名称:《アーカイン・プロトコル》
正式名称:多重位相文明遺構封鎖機構《ARCHEIN PROTOCOL》
分類:構造的自壊/時間因果巻き戻し型終末対処機構
技術等級:T5(構造終末級)
稼働要件:
ピースギア中枢ネットワークの存在証明不能化
設置状況[地平収束点 6ヶ所に眠る。制御端末は最高評議による鍵分散
1. 定義と起動条件
《アーカイン・プロトコル》とは、パラレル多世界構造そのものが破綻・崩壊する状況においてのみ作動を許された、時間因果再構成型最終兵器である。ピースギア創設以前、文明連続性を維持するために秘匿された「非選択的リフレクション・コード」に基づき構築されたとされ、現在も正確な技術継承経路は封印下にある。
本兵器は、単なる物理的攻撃や次元跳躍機能ではなく、「観測されたすべての歴史・因果・存在記録の再帰的凍結と巻き戻し」という特異な構造を持つ。起動と同時に、当該世界線で起こったすべての観測記録が量子的残滓に変換され、定められた“再構成基点”まで世界の状態を段階的にロールバックする。
発動条件は極めて厳格であり、以下のすべてを満たす場合にのみ、発動承認フェーズへと進む:
ピースギア最高中枢(Q-HUB)からの生存信号が完全に途絶。
Q-NET内で稼働する倫理中枢AI群が同時に“生存価値判定:不能”と応答。
複数世界線からの並行存在ログが全てゼロ化(世界線孤立化が確定)。
以上が確認されることで、プロトコル内に封じられた時間再構築コア“ネオ・マルドゥク因子”が解凍され、機構が発動段階へと移行する。
2. システム構成と作用機序
《アーカイン・プロトコル》は、複数の位相層にまたがって配備された**六重構造の崩壊連鎖装置**から構成されており、その中枢に位置する「因果補正回廊」によって次元と時間の巻き戻しが実行される。
構成モジュール名 |
役割 |
---------- |
------------------------------------ |
時相観測ノード群 |
各時間軸における「巻き戻し可能点」を測定・収集 |
存在証跡抽出子 |
全構成員・構造物・歴史の記録ログを量子パターンとして保存 |
連鎖崩壊整合コイル |
構造場の重力・因果・物理法則の崩壊を段階的に誘導するための中和フィールド |
ネオ・マルドゥク因子 |
巻き戻し演算を司る終末因子。観測者非依存の再起点を生成 |
孤絶観測遮断システム |
外界からの干渉を完全遮断する絶対孤立フィールド |
再起同期トリガ |
選定された再構成世界線へ意識情報のみを移送する発信機構 |
《アーカイン・プロトコル》の起動によって最終的に達成されるのは、「既に崩壊した世界を再現・復旧する」ことではない。
あくまで、あらゆる選択・存在・行動がなかったこととされ、“崩壊しなかった可能性の世界線”へと集合意識を再投影することを目的としたものである。
このため、再構成された世界線においては、元のピースギアや構成員が“存在していた痕跡”さえも完全に消去されるという副作用を持ち、倫理的・記憶的観点からは「事実上の全構成員の自己犠牲」と等価であると見なされている。
3. 評価と封印
T5等級に分類される《アーカイン・プロトコル》は、設計思想そのものが希望的選択ではなく最終的喪失と忘却を前提としている点で、他のいかなる戦術兵器・転送装置・再生システムとも決定的に異なる。
このプロトコルの存在が初めて示されたのは、過去のクデュック戦争末期における第十三世界圏の消滅後であり、当時のデータによれば、既に一度この装置は“不完全発動”された形跡を持つ。
だが、その直後に関係する全記録・関係者が消滅したことから、実際に何が起こったのかを知る者はいない。
プロトコル制御核は6名の最高評議員により多重分散封印されており、その発動に際しては“自己を証明するものが世界上に何も残っていない”ことをAI倫理群が自動判定する必要がある。
つまり《アーカイン・プロトコル》は、「誰にも起動されることのない兵器」として設計されており、その存在自体が、ピースギアと全世界線の終末に備えるための「沈黙の選択肢」として静かに眠り続けているのである。
最終更新:2025年07月20日 12:02