ニャースとアクロマ・世界のカタチ

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

ニャースとアクロマ・世界のカタチ ◆Z9iNYeY9a2


病院の一室。

瓦礫が多数積もっている部屋に、しかし一定の空間を確保するように開けられた場所。
その中央に、多数のケーブルが繋げられたゴージャスボールがあった。

それを工具で動かすニャース。
目には拡大鏡をかけ、手には布を巻いた状態で、開かれたボール内部を慎重につついていた。

「ピカァ」
「もっとちゃちゃっとできないのかって?無茶を言うニャ。
貴重なボールにゃし、もし操作を間違えたらニャーがこのボールに捕まってしまうニャ」

ニャースはロケット団のポケモンではあるが、固有のトレーナーを持たない存在。言ってしまえば野生のポケモンと同じだ。
登録のないボールに不用意に触れてしまえば、そのまま捕まってしまうだろう。
この場合は一体誰がトレーナーとして登録されるのか、とか様々な疑問はつきないが、ともあれ現状で行動制限をつけられることにメリットはない。
ニャース自身の強い拘りが一番の理由だが。

ついでに言うなら、モンスターボールの使用により、もしかすると機材に変化が生じ解析に差し支えるかもしれない。
少なくとも現状の解析が終わるまでは下手な刺激を与えるのは控えたい。

「ピカピカ?」
「何か分かったのかって?
やっぱりボール自体の設計図とか欲しいニャ。ボールの構造に詳しいわけじゃないし、ちょっと余計なものがついてたとしても区別できないニャ」
「…ピカ、ピカピカ」
「それでもニャー以外には分からないだろうから気落ちせずに頑張れって?
Nも無茶振りしてくれたものニャ」

言いながらも手元のメモに構造図を描いていくニャース。

ふと目をそらしたところに、ゴージャスボールとは異なる、ピカチュウのモンスターボールが目に入る。
こっちも合わせて調べたいところだが、登録済みのピカチュウの体に影響を与えないかも問題だ。
できれば登録済みかつすでにそのポケモンがいなくなったボールを調べたいところだ。その意味するところはあまり考えたくないものだが。


再度作業に集中し始めるニャース。

放送が開始されたのはその数分後だった。




作業を止めて放送に意識を割くニャース。

「ゲーチスに…、ゼロ…、みんなやったのニャな…」
「……ピカ」

C.C.を手にかけたゼロや、話術で一度は自分たちをペースに収めたがその実はNを利用するために多くの悪事を働く存在だったというゲーチス。
Nの無事や残っていた危険人物であった二人の名前が呼ばれたことに安堵するニャース。
そして名簿の残っているメンバーに目をやると、残り人数が10人を切ったことに気付いて気を落とす。

「思い返したら、どうしてニャーは生きてるんだろうニャぁ…?」

思わず窓の外の暗闇を眺めながらそう口走っていた。
深い意味があったつぶやきではない。
ただ、知り合いと言えた人間は皆いなくなり、自分よりも圧倒的に強かったミュウツーも命を落とした。

巴マミもシロナも、自分より強かったはずだ。
サカキも生き残るべき人間であったはず。

それだけの参加者が命を落として。

「一体、この殺し合いって何なのにゃ…」

そんな疑問が生まれていた。

一体何を図っているのか、何を確かめようとしているのか。

「なんて、言ったところで答えなんて出ないにゃ」

一人で考えていても仕方のないことは一旦置いておき作業の仕上げに取り掛かろうとするニャース。

構造図やデータはこの2時間ほどでだいたい取り終わった後だ。現段階で9割は終わっている。
部品ごとの役割がどういったものなのかとかを考えるより先に手を動かすことを優先してきたため、そこまでの時間がかかったわけではない。

あとはこれを他の人にも見せてもう少し多角的に調べる。

「ピカ」

一旦集中力を切ってピカチュウに意識を戻す。
放送が流れた後だったが、今更親しい存在の名もなかった故かそこまでショックを受けている様子もない。

「ピカチュウ、こっちは一通り終わったから、一息ついたら出るニャ」
「ピカ?」
「そんなゆっくりしていていいのかって、こっちはずっと頭フル回転で作業してたニャ。少しくらい休ませるニャ」

とはいえ本当にゆっくりしている場合ではないのも確かだろう。
集合場所と定めていた遊園地は3時には禁止エリアになってしまう。
5分か10分程度の休息で動くべきだろう。

バッグに入っていたポテトチップスの袋を開くニャース。
これを食べ終わったら移動するとしよう。

「にゃ~~ガジッ」

ガサゴソと袋を弄って、手に内容物を掴み、ガブリと思い切りかじりつき。

「ギニャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!?」

歯に走った衝撃で悲鳴を上げた。

その大きな声にビクリと振り向いたピカチュウが見たのは、人の手に収まりそうな小型のテレビを持って走り回っているニャースの姿だった。
何をしているのかと呆れながら問う。

「にゃ、ニャア!!ポテチが!ポテチがガリッって!!びっくりしたのニャ!!」

落ち着いて手元を見て、その手が握っているのが菓子ではなく機械であることに気付いたニャース。

そこまで硬いものでもなかったため衝撃こそあっても歯が割れたりということはなかったのが幸いだった。
もしニャースがその気になって噛み付いていたらあるいは噛み砕けたかもしれないが。実際、小型テレビの端には歯の痕が残っている。

「何でお菓子の袋の中にテレビが入ってるのニャ。これ、映るのかニャ?」

疑問に思いつつも、小型テレビの電源を入れ始める。
プツリ、と点滅する画面。しかし映像は映ることなく、真っ暗な闇を表し続けるのみ。

「ピカチュウ」
「まあ、そうなるニャ。そういやテレビ塔があったけどぶっ壊れたしニャア」

普通に考えればテレビ放送などやっていないし、あるいはその電波が送れただろうテレビ塔もなくなった今、意味がある道具でもない。
チャンネルを切り替えてみても変化はない。

あるいはどこかから電波が混線するでもすればかかるだろうが、そんなものはないだろう。

『おや、繋がりましたか』

繋がったようだ。

驚き飛び上がるニャース。

「ニャニャ?!もしかしてこの場所の外とかかニャ?!助けてほしいニャ!ニャー達は今変なところに連れてこられて殺し合いをさせられてるニャ!」
「ピカピカ!!」
『あ、お喜びのところすみません。私はあなた達を助けられるような人間ではないので』

と、画面の向こうにいる眼鏡をかけた白衣の男は言う。

男はアクロマと名乗った。
曰く、アカギ達に技術的な協力を行っている者だと。

当然、助けを期待したニャースとピカチュウの顔は曇る。
それどころかその表情には強い警戒心まで見えていた。

「それで、そのアカギの協力者がいったい何の用ニャ」
『そう警戒しないでください。私はアカギの目的に共感したわけではない、あくまで私自身の目的のために協力したというだけなのですから』
「目的って何ニャ」
『それは、ポケモンという生物の持っている可能性、そしてそれを引き出すために必要なものとは何なのかを研究するためですよ』
「………」

ニャースの中に怒りと共に今すぐにでもこの電源を切りたいという思いが生まれる。
しかし、意図したものか偶然か罠かは分からないとはいえこうして脱出の手がかりが得られるかもしれない相手が接触してきたのだ。
ぐっと堪えて質問を続ける。

『私、実を言うとあなたのことは気にかけているのです』
「…どういうことニャ」
『あなたはポケモンでありながら、人間とコミュニケーションを取ることができる。それも明確に、人語を介して。
それはすなわち、ポケモンの意志の代弁者足り得るのではないかと私は思うのです』
「割と色んなところで聞いてきたような扱いニャ。だいたいそんなに気になるならNの方がいいんじゃないかニャ?」
『彼ではダメですね。私の判断だと彼自身が狂っていてポケモンの声が聞こえると思っているだけなのかという可能性も見えてしまいます。
同様の理由でミュウツー達のようなテレパシーも信用に欠けます。
五感に対して明確に、言葉として届けてくれるあなただからこそ重要なのですよ』
「つまり、人の言葉を発する明確な媒体としてニャーが欲しかったってだけのことニャ?」
『言ってしまえばそうなります。とはいえ、これまでの儀式の中ではあなたのことを特別扱いはしていないのですがね。できなかったとも言えますが。
もし今に至るまでにどこかで命を落としたのであれば、それまでの存在として諦めていたでしょう。ですから最初は私の中でも大きな存在とはしてませんでした。
ですがあなたは生き残った。参加者が10を切った今に至るまで』
「偶然ニャ」

心の中に突き刺さるものを感じながらも、ニャースはその言葉を否定する。
本当にただの偶然だ。運が良かっただけでそこに意味などない。

『偶然でも構わないのですよ。ただ、あなたが生きていること、それ自体に意味があるのですから』
「もういいニャ。要件を早く言うニャ」

焦らされているようにも感じたニャースは、本題に移るよう話題を変えた。
もう少し喋らせて情報を引き出したかったが、あまり好き勝手に喋らせるとペースにはめ込んでくる相手だというのがこれまでの会話で分かった。

『私としてもこの接触にはかなりの危険を犯しているのですよ。そうまでしても確認したいことは一つです。
ニャース、あなたにとって、人とポケモンとはどのような関係ですか?』




アクロマにとって、この殺し合いの儀式の中のポケモンの命とは、研究資産であった。

極限の状況でポケモンがいかに力を発揮するのか、生き残ろうとするのか。
しかし他のメンバーにとって、メインは参加者達であり、ポケモンは添え物にすぎなかった。
ポケモンの可能性に目を光らせていたのは自分だけだった。
役割は、道具の一つであるポケモンの制御。

だがそれ自体に変な情を入れたりはしない。
あくまでも自身の研究の答えを満たすために、協力を続けた。

結果として得られたデータは有用なものではあった。
それでも限界はあった。

メガシンカを果たしたガブリアスもミュウツーも、共にバーサーカーの手にかかって命を落としている。
一瞬の命の輝きから得られたものはこれまでにない数値を発揮した。

では、ポケモンをそうまで駆り立てるものは何だ。
彼らに共通したのは、人との関わり、絆だ。

ならば、ポケモンにとって人とは一体何なのか。
その問に答えられる者が今残っているとしたら、彼しかないとアクロマは考えていた。

無論、キュゥべえ達とは一歩下がった立場でもある関係から制約は多く、参加者への接触も禁じられている。

ほむらに手を貸したのは、その接触を果たすためだった。

同時に、急ぐ必要もあった。他の者たちと比較すればまだ安全といえる場所にいる今しか、接触する時間はないだろうと考えたから。




『あなたの言葉をもって、最後の切片が埋まる、そんな予感がするのですよ』

ニャースにとってみれば、アカギの協力者であるということを除いても関わり合いになりたいとは思わない存在だった。
ポケモンを悪意なく道具として見ているとしか思えない姿にはポケモンの目線だと嫌悪感を感じざるを得なかったのだ。

しかし、狂気に満ちたとはいえその真摯にぶつけてきた疑問を解決させずに放っておくことも、向き合ってしまった以上難しかった。
加えて、もしこのまま何も答えず放置した場合同じような実験を繰り返しもっと多くの被害を出す可能性もある。
ここは自分もまた真摯にぶつかるべきところだと直感していた。

「…ちょっとだけ疑問に思ったこともあったニャ。ニャー達とNの世界以外だと人間がいてポケモンがいないのはどうしてなのかニャって」

C.C.の世界にも巴マミの世界にも夜神総一郎の世界にも、ポケモンはいなかった。
代わりにそれぞれの世界特有のものが存在していたというが。

「何というか、どの世界でも人間を中心にして世界があるみたいな感じがあってニャ。
嫌な感じがしたとかいうことは別にないとしても、気にはなってたニャ。ならニャー達ポケモンは一体何なのかって」

それはずっと心の隅で燻っていた疑問。
ともすれば必ずしも解かねばならないことでもないため後回しにもしてきたことだった。
しかし今こそそれと向き合わねばならない時がきたということなのだろう。

「これはあくまでニャー個人の思ったことになるニャが。あくまでこの場所に呼ばれたニャーや他の皆がその考えに沿っているということになるのなら、ニャが」

魔法少女がいる世界。ギアスなる不思議な力を持った者が生まれる世界。

そして、ポケモンがいる世界。





「ニャー達ポケモンは、言ってしまえばその"世界"じゃないのかって思うのニャ」
『―――ほう…』

一瞬考えた後、声を漏らしたアクロマ。

「あいつらがいた他の世界でも人はいて、そこで生きている人達がいて。それでも世界としては成立しているにゃ。
それはニャー達の世界でも同じで、だけどもしニャー達の世界でポケモンがいなくなったら、きっと世界は成立しなくなるんじゃないかって思うのニャ」

もし魔法少女がいなければ。ギアスの存在がなければ。
いや、あるいはそれでも彼らの世界は回っていくのかもしれない。
だけど。
もしその存在がなかったら、あの二人もまたいなかったのではないかと。

『ですがその前提だと別の疑問も生まれてきます。人間とは何なのかという問いが、他のポケモンのいない世界にも広がることとなります』

それはそうだろう。
世界と密接に繋がっているというならば、前提として他の世界についての仮説も必要となる。

「正直言うなら他の世界のことはそこまで分からんニャ。だけどおみゃーが聞きたいのはニャーたちの世界のことじゃないニャ?」
『そうですね。極論そこが聞けるならばそれ以外のことについてはそこまで重要視しません。というかそれはこちらで調べた方が早いですね』
「それを聞いて安心したニャ。
思うのは、人間っていうのはその世界を発展させていくものじゃないかって思っているのにゃ」
『発展、ですか』

「そうニャ。
ニャー達ポケモンは、人間と関わることがなければ、トレーナーと一緒に過ごして生きることがなければ。
ただ今を必死に生きる野生の生き物の一つでしかなかったはずニャ」

多くのポケモン達は自分たちの世界を生き抜くのに必死だ。その世界を広げようとまでして生きられるものはほんの一部だろう。
だが、人と関わりトレーナーの協力を得られれば、自分の持つ力を正確に、効率よく活かすことができる。

「当然行き過ぎてしまうことも間違ってしまうこともあるし、悪いことに使おうとするやつもいるにゃ。
でも、ニャーにはよく分からないけどそういうことがあっても全体的にバランスを取ろうとする世界の力みたいなものはあるんじゃないかって思うのにゃ」

かつてポケモンが守る自然を開発しようとする人間に対し、トレーナーの持つポケモン達が主の指示にも関わらず従わなかったということがあったのを思い出す。
同時に、人間を憎むポケモンがいたとしても人間への逆襲に賛同する野生のポケモンはそういない。


「結局ニャーも人になりたいなんて思わなかったら、ただの野良ポケモンで終わってたはずのポケモンにゃ。そういう意味じゃポケモンから離れてしまった感じはあるけど。
でも人とポケモンが共存していって互いに高め合う、それがニャー達の世界なんじゃないかって思うにゃ」

『ポケモンは世界であり、人は"世界"を通して発展へと導いていく存在、ということですか。
では、最後に聞かせてください。人とポケモンの間で最も大切なものは、何だと思いますか?』
「それは、特に難しいことじゃないニャ。
そうやって高め合い伸ばし合えるものだってことを信じる心、信頼ニャ」

どのような形であっても、ポケモンに対する信じる心がなければ互いに答えることはできない。
ポケモンが世界であるなら、ポケモンと人間の相互の歩み寄り、関わり合いは決してなくてはならないものだろう。

「満足できたかニャ?」

ニャースの心に若干の不安がよぎる。
言葉そのものは真摯にぶつけたものだったが、それでも深く考え纏めるにはまだ時間が必要な議題だったように思う。
言うなれば思いついたそれっぽいことを自分なりに咀嚼して口に出したにすぎない。

『なるほど。理解しました』

だがそんな言葉でも、アクロマは満足したかのように小さく笑みを浮かべる。

「本当に満足したのニャ?」
『内容ではなく、あなたの言葉として聞けたことに価値があると私は考えています。
そしてそれは私自身も思ったことのなかった内容でありましたし』

映像に映ってる印象ではその言葉に嘘はなさそうだ。


「これからどうするのニャ?」
『私の役割自体はほぼ完遂していますし私の存在がこの儀式に与える影響はほぼないでしょう。
ですので私はこれでおさらばとさせてもらうつもりです。
あと、あなたに回答いただいたお礼です。あなたがこの後向かう遊園地に、あなた達にとって役に立つものを置いておきます。
場所は、おそらく今生きている方たちの中に心当たりのある人がいるでしょう』
「ニャ?」

驚きと疑問の混じった声を上げるニャース。

「そこまでしていいのニャ?裏切りとかと思われないニャ?」
『これで彼らとはお別れとさせていただきますので大丈夫ですよ。それに、私は自らの身を守るためにゲーチスに便宜を図りました。
他の方達としてはそれが望ましいものだったらしいですが、私としてはこれではあまり公平ではありませんし』
「……」

その言葉を信じていいのか。迷い返答に悩むニャース。
それでもアクロマは待つことなく話を進めている。

『ありがとうございました。では及ばずながらあなた達ポケモンの命が一つでも生き延びることを――』
『そこまでだよ』

プツリ、と何者かの声が割り込んで来たと同時に画面が消滅した。

「………」
「ピカ」

端で話を聞いていたピカチュウは、ここにきてようやく声を漏らした。

最後のあれはおそらくこのやり取りが他の協力者にばれたということだろう。
彼は果たして生きているのかどうかはもう分からない。

ただ、それを以てアクロマの言葉を信じてみてもいいのではないかという気持ちにはなった。
少なくとも他の協力者にとっては裏切り行為に当たることはしていたのだろう。

「なあ、ピカチュウ。…おみゃーは、ジャリボーイがいなくなった今でも、あいつのポケモンだってことが、証明できるニャ?」
「ピカ?」

おもむろにニャースはピカチュウにそう問いかけていた。

若干ムッとしたような表情でこちらを見るピカチュウ。
その問いかけが自分を侮辱されているかのように感じたのだろう。

それはそうだとニャースも思う。ピカチュウは自分のトレーナーをサトシ以外に定めることはないだろう。
一時的にNや自分や、他の誰かの手に渡り協力することがあっても、その一点は決して譲らない。

気持ちはそうだろう。ではその事実をどうやって証明していくのか。
その絆は永遠のものだと、どうやって示していくのか。

だが、今これ以上のことを問うていくのもまた酷だろう。

「行くニャ。これ以上ここでやれることもないしニャ」

荷物とボールの解析に使った道具やその結果をまとめた資料をバッグにしまい、ピカチュウを伴いながら病院を出るニャース。

その心中には、自分自身がアクロマに向けて告げた言葉が、残滓のように残り続けた。


【D-5/病院/二日目 深夜】

【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(中)、全身に火傷(処置済み)
[装備]:サトシのピカチュウ(ダメージ(中))@ポケットモンスター(アニメ)、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品一式、
[思考・状況]
基本:この場所から抜け出し、ロケット団に帰る
1:ボールの解析情報などを他の皆と共有するため遊園地に向かう。
2:できればポケモンがいなくなったモンスターボールも見ておきたい。
3:ポケモンとは―――
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線
※桜が学園にいたデルタであることには気付いていません




ニャースに対して通信を行っていた機材が砕け散った。
黒いマントが翻り、機材から引き抜かれた腕がアクロマへと迫る。

その影は頭には髑髏のような仮面を被り、体は肥大した筋肉に包まれていながらも生気を感じない色をしている。

キュゥべえが連れてきたその存在は、シャルルから借り受けた彼の私兵。
彼が死から蘇生させ不死身の肉体を与えることで最強の兵士としたかつてブリタニアの騎士、ナイトオブラウンズの一騎だった。

機械を難なく貫いたその拳がアクロマの体を貫き、吹き出した血が周囲を染め上げ。



『いやはや。やはり保険は効かせていくものですね』

周囲の風景が一斉に切り替わった。

破壊された機材も、アクロマの体もなく。
地面に備え付けられたパネルのような機械と、青白く映っているアクロマの映像があった。

「…なるほど、幻影を見せる機械と転移装置か」
『ええ、ゲーチスの使うゾロアーク、それとあなた方が捕らえたギラティナの能力を元にすることで完成させました』

転移装置、地面につけられたワープパネル。これを使えばアクロマを追うことは可能だろう。
しかし、追った後で帰ってこれるのかという点がキュゥべえに使用を躊躇わせた。
ギラティナの力だけならば干渉遮断フィールドを抜けられはしない。だが、これにほむらが力を貸していたならば。

『結果としてあなた達の機嫌を損ねてしまい離れてしまうこととなりましたが。
ですがそちらのワープパネルや諸々の装置は置いていきましょう。逃走用であるので今となっては特に必要ありません。こちらの追跡はできないように切っておきましたし。
使い方は難しくはないので、お好きなようにお使いください。
キュゥべえさん、あなたのことは好きにはなれませんでしたが、そちらで過ごした時間はそれなりに有意義でしたよ』


そう言い残して、映像は途切れた。

装置を壊そうとするラウンズ騎士を静止し、静かに周囲を見回す。

会場の装置作成の合間で色々と作っていたのは事実なようで、軽く見て分かるものだけでも転移装置、ホログラム出力装置と使いみちがあるものは確かだろう。
ただ、自分の決めた道筋を外れて勝手に動いた相手に対して後手に回ったという事実は決して面白いものではなかった。


(僕ももっと動くべきなのかもしれないね)

アクロマの干渉にもアカギやシャルル自身は進んで動く様子はない。
ならば自分ももう少し動いたほうがいいのかもしれない。

問題は、どちらに動くかというところだが。
現状の生き残りメンバーに対して、少ない可能性にかけてさらに殺し合いを誘発するように動くか。
逆に自身の不安定な足場を固めるために参加者に対して働きかけて自分の協力者とすることでほむらとの争いを誘発させるか。

思考しながらも騎士を引き上げさせたキュゥべえ。
やがて自分の中で答えを出して転移装置に飛び込んでいった。


※アクロマは脱出しました。ポケモンの世界に帰還したかは不明です。


160:第四回定時放送 投下順に読む 162:星が降るユメ
時系列順に読む
152:Nとニャース・ポケモンと人間 ニャース 162:消せない罪(前編)
158:悪魔が生まれた日 アクロマ 173:ポケットの中の戦争(前)
160:第四回定時放送 キュゥべえ 164:暁美ほむらの退屈



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー