立ち向かうべきもの

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立ち向かうべきもの ◆Z9iNYeY9a2



暗闇と静寂に支配された平野。
人も多くはおらず明かりも少ない。

そんな場所で、赤く燃える炎がいくつも立ち上っていた。

宙に浮遊しているのは、巨大浮遊艦・斑鳩。
黒の騎士団が旗艦として運用していたはずのそれ、しかし今この艦を支配しているものにはそのようなこと全く関わりのない事実だ。

地に向けて幾つも放たれるミサイルと単装砲が炎を上げて闇を照らしている。

そして、それをかわし続けている少女が二人。

一人は爆風が訪れる場所を的確に避けるように走り続け。
一人は目にも止まらぬ速さで砲撃のことごとくを回避し続けている。

「アリス!あれあなたの世界の艦でしょ!
どうにかできないの?!」

一発一発を避けるために未来予知を消耗し続けている織莉子が、焦りながらもアリスに向けて声を上げる。
それをギアスによる高速化で回避するアリスも答えるが、

「無理よ!せめて中に入らないと!
あのクラスの戦艦を単騎で落とそうとしたら、それこそ特機レベルのKMFが必要になるわよ!」

規模を理解しているからこそ、どうにかできるものではないと判断するしかできなかった。
織莉子にしろアリスにしろ、自身の持つ攻撃の全てを撃ち込んだとしても、あの戦艦を撃墜するには至らないだろう。
アリス視点で見れば、きっとほむらが持っていた可変型の単車の火力であっても厳しいだろう。いや、それで落とせるようならば戦艦という役は果たせない。

もし対処するならば戦艦内に入ることは必須。しかし今はあれに迫ることができるだけの飛行能力を自分たちは持たない。
ならば現状最善の選択肢としては逃走しかない。

周囲を見回して逃げる道を見たアリスは、織莉子に呼びかける。

「ちょっと私の手を取りなさい!ここからギアスを使って離脱するから!」

一人ならいざしらず、織莉子を伴った状態で逃げることになれば彼女が加重速による高速化に耐えてもらう必要が出るが、魔法少女ならある程度は耐えてくれるはずだと。
そう信じて織莉子の手を引いて撤退しようとした。

その時だった。

「待って」

織莉子がギアスを発動させようとしたアリスを止める。

「攻撃は間もなく止むわ。無駄に力を使うことはない」

織莉子の未来視が何かを見たのだろう。

そして、その言葉通り、空に赤く燃える炎のような何かが飛来するのが見えた。
赤い竜のような体を持った生き物。織莉子は同じ姿をしたものをポケモン城で見ていた。

その背にはうっすらと、帽子を被った一人の男が乗っているのが見えた。

その姿が確認できたと同時に、戦艦からの攻撃も止んでいた。

「ゲーチス!!その艦に乗ってるのはゲーチスなんだろう!!」

男、Nは戦艦に向けて大声で叫ぶ。

「君と話がしたい!攻撃を止めてくれ!!」

静止の声が届いたのか、戦艦からの砲撃が収まる。
乗っていたリザードンがやがて地面に降り、織莉子とアリスの近くの地に立った。

「ありがとう、だけど何であれに乗ってる相手が分かったのよ?」
「ただの消去法だ。もしゲーチスなら僕とは話そうとはしてくれるはずと信じていたから。
違ったなら違ったで対処を変えただけだよ」

相手を知らないアリスと織莉子にはできない対処だった。

『Nですか。あなたはこちらの艦に来なさい。
こちらとしても話があります』
「それは構わないが、なら条件がある。攻撃を止めてくれ」
『そのような些事を気にするようになったのですか。
いいでしょう。攻撃を止めます。その代わりあなたはこちらに来るのです。
来る手段はそこにあるでしょう?』

手段。リザードンのことを指しているのだろう。
要するに飛んで来いと言っているのだ。


「待ちなさい」

飛び立とうとしたところで織莉子がNを止める。

「私はあなたのことを知りませんが。
しかしこちらをいきなり攻撃してきた相手の言葉を信じるということもできません」
『ではどうするというのです?』
「私達もそちらに共に行かせなさい」

織莉子の懸念も当然のものだろう。
もし乗り込んだNを殺され再度攻撃を再開されてはたまったものではない。

そんな心境を汲んだのか、ゲーチスは少しの沈黙の後返答した。

『いいでしょう。しかしこちらもあなた達二人のことを知らぬため信用することができません。
どちらか一人、付いてくることを認めましょう』

白々しい、と織莉子は思ったものの譲歩は引き出すことができた。

目を閉じて未来視を発動させたところで見えた十分ほど後の未来は、何事もなくこの場に佇んだアリスの姿。
少なくともこの場にアリスがいれば安全ということだろう。

「アリス、あなたは残りなさい。私が乗り込むから。
大丈夫、少なくとも約束は守ってくれるみたいだから」

抗議の声を抑えるように畳み掛けて話す織莉子。
もし何かあった時も、機動力のあるアリスが素早く行動できる状況の方がいいと織莉子は言った。

観念したようにアリスは織莉子の提案を呑み。


数分後、Nと織莉子を乗せたリザードンは空へと飛び立った。

(…?)

そうして開いた斑鳩のハッチに入り込む寸前。

ふと、Nは一瞬だが、ポケモンの声を聞いた気がした。
リザードンのように自分達の持っている者たちではない、別の何者かの声。

思わず振り返ったNだったが、そこに何か見えることはなく。
ゲーチスに会うことに逸る気持ちがあったこともあり、聞き間違いだろうかとそのまま前へと向き直した。

よく耳を凝らせば聞こえたかもしれない。
大きく鳴り続ける戦艦の駆動音の中でそれらとは別に後ろで僅かに響いていた、小さなホバー音に。



斑鳩艦橋。
艦のあらゆる角度の情報を見渡すため多数取り付けられたモニタにはあらゆる角度の風景が映っている。
星が光る暗闇の空。うっすらと映る地上の光景。艦のすぐ側面の宙の色。

そんな画面の前の席に一人の男が座っていた。

Nと織莉子が室内に入ると同時に男は立ち上がりこちらへと振り返る。

「ゲーチス」
「随分と人のような眼をするようになったのですね、N」

その言葉に、思わず顔をしかめていた織莉子。

「いつもの服じゃないんだね。着替えたのかい?」
「ええ、色々ありまして、あの服も汚れてしまいましたからね。
この艦にあったものを拝借させていただきました」

ゲーチスの羽織っているマントはいつもの白いものではなく、黒い色のものを纏っていた。
その色はアッシュフォード学園にて一瞬だが目にしていた仮面の男、ゼロの着ていたものと同じもののようだった。

「N、あなたはその手で世界を変えたいと、ポケモンと人間の共存する世界を変えたいとまだ思っていますか?」
「…ああ。思っているよ」

と、答えたNを見るゲーチスの瞳は回答に対して疑いを持つかのような視線を向けていた。
しかしその言葉を一応は信じることにしたのか、すぐゲーチスはその目線を抑えてこちらへと手を差し出した。

「ならばあなたの持つバッグをこちらに渡しなさい。
手持ちのポケモンも、その全てを」

未来視するまでもなく、織莉子はそれに従うことが碌でもない結果を生むことは見えていた。
一瞬だけ迷うように瞳を動かしたNは、ボールを全てバッグに入れた後ゲーチスの元へと歩み寄り。

「分かった。だけどその前に一つだけ聞かせて欲しい。ゲーチス」
「何でしょうか」
「―――どうしてカイドウを殺したんだ?」

その言葉を発した瞬間、Nの周囲に強い警戒心が現れたのを織莉子もゲーチスも見逃さなかった。
同時に、ゲーチスはその言葉に一瞬意図を問いかねるかのような表情をした後大仰に頭を抱える仕草を見せた。

「カイドウ…、あの化物のことですか。
なぜあなたがそんな小さなことを気にするのですか。あれがあなたにとって重要なものだったのですか?」

言いながらNを見るゲーチスの目には、強い失望の念があった。

「彼は、短い付き合いだったけどボクにとっては仲間と言えるような存在だったんじゃないかと思ってる。
化物だからどうでもいい、なんてことは全く思っていない」
「全く、本当に人間のようなことを言うようになりましたね」
「それで、質問に答えてもらっていないよ。ゲーチス」
「そうでしたね。彼を殺した理由ですが―――」

と、一瞬Nの背後の織莉子に視線を向けたと思うと宙から突如現れた黒い影が彼女に向けて炎を撒き散らした。
瞬時に水晶を盾として掲げて防御したことで事なきを得た織莉子。

そしてそれを見ていたNは驚愕の表情を隠せなかった。

「化物、それも私の思い通りにならないような存在など、気持ち悪く不気味なだけじゃないですか。
殺した理由など、それだけですよ」
「…!」

Nはその言葉で、美遊から聞いたゲーチスの蛮行が真実だったということを実感した。

「…私も、あなたにとっては化物だと?」
「ええ。そうでしょう、魔法を使う少女よ。
あなたのような子供が、人の摂理を外れたかのような不思議な力を使うなど。
気味が悪いとしか言いようがありません」
「全く、時代遅れの魔女狩りか何かかしら」

サザンドラの炎を避けながら、ゲーチスに向けて手をかざす。
水晶はゲーチスのすぐ側面へと着弾し、艦橋の床を抉った。

おそらく彼は肉弾戦は不得手なのだろう。
だからこそこのような戦艦に乗って行動し、策謀を巡らせて生き残ってきた。

「次は当てるわよ。私をここに引き入れたのは失敗だったんじゃないかしら」
「ふふ、何の策もなくあなた達をこの場に招いたと思いますか?」

と、ゲーチスは側の機器に触れモニタの一つの映像を切り替えた。

「―――!」

そこに映っていたのは。

「アリス?!」

全身を土で汚し、口から僅かに吐血した状態で意識を失った少女。
安全と判断したはずのアリスの姿だった。




織莉子を見送って間もない頃の地上。
飛び立った二人と入れ替わるように、アリスは謎の存在の襲撃を受けていた。


「…っ、一体どこから攻撃が…、ぐ…」

視界には何も映ってはいない。
しかし何かがいて攻撃を仕掛けてきている。

動き回るアリスの体には、殴られた痕が、動物の爪のようなもので斬りつけられた傷が幾つも作られていた。


―――Exceed Charge

不意の電子音にギアスを使い急加速によって移動。
直後に今立っていた場所を黄色い円錐状のエネルギーが通過していった。

視覚による情報を奪われているのか何処に居るのかが全く分からない。

(これは…遊園地での情報にあった、幻覚を見せるポケモンの能力…?)

ゲーチスが持っている黒い狐のようなポケモンがこのような能力を持っていると聞いていた。
こうなってくると、織莉子が言っていたこの場にいれば安心という情報がアテにならなくなってきた。

彼女は未来予知で自分の安全を見たはずだ。
しかし少し視界を反らした場所には、自分の姿があった。何事もなく誰かを待つように立ちつくしているアリス自身の姿が。
無論自分はここにいる。あれは幻覚、幻にすぎない。

そしてもし織莉子が見たのがあの自分のことだとしたら。

(…どうしてかは分からないけど、先に手を打たれてたってこと…!)

恨んでいても仕方ない。
敵は少なくとも二体。例のポケモンと、情報のないもう一人の何者か。

視界さえ晴れていればそれでも制圧できただろうが、見えないことがあまりにも厄介だった。
幾度かギアスを発動させ敵の攻撃に対し対応、反撃していたものの、最初の数度は手応えがあったがそれ以降一向に当たった気配がなかった。
どうやらこちらの能力に対し学習したようで攻撃そのものに幻影が混じり始めたのだ。

対策としては二つ。
この周囲数メートルの範囲をギアスによる高速化を以てがむしゃらに探して攻撃するか。
あるいは撤退のためにギアスを用いるか。

風を切る音が耳に届き身をかがめる。
引き金を引く音が聞こえたことで大きく飛び退き走り始める。

(埒が明かないわ…!)

何だかんだぼやきながらも攻撃による致命傷そのものは避けられていることに対する相手への見積もり。
逆に細かな傷を与えてくることに対する苛立ち。

その二つがアリスに対して撤退ではなく撃退の選択肢を選ばせた。
無力化、最悪命を奪うことも視野に入れて動きを決める。

不意に宙に巻き上がった熱を避けた辺りで熱源を探知。ギアスを発動させ握りしめた銃のグリップで見えぬ敵を強打。
グェッという鳴き声と共に柔らかい肉体を叩く感触を手が得る。

同時に付近の景色が変化し、紫の瞳を持つ機甲兵のような存在が目に入った。
幻影の解除に気付き動こうとするより早く、手に生み出した対消滅をもたらすエネルギーを形成。
それをその胸に叩きつけようと掌を突き出し。

しかし機甲兵、カイザはほんの一瞬に僅かに体を反らしていた。
叩き込もうとした一撃の狙いがずれ、腰のベルトを掠めていった。

攻撃を外しギアスが解除され、アリスの姿がカイザの背後に現れる。
再度ギアスを発動させようとしたアリスの、その体を突如横から凄まじい衝撃が襲った。

吹き飛ばされるアリスは、辛うじて発動しかけていたギアスを使い地面へ叩きつけられる衝撃を抑え込む。
ふらつく意識の中で見えたのは、それまでどこにもいなかった銀色の巨大な体がこちらに向けて拳を突き出していた光景。

殴られた肩を抑えながら起き上がろうとしたアリスの頭を、カイザが蹴り飛ばす。
本気ではない、おそらくは意識を失わせることが目的の一撃を受けたアリスはそのまま地面に倒れ込んだ。


『よろしい。ではその少女をこちらへ連れてきなさい』

イクスパンションスーツに備えられた通信機を通してカイザに届く声。
それに従い、ゾロアークを叩き起こしながらアリスの体を抱えあげる。

『…いえ、少し待ちなさい』

ゲーチスの静止の声。
少し考えるような沈黙が続き、カイザ、草加雅人に対し次の指示が与えられた。

『その少女を連れてきた後は、ゾロアークを艦内に残した状態で向こうに見える戦艦に向かいなさい。
もし誰が乗っているようであれば、一人でも多く減らしておくように』

表情が見えないカイザの複眼に、視認できる距離にある斑鳩とは別の戦艦が映る。

ゲーチスの指示を受けた草加は、変身を一旦解除した後人型形態をとったオートバシンに捕まり、そのまま斑鳩へと飛翔した。

一瞬バチリ、とアリスの一撃が掠ったカイザギアの傷が火花を上げた。




「そんな、確かに未来視は無事なアリスを―――」

不確定な未来はあったし、行動次第で未来が変わることもあった。
しかしここまで近くの未来が、それも選択の結果によって変わったことなど、ましてや未来を外すことなどなかった。
思わず口にしかけたところで、聞いていた彼の連れていたポケモンの存在を思い出す。

「なるほど、あなたも未来予知の能力を持っていたのですか。
こちらとしてはNのそれを警戒してのことだったのですが」

Nは時として未来を見ることがあるのはゲーチスも認識していた。
だからこそ念の為の策として、その未来自体に幻覚を見せることができないかとゾロアークを利用したのだった。
結果として思わぬところで功を奏したが。

「ゲーチス、ゾロアークを連れているのか」
「ええ。とても有効活用させてもらっていますよ。”駒”として」
「…!」

その言葉は、彼の本心から発されたものだということがNにも明確に理解できてしまい。
今まで信じてきた、今までポケモンの解放を理想としていると信じてきた男の姿は何処にもなかった。

「今、君はポケモンのことを駒だと、そう言ったのか…?」
「ええ。そうですよ。そしてあなたも駒です。
世界からポケモンという力を奪い、私達だけがその力を持った世界を作り出すためのね」

嗜虐心に満ちた不気味な笑みを浮かべながら、ゲーチスはNを見る。

「ですがあなたは余分なことを知りすぎた。
あのトレーナーのことしかり、この殺し合いで出会った者達しかり。
まあ私の知る本来のNはあのトレーナーとの戦いに敗れましたが、この殺し合いに連れてこられ別の経験をしたあなたであればあるいは別の使い道があるのでは、とも思っていました。
それでもやはり要らぬ知恵をつけまるで人間のように振る舞うようになってしまった。
もう利用価値はありません」
「……!!」

それは信じていた相手から告げられた残酷な真実。
己のそれまでの行動、信念、希望、それら全てを否定するかのようなもの。

思わず、その衝撃にNは膝を折りそうになる。


(……)

そして、それを聞いていた織莉子の中には二つの感情が渦巻いていた。

まず一つは強い嫌悪感。
二人の関係を知らない織莉子が想像できる断片から客観的に聞いていても気分のいい話ではなかった。
サカキのようなまだ矜持を感じる者とは違う、他者を利用することしかしない悪。
そんな存在に対して悪感情を抱くのは至極当然だろう。

一方で、そんな彼の姿の一部に、自分を重ねているところがあることにも気付いていた。
目的のために多くの人を利用し弄ぶ。それは己も行っていたことだ。
そして、今自分の中に囚われているアリスを切り捨てる算段を行っている部分があることにも。

目の前の男は、まるで別側面からの自分を見せられているようにも感じられた。
いわば親近感のようなものかもしれない。




「そういえば、向こうにもう一隻、航空艦が見えますね」

と、別のモニタに映る戦艦に目をやる。

そこには反対方向にいたはずの戦艦、アヴァロンの巨体が近づいているのが見えた。
あれがここにいる、ということは遊園地であれに乗ると言っていた者たちはあの中にいるのだろう。

ゲーチスは側のモニタに手をやる。
斑鳩から、アヴァロンに向けてミサイルが、単装砲が放たれた。


「さて、お二人とも。
こちらの手札は二つ。囚われているあの少女と、そしてあの艦そのもの。
あちらにはこちらで駒とした一人の人物を向かわせました。あの中にいる人物を血祭りにあげるようにとね。
道具の全てをこちらに渡すのであれば、少女は解放し攻撃も止めさせましょう」

言葉の裏に隠された意味。
攻撃を止めるとは言っているが、自分たちをどうするとは一切答えていない。おそらくは無防備になったところを殺す算段なのだろう。
逆に言うと、この場の二人でかかれば現状のゲーチスを制圧することは可能ということ。
だからこそゲーチスはアリスを人質として取っているのだろう。

だが、ゲーチスは織莉子を知らない。
織莉子が必要とあらば人を切り捨てる覚悟を持っていることを知らない。

一方で織莉子自身にも迷いがある。
アヴァロンへの攻撃は、向こうに乗っている者達が対処してくれると信じるしかないとして、問題はアリスだろう。
ここでアリスを切り捨てることが正しいのかどうか。
それはあの男と同じ判断をすることにならないか。

織莉子の心の天秤は揺れていた。




攻撃が始まった斑鳩艦内。
その中を、小さな影が走っていた。

「ポ、ポチャ、ポチャ!!」

その影の正体は、アリスのバッグの中にいたはずのポッチャマ。

彼はアリスから一つの指示を受けていた。

(あの艦の中に入ったら、動力部だと思うところを探して。
そしてもしあの艦が攻撃を開始したら、そこを破壊してあの艦を落とすのよ)

その指示を受けたポッチャマは、織莉子にバッグに入れられた状態で斑鳩に潜入。
動力部を探して走り回っていた。

そして、攻撃が開始される音を耳にしたポッチャマは、ひたすら走り続けていた。


【E-6/斑鳩艦内/一日目 真夜中】

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)、ゲーチスの言葉によるショック
[装備]:サトシのリザードン@ポケットモンスター(アニメ)、タケシのグレッグル&モンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品×2、割れたピンプクの石、スナッチボール×1@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:ポケモン城に向かい、クローンポケモン達を救う
2:世界の秘密を解くための仲間を集める
3:ゲーチスの言葉に対する強い精神的ショック
4:スナッチボールの存在は封印したいが…
[備考]
※モンスターボールに対し、参加者に対する魔女の口づけのような何かの制約が課せられており、それが参加者と同じようにポケモン達を縛っていると考察しています。


【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(中)、肩に切り傷(処置済み)、精神不安定、強い怒りと憎悪と歓喜、痛覚共有の呪い発動(共有対象:なし)
[装備]:普段着、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ、サザンドラ(健康)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品一式、病院で集めた道具(薬系少な目)
羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4@現実、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)
デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り1個)、デザートイーグルの弾、やけどなおし2個@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:N、美国織莉子の支給品を奪った後抹殺する。なるべくダメージは少なく済ませたいが無理なら手段は選ばない。
2:草加雅人を利用し、もう一方の戦艦に乗っている者を皆殺しにする。
3:ゾロアーク、草加雅人の力をもってできるだけ他者への誤解を振りまき動きやすい状況を作り出す。
[備考]
※痛覚共有の呪いを首の刻印の近くに受けていますがまだ共有者はいません。次にこの刻印に触れた者と痛覚を共有することになります。また、その存在にゲーチスは気付いていません。


【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの穢れ(4割)、魔法少女姿、疲労(中)、ダメージ(小)、全身に火傷、肩や脇腹に傷
[装備]:グリーフシード×2(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、砕けたソウルジェム(キリカ、まどかの血に染まっている)、モンスターボール(サカキのサイドンwith進化の輝石・ダメージ(大))@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす。
1:アリスの命を救うか、それとも切り捨てるか。
2:鹿目まどかに対することは後回し。
3:魔力回復手段が欲しい。
4:優先するのは自分の使命だが、他の手段があるというなら―――?
5:もっと他の人を頼ってもいい?
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモン、オルフェノクについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※キュゥべえが協力していることはないと考えていましたが、少し懐疑的になっています。
※マジカルシャインを習得しました。技の使用には魔力を消費します。


【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(小)、ネモと一体化、全身に切り傷、左肩に打撲と骨にヒビ、気絶
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ@ポケットモンスター(アニメ)、双眼鏡、 あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式、
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。
1:ナナリーの騎士としてあり続ける
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:ほむら……
4:美国織莉子を警戒。しかし警戒心自体は少々軟化している
最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※アリスのギアスにかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。
魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは現状不明です。


※斑鳩艦内をポッチャマが走り回っています。




斑鳩とアヴァロンの間が視認できる距離まで迫る少し前のアヴァロン艦内。


Lは手に塗りたくったはちみつを舐めながらモニタに映った文字を眺めていた。

「…L、あまり言いたくはないけど、流石にその食べ方はどうかと思うぞ」
「まあお気になさらず。機材に触れたりはしないので」

あの後戻ってきたまどかとさやかが持っていた食料や飲料、そして甘味料として意識したのかはちみつのビン。
それに直接手を突っ込んでくまの●ーさんのような食べ方をするL。
まどかもさやかも流石に口を出したかったもののどうにも言い出しにくい空気だったのを察した月が敢えて指摘するも本人はどこ吹く風だ。
機材に触れないというのも舐めた手で触れないというマナーとかではなく微量な砂糖の粒子などの付着による機械の不具合を気にしているのだろう。

ため息をつきつつ、諦めたように月は自分の手を動かした。

なおまどかとさやかは二人の会話についてこれなくなってきたのか室内の隅で共に並んで座っていた。
話が纏まった時や聞きたいことがあるような時だけ近くに呼んで情報交換を分かりやすい形で行うようにしている。
例えば、この戦艦にかけられたロックを解除する際、月とLだけでは分からなかった情報をまどか達が答えたり、など。
なお戦艦のロックは一つがキーのおかげで解除の必要がなくなったこともあり、それまで関わった者達から集めた情報で全てのものが解除完了していた。

話を続けているLと月。
時間を無駄に過ぎさせていくのも何だと思ったさやかは口を開いた。


「ねえ、まどか。さっきの話の続きなんだけどさ」
「うん」
「織莉子って魔法少女があんたの命を狙ってたのってやっぱあんたがさっき言ってたのが原因で」

さっきの話の流れで聞きそびれたこと。
さやか自身の気持ちの整理のために必要なことだった。

「そうなの」

やはり襲われた時の恐怖心は残っているのか、まどかは顔を伏せる。

「まどかはさ、そいつのことやっぱり許せないって思う?」
「…ううん」

やっぱり、とさやかは思った。
まどかがどういう子なのかは長年の付き合いもありよく分かっている。
こういう時にもまどかは他人のことを悪く言うことはない。

「私はさ、やっぱ許せないって思うよ。
まどかは私にとって大事な親友だから」
「私が世界を滅ぼしちゃう、ってことがあったとしても?」
「そういうことも、知ってれば私なりにやりようもあったと思うしさ」

さやかにしてみれば友人が困っていることに対して何もできずに勝手に殺されて終わるのは悲しすぎるし怒りを覚える。

「たぶんさ、織莉子さんって世界とかみんなことが大事なんだと思う。
さやかちゃんが私を大事だって言うみたいに。きっとみんなが大好きなんだって、そう思うんだ」

「だからきっと、あの子も魔法少女なんだって思う。
マミさんやさやかちゃん達と同じ、たぶん願ったことは違うんだろうけど、同じ魔法少女なんだって」
「そっか…」

まどかのそのいつも通りとも言える返答に溜息をつきながら。

「まあ、あんたの気持ちは分かったよ。おかげでこっちにも少しは気持ちの整理付いたし」

何だかさっぱりした気持ちになった気がした。


「…あれ?Lさん月さんあれは」

ふとさやかが艦の外を移しているモニタに目をやる。
すると、そこにはもう一隻、こちらのものに匹敵するほどの大きさの戦艦が飛行していた。

距離はそれなりにあるが、戦艦のサイズを距離と照らし合わせればそう遠いというわけでもない。

「…みんな、あれには気をつけた方がいい」

警告を発したのは月だった。

「あれはおそらくだが、何者か危険人物が占拠している可能性が高い」
「先ほど見せていただいたメールですか」

おそらくメロが送信したもの。
きっとあの艦に乗っていたのだろうが、中の内容からかなり焦っていたことが伺えていた。

「危険人物、ですか。
これまでの情報から消去法で判断すれば、もし乗っている者がいるとすればゲーチスでしょう」

さやかがその名前に僅かに反応した。

ゲーチス。
初期は無害そうな面を出して集団の中に混じっていたが、情報が多くの参加者に広がったと思われるタイミングで本性を出し始めた男。
海堂直也の死にも関わっており、美遊達も彼に襲われたという。

残っている明確な危険人物のうち、ゼロ、間桐桜は位置的に無理がある。
木場勇治と村上峡児は既に死亡済みだ。

「あと草加雅人さんの行方が分からないのも気になります。N君が言っていた謎の言動のこともありますが」
「でも、草加さんには…」
「ええ、分かっています。メロさんを襲う理由はない。ですが彼の身に何かはあったことだけは確かです」

謎の言動と共に、草加が真理達に襲いかかったという話を聞いていた。
まどかにしてみれば信じられないことだった。

ともあれ、あの艦に対する対応をどうするかが問題だ。

「防御装置を機動させあの艦より高い位置まで浮上しておくべきでしょう。
幸いこの艦は、言ってしまえばバリアのような装置を持っているようです」

そのバリアは艦体下部にしか展開できないという。おそらくはこのように飛行する艦自体がスザク達の世界でもそう多いわけではないのだろう。

そんな時だった。

「おい、L」
「どうしましたか。何か動きでも?」
「いや、あれ」

と、月が示したモニタを見る。
銀色の人型機械が空を飛んでこちらに迫っている。
その足に捕まっているのは、全身を謎のスーツに包んだ何者か。
顔もすっぽりと覆われておりその表情を見ることはできない。

「月君、この艦に外部から出入りできるような場所はありましたか?」
「いや、ハッチなどは飛行中は全部閉まるようにはしているが…。
ただ一つだけ。さっきゼロが操るロボットの砲撃を受けた箇所、あそこが破損していたように思うんだが…」

砲撃で焼け、破壊された箇所。
戦艦の応急処置で緊急ハッチを閉じることでしのぎこそしたが、その箇所は脆くなっていたはず。

月とLの案じていたことが現実になったのか、戦艦に僅かに衝撃が走った。
その緊急ハッチが破壊されたのだろう。見ると一部のポイントで空気が漏れているのか戦艦の気圧が下がっている。

さやかが立ち上がり、出口に向かって駆け出す。

「さやかちゃん!」
「ここは私が行かないと!今戦えるの、私しかいないし!」
「さやかさん、もし可能ならあの侵入者はここのポイントまで誘導してください」

と、Lはモニタに艦内の地図を出し、幾つかの場所を示した。

「情報が欲しいですので。この辺りなら内部カメラがあってかつ、ここともそれなりに離れています」
「分かりました」

「さやかちゃん!その…、気をつけて…!」

心配そうに声を絞り出すまどか。
さやかは、そんなまどかの髪をくしゃくしゃ、とかき回した後飛び出していった。



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