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超絶バイクと探偵とドラゴン

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匿名ユーザー

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超絶バイクと探偵とドラゴン ◆qbc1IKAIXA



「なかなか美味しいですね」
 ありふれた学校の廊下で甘いお菓子をつまみながら、Lは満足そうに頷いた。
 歩きながら糖分を取るのは効率のいい手段だが、同行者はそう思わないようだ。
「L様、行儀が悪いですよ」
「はあ、すみません」
 謝罪しつつも、Lは食べるのをやめるつもりはない。
 声をかけた相手、咲世子は細い眉をわずかにひそめただけだ。
 メイド服というコスプレのような格好だが、感情のコントロールは上手い。
 数度のやり取りでLはそう確信し、相手の真に重要な情報を引き出すのは難しいと考えている。
 とはいえ、その情報は現在だとあまり価値はないだろう。
 もはや学校には用がない。咲世子を伴って外に出ようとする。

 瞬間、建物が大きく揺れた。

 Lがバランスを崩して尻餅をつくが、咲世子は平然と立っている。
 爆発音も断続的に続き、誰かが攻撃しているのだと悟った。
「L様、これは……」
「我々の存在に気づいた誰かが攻撃しているのか……」
 これは希望的観測である。敵対意思があればまだ対処はしやすい。
 最悪なのは、
「たまたま目についた学校を壊そう、と気まぐれで動いたか」
 説得も推理力も役に立たない、後先を考えない相手だった場合である。
「この儀式でそんな目立つ行動を?」
「目立つ行動をとれるということは、相応の力を持つ可能性が大きいです。一番ベターな結果は我々の存在を悟られず、この場から逃げることですが……」
 無理でしょう、とLは続ける。まだ爆発音は遠いが、ここに届くのは時間の問題だ。
 そして音から察する発信者の位置は、自分たちに一番近い出口の向こうだろう。
 おまけに逃げる場所を選んでいる暇はない。いや、咲世子ひとりなら余裕はある。
 だが、『このL』は運動が苦手だ。裏口を選択して逃げ切れる可能性は0である。
 つまり、現状は死ぬか危険人物の前に躍り出るか。あまり来て欲しくない二択だ。
「しかたありませんね……」
 咲世子はLのつぶやきに頷いた。出口を見据え、一直線に駆け抜ける。
 爆発音はどんどん近くなっていくが、肝っ玉の座っている二人は動じない。
 脚力そこそこのLを咲世子は上手くサポートし、あっさりと玄関口を抜けた。
 明かり一つない学校のグランドが目に入る。サッカーのゴールも野球のホームベースもちゃんと見える。
 暗闇に慣れた目は周囲をきちんと映してくれているようだ。
 続けて、地面が振動して爆発が発生する。周囲に飛び散った瓦礫が落ちてきた。当たらなかったのは幸いだ。
 状況認識を終えたLは素早く方向転換し、射撃主を睨みつける。
 未来的な車に誰か乗っていた。ミサイルを発射するなど、アカギもずいぶん豪華な贈り物したものだ。
 やがて運転していた男が降りてくる。
 なんともだらしない印象の男だ。ボサボサの黒髪は伸び放題。
 サイズの大きいTシャツは裾が伸びきって、片肩を露出している。
 ただ、だらしない印象と違い、顔は整っていた。
「へえ、誰かいたんだ」
「いると確信したから壊そうとしたのでは? そうでないとすれば、この学校を攻撃した理由は何でしょうか?」
 声から察するに、見た目以上に幼いだろう。なるほど、アカギは狡猾な人間らしい。
 こんな人物にあんなオモチャを与えれば、どうなるかは眼に見えている。
 Lの質問はもはや答えが見えていた。
「あれを壊したら面白いかなぁ、って思ってさ」
「なるほど。あなたがどういう人間なのか、理解できました」
 言い捨て、思考を張り巡らせる。
 敵と認識したと同時に咲世子がかばうように前に出たのは、さすがというほかにない。
 彼女はスペツナズナイフを構えながら相手を見据えている。
 二人に支給された武器は銃を含め、彼女に持たせてあった。銃は懐に隠しているのだろう。
 もっとも、ミサイル付き車両を相手だと分が悪すぎた。
「それにしても人がいてくれてよかったよ。休むのに飽きて退屈していたところなんだ。
君たち遊んでくれないかな? あの、爆弾を受けても死ななかった女の子のようにさぁ」
 男が笑うと同時に、体の境界線が揺れた水面のように曖昧になる。
 グジュル、と肉が腐って崩れたような音が鳴り、顔に模様が浮かんだ。
 それも一瞬だけ。小柄な印象を吹き飛ばす、二メートルを超える怪物がそこにいた。
「最初に死んだ男と同類、というわけですか」
「琢磨くん? 残念だよ。彼がいたらしっぺで遊べたのに」
 灰色の巨躯が可愛らしい声を発する。
 二本角の悪魔を思わせる風貌だというのに、アンバランスだ。
 こういうのが一番怖い。警戒するLに、咲世子がささやいた。
(L様、一分だけでいいので、囮になってもらえませんか?)
(…………あの車両を奪うというわけですね)
(……ええ。わざと最初の一撃で吹っ飛びますので、それから時間稼ぎをお願いします。
必要な武器があれば、お渡ししますので)
(ええ。しかし、銃もクナイも必要ありませんよ)
(L様が運動を得意でないのはご承知ですが、今は少しでも生き残る算段を……)
(いえ、それもあるのですが……相手に聞こえてますよ。たぶん)
 え、と戸惑う咲世子をよそに、怪物を見据えた。
 灰色の怪人はこちらの視線に気づき、親指で車両を指す。
「ねえ、あれを早く取らないの?」
「……ッ! 本当に聞こえていた……」
「大丈夫です、篠原さん。それにしても耳がいいんですね」
「変身後だからさすがにね。ここに来る前なら、変身しなくても聞こえたけど。
まあそれはどうでもいいよ。ジェットスライガーを欲しくないの?」
「ええ、私たちはあなたと違って普通の人間ですので、喉から手が出るほど欲しいですね。
篠原さん、奪いに行って大丈夫ですよ。今は手を出すつもりはないでしょうから」
 Lが断言するが、咲世子はいまいち信用していない。
 こちらが信用出来ないというより、目の前の怪物が有利な武器を手放したことが信じられないのだろう。
 そのまま静かに言葉を重ねる。
「意味のない破壊活動。なのにこちらを確認した途端、手を止めたこと。そして変身しながらも、今は様子を伺っているだけ。
以上から彼は我々を殺すことより、何をする気か……どこまでできるのかを確かめるつもりでしょう。違いますか?」
「うん、それは一応正解。ついでに言えば、あれ運転するの飽きちゃってさ。
ただの人間と戦うのもつまんないし、君たちあれ使って僕と戦ってよ。けど、逃げるなら殺すよ。僕はあれより速いからね」
 さあ早く、と竜の怪人はこちらを急かす。
 咲世子はどうするべきか、アイコンタクトを送ってきた。
 Lは静かに結論を彼女へ示す。聞きとられないように、指示を記入した紙を彼女へと向けた。
『ジェットスライガーとやらを奪ったら、一人で逃げてください』
 紙にはそう書いてある。Lは自分の結論がまっとうなものだと自信があった。
 どれほどの力があるか知らないが、学校を破壊する兵器を譲るなら相応の力があるはずだ。
 奪ったところで慣れない乗り物である。乗りこなすには時間が必要だろう。
 結果、勝ち目は薄く、二人で逃げきるには自分が枷だ。
 ならば彼女が逃げきり、自分が彼をここにとどめるのがベターだ。
 もっとも、Lも死ぬつもりはないが。
「どうしたの?」
「我々はその乗り物……ジェットスライガーですか。乗り方を知らないので、試運転時間を五分ほどいただけませんか?」
「えー、五分も待つの? 三分が限界かな。待つのは嫌いなんだ」
 意外と時間をもらえた、とLは内心ほくそ笑む。
 視線を咲世子に送り、この三分で逃げるよう紙を使って再度指示した。
 咲世子は一瞬考えこみ、やがてLを肯定した。
 油断なく怪人の脇をすり抜け、ジェットスライガーにたどり着く。
「どう? 動かせそう?」
「…………ナイトメアフレームと多少操縦方法が似ていますね。これなら何とかなりそうです」
「そう、それはよかった」
 盗られた側というのに、むしろ怪物は祝福した。サイコキラータイプなのだろうか。いや、違う。
 Lは敵対する相手の思想にだいたいあたりを付けてきた。厄介な相手である。
「さて、あなたにお願いが……」
 Lが次の策に移ろうとした時だった。
 咲世子の乗ったジェットスライガーが一瞬で方向転換し、銃口を灰色の怪物へと向けたのだ。
 ハッチが開き、ミサイルと光弾が発射される。周囲は土煙が上がって、視界が消えた。
「L様、つかまってください!」
 咲世子の大声が聞こえ、とりあえず従う。相手の頭が冷えるまで時間を稼ぐ必要があるのだ。
 同時にLは確信を持ってしまった。
 自分か咲世子か。あるいはふたりとも、死んでしまう可能性が高いと。


「うまくいきました。このまま逃げましょう」
「篠原さん、よく操縦を把握しましたね」
「……いえ。我々の世界の乗り物と似ている、と言いましたが、この操縦桿くらいです。
把握しながら運転しているので、声をかけて運転ミスをしても知りませんよ」
「はあ、それなら一つだけ。最大加速をして、射撃の用意をしてください」
 咲世子が疑問符を浮かべていたが、すぐに結果がついてくる。
 先回りした竜の怪物が正面で構えていたのだ。このジェットスライガーより速いというのは本当らしい。
 まあ、疑ってもいなかったが。
 咲世子もこの事態は想定していたようで、眉を引き締め姿勢を低くする。
 再びミサイルハッチが開き、発射トリガーに咲世子のたおやかな指がかかっていた。
「さあ、僕と遊んでよ」
 敵の言葉がきっかけになったように、ジェットスライガーの前部が爆ぜた。
 建物を粉砕するミサイルが人間サイズの存在へと迫る。
 どれほどの戦闘力があるか、お手並み拝見だ。
 怪物は竜の頭を模した両腕を左右に振るった。
 ミサイルの一発が上に逸れて、遥か彼方で飛び散る。二発目を強引に凪ぎ飛ばし、爆発の影響を避けた。
 十発のミサイルを巧みにかわし後、一つを踏み台に上空に跳ぶ。
 月を背中に、灰色の怪人が微笑んだ気がした。
「L様、もっと強くつかまってください」
 なるほど、とLは納得する。彼女がしようとすることはだいたい理解した。
 言われた通り腰のあたりに抱きつき、成り行きを見守る。
 ジェットスライガーの機首が怪物の方向に持ち上がり、ミサイルハッチを開いたまま加速した。
「衝撃に備えて!」
 咲世子はそう叫んで、操縦席から飛び降りた。
 当然、Lもついたままだ。加速した車両から飛び降りるなど、度胸があり過ぎである。
 もはや衝撃に備えることしかできない。
 ドン、と全身に衝撃が走り、何度か地面を転がる。予想より痛みが酷くないのは、咲世子が庇っているからか。
 ようやく回転が止まったとき、全身の悲鳴を無視しながらLは立ち上がった。
 最初に心配した行方は敵のこと。
 相手はジェットスライガーを受け止め、上空に運ばれたままミサイルの雨を発射される。
 爆発が発射源を巻き込んで大きく広がっていった。ジェットスライガーもスクラップへと姿を変えるのだろう。
 多少もったいないが、あのバケモノを仕留めるというなら妥当な判断だ。
 ただし謎の速度を解明しない現時点では、不安の残る手段である。
「L様、油断してはなりません。今のうちに離れましょう」
 彼女は片腕を抑えながら、支給されていた銃を用意していた。
 おそらく右腕は折れている。さすがのプロのメイドにしてSPである彼女でもつらそうだ。
 そして負傷を負った咲世子もこれで終わったと思っていないようだ。だが、逃げることより優先してLは一言発した。
「我々の反抗はどうでしたか?」
「けっこう楽しかったよ。うん、いい暇つぶしにはなったかな」
 咲世子が急いで自分を背中に隠す。
 その背中越しにLはバケモノと向き合い、少し前との相違点を発見した。
 先ほどまでの巨躯の印象と違い、スリムな姿である。
 外装が剥がれたように四肢は細く、人のそれに近い。顔には表情が追加され、呪われそうな形相だ。
「久しぶりにヒヤッとしたよ。あのままだったら、半身は持っていかれたかもね」
「そうならないとは予想していました。その姿は我々に認識できないほど速く動ける、と見て間違いありませんか?」
「見えたの? ……そんなわけないか」
「ええ、ただ速くなるのなら、私はともかく彼女に認識されないのはおかしいですからね。
ならば速度は普通の人に認識できないほど、と考えが行き着くのはたやすい」
「よくわかったね、すごいよ君」
 相手は興奮したように拍手をする。
「面白いからもっと聞かせてよ」
「わかりました。ならば期待に答えましょう、北崎さん」
 相手が首をかしげる。それもそうだろう。
「僕は名乗ったっけ?」
「いえ、最初に死んだ方……彼が助けを求めた名前の中で名簿にあるのは北崎さんだけでしてね。
その実力からアナタではないか、と推測しました。当たってくれて私も驚きです」
「嘘ならもうちょっとわかりやすく吐きなよ。確信していたんでしょう?」
「さあ、それはどうでしょう」
 Lはとぼけながら、デイパックの菓子をひとつ摘んだ。軽いジャブはここまでだ。北崎は自分に興味を示している。
 咲世子と自分が生き残れるかどうかは、今後で決まるのだ。糖分を補充した脳を活発に動かし、次の手に移る。

「さて、北崎さん。我々から提案があります。手を組みませんか?」

 ネゴシエーションという、得意分野の一つに。


 発言の後、驚愕した咲世子が一度こちらを振り返った。さすがの彼女も表情を隠しきれなかったらしい。
「命乞いかな?」
「まあ、一部はそうですね。ですが、あなたにも得がありますよ」
 北崎は興味深そうに「続けて」と要求した。
「私の世界にはキラと呼ばれる能力者がいます。彼の能力は名前と顔を知った相手を自由に傷つけ、殺すことが可能なもの。
あなたのオルフェノクという能力を相手に渡り合える、最強の存在です」
 へえ、と感心したようなため息混じりの声が聞こえてきた。
 Lは嘘を混じえながら平然と続ける。

「彼はあなたの退屈を紛らわせる最良の相手である、と推察します。ただ、キラは用心深い相手でしてね。
私と彼女くらいしか正体を知らないのですよ。つまり、彼との対戦を組めるのは我々しかいないというわけです。
キラとの戦いに興味がない、あるいは裏切りを恐れるなら我々を始末してもかまいません。どうでしょうか?」

 北崎は狂った存在ではない、とLは確信していた。
 戦闘狂であり、相手を嬲るような行動と言動からサイコキラーとしか他人には映らないだろう。
 事実、彼の欲求が『ただ戦いたい』というものであれば間違っていない。
 だが、Lは北崎の欲求が戦うことより、退屈を紛らわせたいというものであることに勘づいていた。
 この二つの欲求は似ているようで違う。
 傷つけることや戦うことを、食べることや睡眠と同列に扱うなら、戦わない自分たちに価値はない。
 しかし、それらすべてが『退屈を紛らわせる』という理由を挟んでいるならば話が違う。
 こちらがその退屈から開放できる、というカードをチラつかせることで交渉可能な相手と化すからだ。
 もっとも、油断はできない。目の前の男は予想以上に頭がいい。
 Lは気を引き締め、交渉を再開する。
「そのキラと戦えるだけ?」
「もちろん、それだけじゃありませんよ。アカギの言葉を思い出してください。
彼は『複数の可能性宇宙から、私達は選ばれた』と言いました。
あなたは退屈を紛らわせる相手に不足しません」
「そうだねえ。さっきもいい相手に巡りあったよ。竜を使う女と、頑丈な女の子。また会いたいなあ。
それで、僕が君たちを生かしておいて、得することって何かな?」
 北崎から発するプレッシャーが強くなった。
 そろそろ話にも飽きてきた頃だろう。相手のしびれが切れた瞬間が、一番のチャンスだ。
「生き残りたい彼らにとってあなたとの遭遇は避けてしかるべき。
どれだけあなたが求めても、彼らと満足に戦える機会はそう多くないでしょう。
ですが、私がいれば話は違います」
 ビッ、と人差し指を立て、北崎の顔を睨みつける。
 怪人の姿であるため表情は見えないが、相手が何を考えているかは手に取るようにわかる。

「私が強者を見分け、あなたと戦うように仕組みましょう。
相手がどのようなタイプで、どうすれば戦うか推理することは簡単です。
もう一度言います。隠れる強者を探り当て、あなたと戦わせることができる私と手を組みませんか、北崎さん?」

 北崎はこちらを焦らすためか、無言でこちらを見つめている。
 咲世子が緊張したように喉を鳴らした。
 しかし、Lには確信がある。

「いいよ、一緒にいこう」

 北崎がこの話に乗るのだと。


 もう一度言うならば、戦うことだけにしか興味がない、という相手ならこの話は通用しなかっただろう。
 血に飢えた獣は食欲を満たすように、破壊欲求のままこちらの話を聞く前に殺していた。
 だが、北崎は違う。
 彼は退屈を紛らわせる、という『人間らしい』行動に出た。
 ならばこちらの話を聞く『遊び』に付き合うと、短いやりとりでLは確信を持てたのだ。

 ここからはLの推察だが、おそらく北崎は頭が悪くない。むしろ自分や月に及ばないものの、いい部類に入るだろう。
 だからこそ彼は様々な『ハンデ』を彼自身に課していた。
 ジェットスライガーを渡すという行動がわかりやすい。自分の話を聞いて隙を作ったのも、その一環だろう。
 そのままでは楽しめないと理解しているからこその行動だ。
 ゆえに交渉が通じる。ある程度なら益を得ることを選べる人種だ。
 もっとも油断はできない。
 益がないと判断すればすぐに自分たちを殺せる頭脳を持っているのだ。それは一面、考えなしの殺人鬼より恐ろしい。
 さらに、莫大な力は彼に気まぐれという悪癖を与えていた。
 自分たちは首皮一枚でつながったにすぎない。
「ケガは大丈夫ですか?」
「ええ、この程度なら移動に支障ありません」
 Lは咲世子と共に出発の準備を整えた。彼女の片腕は折れているため、添え木で固定している。
 後は動くだけだ。ただ、Lたちの準備を待つのを飽きたのか、北崎が無防備なまま近寄ってきた。
「やっぱりケガしたんだ」
「ええ、あなたにはしてやられましたからね」
「ふぅん、僕が治そうか?」
「いえ、その必要はありません」
 警戒している咲世子は当然断る。北崎は残念そうな表情を作った。演技臭い。

「そう遠慮しないでさ」

 その一言が、なぜか大きく聞こえた。
 北崎は右人差し指を触手のように伸ばす。伸びた指は鞭のようにしなり、咲世子の心臓に突き刺さった。
 一瞬だけ、青い炎が立ち上ったような気がした。
 怪我をしていたせいか反応の遅れた咲世子はなんとか振りほどき、距離をとる。
 とはいえ手遅れだ。口からつつっ、と血が流れ落ちる。
「あれ、意外と伸ばせなくなっているや」
「……怪我を治すのでは?」
「そう怒らないでくれない? 運が良ければ傷は治るし、彼女は力を得れるから」
 北崎はのんびりとした口調で、咲世子に向き直る。
「君さ、自分が弱いと思わない?」
 咲世子は膝をガクッと落とす。構えようとしたブローニングハイパワーが力なく地面をはねた。
「どういう……ことです……か……」
「僕たちオルフェノクはこうやって数を増やすんだ。上手く行けば僕のように力を持てるよ。
それを使えば、Lくんだろうが、他の誰かだろうが、簡単に守れる。感謝してよ」
 咲世子は話の半分も聞いていないだろう。倒れ、ピクリとも動かない。
 Lは北崎を不快に思った。おそらく、彼の発言は嘘ではない。何度も同じ事をやってきたらしく手馴れている。
 だがこれは、自分に対する警告なのだ。
『逃げるなら容赦はしない』
 自分の恐怖を揺り動かし、縛るために彼女の命を奪った。
 さらに北崎はLを挑発して、『何が何でも自分を殺すように仕向けさせた』のだ。
 『他の知り合いも殺すぞ。君の命だって簡単に奪ってみせる。そうなりたくなければ、約束の『強者との戦い』を実現させろ』、と。
 ただ見せしめのために犯罪を犯すキラのように。
 予想できたこととはいえ、気分はあまりよくない。だからこそ彼女を逃し、交渉に移るつもりだったのである。
 それが二人揃って生き残る最良の手段だった。

「L様…………」

 こみ上げる不快感を抑えつけ、立ち上がった咲世子にLは向き直る。
「はい」
「私はもう無理です。彼の言うオルフェノクにはならないでしょう。
ですので、私がお話しした大事な方々のことを頼めませんか? ルルーシュ様とあなたが出会えば……」
 彼女の遺言は最後まで伝えられなかった。
 ザァッ、と灰になり、最初から砂人形だったかのように崩れ落ちる。
 艶のある黒髪も、特徴的なメイド服も残っていない。
 ただ彼女であった証拠は、残したデイパックと銃だけだった。
 Lは静かに有用なものだけを集めて、北崎に振り返る。
「あーあ、ハズレだったようだね」
「北崎さん」
 なに、と返す彼の顔を静かに見つめた。
 この世に恐れるものはなにもない、という王者の顔だ。
 ならばその顔を崩してやろう。

「私、あなたを倒しますよ。たとえどんな手を使っても、どんな相手を利用しても」

 だからこそ、Lは月との共闘を決意した。忌むべき彼の頭脳とキラとしての力が必要だ。
 たとえ最悪の大量殺戮犯だったとしても。今は誰よりも、彼がそばに居て欲しい。

「楽しみだなぁ。君がどんな手を使うのか、どんなふうに僕を追い詰めるのか。Lくん、僕の名前は北崎……さ。よろしくね」

 目を細め、フルネームを告げた北崎は猫のように笑った。
 キラに名前を教えろ。無言でそう言っているのだろう。
 その余裕、頭脳で崩すのが自分と月の役割だ。Lは自分と宿敵の仕事を定めた。

 こうして世界最高の探偵と、ラッキクローバー最強のオルフェノクの化かし合いが始まった。


【篠崎咲世子@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】


【D-5/南東平地/一日目 黎明】


【L@デスノート(映画)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)@現実、
    予備弾倉(9mmパラベラム)☓5、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:北崎を倒す。負けを認めさせる
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。


【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:ゲームを楽しみ、優勝する
1:見つけた参加者は殺す
2:Lに期待。琢磨くんの代わりにオモチャになりそう
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
4:シロナとガブリアスとはまた会えれば戦いたい
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
 また、灰化発生にはある程度時間がかかります



【FN M1935 ブローニングハイパワー】
9mmパラベラム弾を13発装填可能なベルギーのハンドガン。
カナダ軍をはじめ、イギリス軍の空挺部隊や特殊部隊を中心に使用されている。


045:「ナナリー・ランぺルージって奴の仕業なんだ」 投下順に読む 047:後悔しない生き方が知りたい
044:Fate/kaleid night ハンバーガーころしあむ 時系列順に読む
013:最強の竜 北崎 073:最強の敵
033:命の長さ L
藤咲咲夜子 GAME OVER


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