『欲の望むまま・前』
無意識にふらふらと歩いていると、やがて屋上に着いた。
囚われる事を知らない風は、自由きままに吹き抜けていく。
囚われる事を知らない風は、自由きままに吹き抜けていく。
――奪えば楽になるわ。
頭の中に響く、自分自身の声。
こんな事望んでいない。望んでいない筈なのに、耳を傾けている自分がいた。
こんな事望んでいない。望んでいない筈なのに、耳を傾けている自分がいた。
――あの子を閉じ込めて、自分だけのものにすれば良いのよ。
そんな事、出来る訳がないじゃない…。
――睡眠薬を使って、眠らせて。
いや…止めて。
――ベッドに縛りつけて、家に閉じ込めれば良いのよ。
そんな事したら、あの子の笑顔が消えてしまう…。
――そうすれば、あの子は永遠に自分のものよ。
そんな事、出来る訳がないじゃない…。
――睡眠薬を使って、眠らせて。
いや…止めて。
――ベッドに縛りつけて、家に閉じ込めれば良いのよ。
そんな事したら、あの子の笑顔が消えてしまう…。
――そうすれば、あの子は永遠に自分のものよ。
「っ…!!」
たった一言で、揺れていた心は傾き、何かが崩れた音がした。
親友の頃のように、またずっと一緒にいられる。そう思うと、今まで抵抗していた意味が分からなくなった。
親友の頃のように、またずっと一緒にいられる。そう思うと、今まで抵抗していた意味が分からなくなった。
「…そうよ…また…あの頃のように…」
――ずっと一緒にいられるわ。
―――――
次の日の休日。蒼星石の家に、一本の電話の音が響いた。
「はい、もしもしー」
電話に出たのは、蒼星石の双子の姉である翠星石だった。
「…翠星石。蒼星石、いるかしら…?」
「さぁ。多分、薔薇水晶とデートじゃないですかぁ?」
「さぁ。多分、薔薇水晶とデートじゃないですかぁ?」
明らかに不機嫌そうな表情で、翠星石は言った。言葉しか聞こえない電話ごしでも、翠星石が不機嫌になった事に、真紅が直ぐ気付いた程。
産まれてからずっと、妹の蒼星石を大切にしていた翠星石こそが、一番薔薇水晶との関係に反対していたのだから。
産まれてからずっと、妹の蒼星石を大切にしていた翠星石こそが、一番薔薇水晶との関係に反対していたのだから。
「…帰ってきたら、伝えて頂戴。明日、私の家に来て欲しい、と。それじゃ…」
「ちょ…真紅?」
「ちょ…真紅?」
言い返そうとした翠星石の耳に聞こえたのは、電話が切れた音だった。
普段とは違う真紅の様子に、翠星石は違和感を覚えていた。
普段とは違う真紅の様子に、翠星石は違和感を覚えていた。
「どうしたんですかねぇ…。なんか…いつもより怖い感じがしたですぅ……」
―――――
『真紅が、明日家に来て欲しいと言ってましたよ』
姉である翠星石にそう聞き、翌日蒼星石は真紅の家に向かっていた。
だが、蒼星石の表情は少し暗いものだった。
だが、蒼星石の表情は少し暗いものだった。
『…気を付けるですよ。真紅、なんだか様子が変でしたから…』
朝、出かける時に翠星石に言われた言葉が、気になっていた。
確かに、最近よくボーっとしていたし、様子がおかしいと言えばおかしかった。
確かに、最近よくボーっとしていたし、様子がおかしいと言えばおかしかった。
「悩み事でもあるのかな…」
もし、今日呼ばれたのも相談の類だったら、真剣に聞いてあげなければ。
決心した表情で、真紅の家に向かう。
決心した表情で、真紅の家に向かう。
家には大した時間もたたず、着いた。
(そういえば、真紅の家に来るの久しぶりだなぁ)
そんな事を考えつつ、インターホンを鳴らした。数秒たつと、扉は開いた。
「蒼星石、いらっしゃい」
「う、うん…」
「う、うん…」
真紅は微笑んで、蒼星石を向かい入れた。だが、何故だか違和感があった。
(なんだろう…。優しい笑みだけど……冷たい、気がする……)
「…どうかしたの?」
「え…い、いや。なんでもないよ」
「…どうかしたの?」
「え…い、いや。なんでもないよ」
真紅に導かれるまま、蒼星石は真紅の家に足を踏み入れた。
と、同時に、籠に鍵がかけられた。
と、同時に、籠に鍵がかけられた。
―――――
「今日はどうしたの?」
リビングに入り、座って、と出されたソファに座ると、蒼星石は今日の目的を口にした。
「…まずは紅茶でも飲みましょう」
それから話すわ、と言いキッチンに向かった。
キッチンには予め、ポットとカップが置いており、紅茶の葉も用意されていた。手慣れた様子で二杯の紅茶を淹れた。
ふと、棚から袋を取り出し、蒼星石に気付かれないように、片方の紅茶に袋の中身を少し混ぜた。
キッチンには予め、ポットとカップが置いており、紅茶の葉も用意されていた。手慣れた様子で二杯の紅茶を淹れた。
ふと、棚から袋を取り出し、蒼星石に気付かれないように、片方の紅茶に袋の中身を少し混ぜた。
「待たせたわね」
「ううん」
「ううん」
何事も無かったかのように、紅茶を運び、リビングの机に置いた。
何かを入れた方を、蒼星石に差し出す。
何かを入れた方を、蒼星石に差し出す。
「頂きます」
「えぇ」
「えぇ」
蒼星石は紅茶を傾けた。
一瞬だけ、真紅の口の端がつり上がった事を、蒼星石は知る由も無かった。
一瞬だけ、真紅の口の端がつり上がった事を、蒼星石は知る由も無かった。
―――――
(……ん……あ、れ……?)
ふと目が覚めると、天井が瞳に写る。
(僕……何してたんだっけ……確か……真紅と紅茶を飲んでて……)
必死に記憶の糸をたぐり寄せた。
真紅に出された紅茶を飲んでいた時、突然眠くなって意識が……。
真紅に出された紅茶を飲んでいた時、突然眠くなって意識が……。
「……あれ、…腕が…!」
動かなかった。紐か何かで拘束されているようだ。
状況が良くないという事を理解すると、周りを見回した。此処は真紅の部屋。自分がいるのはベッドの上だと分かった。
と、同時にもうひとつ異変に気が付いた。
状況が良くないという事を理解すると、周りを見回した。此処は真紅の部屋。自分がいるのはベッドの上だと分かった。
と、同時にもうひとつ異変に気が付いた。
「!! ふ、服が……」
蒼星石の頬が朱に染まる。上下の下着以外、何も身につけていなかったのだ。
「い、一体これは…」
「やっとお目覚めのようね」
「し、真紅…」
「やっとお目覚めのようね」
「し、真紅…」
声の主は真紅だった。扉の向こうから現れた真紅の表情は、先程と変わらず微笑んだまま。
つまり、この状況の詳細は真紅が握っていた。
つまり、この状況の詳細は真紅が握っていた。
「真紅…これは君が…?」
「えぇ」
「……どう、して…」
「貴方が欲しかったからよ」
「えぇ」
「……どう、して…」
「貴方が欲しかったからよ」
淡々と、まるで当たり前のように言った。
「欲し、かったって……」
「ずっと、ずっと、貴方が欲しかったわ」
「ずっと、ずっと、貴方が欲しかったわ」
そう言いながら、こちらに歩み寄ってきた。ベッドの上に片膝を乗せると、蒼星石を押し倒した。
「しん…っ!」
言いかけた蒼星石の唇は、押し倒した真紅の唇によって塞がれてしまった。
腕が拘束されているせいか、まともに抵抗できず、そのまま真紅の為すがままだった。
次第に舌が侵入してきて、舌と舌が絡み合う。
腕が拘束されているせいか、まともに抵抗できず、そのまま真紅の為すがままだった。
次第に舌が侵入してきて、舌と舌が絡み合う。
「んっ…ふ…!」
「は………ふふ、顔が真っ赤よ?可愛いわね」
「し、しん…く…っ…今…何を……」
「あら、気付いていたのね」
「は………ふふ、顔が真っ赤よ?可愛いわね」
「し、しん…く…っ…今…何を……」
「あら、気付いていたのね」
真紅は少しだけ驚いた表情をするが、すぐに微笑みを作った。
「気持ちよすぎて、分からないかと思ったのに…。さっきのは……」
その時、インターホンの音が鳴り響いた。
「…良い時に、誰かしら…?」
明らかに不機嫌そうな表情でベッドから降り、カーテンを捲って窓の向こうを覗いた。
「………あら、囚われたお姫様を助ける王子様が来たようね」
「……! ま、まさか…」
「……! ま、まさか…」
蒼星石の予感は的中していた。真紅の家の玄関にいたのは、薔薇水晶だった。