Chapter 1.2
翻訳者: AFK: Twitter
ステーション・イグニス 発着ベース 12-α
探査へと向かう宇宙船の周りでは X 線撮影技師やクアンタム研究者などの専門家たちが最終確認を行っていた。その中にある女性の姿があった。 けたたましい機械のハムノイズとともにせかせかと進めるその歩みからは、確固たる意志がにじみ出ていた。襟で青く光る記章は、連合のそれであった。彼女がそばを通ると、乗船者たちは背筋を伸ばして彼女の方に向き直った。セラ・ヴァースの機嫌を損ねたくなくてのことだ。低スペック型クアンタム・ドライブの排気で裾がはためくトレンチコートに身を包み、セラは集まった者たちを見渡すと眉をしかめた。大勢の才ある者が、ケプラー 7 から輸送された。だがクアンタムのエネルギー波による宇宙船事故が起こり、行方不明者が大勢出た。その中にはセラの兄弟もいる。彼らは今も難破船で救助を待っているのかもしれない。
セラは自分を落ち着かせようとタバコに火を付けた。故郷の匂いが漂う。甲高い金属の叫び声と回路のささやき声がそこかしこから聞こえてくる、あの故郷の匂いだ。評議会軍に所属してからもう 10 年になる。雨に濡れそぼるアーナムのストリートを去ったのも同じ頃のことだ。母、故郷の大地、クズ鉄置き場の銅線のことがふと頭によぎった。連邦の考えが正しければ、あの信号は我々にとって未知のもの。つまり、この船団が探査から無事帰還できる見込みは薄い。
発着ベースの照明が少しずつ薄らいでいく。セラは最終点検を手伝い、乗船者たちを船の方へと連れていった。上がりゆくタラップの上で、彼女は乗船者たちの顔をチラリと見た。中にはケイラン、ダナ、セリンなど見知った顔もいた。艦橋に着くと、旗艦の窓のシャッターが開いた。宇宙空間が手招きし、不気味な虚空が皆を招き入れる。信号の発信源への到着は 1 日ほどであろうか。この探査から帰還できなければ、もう兄弟の顔を二度と見ることは叶わない。「必ず生きて戻る」、そうセラは思った。
旗艦がステーション・イグニスから離れると、セラは自分の席に腰掛けニヤリと笑みを浮かべた。彼女をいざなうのであれば、星々は相当に「素晴らしい仕事」をしなければならないだろう。