引かれ合うチルドレン ◆4EDMfWv86Q
朝を過ぎて太陽が天上に登ろうとする時刻になっても街は静かだった。
道路を空けて平行に並ぶ住宅、現代的な日本の町並みには人の姿がない。
町といえるだけの数の家があり、整備と舗装は行き届いていながら――ここには、生活感というものが欠けている。
一夜にして住民が忽然と消えたとでも考えなければ説明しようのない、異様な状況。
見えているのは一画だけだが、ここ以外を周ったとしても一般人を見つける事は叶わないだろう。
そこを歩く者がいるとしたらそれは、意図してこの地にばら蒔かれた者だけでしかない。
道路を空けて平行に並ぶ住宅、現代的な日本の町並みには人の姿がない。
町といえるだけの数の家があり、整備と舗装は行き届いていながら――ここには、生活感というものが欠けている。
一夜にして住民が忽然と消えたとでも考えなければ説明しようのない、異様な状況。
見えているのは一画だけだが、ここ以外を周ったとしても一般人を見つける事は叶わないだろう。
そこを歩く者がいるとしたらそれは、意図してこの地にばら蒔かれた者だけでしかない。
「北崎さん。少し休みましょう」
靴の踵を裸足で踏み、猫背の姿勢で歩いていたLは足を止め、動向する少年へと言葉をかけた。
「もう疲れたの?だらしないなあ」
呼ばれた北崎は少しだけ鬱陶しそうな表情だけを浮かべてLを見据える。
言葉こそ返さないが、その顔は提案への拒否を如実に示していた。
言葉こそ返さないが、その顔は提案への拒否を如実に示していた。
Lが転送された初期位置はE-7の見滝原中学校、そして現在の場所はD-4の東の端だ。
距離にすれば約4キロ、歩き通せば運動に慣れてない体なら次の日には筋肉痛になってることだろう。
……とはいえ実際は、咲世子の操縦するジェットスライガーで半分まで進んだので、Lが歩いた距離はせいぜいが2キロである。
それで根を上げるとしたら確かに、運動音痴の謗りは免れないだろう。
距離にすれば約4キロ、歩き通せば運動に慣れてない体なら次の日には筋肉痛になってることだろう。
……とはいえ実際は、咲世子の操縦するジェットスライガーで半分まで進んだので、Lが歩いた距離はせいぜいが2キロである。
それで根を上げるとしたら確かに、運動音痴の謗りは免れないだろう。
「運動、苦手なんですよ。大抵の事件は動かずに済ませてますから」
「弱いねえ、人間って。我が儘言うなら置いてっちゃうよ?」
「弱いねえ、人間って。我が儘言うなら置いてっちゃうよ?」
せせら笑う北崎。人の進化の姿であるオルフェノク、その中でも最強を冠する男にすればLの脆弱さは滑稽ですらある。
「それに貴方だって休息は必要でしょう?あれだけ華麗に投げ飛ばされたんですから」
しかし次のLの一言によりその表情は続かなかった。途端、北崎の顔に見る見る苦渋の色が浮かぶ。
Lにとっては衝撃の、北崎には屈辱の経験。狂気の殺戮者との戦い、否、災害との遭遇は未だ記憶に新しい。
Lにとっては衝撃の、北崎には屈辱の経験。狂気の殺戮者との戦い、否、災害との遭遇は未だ記憶に新しい。
「大したことないよ。さっきの僕の戦いを見れば分かるでしょ」
「それにしては歩く速度が遅いですね。疲労は相応に溜まっているのではないですか」
「それにしては歩く速度が遅いですね。疲労は相応に溜まっているのではないですか」
繰り返すが、このLは運動が苦手である。前傾姿勢で歩く姿は遅々としている。
しかしそのLと北崎は互いを横に置いて移動を続けていた。
それは二人の移動速度が同じ事を意味し、たとえ無意識でもLと変わりない歩幅である状態を示していた。
しかしそのLと北崎は互いを横に置いて移動を続けていた。
それは二人の移動速度が同じ事を意味し、たとえ無意識でもLと変わりない歩幅である状態を示していた。
「ふうん、僕を気遣ってくれるんだ」
内心の鬱積を噛み殺し、あくまで余裕を崩さずに言葉を返す。
「はい、貴方にはあの怪物と戦ってもらわなければなりませんから」
「だったら休むなんて暇あるのかな。あいつに僕を倒させたいんじゃないの?」
「勿論です。貴方はどんな手を使っても倒す。それが前提です。
ですがね、勝ち目の無い戦いに向かわせるのは私としても気が進まないんですよ」
「……へえ?」
「だったら休むなんて暇あるのかな。あいつに僕を倒させたいんじゃないの?」
「勿論です。貴方はどんな手を使っても倒す。それが前提です。
ですがね、勝ち目の無い戦いに向かわせるのは私としても気が進まないんですよ」
「……へえ?」
人の姿だった男の姿が僅かにブレる。
現実での変化はない。ただLの記憶の中でおどろおどろしい龍の爪が鎌首をもたげる。
常人なら力の片鱗をちらつかせだけで竦み震えるだけのプレッシャー。しかしこの探偵は色々な意味で常識とは遠い人間だ。
モーションでしかないと知ってる限り恐るるに足りなかった。
現実での変化はない。ただLの記憶の中でおどろおどろしい龍の爪が鎌首をもたげる。
常人なら力の片鱗をちらつかせだけで竦み震えるだけのプレッシャー。しかしこの探偵は色々な意味で常識とは遠い人間だ。
モーションでしかないと知ってる限り恐るるに足りなかった。
「はっきり言いますが今の貴方ではアレには勝てません。
万全の状態ですら一敗地に塗れたのです、傷を負っている現状では尚更勝率は翳ります。
前の戦いでは草加さんのサポートあっての結果です。それを理解してない貴方でもないでしょう」
万全の状態ですら一敗地に塗れたのです、傷を負っている現状では尚更勝率は翳ります。
前の戦いでは草加さんのサポートあっての結果です。それを理解してない貴方でもないでしょう」
飢えで怒りを灯している猛獣に、手掴みで餌をちらつかせるにも等しい挑発行為。今すぐ心臓に白い指が突き刺さっ
てもおかしくはない。
それでもLは攻めを選ぶ。この程度で逆上するようでは逆に無様を晒すと相手の心理を読み取りながら。
物怖じせず、最強のオルフェノクへと突きつけた。
それでもLは攻めを選ぶ。この程度で逆上するようでは逆に無様を晒すと相手の心理を読み取りながら。
物怖じせず、最強のオルフェノクへと突きつけた。
Lはバーサーカーを打倒するにおいて北崎へのサポートを惜しまないつもりでいた。
そうまでしても倒せる保証がない相手なのだ。こちらも策を凝らさねばならない。
対バーサーカー戦に限っては北崎は敵ではなく敵を共通とする同盟相手と認識していた。
そうまでしても倒せる保証がない相手なのだ。こちらも策を凝らさねばならない。
対バーサーカー戦に限っては北崎は敵ではなく敵を共通とする同盟相手と認識していた。
「それに追跡する手間はかかりませんよ、ほら」
指差す先には、市街地へ点々と続く黒い孔。
巨大な獣の足跡のようなコンクリートの陥没は、事実巨大な獣の足跡だった。
敵のいるなしという判別すら碌につかないのか、狂戦士は自らの痕跡をこれみよがしに塗りたくっていた。
追跡はとても容易、追うこちらを嗅ぎつけてUターンしてくる場合も十分有り得る仮想だ。
巨大な獣の足跡のようなコンクリートの陥没は、事実巨大な獣の足跡だった。
敵のいるなしという判別すら碌につかないのか、狂戦士は自らの痕跡をこれみよがしに塗りたくっていた。
追跡はとても容易、追うこちらを嗅ぎつけてUターンしてくる場合も十分有り得る仮想だ。
「……あぁもう、分かったよ。そんなに言うなら休んであげるよ。丁度お腹も空いたしね」
北崎とて体の不調は把握している。休憩の必要性は承知していた。
バーサーカーにあれだけ痛めつけられてなお連戦をこなせたのは、オルフェノクの頑強さと生命力、何よりも北崎の抱く自負に支えられてのものだ。
それもファイズ、草加雅人との連携がなければ一殺もたらす事も叶わなかっただろう。本人が考えてる以上にダメージは尾を引いていた。
ただそれを認め、隣の人間に告白し恥辱を見せる羽目になるのを避けていただけだ。
しかしLの方から話題を切られ、更にこうまでしつこく提案されるのであれば彼にとっても名分が立つ。
乗せられていると気づいてはいるが取り消しは利かない。ここで我を張っても益するものがないと打算する程度には北崎の頭は冷静さを保っていた。
バーサーカーにあれだけ痛めつけられてなお連戦をこなせたのは、オルフェノクの頑強さと生命力、何よりも北崎の抱く自負に支えられてのものだ。
それもファイズ、草加雅人との連携がなければ一殺もたらす事も叶わなかっただろう。本人が考えてる以上にダメージは尾を引いていた。
ただそれを認め、隣の人間に告白し恥辱を見せる羽目になるのを避けていただけだ。
しかしLの方から話題を切られ、更にこうまでしつこく提案されるのであれば彼にとっても名分が立つ。
乗せられていると気づいてはいるが取り消しは利かない。ここで我を張っても益するものがないと打算する程度には北崎の頭は冷静さを保っていた。
「けどさ――それならあいつは放ったままってことなんだけど、いいんだよね?」
それが癪なので、ふと思いついた考えを気まぐれに聞いてやることにした。
そう。ここで一息つくという行為は、バーサーカーへの対処を僅かでも止める行為に等しい。
休憩の合間に生じる空白にあの狂獣は町へ野放しにされる。
行く先に腕に憶えのある――最低でも北崎と抗し得るだけの人物がいるという保証もなく、Lのような知恵も持たない
そう。ここで一息つくという行為は、バーサーカーへの対処を僅かでも止める行為に等しい。
休憩の合間に生じる空白にあの狂獣は町へ野放しにされる。
行く先に腕に憶えのある――最低でも北崎と抗し得るだけの人物がいるという保証もなく、Lのような知恵も持たない
人々が出くわす可能性もある。
何の庇護も与えられない者があんな歩く局地的災害と形容される存在に巻き込まれれば、許されるのは絶望に立ち尽くし、恐怖に泣き叫ぶだけ。
そしてそんな声を聞く耳もなく、叩き潰され磨り潰されて殺されるだけだ。
何の庇護も与えられない者があんな歩く局地的災害と形容される存在に巻き込まれれば、許されるのは絶望に立ち尽くし、恐怖に泣き叫ぶだけ。
そしてそんな声を聞く耳もなく、叩き潰され磨り潰されて殺されるだけだ。
「構いません。致し方ない犠牲というやつです」
罪のない無辜の人。塵のように殺されるいわれなど何もない者。
それをLは切り捨てた。
消え行く数人の命より、巨悪を確実に討つ算段を立つ方を優先した。
少数より多数を生かすという手段。正義を志す者であれば誰でもぶつかることになる壁。
血も涙もない冷血漢、という批判は彼には通用しない。何故ならLという男は普通ではない。
彼は人と馴れ合う社会性に欠けており、法を犯し、人道を踏み越え、命を費やしてまで事件を解決する、
悪を決して許さず捕らえる、探偵だからである。
それをLは切り捨てた。
消え行く数人の命より、巨悪を確実に討つ算段を立つ方を優先した。
少数より多数を生かすという手段。正義を志す者であれば誰でもぶつかることになる壁。
血も涙もない冷血漢、という批判は彼には通用しない。何故ならLという男は普通ではない。
彼は人と馴れ合う社会性に欠けており、法を犯し、人道を踏み越え、命を費やしてまで事件を解決する、
悪を決して許さず捕らえる、探偵だからである。
同意を得てから時を置かずに、Lは休憩場所を見とがめた。
「ここにしましょう」
年季の入った建築物は広い敷地を持った屋敷だった。
紛れもない豪邸ではあるが、館から放たれる暗鬱な空気は荘厳さよりも威圧に近い閉塞感を与えている。
空気だけで語れば、まるでここは刑務所だ。
地図など眺めてはいないだろう北崎に代わりLが解説をする。
紛れもない豪邸ではあるが、館から放たれる暗鬱な空気は荘厳さよりも威圧に近い閉塞感を与えている。
空気だけで語れば、まるでここは刑務所だ。
地図など眺めてはいないだろう北崎に代わりLが解説をする。
「間桐(まとう)邸……いえ、マキリですか?ともかくそういう名だそうです。
同性を持った人物が名簿にも記されています。桜という名からすれば女性でしょう、
本人か、彼女を知る人物が訪れている可能性はあります。
実を言うとですね、私は始めからここを調べるつもりで休憩を提案したんですよ」
同性を持った人物が名簿にも記されています。桜という名からすれば女性でしょう、
本人か、彼女を知る人物が訪れている可能性はあります。
実を言うとですね、私は始めからここを調べるつもりで休憩を提案したんですよ」
Lはこの儀式の参加者は皆いずれも、ひとまとまりのグループに分けられていると考えている。
夜神月、夜神総一郎、弥海砂、松田桃太、南空ナオミ……平行世界云々は置いといてどれもLの知る人物だ。
そして藤崎咲世子の語ったランペルージ兄妹、ランペルージのロロとブリタニアの皇族、枢木スザク、
付け加えれば北崎のオルフェノク、鹿目まどかの魔法少女らもそこに含まれている。
順当に考えて、ひとつのグループでひとつの世界、そこから互いに関係がある人物を選出しているのだ。
単にまとまっていたから適当に攫ったのか、あるいはそこには意図があるのかまでは追求出来ない。
しかし、全員が全員誰かしらと知り合っているというのはかなりの情報が拡散している事になる。
一人見つけるだけでも最低、その世界に関する基本的な知識を入手できる見込みがある。
夜神月、夜神総一郎、弥海砂、松田桃太、南空ナオミ……平行世界云々は置いといてどれもLの知る人物だ。
そして藤崎咲世子の語ったランペルージ兄妹、ランペルージのロロとブリタニアの皇族、枢木スザク、
付け加えれば北崎のオルフェノク、鹿目まどかの魔法少女らもそこに含まれている。
順当に考えて、ひとつのグループでひとつの世界、そこから互いに関係がある人物を選出しているのだ。
単にまとまっていたから適当に攫ったのか、あるいはそこには意図があるのかまでは追求出来ない。
しかし、全員が全員誰かしらと知り合っているというのはかなりの情報が拡散している事になる。
一人見つけるだけでも最低、その世界に関する基本的な知識を入手できる見込みがある。
「その桜って子が強いのか君に分かるの?」
その意図に気づいてないのか、それとも興味なく無視しているのか。北崎はただ戦うに値するのかのみを聞く。
北崎の興味とは即ち強敵、倦怠さを紛らわすだけ遊べる相手かどうかだけだ。
北崎の興味とは即ち強敵、倦怠さを紛らわすだけ遊べる相手かどうかだけだ。
「そこまで見通せはしません。ですから調べるんです。あるいは彼女がそうでなくても、強い人を知ってるかもしれませんよ」
「なんか地味だなあ」
「探偵の調査が派手でどうするんですか。忍ばないと駄目でしょう」
「なんか地味だなあ」
「探偵の調査が派手でどうするんですか。忍ばないと駄目でしょう」
そういった地道な作業はワタリや警察に任せていたが……と心中で付け加え、柵を超えた先にある扉を開く。
中は外見に違わぬ豪奢な内装が出迎えていた。
だが不穏感は一層募り、巨大な生き物の胃の中にでも飛び込んだみたいだ。
先に共闘した草加雅人と鹿目まどかも訪れている施設であり、それ故に危険要素は薄いと捉えているが油断は許されない。
周囲を観察し動かないLをよそに、北崎は警戒の素振りも見せず悠々と奥に進んでいく。
中は外見に違わぬ豪奢な内装が出迎えていた。
だが不穏感は一層募り、巨大な生き物の胃の中にでも飛び込んだみたいだ。
先に共闘した草加雅人と鹿目まどかも訪れている施設であり、それ故に危険要素は薄いと捉えているが油断は許されない。
周囲を観察し動かないLをよそに、北崎は警戒の素振りも見せず悠々と奥に進んでいく。
「へえ……いいところじゃん。雰囲気が気に入っちゃうね」
北崎もLも知る由もないが、この館は本来は霊脈と呼ばれる地点の上にある建造物である。
土地の魔力を運び、次代の魔術師を育む育成所として機能する一級の霊地だ。
その機能はこの会場においても持続しているのか、館の地下に隠されている修練場はどうなっているのか、それらの真実は誰一人として気づいてない。
明らかな"魔"の領域に立つオルフェノクにとっては相性がいいのか、北崎が不思議と上機嫌になっているのは確かだった。
どこか浮ついたまま上階への階段を見つけ足をかけたところで、唐突にその動きがピタリと停止した。
土地の魔力を運び、次代の魔術師を育む育成所として機能する一級の霊地だ。
その機能はこの会場においても持続しているのか、館の地下に隠されている修練場はどうなっているのか、それらの真実は誰一人として気づいてない。
明らかな"魔"の領域に立つオルフェノクにとっては相性がいいのか、北崎が不思議と上機嫌になっているのは確かだった。
どこか浮ついたまま上階への階段を見つけ足をかけたところで、唐突にその動きがピタリと停止した。
「――覗き見なんて、よくないなあ」
そこからは、一瞬の出来事だった。少なくともLには何も見えないも同義だ。
かろうじて認識したのは北崎の体が灰色に変わったとこまで。
ドラゴンオルフェノク龍人態へと変身した北崎のスピードは人間には知覚外の超音速だった。
瞬きのつく間に階段を昇り柱の影に隠れていた人物の腕根っこを掴み取ったのだ。
かろうじて認識したのは北崎の体が灰色に変わったとこまで。
ドラゴンオルフェノク龍人態へと変身した北崎のスピードは人間には知覚外の超音速だった。
瞬きのつく間に階段を昇り柱の影に隠れていた人物の腕根っこを掴み取ったのだ。
「つかまえーた」
「――ッ!」
「――ッ!」
意識が現実に追いつくのは何秒経ってからか。
北崎は変身し得た身体能力で乱暴に腕を捻り上げる。日の下に晒されたのは男だった。
北崎は変身し得た身体能力で乱暴に腕を捻り上げる。日の下に晒されたのは男だった。
その男を見て真っ先に印象に残ったのは、やはりその顔面に走る傷痕だろう。
斜めに刻まれた証は傷の深さを物語り、ただでさえ人相が悪い男を殊更凶悪に見せている。
傷を抜きにしても堅気の者でないのは明らかだった。
体に纏う雰囲気にLは覚えがある。マフィアなりの闇社会に身を投じている者の匂いだ。
斜めに刻まれた証は傷の深さを物語り、ただでさえ人相が悪い男を殊更凶悪に見せている。
傷を抜きにしても堅気の者でないのは明らかだった。
体に纏う雰囲気にLは覚えがある。マフィアなりの闇社会に身を投じている者の匂いだ。
右手を封じられた男は、まだ自由な左の手から拳銃を抜き出して躊躇なく発砲する。
この至近距離では外しようもなく、ワルサーP38から放たれる9mmパラベラム弾の三発は灰色の体へ着弾する。
超常的な現象を伴って人知に及ばぬ異形に迫られながらにしては、その対応は素早かったといえるだろう。
その後の展開を見れば、何の気休めにもならないものだったが。
この至近距離では外しようもなく、ワルサーP38から放たれる9mmパラベラム弾の三発は灰色の体へ着弾する。
超常的な現象を伴って人知に及ばぬ異形に迫られながらにしては、その対応は素早かったといえるだろう。
その後の展開を見れば、何の気休めにもならないものだったが。
「それで終わり?」
龍の貌は男を見る。動かず、銃も取り上げず、己が撃たれた事実など存在しなかったように。
自身の躰など気にしていない。それは分かりきった結末だからだ。
打ち込まれた銃弾が北崎の体表に触れた途端、砕ける行程もないまま砂に溶けて消えてしまっていた。
自身の躰など気にしていない。それは分かりきった結末だからだ。
打ち込まれた銃弾が北崎の体表に触れた途端、砕ける行程もないまま砂に溶けて消えてしまっていた。
「次はないの?もっと強い武器は?ファイズみたいな変身は?ボールから怪獣は出さないの?」
愕然として立ち尽くす男。の心境など気にせず、親に次々と新しい玩具をせびる子供のようにまくしたてていく。
そこに悪意はない。あるのは底の抜けた好奇心。自分を楽しませられるかという興味本位だけ。
この世の全ては北崎を楽しませる玩具の箱なのだという絶対の確信が、最強のオルフェノクの中枢だった。
そこに悪意はない。あるのは底の抜けた好奇心。自分を楽しませられるかという興味本位だけ。
この世の全ては北崎を楽しませる玩具の箱なのだという絶対の確信が、最強のオルフェノクの中枢だった。
「……ないんだ、なにも。つまらないなあ」
これ以上降っても落ちてくるものはない。男の狼狽ぶりを見てそう理解したらしい。北崎の声から色というものが抜け落ちた。
とかく子供は玩具の扱いには粗雑である。興味を失くした人形などには容赦ない。
捨て置くだけならいい。だがそれが人を超越した怪物となれば、健常で済む末路である筈がない。
とかく子供は玩具の扱いには粗雑である。興味を失くした人形などには容赦ない。
捨て置くだけならいい。だがそれが人を超越した怪物となれば、健常で済む末路である筈がない。
「北崎さん!」
北崎が男を掴む腕に力をこめようとしたと同時に、Lの叫びがそれを制した。
参加者との接触はそれ自体が情報源となるのだ。無作為に殺されてはたまらない。北崎になんの関心も惹かないものであっても、だ。
参加者との接触はそれ自体が情報源となるのだ。無作為に殺されてはたまらない。北崎になんの関心も惹かないものであっても、だ。
「……そんなに睨まないでよ。分かってるってば、そっちで勝手にやってよね」
気を削がれた北崎は虫でも払うかのような無造作で男を投げ捨てた。
重力と人体の体重を無視して宙に浮いた体は下階のエントランスに墜落する。
Lは速やかに接近し、念のため落ちた銃は回収して男の状態を確認する。
咄嗟に受身を取ったので目立った怪我はほぼない。懸念だった右手も肉が僅かに崩れただけで骨には至ってない。
重力と人体の体重を無視して宙に浮いた体は下階のエントランスに墜落する。
Lは速やかに接近し、念のため落ちた銃は回収して男の状態を確認する。
咄嗟に受身を取ったので目立った怪我はほぼない。懸念だった右手も肉が僅かに崩れただけで骨には至ってない。
指も問題なく動かせるだろう。
「乱暴な扱いをしてすみません。今こんな事を言っても信じにくいでしょうが"私に"あなたを害する意志はありません。話を聞いてもらえると助かるのですが」
屈んで男を見ながら両手を挙げる。まずはこの混乱を上手く収拾する事から始めなければ。
しかし不利な態勢で武器を奪われ、あまつさえ背後には人外の怪物。思慮ある人物であれば従う姿勢以外に選択肢はないと気づくだろう。
図らずも北崎の攻勢は交渉に優位に働くものとなったのだ。状況を見れば、脅迫と取れなくもないが。
しかし不利な態勢で武器を奪われ、あまつさえ背後には人外の怪物。思慮ある人物であれば従う姿勢以外に選択肢はないと気づくだろう。
図らずも北崎の攻勢は交渉に優位に働くものとなったのだ。状況を見れば、脅迫と取れなくもないが。
「私はLです。あなたの名前を教えていただけるでしょうか」
なるべく事は荒立てたくない。それがLの本心だ。
友好とまではいかずとも妥協出来る関係を持ち、別行動をとってもらう。これが最良だ。
しかし裏で控える北崎はそうでは済まさないだろう。何らかの利益を見せない限り、気まぐれなこの男がただで帰す公算は薄い。
北崎の望む情報を保有しているとなれば運び次第で上手く受け流す事もできるが……
友好とまではいかずとも妥協出来る関係を持ち、別行動をとってもらう。これが最良だ。
しかし裏で控える北崎はそうでは済まさないだろう。何らかの利益を見せない限り、気まぐれなこの男がただで帰す公算は薄い。
北崎の望む情報を保有しているとなれば運び次第で上手く受け流す事もできるが……
そこまでの考えを頭で巡らせているところで、漸くLは男の変化に気づいた。
決して警戒を解こうとしない顔が崩れ、信じられないものを見るような目で自分を見ている。
そこに宿ったのは如何なる感情なのか。先の怪物を見たよりも遥かに衝撃的な体験とでもいうような。
意外な反応を疑問に思うLが尋ねるより前に、男が口を開いた。
決して警戒を解こうとしない顔が崩れ、信じられないものを見るような目で自分を見ている。
そこに宿ったのは如何なる感情なのか。先の怪物を見たよりも遥かに衝撃的な体験とでもいうような。
意外な反応を疑問に思うLが尋ねるより前に、男が口を開いた。
「……メロ。
俺の名前は――メロだ」
俺の名前は――メロだ」
#
メロがこの間桐邸を目指したのは、夜神月の手がかりを求めてのことだ。
奴が会場に転送されて最初にいた施設。何かの痕跡でも残っていればと期待した。
ポケモンという生き物に乗り空で移動したシロナには地上では追跡が難しい。
クロエという少女からも伝聞によるものだ。追跡するには不足している。
ただ闇雲に月を探し回るよりはまだしも芽があるだろうと踏んでの決断だ。停滞は何も生まず行動あるのみだとメロは身をもって知っている。
奴が会場に転送されて最初にいた施設。何かの痕跡でも残っていればと期待した。
ポケモンという生き物に乗り空で移動したシロナには地上では追跡が難しい。
クロエという少女からも伝聞によるものだ。追跡するには不足している。
ただ闇雲に月を探し回るよりはまだしも芽があるだろうと踏んでの決断だ。停滞は何も生まず行動あるのみだとメロは身をもって知っている。
道中で、地響きのような叫び声が聞こえたがすぐに遠ざかっていった。
つまり自分が移動した逆の方向、政庁へと向かっていったようだ。
今のも参加者なのだろうか。あれでは知性の欠片も感じられない、まるきり野獣のそれだ。
魔法少女だのオルフェノクだのに遭遇してはいるがそれらは人の形を取り、思考するだけの知と理を備えていた。
だがこの声の主にはそれは存在しない。身の毛もよだつほどの咆哮は、獣の野生を通り越して暴威の域にある。
言葉を理解すらしていない相手に交渉も懇願も無意味でしかない。未だあの地に留まっている総一郎達には上手く切
つまり自分が移動した逆の方向、政庁へと向かっていったようだ。
今のも参加者なのだろうか。あれでは知性の欠片も感じられない、まるきり野獣のそれだ。
魔法少女だのオルフェノクだのに遭遇してはいるがそれらは人の形を取り、思考するだけの知と理を備えていた。
だがこの声の主にはそれは存在しない。身の毛もよだつほどの咆哮は、獣の野生を通り越して暴威の域にある。
言葉を理解すらしていない相手に交渉も懇願も無意味でしかない。未だあの地に留まっている総一郎達には上手く切
り抜けるのを願うしかない。
そうして一応は無事に目的地に到着したのが十数分前。
原付を正面からは見えない場所に置き中を探索を始めようとしたところで、奴らはやってきた。
後はもう流されるままだった。監視を見抜かれ、怪物に一切の抵抗も届かず取り押さえられる。
後悔する間もないまま漠然と己の死を予感したところで……その声を聞いた。
原付を正面からは見えない場所に置き中を探索を始めようとしたところで、奴らはやってきた。
後はもう流されるままだった。監視を見抜かれ、怪物に一切の抵抗も届かず取り押さえられる。
後悔する間もないまま漠然と己の死を予感したところで……その声を聞いた。
聞いたことのない声。見た覚えのない顔。
しかしその名は知っていた。鮮明に、熱烈に、一時は焦がれるほどに追い求めていた――その称号(な)を。
男は名乗る。己の目指す先、追い越すべき頂点に座す世界の探偵に。
そこに感じたのが執着なのか、憧憬なのかは、彼には理解出来なかった。
しかしその名は知っていた。鮮明に、熱烈に、一時は焦がれるほどに追い求めていた――その称号(な)を。
男は名乗る。己の目指す先、追い越すべき頂点に座す世界の探偵に。
そこに感じたのが執着なのか、憧憬なのかは、彼には理解出来なかった。
かくしてLとMは邂逅を果たす。
正しい未来では有り得ない逢瀬。それは奇跡といえるのか。
ともあれここで彼の世界は一変する。変わる先がどこに向かうかは、分からないまま。
正しい未来では有り得ない逢瀬。それは奇跡といえるのか。
ともあれここで彼の世界は一変する。変わる先がどこに向かうかは、分からないまま。
【D-4/間桐家/一日目 午前】
【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化。
[装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)@現実、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
0:この男への対処。なるべく穏便に済ませたいが……
1:北崎を用いて、バーサーカーを打倒する。まずは情報集め。
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。
[状態]:右の掌の表面が灰化。
[装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)@現実、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
0:この男への対処。なるべく穏便に済ませたいが……
1:北崎を用いて、バーサーカーを打倒する。まずは情報集め。
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。
【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、虎竹刀@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:バーサーカーを殺し、Lに見せ付けた後で優勝する
0:休息は必要と理解。
1:バーサーカーへの対抗手段を探る。
2:バーサーカーには多少の恐怖を感じている。
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
また、灰化発生にはある程度時間がかかります
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、虎竹刀@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:バーサーカーを殺し、Lに見せ付けた後で優勝する
0:休息は必要と理解。
1:バーサーカーへの対抗手段を探る。
2:バーサーカーには多少の恐怖を感じている。
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
また、灰化発生にはある程度時間がかかります
【メロ@DEATH NOTE】
[状態]右手首の表面が灰化(動かすのに支障なし)
[装備]原付自転車
[道具]基本支給品一式、呪術入りの宝石(死痛の隷属)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考]基本・元世界に戻り、ニアとの決着をつける。
0:L……?
1:今は夜神月を優先して探す。間桐邸を調べるつもりだったが……
2:死者(特に初代L)が蘇生している可能性も視野に入れる。
3:必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々とは協力したくない)
4:可能ならばおりこに接触したい。
5:夜神月の行動に違和感。
[備考]
※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。
※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月
※ゆまから『魔法少女』、『魔女』、『キュゥベぇ』についての情報を得ました。(魔法少女の存在に一定の懐疑を抱いています)
※平行世界についてある程度把握、夜神月が自分の世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。
※原付自転車は間桐邸の脇(正面からは見えない)場所に停めてあります。
※バーサーカーとはギリギリですれ違ったようです。
[状態]右手首の表面が灰化(動かすのに支障なし)
[装備]原付自転車
[道具]基本支給品一式、呪術入りの宝石(死痛の隷属)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考]基本・元世界に戻り、ニアとの決着をつける。
0:L……?
1:今は夜神月を優先して探す。間桐邸を調べるつもりだったが……
2:死者(特に初代L)が蘇生している可能性も視野に入れる。
3:必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々とは協力したくない)
4:可能ならばおりこに接触したい。
5:夜神月の行動に違和感。
[備考]
※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。
※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月
※ゆまから『魔法少女』、『魔女』、『キュゥベぇ』についての情報を得ました。(魔法少女の存在に一定の懐疑を抱いています)
※平行世界についてある程度把握、夜神月が自分の世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。
※原付自転車は間桐邸の脇(正面からは見えない)場所に停めてあります。
※バーサーカーとはギリギリですれ違ったようです。
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| 北崎 | ||
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