プログラマーがファンタジー世界に召還されますた(非公式まとめ)

ゲリラ修行中6

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pfantasy

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⊿月○日、私は赤っ恥をかいた。

リーナ領というのは、実際には幾つもの国が集まってできている。
ジャヴァをあきらめた私は今、リーナ領では共和国に隣接する真珠の国へと来ていた。
幸い、危惧したヴィーも現れず、他の危険も無く、寒空と空腹を別にすれば、旅そのものは快適だった。
さて…来てみた…のはいいが…
これが、自由を何よりも尊ぶ──とはあくまで評判だが──リーナ領だろうか。
道を行き交う人々の顔は暗く、政略、怨霊の噂が絶えない。突如やってきた強力な魔術師が、
王とその娘をたぶらかし、宮廷の人材をまるでCD-Rのように消費している…という。くわばらくわばら。

通りがかりの広場で、見習いの少年が練習を重ねていた。
使い捨てにされた兄の敵を討つという。けなげなものだが、所詮使用呪文は「パールゥ」、ワンライナーとも
呼ばれるインスタントマジックの類いだ。サムライソードに対する十徳ナイフみたいなもので、
ジャヴァ統一な共和国は無論、帝国でも余り見ないが、リーナ領では必須の類…と、帝国にいた頃聞いた。
…その時は、イデのマクロで充分じゃん、と、流してしまったが、同僚がシージー・アイの仕事を
大量に引き受けてきたのを見て、後悔した記憶がある。
だが、威力で言えば、シィプ・ラプラの比では無い、というか比べるのも可笑しい。
私は、この時ばかりは、自分が大魔術師になったような気分で、大人げなく、
えっへん、稽古を付けてやろう、と、少年の前にしゃしゃり出てしまった。

──勝負は一瞬でついた。
シィプ・ラプラの詠唱は時間がかかる。変換、結合の過程はそれにも増して遅い。
少年の唱えるワンライナーが起動した時、私の魔法はまだ変換の途中だった。

かくして、私は見事すっ転ばされ、情けないおじさんを演じる羽目になったのであった…
馬鹿馬鹿!私の馬鹿ぁ!いい気になってベクターハーレーやらマップサーチやら使って…
プリコンパイルヘッダーなんてかさばるもの持ち歩いてるわけねぇだろぉ…
ああ、恥かいた。

少年に逆に説教を食らって、私はうつむき加減に歩いていた。

某国の神殿にいた時パスカルを覚えておけばよかった。せめて挨拶の魔法ぐらい。
司祭の呪文を見た限り、変換・結合の手順を踏むのはシィプ・ラプラと同じだが、速度が違う。
信じられない事にヴィビィの即時実行よりも速かった。…あれはエナジータイプから独立した汎用の
魔方陣を組めず、結果ベクターハーレーなどの技が使えないと聞いたので、敬遠していたのだが…。
神殿といえば、従軍の記憶が蘇る。こちら側の兵に覚えられていることはないだろう。が、私の存在が
神殿の女神に知られると、やばい。私のせいで負けたのだ。今でも克明に焼きついている血の匂い…
あの戦いを投げてから、私の、受け止めてくれる者のいない旅は始まった。

そんな情けない私に、地味なつもりなのか、一目で上質な生地とわかるなりの男が声をかけてきた。
「もしもし、旅のおかた。私は…中略…今しがたの魔法の詠唱を見させていただきました…中略…」

げ。見られてた。
恥ずかしい、恥ずかしすぎる。

男はどうやら魔法のワンドの訪問販売員で、パスを入れると娘が出てきて……?……らしい。
そんな事よりも、さっきの赤っ恥を見ているにもかかわらず、やたら人を持ち上げるこいつは怪しすぎる。
大体シィ使いの本場リーナ領の端っこで、シィプ・ラプラ如きで誉められても皮肉にしか聞こえない。
それに、男は娘の容姿風貌をやたら熱入れて語っているが、正直その趣味はわからん。18未満は管轄外だ。
男は喋り尽くすと、体験版とか言って一方的に私にワンドを渡してどこかへ消えてしまった。
一瞬競売にでもかけてやろうかと思ったが、先の理由で私はあまり目立つとまずい。
まず、安全な場所を確保して、じっくりと策を練ろう。

とりあえず宿を取り、一人部屋にカーテンを引いてから、考える。どうやってこれを金にするか?
…私は実はここの宿代も持ち合わせていない…そうだ!
私は、条件に該当する男(金持ち&&!さっきの奴)にだけ届くよう細工した、スパムの魔法の準備にかかった。
中に居るのは王女とも知らずに…。

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