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それぞれの想い

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匿名ユーザー

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それぞれの想い ◆UOJEIq.Rys



     ◇


「ハ――――――――」

 走る。走る。走る。走る
 一つの場所を目指して、脇目も振らずに駆け抜ける。
 脈拍に乱れはない。心臓はすでに停止している。
 ―――問題ない。織莉子のもとに辿り着くまで体が動けばいい。

 心臓が破壊された状態での活動。
 肉体が死んでなお動き回れる不条理。
 その理由をキリカは、織莉子からすでに聞いていた。

 すなわち、“魔法少女はすでに、人の理から外れている”ということを。

 その言葉の意味をキリカは、この状態になってようやく理解した。


 魂は肉体から抜き取られソウルジェムとして加工された。
 残った肉体はソウルジェムによって操られる生き人形でしかない。
 故にどれほど肉体が傷つこうと本体であるソウルジェムさえ無事なら戦い続けられる。

 そしてキュゥべえ――インキュベーターにとって魔法少女とは、魔女を殺す狩人であると同時に、魔女を生み出す生贄だ。
 魔法少女は感情エネルギーを得るための道具であり、魔女は感情エネルギーを得た後の粗大ゴミでしかない。
 契約とはすなわち、彼らに必要なエネルギーを獲得し、それによって生じるゴミも同時に処分できる、一石二鳥の手段なのだ。


 それらは織莉子が教えてくれた知識であるから覚えているが、そのほとんどはキリカにとって無意味な情報だ。
 現状において意味のある情報は一つ。
 自分が“殺されても動ける”のは、魔法少女になっているからだということのみだ。

 そう。あの瞬間、バゼットの宝具によって心臓が破壊された時、キリカは絶望した。
 織莉子を残して死ぬことを。織莉子のために生きられないことを。
 織莉子のために参加者の皆殺しを決めたのに、結局一人しか殺せなかったことを。

 ……ああ、それではだめだ。こんな無様さでは、何もできていないのと変わりない。
 それではダメだ。私は織莉子に無限に尽くす。こんなところで死んでいる暇はない。いや、たとえ死んでも織莉子のために尽くさなければならない。
 だから認めない。この事実を認めない。自分が死ぬなんて認めない。死んで終わるだなんて認めない。織莉子のために何もできないだなんて、そんなの絶対認めない!

 キリカはそんな狂おしい思いで、絶望する心を、沈みゆく意識を繋ぎ止め続けた。
 そうして気づいた。自分が殺されてから一分以上経っても、まだ自分が生き続けていることに。
 そうして理解した。魔法少女とはそういう存在なのだと。つまり自分は、死んでもなお織莉子に尽くせるのだと。

 ――――魔法少女……キュゥべえに騙された、哀れな少女たち。
 結構だ。たかだか利用される程度で織莉子(私のすべて)が守れるのなら、大いに結構!
 死んでもなお織莉子のために生きられるなんて、これ以上の至福があるはずない!!

「はは! やっぱり愛は無限に有限だね!」

 ―――走る。
 織莉子のための感情とは別のところ、織莉子のための理性が、織莉子のために現状を正しく把握する。
 ソウルジェムの濁りはついに六割を超えた。そしてそれは現在も急速に進行中。
 その理由は一目瞭然。魔法少女に変身しているから、というのもあるが、何より心臓に穴が開いたままだからだ。
 傷痕は焦げ付きほとんど流血していないとはいえ、死体のままで動き回るのはやはり無理があるらしい。
 いくら人の理を外れた魔法少女でも、さすがに限界はあるようだ。物理的な意味での、無限の中の有限だろう。
 このままでは織莉子のもとに辿り着くまえに、ソウルジェムが限界に達しかねない。
 織莉子のための時間を稼ぐためにも、グリーフシードを探す必要がある。

 まずは最優先で織莉子の家に向かう。
 その道中で他の参加者に遭遇したら、一に織莉子、二にグリーフシードの事を尋ねる。
 それ以外は、たとえ魔法少女であってもすべて無視だ。織莉子のための時間がもったいない。

「さあ急ごう。織莉子のための時間は、たとえ一瞬でも惜しまなきゃ」


 ―――そうして、黒衣の魔法少女は全速力で走り続ける。
    その魂の全ては、一人の愛しい人への愛のために。


【F-4/浜辺/一日目 午前】

【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ダメージ(大)、心臓破壊、ソウルジェムの穢れ(6割:進行中)
[装備]:魔法少女姿
[道具]:基本支給品、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)、スナッチボール×1@ポケットモンスター(ゲーム)、魔女細胞抑制剤×1@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ
[思考・状況]
基本:プレイヤーを殲滅し、織莉子を優勝させる
1:織莉子と合流し、彼女を守る。そのために、まずは最優先で美国邸を目指す
2:他の参加者に遭遇したら、一に織莉子、二にグリーフシードの事を尋ねる
3:織莉子とグリーフシードに関すること以外は、たとえ魔法少女であっても今は無視する
[備考]
※参戦時期は、一巻の第3話(美国邸を出てから、ぬいぐるみをなくすまでの間)。
※速度低下魔法の出力には制限が設けられています。普段通りに発動するには、普段以上のエネルギー消費が必要です。
※バゼット・フラガ・マクレミッツから、斑鳩の計画とニアの外見的特徴を教わりました。
※バゼット・フラガ・マクレミッツを『大恩人』と認定しました。
※イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを『恩人』と認定しました。


     ◇


 パン、と、乾いた音が路上に響いた。
 それは、バゼットがイリヤの頬を叩いた音だった。

「――――え?」
「ちょ、バゼット、いきなり何を……!」
 叩かれたイリヤは呆然とし、俺は思わず声を荒げる。
 だがバゼットの、静かながらも重い、責めるような声に堰き止められた。

「なぜここに戻ってきたのですか、イリヤスフィール」

 バゼットは一切の逃避を許さぬ目で、イリヤを睨み付けている。
 それは何の覚悟も持たず、無謀にも戦場に飛び込んできた少女に対する怒りの表れだった。

「だ、だって……お兄ちゃんが―――」
「衛宮士郎が危険な戦場に戻ったから、と言いたいのですか?
 確かに彼があの戦闘に戻ってきたのは、私の未熟さも一因ではあります。
 ですが、ルビーのいない貴女は、はっきり言って今の衛宮士郎より弱い。端的に言えば、足手纏いです」

 イリヤの反論を、バゼットは一蹴する。
 少女が兄に責任を擦り付け様としたわけでないことは、バゼットも理解している。
 故に彼女は、少女の未熟さをこそ糾弾した。

「で、でも……」
『イリヤさん。残念ですけど、ここは私もバゼットさんに同意させていただきます。
 何故なら、イリヤさんが戻ってこなければ、士郎さんが魔術を使うことはなかったからです』
「あ―――う………」

 それでも反論しようとするイリヤを、今度はルビーが諌める。
 そう。あの瞬間、イリヤが戻ってこなければ、バゼットの一撃をキリカが回避することはなく、フラガラックも、投影も使用することなく戦いは終わっていたかもしれなかった。
 無論、それは可能性の話に過ぎず、キリカの魔術をもってすれば、あの状況からでも回避できたかも知れない。
 だが現実としてイリヤは戻ってきてしまい、数限りある切り札は使われてしまった。

『士郎さんは、イリヤさんを守るために魔術を使いました。
 今の士郎さんは、ただ戦うだけでも危険なんです。その上魔術を使えば、たとえ腕を開放してなくても命を削ることになります。
 イリヤさんも見ましたでしょう? 腕を開放していなくても“ああ”なってしまうのです。
 もしイリヤさんが今回のような無謀を続けるのなら、腕を開放する以前に士郎さんが死にかねません』
「……………………」

 イリヤは俯いて押し黙る。
 自らの行動で兄を危険に晒したことを、泣きそうになりながら悔いているのだ。
 その様子を見ていられず、思わず二人を静止した。

「二人も、もうそこまでにしてやってくれ」
「お兄……ちゃん?」
「イリヤが戻ってきちまったのは、俺がイリヤに心配かけさせちまったからだろ?
 なら、悪いのはイリヤだけじゃないはずだ」
『士郎さん、ですが……』
「そうだな。俺も、士郎に頼まれていながら、そいつを止められなかった。
 俺にだって十分責任はあるだろ」
「乾……」
『あなたまで……まったくもう』

 ルビーは呆れたようにそう言って口を閉じた。
 どうやら引き下がってくれたらしい。
 バゼットの方を見れば、彼女も呆れたような顔をしていた。

「……貴方達がそういうのであれば、今はこれ以上言いません。
 ですが、同じようなことを繰り返されても困ります。
 このまま同行を続けるのであれば、今後イリヤスフィールには、私かルビー、もしくは衛宮士郎の指示に従ってもらいます。
 その意味が解りますね。今の貴女よりも、衛宮士郎の方が信頼に値する、ということです」

 たとえ能力で上回っていようと、背中を預けられない人間とは協力できないとバゼットは言っているのだ。
 その様子では、場合によっては俺たちとは別行動をとることになり、最悪敵対しかねないだろう。
 イリヤもそのことを理解したのか、バゼットの言葉に肯く。

「うん……わかった………ごめんなさい………」
「結構。では一先ず、穂群原学園へ向かいましょう。
 イリヤスフィールはルビーの治癒促進(リジェネレーション)で治癒できますが、乾巧は重傷のままです」

 そう言うとバゼットは、先頭を切って歩き出した。
 無駄なことをしている時間はない、ということだろう。
 このままここに留まる理由はないので、それに続いて歩き出す。
 その際。

「乾、ありがとうな。イリヤを助けてくれて」
 巧へとそう礼を言う。
 それはバゼットから庇ってくれたことだけでなく、キリカから守ってくれたことにも関してだ。
 ただ、後者に関しては伝わらなかったらしく、

「別に。事実だしな」
 巧はそう不愛想に返してくるだけだった。
 それでも、彼の不器用な優しさを感じ取れて、やっぱりこいつは信頼できるヤツだ、と改めて思った。

「……なあ士郎。腕を使えば死ぬって、どういうことだ?」
「――――!」
 そんな士郎へと向けて、巧は単刀直入に問いかけた。
 巧の視線は、赤い布に拘束された左腕に向けられている。

 死ぬ。
 それは、言峰にもルビーにも散々忠告された事だ。
 それが真実であることは、つい先ほど身をもって思い知らされた。
 投影を使っただけで壊れかけた。
 なら、もしこの布を解いてしまえば、衛宮士郎という存在は一体どうなってしまうのか。

「イリヤも、あのへんな杖も言ってただろ、お前が死ぬって。あれはどういう意味だ」
「……………………」

 士郎は、その問いに答えない。
 答えられないのか、それとも答えたくないのか。
 いずれにせよ、士郎から理由は聞けそうにないと、巧は理解した。

「ま、言いたくないんならこれ以上は聞かねえけどよ。
 ………あんま、女の子を泣かすなよな」
「………わるい。それは、わかってるつもりなんだけどな」
 巧の言葉に、士郎は苦笑してそう答えた。
 わかってはいるが、やめられない、約束はできないと、言外に感じ取った。

 “正義の味方になりたいと思うのはおかしいか?”

 その言葉に、どれだけの想いが籠められていたのか、巧には推し量れない。
 けどそれは、衛宮士郎が諦めた夢は、彼にとって、とても大切なものだったのだろうと予想はできた。
 その夢を諦めた理由。その夢以上に大切な何か。それがあってなお、彼の心の中で、その夢が燻ぶっているのだ。

「………しゃあねえ、諦めて協力してやるか。お前に無茶させて、あいつ泣かせるのも寝覚めが悪いしな」
「乾」
「だが勘違いすんじゃねえぞ。所詮俺は、お前ら人間とは相いれないバケモンだ。……その事を忘れんな」
「それでも、ありがとう乾。これからよろしくな」
「ふん……………」

 巧は不愛想に、士郎からそっぽを向く。
 そう。たとえお互いが、どれだけ相手を求めようと、人間と怪物は一緒には暮らせない。
 なら消えるべきはどちらなのか。そんなことは、決まりきっている。
 けどそれまでの、ほんの少しの間なら、一緒にいても許されるのではないか。
 そんな風に、少しだけ思えたのだ。

「そういえば………」
 と、巧は暁美ほむらの言葉を思い出した。
 確か彼女は、こう言っていた。人間でないのは魔法少女も一緒だ、と。

 心臓を破壊されても動き回った、黒衣の魔法少女の事を考える。
 ほむらの言っていたことは、ああいう意味なのだろうか。

「あいつから、話を聞く必要がありそうだな」
 ほむらが魔法少女の事に詳しいのは間違いない。
 ならば、またあの魔法少女と遭遇した時のために、その“正体”を知っておく必要があるだろう。


 そこでふと、巧は、マミは今どうしているだろうか、と思った。
 同じ魔法少女の事を考えたからだろう。なんとなく、彼女の事を思い出したのだ。

 誰かを裏切るのが怖いと、自分と同じように怯えていた彼女は、泣いていないだろうか。
 誰かを守ろうと無茶をして、大きな怪我をしていないだろうか。
 なんて、決して会うつもりはないくせに。



「――――――――」
 一方イリヤは一人、士郎の背中を見つめていた。
 先ほど聞かされた、ルビーの言葉を思い出しながら。

 “それが、魔術師というものですよ、イリヤさん。
  私たちの知る凜さんやルヴィアさん、クロさんも属している世界。
  本来あなたが知ることはなかった、あるいは知っていたはずの、日常の裏側です”

 凜さんやルヴィアさん、クロの住む世界。
 その本当の姿を私は、ルビーと関わった今でも知らなくて、
 だから私は、お兄ちゃんが抱えているもの、隠しているものの正体が分からなくて、
 せめて、お兄ちゃんが無茶しないよう頑張ろうと、ただお兄ちゃんに死んで欲しくなくて、

 “士郎さんは、イリヤさんを守るために魔術を使いました”

 “もしイリヤさんが今回のような無謀を続けるのなら、腕を開放する以前に士郎さんが死にかねません”

 けど、お兄ちゃんを助けるどころか、怖がって何もできなくて、
 私のせいでお兄ちゃんに無茶させて、危ないことをさせちゃって………

「私……どうしたらいいんだろう………」
『おや、イリヤさんどうしたんですか? そんな暗い顔をして』
「ルビー」
 ルビーがひょっこりと顔を覗いてくる。
 その雰囲気は先ほどまでとは違って、いつもの能天気そうなものに戻っていた。
 その様子を見て、イリヤはほんの少しだけ安心した。

「ううん、なんでもない。ただ、どうしたらいいのかなって思っただけ」
『どうしたら、ですか』
「うん。バゼットさんもお兄ちゃんも魔術師で、乾さんもオルフェノクだけど、私だけ、ルビーと契約しただけの一般人だから」
『なるほど……そういうことでしたか』
 納得がいったようにルビーは肯く。

 自分が魔術師として育っていたならば、もう少し何かの役に立てたかもしれない。
 自分が魔術師ならば、お兄ちゃんの問題も解決できたかもしれない。
 けど、そうじゃない私では、何の役にも立てず、何の解決もできないのだろうか。
 といったイリヤの考えを、なんとなく読み取ったのだ。

『確かにイリヤさんは魔術師ではありません。それは覆しようのない事実です。
 あ、技術的な面ではなく、精神的な面での話ですよ』

 魔術の大家、アインツベルンの血筋として生まれた以上、イリヤに魔術の才能があることは間違いない。
 だがルビーが言っているのはそこではなく、精神面、心のありようの事だ。
 普通の生、一般的な感性のもとで生きてきたイリヤでは、魔術師としての思考を理解することは難しい。

『けど、気にする必要は全然ありません!
 なぜかって? そんなの決まってます。イリヤさんは魔術師ではなく、愛と正義の魔法少女だからです!
 魔術師としての考え方なんてむしろ邪魔。あんな固い頭だから、空を飛ぶのにも苦労するんです。
 ………それに第一、』
 そこで少し言葉を切って、ルビーは言った。

『イリヤさんは、自分じゃ何もできないからと言って、士郎さんの事を諦めるんですか?』

 心を鷲掴みにされたような言葉だった。
 何もできない自分。助けるどころか、助けられかねない未熟さ。
 それを理由に、私は、諦めるのだろうか? お兄ちゃんを助けることを――お兄ちゃんの、命を。

「ううん、そんなのやだ……。私は、諦めたくない……! お兄ちゃんに生きていてほしい!」 

 そんなこと、考えるまでもなく、できるはずがなかった。
 そんな簡単なことに、どうして今まで気が付かなかったのか。

 平行世界の存在だからとか、同じであっても違う人物だとか、そんなの関係ない。
 私はただ、衛宮士郎(お兄ちゃん)に生きていてほしかった。衛宮士郎(お兄ちゃん)が死ぬところなど、想像したくもなかったのだ。

『はい、合格です。それでいいんですよ、イリヤさん』
「え……ルビー?」
『魔術師だとか、魔法少女だとか、ただの一般ピープルだとか、そんなものは全部些細なことです。
 要は、自分の願いのために、どれだけ頑張れるかが大切なんです』

 そうルビーは、私の悩みなどどうでもいいものだど断言して、やさしい声でそう言った。
 自分の願いのために頑張ることが、一番大事なのだと。
 ……けど私は、そうして失敗した。
 お兄ちゃんを助けようとしたのに、お兄ちゃんを危険にさらした。
 だから、どうしたらいいのかわからないのだと言おうとして、続くルビーの言葉に遮られた。

『イリヤさん。どうしたらいいのかわからない、と言いましたね。ならばせめてイメージしましょう』
「イメージ?」
『はい、イメージです。今回のイリヤさんの失敗は、な~んにも考えずにあの場所へと戻ってきてしまったことです。
 あの場所で何が起きていたのか。あの場所で何ができたのか。あの場所に戻って、何がしたかったのか。
 そういったことを全く想像しなかったのがダメなんです。ただ誰かを助けたいという想いだけでは、結局何にもできません』

 ルビーの言葉に、イリヤはようやく、は自分の間違いを理解した。
 確かに私は、お兄ちゃんを助けたいという想いだけであの場所に戻った。
 どうやって助けるかとか、そういったことは全く考えてなかったのだ。
 だから何もできなかった。何をすればいいのかさえ、思いつかなかった。だから逆に、助けられる羽目になったのだ。

『前に美遊さんに言いましたでしょう。「人が空想できること全ては起こり得る魔法事象」だと。
 まあ要するに、いつものように理屈や工程をすっ飛ばして、結果だけをイメージすればいいんですよ。
 現実で不可能なことなら、想像の中で可能にし。
 イリヤさん自身が出来ないのなら、それが出来る魔法を幻想する。
 ――今のイリヤさんに出来ることなんて、それぐらいしかないのですから』

 前にも聞いた、その言葉。
 以前はバカにしているようにしか聞こえなかったそれは、最も大事なことを指していた言葉なのだと、今ようやく気付くことができた。
 そう。

『そして、その空想を現実に変えるのが、私たちカレイドステッキの機能です』

 イメージを力に変える、無限の可能性を持つ魔法少女。
 それがカレイドライナー。それが私、プリズマイリヤなのだ。

『お忘れですか、イリヤさん?』
「ううん。今、思い出したよ」

 ルビーと出会ってから、本当にいろんなことがあったけど、彼女と出会えてよかったと、そう思った。
 だからだろう。正直、魔法少女と名乗るのはかなり恥ずかしいけど、今は少しだけ、そう名乗ってもいい気がしていた。

『ではイリヤさん。士郎さんに謝りに行きましょう』
「うん。ありがとうね、ルビー」
『いえいえ。これくらいお安いご用です』

 滲み出た涙を拭って、イリヤはルビーへとお礼を言った。
 そして士郎へと駆け寄り、その手を取る。

「イリヤ? どうしたんだ?」
「お兄ちゃん、ごめんなさい。それと、助けてくれてありがとう」
「べ、別にいいって。兄貴が妹を守るのは当然なんだからさ」

 少し照れくさそうに、士郎は言った。
 その言葉が嬉しくて、でもそのために彼がまた無茶をするのが悲しくて、
 強くなりたい、と、イリヤは初めて心から思った。

 ルビーと関わってから、たくさん怖い思いをした。痛い目にも合った。……死にそうにもなった。
 けど結局はルビーの力で、その時に持っていただけの力で、どうにかできていた。大切な人を……友達を、守れていた。
 けど、これからはもう、ルビーの力だけに頼ることはできない。
 そんな甘えは許されない。

 だから私は、強くなりたかった。
 大切な人を、私自身の力で、守れるくらいに―――



『にしても、やっぱり自爆ボタン押しちゃいましたねぇ、士郎さん』

 そんなイリヤを見守りながら、ルビーはそう呟いた。
 あの瞬間、衛宮士郎は何の躊躇いもなく投影を使った。
 左腕の影響もあっただろうが、それでも危険であることは知っていたはずなのにだ。

『これは一度、内心を聞く必要がありそうです』
 今回は最悪の事態こそ免れたが、次も無事で済むとは限らない。
 また同じことにならないように、その心理を探る必要があるだろう。

 なぜ正義の味方に拘るのか。
 なぜ自分を危険に晒してまで他人を助けようとするのか。
 その行動の原因が分からなければ、結局のところ衛宮士郎は止められないだろうから。

『ですが、その前に』
 と呟いて、ルビーはバゼットの傍へと寄る。
 たとえ士郎の行動理念が判明しようとも、あの左腕をどうにかしなければ、危険なことに変わりはない。
 ならば最悪の結末を避けるためにも、打てる手は可能な限り打っておく必要がある。


『バゼットさん、気付いていましたか?』
 バゼットへと質問を投げかける。
 それは先の戦いに関しての事だと察し、バゼットは然りと肯いて答える。

「衛宮士郎の“投影”と、彼の作り出した弓の事ですか。
 あれは、“アーチャーの能力”に間違いない、そうですねルビー」
『はい、その通りです』
 士郎の語った第五次聖杯戦争におけるサーヴァントと、クラスカードで呼び出される英霊が一致していることはすでに確認している。
 そして士郎の見せた魔術、作り出した弓は、クロの使うアーチャーのクラスカードの能力と同じものだった。
 これらの情報で示されることは一つ。即ち。

「あの英霊の左腕は、サーヴァント・アーチャーのもの、ということですか」
『それもありますが、より正確に言うならば、“士郎さん自身がアーチャーの正体”だと思われます』
「な――――!」
『あの左腕による魔術と考えられないこともありませんが、聖骸布に封じられた状態で、あそこまでの精度を出せるとは思えません。
 それに第一、“異なる霊体同士の接合は普通、絶対に成功しません”。それはバゼットさんも知っているでしょう。
 ならば、アーチャーと士郎さんは同じ存在であると考えるのが、一番無理のない答えなんです』
「それは……そうですが………」

 ルビーのその推測に、さすがのバゼットも同様を隠せない。
 クラスカードで呼び出される存在は、紛れもない英霊なのだ。
 それと同じ存在ということは即ち、“衛宮士郎は英雄だ”と言っているようなものだ。
 現代において、生きた英雄などそうお目にかかれることではない。

『まあもっとも、士郎さんが英雄だとしても、それは十年以上未来での事でしょうけどね。
 でなければ、あの腕からの反動ももう少し軽いはずです』
「……………………」
『そこでバゼットさん、一つ、お願いがあるのですが』
「クロエ・フォン・アインツベルンを捜すことに協力してほしい、ということですね」
『おお、よくお分かりで。はい、その通りです』
「分からない訳がありません。衛宮士郎がアーチャーと同じ存在であると考えるのであれば、アーチャーのクラスカードを宿している彼女なら、衛宮士郎の左腕に何かしらの軽減処理を行える可能性があると予測するのは道理です」

 そう。クラスカードの本当の力は「人間を英霊にする」というもの。
 ならば衛宮士郎自身を、“負荷のあるアーチャーの腕ごと、負荷のないクラスカードで”、同一存在であるアーチャーへと“存在を上書き”すればどうなるか。
 その結果は、全く予想できない。だが“自分自身の力”なのだ。馴染まない筈がない。
 少なくとも“夢幻召喚(インストール)”中は、一切のリスクなく魔術行使ができることは間違いないだろう。

「いいでしょう。その申し出を受けます。
 彼が頼れる戦力になるのであれば、私としても望ましい」
『ありがとうございます』
 ルビーはバゼットに例を告げ、イリヤの元へと戻って行く。
 バゼットはそれを見届け、若干歩み速めた。


 そうして、契約を交わしたもの、理想に敗れたもの、魔術に属する者同士の会話は終わった。
 彼らのそれぞれの当面の目的は定まった。
 後はただ、その目的のために、己が意思を通すだけだ。

 たとえその先に、いかなる運命が待ち受けていようと――――


【G-2/市街地/一日目 午前】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)
[装備]:干将莫邪@Fate/stay night、アーチャーの腕
[道具]:基本支給品2人分(デイバッグ一つ解体)、お手製の軽食、カリバーン@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:一先ず穂群原学園に向かい、休憩をとる
2:バゼット、巧と協力して、イリヤを守る。
3:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
4:巧の無茶を止める
5:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
6:桜……セイバー……
[備考]
※十三日目『春になったら』から『決断の時』までの間より参戦
※アーチャーの腕は未開放です。投影回数、残り五回
[情報]
※イリヤが平行世界の人物である
※マントの男が金色のロボットの操縦者

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:一応バゼットとルビー、お兄ちゃん(衛宮士郎)の指示には従うけど……
2:ミユたちを探す
3:お兄ちゃんを守れるよう、強くなりたい。
4:お兄ちゃんには戦わせたくないし、あまり重荷にはなりたくない
5:乾巧の子供っぽさに呆れている
6:バーサーカーやセイバーには気を付ける
7:呉キリカに恐怖
[ルビー・思考]
基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する
1:士郎さんを助けるために、クロさんに協力を仰ぐ
2:士郎さんの無茶を止めるために、その内心を聞く
3:呉キリカの使用した魔術の術式と言語が気になる
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?

【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中)、全身裂傷、左腕重傷(骨、神経は繋がっている、応急処置・縫合済)
[装備]:ルーンを刻んだ手袋
[道具]:基本支給品、逆光剣フラガラック×2@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:何としてでも生き残る。手段は今の所模索中
1:一先ず穂群原学園に向かう
2:衛宮士郎、イリヤスフィール、乾巧と手を組む。
3:とりあえず会場を回り、クロエ・フォン・アインツベルンを捜す
4:セイバーを追い詰められるだけの人員、戦力を捜す
5:障害となる人物、危険と思しき人物は排除する
6:呉キリカのような魔法少女について調べる
7:呉キリカと再び遭遇したら、今度こそ確実に仕留める
[備考]
※3巻の戦闘終了後より参戦。
※「死痛の隷属」は解呪済みです。
※フラガラックの特性の発動条件は、通常より厳しくなっています。
※セイバーやバーサーカーは、クラスカードを核にしていると推測しています。
※衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
※魔法少女やオルフェノクについて、ある程度の知識を得ました(が、先入観などで間違いや片寄りがあるかもしれません)

【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、治療済み、肩から背中に掛けて切り傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:とりあえず、穂群原学園で怪我の治療をする
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:衛宮士郎が少し気になる(啓太郎と重ねている)
4:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
5:マミは探さない
[備考]
※参戦時期は36話~38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者



094:暴君主権 投下順に読む 096:美国織莉子、私の全て
時系列順に読む 097:アルミナ
082:hollow 乾巧 099:かつてセイギノミカタを目指した者の夢
衛宮士郎
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
バゼット・フラガ・マクレミッツ
呉キリカ 096:美国織莉子、私の全て


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