ロフィルナ天空叢書 > 第1章第1節:まどろみの世界の始まり


創夢記の始まり

出典:コルナーヤ創暦教書

かつて、この世界は夢と現実とがはっきりと分かれていた。
人々は夢の中で自由に遊んだり、願ったり、恐れたりしたが、目を覚ますとそれらは消えてしまった。
現実は夢に比べて厳しく、退屈で、不公平であった。人々は夢と現実の間に溝を感じていた。

しかし、ある日、その溝が埋まってしまった。突然、人々は夢の中で見たものを現実にすることができるようになった。
それは得体のしれない悪魔の仕業だった。名もなき悪魔は人間の欲望に怒って、彼らに試練を与えることにした。悪魔は人々に夢の力を与えて言った。

「さあ、人間よ。あなたたちは夢の力を得た。あなたたちは夢の中で見たものを現実にすることができる。しかし、その力には代償がある。あなたたちは自分の欲望に従って夢を具現化することができるが、同時に他人の夢や悪意も具現化されることになる。それはあなたたちにとっても、この世界にとっても幸せか災いかは分からない。私はあなたたちを試すつもりだ。あなたたちはこの力をどう使うか、自分で決めなさい」

魔の囁きが全世界に響き渡った。人々は驚いて空を見上げた。空には彼らが夢で見たものが次々と現れていた。
美しい花や果物や動物や建物や宝物などが降ってきた。人々は喜んでそれらを手に入れようとした。

しかし、すぐに悪夢も現れ始めた。火や水や風や土や雷や氷などの自然災害が起こった。病気や怪我や死や貧困や飢餓などの苦しみが襲った。
怒りや憎しみや嫉妬や恐怖や悲しみなどの感情が爆発した。鬼や竜や魔物や亡霊などの恐ろしい存在が現れた。人々は恐怖に駆られて逃げ惑った。
このようにして、この世界はまどろみの世界となった。人々の夢や願望や恐怖や憎しみが具現化する世界だった。

祈りの代償

出典:ルドラトリス創暦教書

遥かな昔、中油海沿岸の小さな島に住むユリーラという少年は、夢を見ることが好きだった。
彼は夢の中で、空を飛んだり、火を操ったり、美しい女神に出会ったりすることができた。夢は彼にとって、現実の厳しさから逃れる唯一の楽しみだった。

ある日、彼は夢の中で、名もなき創造の神に呼び出された。神は彼に言った。

「ユリーラよ、私はあなたに特別な力を与えよう。あなたは夢の中で見たものを現実にすることができるようになる。しかし、その力には代償がある。あなたは自分の欲望に従って夢を具現化することができるが、同時に他人の夢や悪意も具現化されることになる。それはあなたにとっても、この世界にとっても幸せか災いかは分からない。私はあなたを試すつもりだ。あなたはこの力をどう使うか、自分で決めなさい」

ユリーラは驚いて目を覚ました。彼は創造神の言葉を信じられなかったが、試しに空を見上げてみた。
すると、空には彼が夢で見た美しい女神が微笑んでいた。彼は自分の目を疑ったが、女神は消えることはなく、彼に手を振った。

「これは本当だ!僕は夢の力を得たんだ!」

ユリーラは喜んで叫んだ。

しかし、その瞬間、島全体が揺れ始めた。地震だった。島の住民は恐怖に駆られて家から飛び出した。
ユリーラも外に出てみると、空には女神だけではなく、火の玉や雷や竜や怪物など、様々な恐ろしいものが現れていた。
それらは島に向かって落ちてきたり、吠えたり、噛みついたりした。

「これは何だ!?誰かがこんな夢を見ているのか!?」

ユリーラは慌てて言った。すると、女神が答えた。

「そうよ、ユリーラ。これらはあなた以外の人々が見ている夢よ。あなたが夢の力を得たことで、この世界はまどろみの世界となったのよ。人々の夢や願望や恐怖や憎しみが具現化する世界ね。あなたはこの世界をどうするつもりなの?」

ユリーラは女神の言葉に呆然とした。彼は夢の力を得たことで、自分だけではなく、全ての人々に影響を及ぼしてしまったことに気づいた。
彼は自分のしたことを後悔したが、もう遅かった。彼は夢の力を使って、この災厄を止めることができたのだろうか?
最終更新:2023年09月10日 22:35