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絶望を切り裂く希望の光

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匿名ユーザー

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絶望を切り裂く希望の光 ◆Z9iNYeY9a2



『正体は分かりませんが、一筋縄でいくような相手ではありませんよ!!』

ルビーの警告と共に、イリヤを見たゴルゴーンはその蛇の口から一斉に光線を射出。
空を飛び回避するイリヤ。

低空飛行に移動したところでその光線は地を焼き木々を燃え焦がし、周囲を炎に包む。

「イリヤ!!」

巧も気を取り直し、フォトンブレイカーを射出。
赤い光弾がその巨体へと迫り、着弾して爆発する。

肩を仰け反らせる反応を見せるが、決定打となっているようには見えない。

その一撃に巧の存在を意識したか、その巨大な尾を振り回し地を薙ぐ。
広範囲に渡るなぎ払いを避けきれず、またその膨大な質量を受けて巧の体は吹き飛ばされる。

「巧さん!」

イリヤもまた魔力砲を放出、ゴルゴーンの頭部へと命中させるが、こちらは揺るぐ気配すらない。

『相手の魔力量が多すぎてこちらの攻撃が打ち消されています!やばいですよこれ!』

ゴルゴーンは背の翼を広げて地を叩き、その巨体を宙へと飛ばす。

図体に見合わぬほど素早くイリヤに迫ったゴルゴーンは、その髪の蛇をイリヤへと向ける。
迫る蛇の口腔をイリヤは避け続けるが、繰り返し襲いかかる攻撃に意識が続かず、一撃がその足に噛み付いた。

「っ!!!」

痛みに一瞬怯むが、その間に更に幾匹もの蛇頭が迫る光景を前に、ステッキを振り下ろして周囲に一斉に魔力を放出。
足を噛む牙を迫る頭も消え去り、体が自由になったイリヤは距離を取る。

「…はぁ、はぁ…、ルビー、さっきの一撃、問題ない?」
『魔力を幾分か持っていかれたみたいですが、毒などがあった様子はありません。
しかし、これでは―――イリヤさん、次が来ます!』

ルビーの警告と共に、宙に赤い魔法陣が出現。
赤い稲妻と共に生み出された魔力がイリヤへと襲いかかる。

更に大きく後退して回避したが、その先で更に蛇の頭から放たれた光線が襲いかかる。


「桜さんっ!!!」

攻撃に対処しながら呼びかけるイリヤ。

先程まではこちらを攻撃する桜には強い殺意や敵意を感じられたが、今はそれがイリヤには見えない。
ただ目の前の敵を排除するために動いているかのような印象を受ける。
間桐桜の意志が感じられないのだ。

加えて、この攻撃。
あまりにも多量の魔力を振り回しているのがイリヤにも感じられる。ツヴァイフォームに変身している自分と同等か、いや、それ以上だろう。
もしこんな攻撃が続けば、彼女の体が持たないのではないか。

焦る気持ちを抑えつつ、蛇頭を魔力弾で迎撃しながら隙、弱点を探る。

撃ち込んだ魔力弾は、末端の髪辺りであれば撃ち落せるが、体を狙うと消失する。
だが末端の蛇をいくら撃ち落としたとしても本体にはダメージはない。

(あれは…、魔力を吸収している…?)

命中する直前で打ち消される魔力を見て、イリヤはそれがゴルゴーンの体に取り込まれていると悟る。
純粋な魔力弾では魔力質量が低く吸収されるより前に届けられないのだろう。

「ルビー!さっきのアレ、もう一回お願い!」

桜に向けて放ちライダーを消失させた光の剣。
あれをもう一度叩き込むのだ。

周囲に魔法陣を生み出し、そこから魔力の光線を放出。
それを迎撃せんと髪の蛇が光線を放つ。


ぶつかり合う二つの光。
その向こうで、イリヤは空に向けてステッキを掲げ、巨大な光を構えていた。

ゴルゴーンの対応も早く、瞬時に魔法陣を目前に生み出し、蛇が吐き出したそれとは比べ物にならないほどの光線を放つ。

振り下ろしたイリヤの刃と、ゴルゴーンの放した魔力砲がぶつかり合い。
刃は魔力砲を貫いてゴルゴーンへと着弾した。


「グ、ガァァ」

呻き声を上げるゴルゴーン。
着弾した腹部に傷が見える。この量なら通ったということだろう。

だが、

「あれを向こうが音を上げるまでは…」

あと何発打てばいいのか。
それまで向こうとこちらの体は持つのか。

悩んでいる暇はない、とすかさずもう一撃を入れようとして。
体がズン、と重くなった。

視線の先ではゴルゴーンの瞳が解禁され、こちらを睨んでいる。

「まず―――」

石化の重圧で重くなった体では反応が大幅に遅れ、こちらに迫る蛇頭の突撃を避けきれず受けてしまう。
吹き飛ばされた先で更に飛び上がったゴルゴーンが腕を振り下ろしイリヤの体を地面に叩きつける。

「きゃああああああ!!」

地面に激突し巨大なクレーターを作る。
どうにか魔力行使で体へのダメージは見た目ほどはいかないように抑えたが、痛みと魔眼で体が重く動きが鈍っている。

地面に足をつけ蛇で威嚇しつつ追撃をかけようとしたゴルゴーンの体が大きく横に反れる。

「クソ、ちょっと意識が飛んでたぞおい!」

巨体の尾に吹き飛ばされた巧が、赤く発光させた右の拳をゴルゴーンの脇に叩きつけながら首を振るう。

不意打ちに怒りを向けるゴルゴーンは一斉に蛇の頭を巧へと放ち。
ブレードモードに変化させたブラスターを構え蛇の攻撃を払っていく巧。

そのままイリヤの近くまで駆け寄る。

「おい、無事か?!」
「うん、どうにか…」
「桜のやつ、何でこんな姿に…、畜生、話は後だ!
こいつをどうにかする手はあるか?!」
『見る限りだと、イリヤさんの魔力より巧さんの攻撃の方が効きがいいみたいですね。構成しているエネルギーの問題でしょうか。
さっきイリヤさんがお腹の辺りに一撃入れて傷が付いてますので、その辺りを狙ってください!』
「分かった!お前は早く退け!」


言いながらブラッディキャノンをゴルゴーンの顔に向けて射出。
蛇で受け止めるが、爆発がゴルゴーンの視界を封じ、魔眼の効力を抑えた。

視界を奪われている隙に巧はコードを入力。
背のバックパックから蒸気が噴出し空高く飛び上がる。

「やああああああああああ!!!」

赤い光を伴った右足を突き出し、そのまま急降下。

ゴルゴーンが気配に気付いて見上げた時には、既に迎撃態勢を取ることが不可能な距離へと到達しており。
赤い竜巻と共にその飛び蹴りが腹部へと命中した。

「ォォォォォォォォォォォォ!!!!」

イリヤですらも思わず目を背けるほどにまばゆい光とエネルギーが周囲に放出。
その渦の中で、叫び声と血を口から漏らすゴルゴーンの体を巻き起こった旋風が傷をつけていく。
それでも踏みこたえて立ち続けるゴルゴーンだったが、やがて地面が僅かに沈んだと同時にバランスを崩して倒れ込んだ。

渦の中心で、地面に押し付けられるゴルゴーンの巨体。

やがて渦が収まり、地に倒れる巨体の背後で巧が着地。

全身を傷だらけにし血を吐きながらも、巨体を持ち上げるゴルゴーン。
ダメージは大きいが、夢幻召喚が解除される気配はない。

「クソ、これでも無理なのかよ」

イリヤの近くまで退きながら舌打ちをする巧。

『イリヤさん、ルールブレイカーです!あれを使えばきっと解除できます!』
「う、うん!これで―――っ!」
『止まってくださいイリヤさん!何かがおかしいです!』

ルールブレイカーを取り出した瞬間、空気が変わった。
ゴルゴーンの眼前に巨大な魔法陣が展開される。これまでの攻撃に用いていたものとは違う。
周囲の空気から何かが吸収されていくのを感じる。

『こ、これは…、イリヤさん巧さん、撤退を!!
宝具です!真のゴルゴーンが顕現しようとしています!!
あれの近くにいると、魔力どころか生命力すら根こそぎ持っていかれます!』

ルビーの警告と共に、ゴルゴーンの姿が少しずつ変わっていく。
メドゥーサの面影を残していた体を黒い蛇の体が覆っていく。

その眼窩は赤く光り、それを見たイリヤと巧の体から力が抜けていく感覚を感じる。

『二人とも、早く!!』

叫ぶルビーの声。
しかしその決断に迷いがあったイリヤはすぐに行動できないでいた。

そんな時だった。
イリヤの目が、あるものを見たのは。




力が欲しくて取り込んだライダーの力。
だったはずなのに、自分の体は一向に言うことを聞かなくなってしまった。

何よりも信頼していたはずの存在は、自分の魔力を食べて周りのもの全てを滅ぼす化物になってしまった。

でも、もしかしたらこれも自分の中でこんなふうになることを望んでいたのかもしれない。
心も要らない、ただの化物になって殺されてしまうことを。

だけど、これが本当にその望んだことだったのだろうか。
こんな姿になって、殺されたかったのだろうか。

思えば、この殺し合いの中で自分の心はどこにあったのだろう。

デルタの力に魅入られて、たくさんの人を殺して、死なせて。
藤村先生を巻き込んでからはただただ死にたくなって。

先輩すらもいなくなって、どうしたらいいのか分からなくなった。

ただ、先輩と一緒にいられればそれでよかったのに。


体が変わり始めた。宝具を使うつもりなのだろう。
これを撃ったら、終われるのかな?

そんな感情を抱いた時だった。
頭の中の記憶が少しずつ消え始めるのを感じた。

この宝具、化物としての顕現が、脳にこれまで以上の負荷をかけている。

そしてその中には、かけがえのない記憶が、先輩との思い出も含まれていた。

止めて。それだけは奪わないで。

死ぬことを望んでいたはずなのに、それを奪われ自分が何者でもなくなることはとてつもなく怖かった。

弓の撃ち方を忘れた。
自分の得意料理が分からなくなった。

ダメ、嫌だ。
色んな知識、記憶が消えていく中で、最後に残った大事なものに手がかけられていく。

消えないで。
私の、大事なものまで、奪わないで。

お願い―――、誰か。


「―――――助けて」




ゴルゴーンの中に閉じ込められた桜の意識。
体の制御も効かずただの器でしかなくなった少女の、叫び声。

それは声として出ることはなかった。

しかし、その強い願いは、怪物化していくゴルゴーンの、僅かに残った部位である顔、瞳から流れる一筋の涙として現れた。


そして、ゴルゴーンと対峙する少女、イリヤはそれを見逃さなかった。

「泣いてる」
『え?』
「桜さんが、助けてって言ってる。
ごめん、ルビー。もう少しだけ付き合って」

イリヤは離れた場所で怪物と化しつつある存在を真っ直ぐ見据えていた。
その言葉は固い。

『何言ってるんですかイリヤさん?!』
「もしここで逃げたら、桜さんが救われない!
それに、もしあれが完全に出てきて暴れ始めたら、他の皆も危険に晒される!
だから、ここで終わらせる!!」
「お前、あれを止められるのかよ」

巧も足を止め、イリヤを見る。


「ルビー、あれは魔力や生命力を吸収してるんだよね。
それを取り込んで、自分の中でエネルギーにしてる。それで正しいよね?」
『それは、一応その解釈でもあってます。ですが、それを越えられる魔力は』
「だったらそれを持ってきて。私の体、全部使ってもいい。
血管も、筋肉も、神経も、全部使っていい!!」

イリヤ自身自分が何をしようとしているのかは理解している。
だが、それだけの覚悟が必要なのだ。
間桐桜を助け、あの化物を追い払うのには。

『姉さん、私からもお願いします』
『サファイアちゃん?!』
『もう、私は後悔したくないのです。美遊様の時のような後悔を。
私の全てをイリヤ様に託します』
『あーもう!分かりましたよ!』

サファイアからの懇願で折れたかのように、ルビーもまたイリヤの願いに従う姿勢を見せた。

『だったら変換はこちらで済ませます。ですが行使はイリヤさん次第ですよ』
「ありがとう、ルビー」

やることが決まったイリヤは、巧へと向き直る。

「乾さん離れてて!
私が、全部終わらせてくるから!」
「おい、イリヤ!」

巧の呼びかけに答えることなく、そのまま高く飛翔する。
全身にこれまで以上の痛みが走る。
魔力回路への変換が始まったのだろう。

そして、そんなイリヤの気配に気付いたゴルゴーンは、それを敵対者と見なし赤く光る単眼を向ける。

――――ォォォォォォォォォ

呻き声が響く。
その声の中に、気のせいかもしれないが桜の悲鳴も混じっているような気がした。

『筋系、神経系、血管系、リンパ系──疑似魔術回路変換、完了!』
「助けるよ。助けを求める人は、どんな時でも―――」

そして、イリヤはその真っ直ぐに向けられた瞳に向けて、ステッキを振り上げ。


「これが、私の全て―――」
―――ウォアアアアアアア


イリヤの声と、ゴルゴーンの叫びが木霊する。

イリヤが振り下ろしたステッキからは、膨大な魔力の砲撃が放たれ。
同時に、ゴルゴーンの瞳からも、闇色の光が放出された。

「多元重奏飽和砲撃(クヴィンテットフォイア)!!!」
「強制封印・万魔神殿(パンデモニウム・ケトゥス)!!!」

小さな体の、その全てを魔力回路として行使して放出された、限界を超えた高出力の魔力砲撃。
魔眼より放たれた、触れたもの全てを溶解し取り込む魔の光線。

その二つが衝突。

周囲に暴風を巻き起こすほどの衝撃が、光を中心に吹き荒れる。

その力は互いに拮抗している。

高出力の魔力砲撃は、光に触れて逆に吸収されていく。
だがイリヤの火力が不足しているのかと言えばそうでもなく、時折一瞬だけ砲撃が前に出ることがあれば逆に光に押しやられることもある。

イリヤの体が限界を迎えるのが先か、押し切るのが先か。

「っ、あああああああああああ!!!!」

痛みを堪えて気合を更に込め、叫び声を張り上げる。
しかし押し切れない。

(…!こ、このままじゃ…)

勝てない。
そんな弱気な考えが一瞬脳裏をよぎる。

そう思った瞬間、砲撃が徐々に押し込まれ始めた。
魔力が次々と吸収されていく。

この中に自分も飲み込まれる。
そんな、イリヤが感じた絶望。

―――Exceed Charge

それを、突如奔った赤い閃光が斬り裂いた。

ァァァアアアアアアアア!!!!!

絶叫のような呻き声を上げるゴルゴーンの怪物。
その目のすぐ横に、赤く巨大な光の刃が突き立てられている。

「乾さんっ?!」
「お前が何しようとしてんのかは分からねえけどな!
俺だけ逃げるとか、ふざけんな!」

巨大な刃を生み出すブレードモードのファイズブラスターを両手で支えながら叫ぶ巧。

イリヤが何をしようとしているのかは分からない巧だが。
全身を魔力回路として行使する。その言葉だけでその身を削って戦おうとしていることだけは察せられていた。

「桜のやつのことはもちろんだけどな!
俺はなイリヤ、お前のことも士郎から頼まれてんだよ!!」

自分がいなくなったら、イリヤの力になってあげてほしい。
それは彼が命を落とす少し前にした約束だった。

自分は長くは生きられないし、そうでなくともイリヤだけの力にはなってやれないから、と。

「お前を死なせたら、あいつにどうやって顔向けできんだよ!!
こんなところで、絶対死なせねえからな!!桜も、お前も!!」

刃が突き立てられた影響か、ゴルゴーンの放つ光の吸収力が低下、イリヤの砲撃が押し返し始めた。

(そうか、私は、一人じゃないんだ)

ふとそう思った時、ステッキを支える自分の手に、小さな手が二つ重なったように見えた。
白い肌と褐色の肌をした手が、共にステッキを支えているように。

それが誰の手か、振り返るまでもなくイリヤには分かった。

「はあああああああああああああああああああ!!!!」

意識を集中させ気合を込め直す。
自分の限界の先まで届くほどの攻撃を放つように。

「貫けええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

やがて吸収力を遥かに超え、光を完全に押し返した砲撃は。
そのゴルゴーンの巨体を呑み込んでいった。

ゴルゴーンは、悲鳴のような音を出しながら、その光の中で消滅していった。




やがて光が収まった時、二つの光の衝突した地点には巨大なクレーターができていた。

その中心で、一人の少女が倒れている。

意識はないが、胸が上下していることから死んでいるわけではない様子だ。

「はぁ、はぁ」

地に足をつけたイリヤは、息を整えることもなくその手に一本の刃を持って歩みを進める。

クラスカードは既に排出されている。だがこれを突き立てるまではまだ終わらない。そんな直感があった。

その直感に応えるかのように、イリヤの進む先に黒い影が現れる。

「っ」

その影は帯をイリヤに飛ばして捕らえようと、捕食しようと迫る。
これからイリヤが行おうとしていることを防がんとしているかのように。

まだツヴァイフォームを解除しておらず、本来ならば避けられた攻撃。
しかし砲撃の影響で全身の動きに支障が生じるほどのダメージが残っている。

体を引きずりながらも地面を蹴って避けようとするが、間に合わず足を取られる。
地面に転がり込むイリヤに、更に追撃の帯が迫り。

影が赤い光の弾を受けて爆発した。

「イリヤ!こいつは俺が!急げ!!」

砲撃が収まった後イリヤの側まで走った巧が追い付いたのだ。

影が消え、足の拘束もまた消滅していく。
だが、影はまだ幾つも生まれてくる。巧の対応が追いつかないような場所に、イリヤの行き先を阻むように。


それが形作るより前に、決着をつける。

痛みが走る体に鞭をうって駆け。

影が形を形成、触手をイリヤへと飛ばし。

体を屈めて避けたところでイリヤの体が桜の元に到達し。

その手に握りしめたギザギザの短剣、ルールブレイカーをその胸に突き立てた。

「っ、う、あああああああああぁあああ!!!」

桜の絶叫が木霊する。
同時にその体を覆っていた影が消失。
イリヤを襲っていた影もまた、静かにその魔力を霧散させていった。

そして突き立てたルールブレイカーは、桜の生み出した影が消えると同時に、まるで自身の役割を果たし終えたかのように消滅していった。

「こ、れで…」
『はい、終わりました。イリヤさん』
「良かっ、た…」

ルビーの言葉に安心したかのように、イリヤの体が地面に倒れ込んだ。
同時にその衣装もツヴァイフォームからいつもの桃色に統一されたものへと切り替わり、ステッキもルビーとサファイアへと分離した。

「おい、イリヤ!!」

その様子に変身を解除した巧は急ぎ駆け寄る。
慌ててその体を引き起こす。
最悪の事態が脳裏をよぎる。全身の多くの場所から血を流してはいるが、息はあった。

『大丈夫です、巧さん。ちょっと無茶をしすぎたので安心したら疲れがどっと来たのでしょう』
「そうか、良かった…」

ほっと胸を撫で下ろす巧。

「………やっぱり、死なせてはくれないんですね」

そこへ、ポツリとそう呟く声があった。
ルールブレイカーによる魔術解除の衝撃故か意識を取り戻した桜だった。

巧は桜の方へと向き直る。
体は酷い状態だった。
右腕は二の腕の半ばから無くなっており、全身傷だらけ。身に纏っている衣類もボロボロで肌が露わになっている。
顔には右側に目から頬にかけて大きな傷が残っており右目が開いていない。これはきっと自分が刃で斬り付けた影響だろう。

目も虚ろで、視線が定まっていない。視力障害が出ているのかもしれない。

「言っただろ。士郎がお前が死ぬのを望んでねえって」
「何だか、信用できないです…。私を置いて逝っちゃうような人の言葉なんて…」


思っていることは違うのに、そんな皮肉を言わざるを得ないほどに桜の心は荒んでいた。
それでも影にとらわれていた時と比べればずっとマシなのだろうが。

『桜さん、あなたを助けたあのルールブレイカーですが』

と、ルビーが桜の体を指して告げる。

『あれは士郎さんが最後に投影した武器です。それを使って、セイバーさんを泥から救ったのですよ』
「セイバーさんを…、ああ、そっか。先輩を殺したのって……。
だったら、私が死なせたようなものですよね…」
『それともう一つ。士郎さんが命を落とした後も何故かあのルールブレイカーはずっとイリヤさんの手元に残り続けたんです。まるで、まだ役割が残っていると言わんばかりに』
「……」
『士郎さんの本心は分かりませんが、それでも士郎さんはあなたにも生きていて欲しいと強く願っていたのだと、私は推察します』
「ふ、あはははは」

ルビーの言葉に、桜はそう小さく笑って。

「ほんと、皆、ずるいです…」

それだけ呟いて、静かに意識を落とした。

『大丈夫です。眠っただけです』

不安げに身を乗り出した巧に対しそれを払拭するようにルビーは告げる。

「そうか…」

そう言って巧も地面に座り込む。
巧自身も長期間のブラスター化でかなり体に負担がかかっていた。

『遊園地に戻られるなら、しばらくここで待ったほうがよろしいかと。
あそこには今ゼロがいます。セイバーさんともう一人、ロボットに乗った誰かが相手をしていますので安全が確認できるまでは』

安全の確認。それはすなわち放送だろう。

巧としてもそこに参戦したい気持ちは強いが、今はあまりにも疲労が溜まっている。



『姉さん、イリヤさんは眠っていますね』

そんな時だった。
サファイアがルビーを呼びかけたのは。

『はい』
『良かった。余計な気負いはさせたくはありませんでしたから。
どうやら、そろそろみたいです』
『そうですか…』

ピキリ、とサファイアの六芒星の模様に亀裂が入った。

「おい!」

思わず声を荒げる巧。

『元々無理があったのです。宝具の直撃を受けた状態でツヴァイフォームの運用までこなすのは』

あの魔力で輝く剣を受けた時サファイアは大きな損傷を負っていた。
自身の身の修復に魔力を割くべきだったが、ツヴァイフォーム変身中はそうもいかなかった。

特に、多元重奏飽和砲撃の使用でその身に限界が来てしまった。

ルビーがイリヤに撤退を推奨したのも、サファイアの身を慮ってのことだった。

『ですが、いいんです。全ては私自身が望んだことだったのですから。
美遊様もきっと、私の立場であったら同じような判断をされたはずですし』
『サファイアちゃん…』
『悲しまないでください、姉さん。きっと、宝石翁がまた気まぐれを起こせば、またきっと私を作ってくださるかもしれません』
『それは、今ここにいるサファイアちゃんじゃないですよ…』

亀裂が広がり、模様から柄の部分まで割れている。
完全に砕け散るまで、もう時間の問題だ。

その中で、時間が許す限り、言わなければならないことを告げるようにサファイアは声を発する。

『乾さん、私のことは気になさらないでください。所詮、私達はモノにすぎないのですから』
「だけど―――」
『それよりも、乾さんは誇ってください。自身の成した功績を』

と、サファイアはイリヤと桜を指し示し。

『―――あなたは、確かに、士郎さんに託されたものを、守り抜いたのですから』

その言葉を最後に、カレイドステッキ・サファイアの体は砕け散った。


「………」
『………』

その砕けた破片の一つを拾い上げる巧。

『巧さん、サファイアちゃんの言う通りです。
彼女のことは気負わないでください。それよりも、あなたは胸を張ってください。
あの時の士郎さんのように、その手で助け守り抜いたものがあるのですから』
「……そう、か」

悲しみを胸に押し込み、空を見上げて巧は言った。

「士郎、お前の大事なものは、守り抜いたぞ…」

その言葉が、もしかしたら天から見ているかもしれない男に届くように。


【C-4/緑地地域/一日目 真夜中】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(特大)、全身にダメージ(大)、ツヴァイフォーム使用による全身の負荷(回復中)、クロ帰還による魔力総量増大、気絶中
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター(使用制限中))(ランサー(使用制限中))(アサシン(使用制限中))(アーチャー(使用制限中))@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:皆と共に絶対に帰る
0:??????
[備考]



【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:ファイズギア一式(ドライバー、フォン、ポインター、ショット、アクセル)@仮面ライダー555 、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品、クラスカード(ライダー(使用制限中))@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード(黒騎士のバーサーカー(使用制限中))、サファイアの破片
[思考・状況]
基本:ファイズとして、生きて戦い続ける
1:放送を聞くまでこの場に待機。その後遊園地に戻るか離れるかを決める。
2:やったぞ、士郎
[備考]


【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化解除、右腕欠損、魔力消耗(大)、顔面の右目から頬にかけて切り傷、右目失明、視力障害、脳への負荷による何らかの後遺症(詳細は現状不明)、気絶中
[装備]:マグマ団幹部・カガリの服(ボロボロ)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:???????
1:??????
[備考]
※黒化はルールブレイカーにより解除されました。以降は泥の使役はできません。

※カレイドステッキ・サファイアは全壊しました。


155:ReStart準備中 投下順に読む 157:零の話・仮面が砕ける時
154:立ち向かうべきもの 時系列順に読む
151:Another Heaven/霞んでく星を探しながら 乾巧 162:星が降るユメ
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
間桐桜



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