…………。」

ド ド ド ド

湾太「『自分』を……!『消滅』……させるとは……ッ!」

ズバア!

湾太の肩が正方形に抉れる。

ズバッ!ズバババッ!

湾太「くおおおっ……!『ロンリースタート』……!」
RS『ムオオオオオオオオッ……!』

ググ……

耀壱「フンッ!無駄ァ!」バシイ!

『アクセンスター』が『ロンリースタート』の腕を手刀で切断する。

湾太(くく……っ。あれほど怖かった『消滅』なのに、『ロンリースタート』一体分の「危機感」しか感じないとはな……。
    しかも、もう不思議と恐怖は感じない……。悟りの境地ってやつなのかなァ?)

湾太(『ロンリースタート』、最後の最後にお前の本質を理解したよ。)

ド ド ド ド

湾太「『ロンリースタート』……はッ!!……「心の痛み」に向かうスタンド……だと!思ってた!!」

湾太「だが違う……!!その本質はッ!!」

湾太「『敵意』だ!『敵意』を向けた対象を襲うスタンド!
    未熟だったあのころは、自分のことに精一杯で世界中に『敵意』を向けていた!
    今までの俺は「危機感」という名の「防御本能による敵意」を向けていた!」

ズバ ズバ

湾太「うおおおおおおおおおおッ!だがもう『受身』の『敵意』は終わりだッ!俺はッ!」

ガシ!

湾太が耀壱の腕を掴む。

RS『ムオオオオオオオオオオッ!!』グオン!

ズバズバ

本体、湾太の消失と同時に『ロンリースタート』の体も消滅していく。
その状況にも意を介さず、『ロンリースタート』は手刀を振り下ろす。

耀壱「こいつ……。私の腕を抑えてせめて腕一本だけでも奪おうと……フン!甘いわ!」

ブンッ!

しかし、消滅(死に)かけの湾太の腕力が大人に勝てるはずもなく、あっけなく振り払われる。

ズドォッ

それでも『ロンリースタート』は止まれず、湾太自身の腕を切断する。

耀壱「フン!無様に自滅か!きさまにはふさわしい最期よ!」

ド ド ド ド ド ド

湾太(これでいい……。これで…………。)

湾太(JOJO……、亜希ちゃん……、アクター…………、……ミキ先生……。)

ズバズバ

ズバアッ

湾太(後……頼んだぜ……。)

バアアアアア――ッ

耀壱「フン……。まあ、なかなか骨のある奴だったぞ。私自身を『消滅』させざるを得ないほどに追い詰めたのだからな……。」

耀壱「『ディープ・フォレスト』!行くぞ!まだまだ私の『アクセンスター』、成長の余地はある!」

スタ スタ スタ ・・・



時刻が既に夜に差し掛かる頃だったからか、それとも耀壱の言葉どおり、追い詰められた状態からの逆転が
彼の心に高揚と油断を誘ったのか……。どちらかは分からないが、『ディープ・フォレスト』は全てを見ていた。

――結論から言うと、『アクセンスター』は全てを消しきれていなかった。
『ロンリースタート』が湾太の腕を切断したのは、決して湾太の計算違いではない。

むしろそうさせること(●●●●●●●)が湾太の狙いだったのだ。

――『アクセンスター』は、触れたものをこの世から消滅、『なかったこと』にするスタンド――
しかし、それはあくまで「触れた」ものに限る。無生物は全て一括で消滅させられるが、
生物となるとそうはいかない……。たとえ心臓を貫かれていたとしても、あの時点で湾太は生きていた。

その腕を切断したとなれば、それはもう「無生物」と「生物」。
とても「同じもの」ではない。つまり結論から言って……。

『湾太の腕』はその場に残っていた。

とはいえ、「湾太」という人間は消滅した。
彼の家族は、もう彼の夕食を用意している頃だろうが、その夕食を
誰のために用意したかすら、二度と思い出すことはないだろう…………。

しかし、この「腕」に握られている『もの』は、この後物語を大きく進展させることになる。

そして、『ディープ・フォレスト』はそれに気が付きながらも……

D・F『ククク、面白クナッテキタゾ……。』

あえて見逃した。


捨伊比 湾太
スタンド名『ロンリースタート』―→この世から『消滅』



To Be Continued...




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