艦艇の墓場側の次元戦闘機部隊が最短距離でグリトニルを目指しているそのとき、氷塊の海をようやく抜けようとしていた旗艦アームスヴァルトニルと駆逐艦の部隊は、氷塊の海の出口付近で敵からの奇襲を受けていた。

氷塊や小惑星の陰に隠れていた敵の高機動戦闘機は地の利を生かし、きわめて巧妙にヒットアンドウェイを繰り返した。
先頭のニーズヘッグ級駆逐艦はミサイルでの迎撃を行うが、敵機の数は予想をはるかに超えており、それはイナゴの群れに弓を放っているかのようだった。

やがて敵からの飽和攻撃に耐え切れず、ファーランダー大佐の駆逐艦テドリガワがたまらず後退し始めた。
旗艦アームスヴァルトニルから10機の中距離射撃用次元戦闘機グレース・ノート隊が出撃したが、戦況を好転させるにはいたらなかった。

ディッドマン准将は前方から除々に下がってくるテドリガワに合わせてアームスヴァルトニルを後退させるよう命じた。


この間、マーガン大尉は気が気でなかった。
心の中で、こんな作戦を提案したヒロコと、それを採択したディッドマン准将を恨んだ。
敵の攻撃で艦橋にも幾度と無く激しい衝撃が伝わってきている。
その度にマーガン大尉は肝を冷やした。

大尉が怨嗟の念をこめてヒロコ中尉を見ると、彼女は予想に反してらんらんと目を輝かせ、食い入るようにモニターを見つめていた。その表情は満足げですらあった。
マーガン大尉はそんなヒロコが理解できず、今度は司令官席にいるディッドマン准将を見た。

いつもは頼りなさげに見える彼もまた、自身と決意にあふれた眼差しでメインモニターをしっかりと見据えていた。

マーガン大尉はこれ以上混乱しないため、彼女なりに考え、結局「覚悟を決める」という結論に達した。


旗艦アームスヴァルトニルは除々に後退していく。
敵機の攻撃は益々苛烈になっていった。


No.5→進軍

No.7→つづく?

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最終更新:2009年08月25日 20:24