hollow

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hollow ◆Z9iNYeY9a2



市街地を歩く三つの人影。乾巧、衛宮士郎、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

食事の後、一人で行こうとする巧だったが放っておけない士郎が一緒に行くと言い出したのだ。
無論巧は付き添いなんかいらないと言ったのだが、士郎は付いていくと譲らず巧のほうが折れる形となった。そしてイリヤは士郎についていくことになったのだ。
その最中だった。放送が始まったのは。

そして放送が終わった後、しばらく歩いたところでルビーが不意に声を出した。

『…イリヤさん、何かすごく嫌な気配を感じるのですが。
 どうもこちらに近づいてきて――』
「…む、あなたは、イリヤスフィール?」
「『ゲッ?!』」

突如現れたスーツ姿の女。
その姿を見た途端、思わず身構えてしまうイリヤ。ルビーも悲鳴に近い声をあげてしまう。

「『バ、バゼット?!!』」
「ああ早く転生、転生を!!」
『いや~…、今のイリヤさんでは勝ち目なさそうですよ…。士郎さん達もいることですしこの場はおとなしく降参したほうが…』
「そんな~!!」
「…その反応はやめてください。さすがに傷付きます」
「あー、落ち着けイリヤ。あんたは?」
「バゼット・フラガ・マクレミッツといいます」

士郎から見ればそこまでおかしい人には見えなかった。
イリヤの知り合い、かつルビーのことも知っているということはつまり彼女も魔術関係者ということなのだろう。

「俺は衛宮士郎。イリヤの、その…、兄だ」
「乾巧だ。こいつらとはここで会った」
「なるほど、………。
 一つ伺いますが、彼の素性は分かっているのですか?」

軽い自己紹介の後、バゼットが問いかける。
彼というのは乾巧のことである。

「いや、今のところ軽く自己紹介しただけだけだ。でも信用できると俺は思うぞ」
「ちょっと失礼」
『きゃーどこ触ってんですか~!』

おもむろにルビーを掴みあげるバゼット。
三人には何やらバゼットが怒っているような気がした。

「ゼルレッチ卿の礼装ともあろうあなたが不用意に姿を晒すなど、何を考えているのです?」
『いやぁ、じーっとしているのも性に合わないですし。
 それに私みたいな道具っていちいち話していないと存在とか忘れられそうじゃないですか』
「言っている意味が分かりません。それが存在を明かしてよいことにどうして繋がるのですか」
『だってほら、あなたは知ってるでしょうけど私ってここを抜け出すにはどうしたらいいか~とか、そういうことに一番近いと思うのですよ。
 それなのに情報を集められなければ何もできないじゃないですか』
「……」

バゼットにはそれが正しいのかどうかの判断まではつかなかった。
ただそれを否定するには彼女とルビーとの関わりがあまりにも薄すぎた。
もしこれが凛やサファイアであったなら反論できただろう。

『もっと状況に応じて臨機応変に生きたほうがいいですよ。特にここから出たいのであれば。
 最悪記憶操作という手段もありますし、そこまで神経質にならなくてもいいんじゃないですか?』
「仕方ありませんね、今だけはその口車に乗せられておきます。しかし話す際の言葉は慎重に選んでください」

「ねえ、お兄ちゃん、いったい何の話をしてるの?」
「あー、まあイリヤは知らなくてもいいことだ」

そんな会話を脇で聞いていた三人。
その会話の意味が分かったのは士郎だけだった。
だからイリヤの問いかけも適当に誤魔化しておいた。
イリヤが魔術師の掟などに触れる必要はないのだから。


「話は終わりました。積もる話もあるようですし腕の処置もしたい。どこか休息の取れる場所はないものか」
「そういえばバゼット、その傷…」

と、イリヤが気付いたように左腕に目をやった。
見ると切り裂かれたスーツの中からは乾いた血の色が見える。

「この件も含めて、色々と伝えておかなければならないこともあります」


そうして4人と1本が入ったのは一件の民家である。
生活感などなく、ただ民家にありそうなものを詰め込んだような家。おそらく住人など元から存在しないのだろう。
そしてそんな空間であるからこそ、一般家庭にありそうなものであればある程度はおいてあった。
スーツの袖を千切ったバゼットが傷口の縫合に使っている救急箱、ナイロン糸もそういったものなのだろう。

最も、麻酔も無しにも関わらず声一つあげることなく自分の腕を黙々と縫っていく姿というのは色々とすごい光景であったが。
イリヤは早々に部屋から逃げ、巧も空気を吸ってくるといって出て行ってしまった。
故に今は士郎とバゼットだけが部屋に残っていた。

残ったといっても特にコレといった会話があったわけではない。
せいぜい士郎が手伝いを申し出て、断られたくらいのものだ。

何かしていたかった。彼にとっても彼女があの放送で呼ばれたことは少なからずショックだったのだから。

(遠坂…)

士郎にとっては友人であり仲間であった。ある種の好意も抱いていたかもしれない。
ある意味では全てのきっかけであり、そしてセイバーを失った今では数少ない味方であった。
その存在の死は衛宮士郎には思いのほか堪えるものだったようだ。

(桜…、俺は―――)

彼女はどうしているのだろうか。
やはり自分の姉の死に悲しんでいるのだろうか。あるいはあの影となって人を襲ったりなどしてはいないか。
もし、さっきの放送で彼女の名前が呼ばれていたら俺はどうなっていたのだろうか。
あるいは、どうするべきなのだろうか。
答えは未だ見つからなかった。


部屋の外の廊下、イリヤは傍にルビーを伴って座り込んでいた。

『いいんですか?士郎さんとバゼットさんを二人きりにしたりして』
「……」

よくはなかった。一時休戦とはいえバゼットのこと完全に信用できたわけではないのだから。
それでも今あの空間にはなんとなく戻りたくなかったのだ。

『やっぱりですか。イリヤさん、凛さんの件はまだ受け入れられてはいませんか?』
「……」

イリヤにとって、彼女はある意味全てのきっかけといえる存在であった。
突然現れ、自分を下僕にし、何かとルヴィアと共に変なトラブルを持ち込んでくるトラブルメーカー。

イリヤにはそんな遠坂凛が死んだという事実は未だに受け入れきれていない。
それも当然だろう。今まで彼女自身戦いに身を投じてきたとはいえ、その中で死を見たことはなかったのだから。
ましてイリヤ自身は魔術師ではない。いくら魔法少女に変身できるとはいえ精神的には一般人、小学生なのだ。

「…正直、凛さんが死んだって聞いたとき、全然実感なんて沸かなくて、そのうちどこかから出てきそうな気がして。
 ひょっとしたらこれは夢で、もし目を覚ましたらいつもどおりにみんなと騒がしくするような日々に戻れるんじゃないかって、心のどこかで思ってて」
『残念ですがこれは現実のようですね』
「…」
『イリヤさん、あなたは死という現実を目の当たりにしてしまった。
 ですがだからといって、あまり背負いすぎないようにしてください。特に士郎さんのことなど』
「え…っ?」

なぜそこでその名前が出てくるのか、イリヤには分からなかった。

『私もこれまであえて深くは触れてこなかったことですが、今後のために一応言っておくことにします。
 彼は衛宮士郎です。しかしあなたの想う彼とは別人だということは頭に入れておいてください』
「そ、それは…」

イリヤ自身も分かっている。だがどんな存在だろうと衛宮士郎であることには変わりないのだと。
そう考えて受け入れてきた。
だが、ルビーが言うのはそういった話ではないのだ。
なんとなくそんな気がした。

「そんなの、ルビーに言われなくても…」
『それならこっちも安心なのですが』
「…ねえルビー、それならさっき放送で呼ばれた凛さんは――」
『こちらはどちらにしても確信がとれません。あまりそれに期待しすぎないほうがいいと思いますよ』

凛が死んだのが悲しかったはずなのに、ルビーが難しいこと言い出すせいで頭の中が混乱してしまう。
などと思っていると、巧が出ていこうとするのが目に入った。

「あれ…?乾さん行くの?」
「ああ、どうせ俺がいても邪魔っぽいしな」
『おや、士郎さんがそんなこと言いましたかね?』

話しながらも既に靴を履いている。放っておくと本気で出ていきそうだ。
そうなったらきっとお兄ちゃんは追うだろうしそのままあの時のようにセイバーやロボットに出会ってしまうかもしれない。

「待って!」
「…何だよ」
「別に乾さん、殺し合いに乗ってるとかじゃないんでしょ?
 だったらみんなで協力すればいいじゃない。どうして一人でやろうとするの?」
「やらなきゃいけねぇことがあるんだよ。他の奴を巻き込む気はねえ」
『巻き込む、という表現もおかしいですね。きっと士郎さんなら進んで手伝ってくれるでしょうし』
「それがうっとおしいって言ってんだよ」
『おや、もしかしてあれですか?自分が傷つくのはいいけど人が傷つくのは見たくないって本心を見せたくない、とか?』
「…」

一瞬巧の動きが止まる。
その時だった。

「おーい、もう終わったから戻っても大丈夫だぞ」

士郎の声が聞こえる。バゼットの縫合が終わったのだろう。
イリヤは部屋に戻り、巧もタイミングを逃したと言わんばかりに靴を脱ぎなおし、その後に続いた。


「それにしても、バゼットさんでもあのセイバーに勝てないなんて…」
『さすがは本物の英霊は格が違うといったところでしょうか』

バゼットが治療を終えた後、居間にて4人はそれぞれの情報を交換していた。
まず出た話は、セイバーの件。バゼットの怪我についての話題が最初となったために出てきた話だった。
斑鳩という施設にいるニアという存在、呉キリカという少女、そしてセイバー。

『もし移動していれば、おそらく彼女はこことは反対側のイリヤさんの家の方角に向かったでしょうね』

それを聞いてイリヤは安心し、士郎は複雑な気持ちになった。
というかバゼットで勝てないとなるとかなり厳しいのではないか、とイリヤは思っていた。


「さて、それではあなたのこともお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「そういえば乾のことまだ聞いてなかったな。この際だし、色々と教えてくれないか?」
「…」

巧の言う情報をまとめたところ、園田真理、草加雅人、長田由香、海堂直也が仲間となりうる人物。
村上峡児、北崎、そして木場勇治が危険人物、ということらしい。
ついでにオルフェノクという存在がどのようなものか、おおざっぱに説明もしてもらっておいた。

「人間を襲うことで仲間を増やす怪物、ですか」
「ああ、元は人間だったって言ってもそうなったら人間の心を無くすんだよ」
( (え?) )
(なるほど、そういうことですか。全く難儀なものですねえ)
「死徒のようなもの、という認識でよいのでしょうか」

最後のは小声での呟きである。
何はともあれ、士郎達3人の会った人物の中にはその者達はいなかった。それ以前に出会った人物もそこまでいたわけではない。
一方、巧はこの6時間ほどの間に随分と多くの人物と出会っていた。彼の知り合いも多くいたが、士郎達の知り合いはいなかったのだが。

魔王を名乗る仮面の男、ゼロ。
魔法少女を名乗る少女、暁美ほむら、佐倉杏子、そして巴マミ。
アリスという少女にマントを羽織ったルルーシュ・ランペルージという男。

バゼットが好奇心からか魔法少女というものについて詳しく聞きたがっていたが巧は詳しいところまで覚えてはいなかったため説明することはできなかった。

『なるほど、魔法少女ですか、興味深い話ですねぇ。ぜひとも会ってMS力を測ってみたいものですね』
「ねえ巧さん、その巴マミって人のことなんだけど―」

巴マミ。金髪で髪をロールしている少女。
イリヤは知っていた。あの金色のロボットが暴れていたあそこで黒髪の男を殺そうとしていたあの人のことだ。
巧の言っている巴マミと同一人物とは思えない。だが状況から言って同一人物としかありえないだろう。

「おい、どういうことだよそれ?!あいつがそんなことするかよ!!」
「だからこっちも分からないんだよ。そもそもあのロボットは何だったんだ?」
「さっき言ったルルーシュとかいうやつが撃ったあとでいきなり出てきたんだよ。
 ああくそ、何がどうなってんだよ…」

話せば話すほどどうなっているのか分からなくなる。
巴マミがそんなことを理由もなくやるはずがない。撃たれたことで混乱していたのだろうか?
考えがまとまらない中、意外なところから思わぬ情報が放たれた。

「一つよろしいですか?マントの男に金色のロボット、と言いましたね?」

会話に入り込んでくるのはバゼット。

「何か知ってるのか?」
「私が知っているわけではありません。
 ただ、私の出会った者の中に呉キリカという少女がいまして。
 仲間と判断し、ここから東にある斑鳩という施設に送ったことは伝えましたね」

呉キリカ。巧はその名前をどこかで聞いたことがある気がした。だがよく思い出せない。
情報のほとんどは啓太郎任せにしていたせいか、と自身のことながら思う。正直知り合いの知り合いのことまでは覚えていない。
そういえば鹿目まどかとナナリー・ランペルージという少女もいたな、と思い出す。

「彼女はここに来てすぐ、冬木大橋とされるあの橋の近くでその存在と交戦したと聞きました。
 マントの男が金色の戦闘兵器を召喚した、とも」
「おいちょっと待て、あいつはスマートブレインが崩れるあそこで会ったって言ってたんだぞ。
 何でそんなところにいるんだよ、おかしいじゃねえか」

巴マミがあの崩壊現場で会ったというルルーシュと金色のロボットを駆るマントの男。
同一人物としたら位置と時間が一致しない。

『あー、これはもしかしてあれですね』
「あれって何よルビー?」
『ほら、あれですよ。平行世界にいる同じ顔をした別人っていうのもいるんじゃないですか?』
「なるほど、確かにそれなら辻褄は合います」

イリヤ自身、クロという存在があったためその辺の理解は早かった。
しかし巧には理解が追い付いていなかった。

と、そこまで話したときだった。
士郎が顔を険しくして立ち上がったのは。

「みんな、気をつけろ」
「お、お兄ちゃん?」
『やばいですよイリヤさん、ここ狙われてます』


呉キリカ。彼女は斑鳩を出発後、当初の予定通りに美国邸を目指して移動していた。
その最中であった。魔力を発する存在を感じ取ったのは。

「ん~、複数?ってことは何人か集まってるってことかな~?」

複数人相手となると意外と手こずる可能性がある。
魔力消費は抑えておかなければ織莉子を見つけたときにかっこ悪い姿を晒すことになるかもしれない。
この場合は賭けになるが短期決戦で結界を絞って爪を増やして攻撃力をあげるか。
あるいは広めに範囲をとることで分散させて各個撃破にするか。

「ま、その辺は臨機応変に、ってことで」

戦略などを考えるのは得意ではないのだろう。
細かいことは突っ込んでから考えればいい。
そんな、彼女らしいといえばらしい考えの下、キリカはその民家を中心に結界を張る。
そして発動を確認した後そこに突っ込んだ。


それが飛び込んできたのは、結界が張られたことに気付いた士郎とルビーが警戒を促した直後であった。

―ガシャーン!!
窓が割れた、どころかその窓の周囲までもを人の通れる大きさに切り裂きそれは現れた。

「とーう!愛の魔法少女、呉キリカちゃんいざ参上!!」

そんな謎の口上と共に現れたのは黒い服に身を包んだ眼帯の少女だった。
その出現に最も驚いていたのはバゼットである。

「あなたは呉キリカ…?!ニアのところに向かったのではなかったのですか?!」
「お、誰かと思えば大恩人!ってことはちょっと早まったかな~。
 うーん、まあでも、その、あれだ、些細だ」

バゼットを見て一瞬何か考え込む様を見せるも、直後に自己完結している様子のキリカ。

「まあどうせここで殺せば一緒だろうし、ね!!」

キリカは不意に部屋にあった机を打ち上げ、バゼット、そしてその近くにいた巧に投げつける。
轟音とともに壁が崩れたことによる煙が巻き上がり、視界が塞がれる。

最初に襲いかかったのは士郎。
彼を狙ったことに特に意味はない。ただ目についたというだけだ。

「っ…!早い…!」

士郎は干将莫邪を構えて迎え撃とうとするもあまりの速さに対応が追い付かなかった。
それでもかろうじてその手の爪を受け止め切り返したが、それもあっさりとよけられてしまう。

「お兄ちゃん!!」

と、そんなキリカの横から魔力弾を撃ち込むイリヤ。既にその姿は魔法少女のものとなっている。
士郎の前に出て庇い、目の前の敵と向かい合う。

「後ろに下がってて!!
 あなた、お兄ちゃんに手を出さないで!」
「へぇー、君も魔法少女だったんだね。
 じゃ、君から殺すとしようか」

魔法少女であったという事実がキリカの注意を引いた。
それは士郎から気を逸らすことには成功したが、彼女の意識をイリヤが直接受け止めることになってしまった。
純粋かつ狂気に満ちた視線がイリヤに注がれる。

「………!?」

そしてそれはイリヤが恐怖を感じるには十分なほどのものだった。

『イリヤさん!』
「イリヤ!!」

近づくキリカに身動きが取れないイリヤを呼びかけるルビー。そしてイリヤの様子に気付き前に飛び出す士郎。
飛び出した士郎はその手の双剣を振りかざし牽制しようとした。
しかし魔法少女であるイリヤを殺すことを優先としたキリカは士郎を踏み台にすると同時に蹴り飛ばし、増した勢いのままその凶刃をイリヤに向ける。
吹き飛ぶ士郎と立ち尽くすイリヤ。

―ザン
「―――あ」

ルビー自身が作った障壁によりその爪が体を貫くことはなかった。
しかしそれでも守りきれなかった衝撃はイリヤの腕に深い傷を作っていた。
痛みと体から流れ落ちる生々しい赤い液体。それは恐怖で身をすくませていたイリヤをさらにパニック状態に追いやる。
思考が止まり、ルビーを取り落してしまった。

「ほらほら、ぼーっとしてると死んじゃうよ!!」

それでも敵は待ってなどくれない。素早い身のこなしでさらなる一手がイリヤにせまる。

「避けろ、イリヤーー!!」

一方投げつけられた机の近くにいた巧は態勢を立て直していた。
投げられた机の影に隠れたせいかバゼットの姿は見えない。
見ると、キリカと言った魔法少女が士郎を吹き飛ばしてイリヤに肉薄する瞬間が目につく。
急いでオルフェノクへと変身して助けに行こうとする。
だが、

「…!!くそ、こんな時に…!!」

これまでの戦いでのダメージが回復しきっていなかったのだろう。
体の痛みが変身を遅らせてしまう。そして相手の動きはその一瞬を命取りとするほどのものであった。
腕を斬られて動けないイリヤとそんな彼女に迫る黒い魔法少女。
変身している暇すらもない。急いでイリヤの元に飛び出し、抱きかかえた態勢で倒す。

「あ……、乾さ――」
「ぼーっとしてんじゃねえよ」

イリヤは庇うことができたものの、巧の肩からは血が流れていた。
それでもキリカの攻撃は終わっていない。起き上がろうとする巧の後ろで爪を振り上げて肉薄し――

「―――お?」

そんな彼女の横から高速の拳が叩きつけられた。

「んぎゃっ?!」

悲鳴を上げて吹き飛ばされるキリカ。
壁を突き抜け廊下の外まで飛んでいったようだ。

「大丈夫だったん――っておい!」

近くまで寄ってきたバゼットはイリヤの足、そして起き上がって近くにいた士郎の腕を掴み、キリカの入ってきた窓があったはずの穴に放り投げた。

「うおっ?!」
「きゃ!」

士郎はどうにか態勢を立て直すが、足を掴まれたイリヤにはそのようなことができるはずもなく。
慌てて飛び出した巧がどうにか受け止めることで地面に激突することは避けられた。

「この場は私に任せてください」

そう言い残してバゼットは窓の前に棚やソファを倒してバリケードを作った。
バゼットの姿は見えなくなるが中からの何かが壊れる音は外まで聞こえてくる。

「バゼット!!」
「おい、行くぞ!」
「行くって…、バゼットはいいのかよ!?」
「いいわけねえだろ、でもこいつはどうすんだよ!」

そう言って見せられたのは巧の腕で震えるイリヤ。
腕の傷は深くはないものの血はまだ止まっておらず、少しずつではあるが傷から流れ出ていた。
こんな状態のイリヤを連れたまま戦うことができるかといえば×だった。

「お兄ちゃん…」
「イリヤ…、くそっ…!」

その苛立ちはイリヤを守りきることができなかった自分へのもの。
今はここを離れ、イリヤの手当てをすることが優先なのだろう。
あのような危険人物に一人仲間を残して行くことに後ろ髪を引かれる気持ちを残し、3人はここから離れた。

「…あれ、ルビー…?」


「さて、これで邪魔は入りません」

確か彼女自身が魔法少女、といったか。
このような結界を瞬時に作り出す魔術師というとかなりの能力を持っていることになる。
仮にも魔術協会の人間として、それを惜しみもせずに人目にさらすような者を放置しておくわけにはいかない。
それに"魔法"少女などというものを自称されるのもあまり気のいいものではなかった。

やがて壁を壊しながらキリカはその姿をみせる。

「あはははは、意外とやるじゃないか大恩人!!」
「あなたは優勝を狙ってはいないのではなかったのですか?」
「そうだよ、私は愛しい人を生き残らせるためにみんな殺して回るつもりなんだからさ」
「なるほど、そういうことでしたか」

つまり、これは自分の認識の甘さが招いたことか。
おそらくニアはもう生きてはいないだろう。
彼の計画はそれなりに有用なものであり、可能かどうかは別として失うには惜しいものではあった。
そこにはバゼットも若干は責任を感じずにはいられなかった。

「それではあなたは私の敵か」
「あーあ、本当ならあの魔法少女から殺したかったんだけどね。
 まあ君は大恩人だし特別だから先に殺してあげるよ!」
「そう簡単にいくとは思わないことだ」

あの速さ自体は脅威ではあるがかつて戦った英霊の影、そしてあのセイバーに比べれば劣る。対処できないほどではない。
腕のあの爪にさえ気をつければどうとでもなるだろう。
あとは一応支給品に脅威となるものがないかということにも注意しておかねばなるまい。

「なにしろ私の仕事はあなたのような存在を狩ることなのですから」

爪を振りかざして迫るキリカの前で、バゼットはルーンの刻まれた手袋をはめた。


『よよよ、ひどいですよイリヤさん…。
 このバーサーカー女とこんな中二病魔法少女もどきのところにおいていくなんて…』
「片づけたらすぐに追いかけます。それまでは静かにしていなさい」

【G-3/市街地/一日目 朝】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:干将莫邪@Fate/stay night、アーチャーの腕
[道具]:基本支給品2人分(デイバッグ一つ解体)、お手製の軽食、カリバーン@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:ここから離れ、イリヤの治療をする
2:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
3:巧の無茶を止める
4:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
5:桜……セイバー……
6:
[備考]
※十三日目『春になったら』から『決断の時』までの間より参戦
※アーチャーの腕は未開放です。投影回数、残り五回
[情報]
※イリヤが平行世界の人物である
※マントの男が金色のロボットの操縦者


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中) 、ダメージ(小)、右腕に切り傷(中)
[装備]:なし
[道具]:クラスカード(キャスター)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:痛みと恐怖で思考が纏まらない
2:ミユたちを探す
3:お兄ちゃんには戦わせたくない
4:乾巧の子供っぽさに呆れている
5:あまりお兄ちゃんの重荷にはなりたくない
6:バーサーカーやセイバーには気を付ける
7:呉キリカに恐怖
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?


【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、治療済み、肩から背中に掛けて切り傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい。
1:隙を見て二人の元から離れたいが、なんとなく死なせたくない
2:この場所から離れる
2:衛宮士郎が少し気になる(啓太郎と重ねている)
3:マミは探さない
[備考]
※参戦時期は36話~38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者


【G-3/民家/一日目 朝】

【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:全身裂傷、左腕重傷(骨、神経は繋がっている、応急処置・縫合済)、疲労(中)
[装備]:ルーンを刻んだ手袋
[道具]:基本支給品、逆光剣フラガラック×3@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、
[思考・状況]
基本:何としてでも生き残る。手段は今の所模索中
1:呉キリカの排除
2:セイバーを追い詰めれるだけの人員、戦力を探す
3:とりあえず会場を回ってみる
4:障害となる人物、危険と思しき人物は排除する
5:呉キリカを撃破後、イリヤスフィール達と合流する
[備考]
※3巻の戦闘終了後より参戦。
※「死痛の隷属」は解呪済みです。
※セイバーやバーサーカーは、クラスカードを核にしていると推測しています。
※魔法少女やオルフェノクについて、ある程度の知識を得ました(が、先入観などで間違いや片寄りがあるかもしれません)



【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ダメージ(中)、ソウルジェムの穢れ(3割)
[装備]:魔法少女姿
[道具]:基本支給品、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)
    スナッチボール×1@ポケットモンスター(ゲーム)、魔女細胞抑制剤×1@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ
[思考・状況]
基本:プレイヤーを殲滅し、織莉子を優勝させる
1:織莉子と合流し、彼女を守る。ひとまずは美国邸が目的地。
2:大恩人を殺し、魔法少女(イリヤ)を追う。
3:まどかとマミは優先的に抹殺。他に魔法少女を見つけたら、同じく優先的に殺害する
4:マントの男(ロロ・ヴィ・ブリタニア)を警戒。今は手を出さず、金色のロボット(ヴィンセント)を倒す手段を探る
[備考]
※参戦時期は、一巻の第3話(美国邸を出てから、ぬいぐるみをなくすまでの間)
※速度低下魔法の出力には制限が設けられています。普段通りに発動するには、普段以上のエネルギー消費が必要です
※バゼット・フラガ・マクレミッツから、斑鳩の計画とニアの外見的特徴を教わりました。
※バゼット・フラガ・マクレミッツを『大恩人』と認定しました。


081:外見と心象の違い 投下順に読む 083:漆黒の会談
時系列順に読む 074:MEMORIA-黒き騎士の記憶
064:夢の残滓 衛宮士郎 095:スパークス
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
乾巧
061:対決~英雄の真髄 バゼット・フラガ・マクレミッツ
069:言っちゃいけなかったんだよ 呉キリカ


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