クラフト・ワークは動かせない
第六話「とある執事の日常 前篇」
幻想郷の真っ赤な屋敷に、執事がひとり。
執事の名はサーレー。今日も朝から仕事です。
「サーレー、大広間まで朝食を運んでくれるかしら」
「ああ、分かったぜ」
咲夜に言われ、サーレーは『クラフト・ワーク』で美味しそうな朝食の皿を固定し、一気に運んでいく。
サーレー、執事生活5日目である。
―――――――――――紅魔館:大広間――――――――――――
「出来たぞテメーら」
扉を開けて言う。
「主に向かってその口のきき方は何?」
「わー、おいしそう!」
「やっぱり便利ね…あなたの能力」
「美味しそうですね!」
…と、騒がしい4人が待つ大広間の食卓に到着、皿を並べて紅茶も淹れていく。
紅魔館の朝は皆で朝食を食べて始まる。もちろん美鈴もだ。
「…お前ら、吸血鬼じゃねーのかよ。なんで朝早いんだよ。6時半だぞ」
懐中時計を見て、レミリアとフランに問いかける。懐中時計は咲夜からもらった色違いの黒色だ。
「私は時間を無駄にしないのよ!」
「起きてたほうがあそべるもん!」
元気に答える2人。健康的すぎる。
「じゃあせめてオレを遊び相手にすんな。冗談抜きで死ぬ」
「弾幕ごっこは奥が深い…それを私たちはあなたにレクチャーしているだけよ、ねぇフラン?」
「そうですわお姉さま~」
「「オーッホッホッホ!」」
実に楽しそうに笑う2人、それを見てパチュリーも美鈴も顔がほころぶ。
「暇をつぶすためにゲームをしたけれど…喜んでくれてくれて結果オーライじゃない。こっちも異変の研究を手伝ってくれてるし」
「前は少し元気がなかったですからね。私もトレーニングに付き合ってくれているのでありがたいです」
実に役に立っているようだ。サーレーはああ見えても、自分のスタンドと逆で器用でもある。
さらに鍛えられているので美鈴の相手もできる。勉学以外は案外出来る男なのだ。
「元ギャングのくせに…と言いたいところなのだけど、私の仕事も減っているし。ありがたいわ」
いきなり隣に現れた咲夜は、毒吐きながらも感謝した。サーレーは、咲夜が来たのが「知覚できた」ので驚かない。
スタンドを出していないと、時の停止を知覚する程度にとどまるようだ。
「無茶苦茶言いやがって…ま、全員そろったろ。早く食っちまおうぜ」
サーレーの呼びかけに応じて咲夜もテーブルに着き、レミリアが言う。
「そうね、じゃあ、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
「(…やっぱり慣れねーぞ、これ)」
そういうと皆が談笑しながら食べ始める。こんな朝も悪くない、とサーレーは思った。
―――――――――――紅魔館:地下室――――――――――――
「喰らいやがれッ!」
ドドドドドドドド!!!
「そんなんじゃ当たんないよ~」
朝食の後は地下室でレミリアとフランに弾幕ごっこを教えてもらっている。今はフランが相手だ。
自分では弾幕を張れないので、相手の弾を返すというのが戦闘スタイルとなりつつある。
皮膚上で常に固定をし続けるというのは難しいので、弾幕に慣れておかないと危なかったりするのだ。
「うおッ!?」バチッ
被弾した。相手は飛んでいるがこちらは飛べないのだ。ジャンケンするなら話は別だが。
上から下を狙うのと、下から上を…しかも走りまわりながらするのでは労力が全く違う。
「満身創痍よ…ゲームオーバーね」
座っていたレミリアが口を出す。
「お前ら卑怯なんだよ。何だよスペルカードってよ。こっちはボムもねーんだぞ」
「ボムがなければパンを投げればいいじゃない」
どこからかフランスパンを差し出してレミリアが言う。
「ラストワードならぬラスクワードってか、殴り殺すぞ…」
サーレーがキレかけているのにもかかわらずレミリアはフランにフランスパンを渡す。そして…
「フランのフランスパン!」
寒い掛け声でフランスパンが放たれる。べしっという音とともにサーレーの顔面に直撃した。
「次は鬼ごっこよ!」「わーい、捕まえてみろー」
プチッ、っと何かがキレる音がした。
「いいじゃねーか…オレを鬼にしたことを即後悔させてやる」
「逃げるわよフラン!」「イエス!マム!」
2人がたたっと駆けだした瞬間、『クラフト・ワーク』が地面を殴る。
地面と固定され、2人はすっ転んだ。
「や、やばいわ!靴をすてて―――――
―――――に…げる……」
背後にはフランスパンを2本携えたサーレーが、恐ろしい気迫で向かってくる。吸血鬼を圧倒するほどの何かを発しながら。
『クラフト・ワーク』もいつも以上にしかめっ面だ。
サーレーはフランスパンを十字に構え、怒気のこもった声で言った。
「ドミネ・クオ・ヴァティス?(どこへ行かれるのですか?)」
ギャングの殺気に近い何かがサーレーから溢れる。
「「ひっ!」」 2人はサーレーの怖さを思い知る。
「おまえらは…『磔刑』だーーーーッ!!」
スピードAの速さと、幻想郷に来てからやや上昇した精密動作性によって、『クラフト・ワーク』がフランスパンを2人の口に突っ込む。
壁までふっ飛ばし、パンを固定するのも忘れない。まさに磔だ、フランスパンで。
「ふう…磔刑『フランスパンの杭』…とでもしとこうか……
…そういえば咲夜が呼んでたな」
モガモガ言って動けない二人を置いて、サーレーは咲夜を探しに地下室を出る。
後にはフランスパンを口にぶち込まれ、『磔刑』にされた吸血鬼の姿があった。
―――――――――――紅魔館:廊下――――――――――――
「買い物ォ?」
「そうよ、人里に行って買ってらっしゃい」
咲夜がサーレーを呼んだ理由は買い物、それも菓子を買ってこいというものだった。
「おいおい、またティータイムか?俺は甘いもんは好きじゃねーんだがな、名前の通り」
「塩辛いものが好きなのね。でも安心して、お嬢様が買ってこいと言ったのは塩羊羹だから」
「塩羊羹って何だよ。というかオレは菓子なんか買いに行きたくねーんだよ」
当然の疑問である。ここのところは咲夜から文化やマナーを教えてもらっているが、まだ知らないところはたくさんある。
「甘くてしょっぱい黒光りするヌルヌルした長方形よ。あなたは人里に行くことでこっちの常識を学んでこなきゃいけない、分かる?」
「…まあ分かった。行ってきてやる、行ってきてやるけど急激に食欲が減退した。話を聞く限りだとゲテモノにしか思えん」
明らかに咲夜の説明が悪い。食欲減退すること請け合いだ。
「まあ見ればわかるわ。あ、あと敬語を使っときなさいね。一応執事服なわけだし」
「わかった…いや、わかりました…か」
「そうそう、その調子で行ってらっしゃい」
―――――――――――紅魔館:庭――――――――――――
「…全く、何でオレが」
ブツブツつぶやきながら紅魔館から出てくる。門が正面に見えるが誰もいない。
「アイツ…どこでサボってやがんだ?門番ではないだろもはや」
呆れながら持っている地図に目を落とす。紅魔館から人里までは徒歩だと結構距離があるようだ。
「遠いだろ…あいつらみたいに飛べりゃ別だろーが…ん?」
サーレーは庭の一か所に何かが積み上げられているのを見つけた。
様々なものが積み上げられている。CDのようなもの、謎の仮面、銃火器、鉄球。
「おいおい、何だこりゃ。レミリアの言ってたガラクタの山なんだろうが…CDかこれ」
一枚拾い上げると何かが書いてある。そこには『マンハッタン・トランスファー』と書いてあった。
「なんかのCDだろうな…後でプレイヤーがあったら聞いてみるか。
…お、ボディーガードとかもあんじゃあねえか。護身用にもっていくか、隠しやすいしな」
彼の執事服は冬なのでロングジャケット。ディスクをジャケットの左ポケットに入れる…
「って、おい!このCD曲がるぞ!これは絶対CDじゃあねー」
軽い突っ込みも欠かさない。完全にツッコミキャラになりつつある。
そして「S&W M649 ボディーガード 」をズボンの左ポケットに、38スペシャル弾と357マグナム弾を右ポケットに入れる。
「まあ、これで一応途中でおそわれ………」
ガラクタの山を回りこんでサーレーの視線は一点にくぎ付けとなった。
ガラクタの山の裏側に寄りかかった、黒光りする流線形を描く車体。
「…なんで歴史においてけぼりくらったようなとこにバイクがあんだよ…」
そこにあったのはベスパでもラッタッタでもなく、ハーレーダビッドソンのCVO(Custom Vechicle Operation)…ストリートグライドである。
CVOとは少数生産のバイク。ストリートグライドはその1車体で、400万くらいします。
「ハーレーの技術の粋を込めた逸品…クラフトマンシップの極み…だったか?」
無い頭でバイクを使えば速く人里に着くと思い付き、点検を始める。
「状態がいいな……ん?生産2011年?…待てよ…オレが死んだのは確か2000年だったはず…」
紅魔館のカレンダーを見てしっかり2000年だと把握していた。何故2011年製造のバイクがあるのか奇妙だ。しかし…
「まあいいか、時間を止めれるんなら逆行もできるだろ。それよりハーレーか、なんか親近感がムンムンわいてくるな」
自分の名前と語感が似ているので少し気に入ったようだ。そして一点に目が行く。
「ガソリンタンクまで落ちてやがる…どうなってんだ」
どうなってんだ…といいつつも、『クラフト・ワーク』にタンクを持たせガソリンを注ぎ、エンジンを起動させる。
「ったく、なんでオレが塩羊羹?なんぞを買いに行かなきゃいけねーんだ…
…お、流石未来じゃねーか。乗り心地は半端ねえな。そうだな、名前も似てるしよ、気に入ったーッ!」
サーレーはハーレーにまたがると、エンジンの音を響かせて人里に向かった。
――――――――――――――――――――――
―――――――――――
…そんなサーレーの姿を、木々の陰から観察するように見ている外国人の男がいた。
「塩羊羹…と彼は言いマシタネ…つまりあっちの方角に店があるということ…」
その男は白い…そう、いうなればコックのような服を着ていた。
「それに今のは…スタンド…?まずは追いかけてみマショウ…」
TO BE CONTINUED → 後篇へ続く
第六話「とある執事の日常 前篇」
幻想郷の真っ赤な屋敷に、執事がひとり。
執事の名はサーレー。今日も朝から仕事です。
「サーレー、大広間まで朝食を運んでくれるかしら」
「ああ、分かったぜ」
咲夜に言われ、サーレーは『クラフト・ワーク』で美味しそうな朝食の皿を固定し、一気に運んでいく。
サーレー、執事生活5日目である。
―――――――――――紅魔館:大広間――――――――――――
「出来たぞテメーら」
扉を開けて言う。
「主に向かってその口のきき方は何?」
「わー、おいしそう!」
「やっぱり便利ね…あなたの能力」
「美味しそうですね!」
…と、騒がしい4人が待つ大広間の食卓に到着、皿を並べて紅茶も淹れていく。
紅魔館の朝は皆で朝食を食べて始まる。もちろん美鈴もだ。
「…お前ら、吸血鬼じゃねーのかよ。なんで朝早いんだよ。6時半だぞ」
懐中時計を見て、レミリアとフランに問いかける。懐中時計は咲夜からもらった色違いの黒色だ。
「私は時間を無駄にしないのよ!」
「起きてたほうがあそべるもん!」
元気に答える2人。健康的すぎる。
「じゃあせめてオレを遊び相手にすんな。冗談抜きで死ぬ」
「弾幕ごっこは奥が深い…それを私たちはあなたにレクチャーしているだけよ、ねぇフラン?」
「そうですわお姉さま~」
「「オーッホッホッホ!」」
実に楽しそうに笑う2人、それを見てパチュリーも美鈴も顔がほころぶ。
「暇をつぶすためにゲームをしたけれど…喜んでくれてくれて結果オーライじゃない。こっちも異変の研究を手伝ってくれてるし」
「前は少し元気がなかったですからね。私もトレーニングに付き合ってくれているのでありがたいです」
実に役に立っているようだ。サーレーはああ見えても、自分のスタンドと逆で器用でもある。
さらに鍛えられているので美鈴の相手もできる。勉学以外は案外出来る男なのだ。
「元ギャングのくせに…と言いたいところなのだけど、私の仕事も減っているし。ありがたいわ」
いきなり隣に現れた咲夜は、毒吐きながらも感謝した。サーレーは、咲夜が来たのが「知覚できた」ので驚かない。
スタンドを出していないと、時の停止を知覚する程度にとどまるようだ。
「無茶苦茶言いやがって…ま、全員そろったろ。早く食っちまおうぜ」
サーレーの呼びかけに応じて咲夜もテーブルに着き、レミリアが言う。
「そうね、じゃあ、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
「(…やっぱり慣れねーぞ、これ)」
そういうと皆が談笑しながら食べ始める。こんな朝も悪くない、とサーレーは思った。
―――――――――――紅魔館:地下室――――――――――――
「喰らいやがれッ!」
ドドドドドドドド!!!
「そんなんじゃ当たんないよ~」
朝食の後は地下室でレミリアとフランに弾幕ごっこを教えてもらっている。今はフランが相手だ。
自分では弾幕を張れないので、相手の弾を返すというのが戦闘スタイルとなりつつある。
皮膚上で常に固定をし続けるというのは難しいので、弾幕に慣れておかないと危なかったりするのだ。
「うおッ!?」バチッ
被弾した。相手は飛んでいるがこちらは飛べないのだ。ジャンケンするなら話は別だが。
上から下を狙うのと、下から上を…しかも走りまわりながらするのでは労力が全く違う。
「満身創痍よ…ゲームオーバーね」
座っていたレミリアが口を出す。
「お前ら卑怯なんだよ。何だよスペルカードってよ。こっちはボムもねーんだぞ」
「ボムがなければパンを投げればいいじゃない」
どこからかフランスパンを差し出してレミリアが言う。
「ラストワードならぬラスクワードってか、殴り殺すぞ…」
サーレーがキレかけているのにもかかわらずレミリアはフランにフランスパンを渡す。そして…
「フランのフランスパン!」
寒い掛け声でフランスパンが放たれる。べしっという音とともにサーレーの顔面に直撃した。
「次は鬼ごっこよ!」「わーい、捕まえてみろー」
プチッ、っと何かがキレる音がした。
「いいじゃねーか…オレを鬼にしたことを即後悔させてやる」
「逃げるわよフラン!」「イエス!マム!」
2人がたたっと駆けだした瞬間、『クラフト・ワーク』が地面を殴る。
地面と固定され、2人はすっ転んだ。
「や、やばいわ!靴をすてて―――――
―――――に…げる……」
背後にはフランスパンを2本携えたサーレーが、恐ろしい気迫で向かってくる。吸血鬼を圧倒するほどの何かを発しながら。
『クラフト・ワーク』もいつも以上にしかめっ面だ。
サーレーはフランスパンを十字に構え、怒気のこもった声で言った。
「ドミネ・クオ・ヴァティス?(どこへ行かれるのですか?)」
ギャングの殺気に近い何かがサーレーから溢れる。
「「ひっ!」」 2人はサーレーの怖さを思い知る。
「おまえらは…『磔刑』だーーーーッ!!」
スピードAの速さと、幻想郷に来てからやや上昇した精密動作性によって、『クラフト・ワーク』がフランスパンを2人の口に突っ込む。
壁までふっ飛ばし、パンを固定するのも忘れない。まさに磔だ、フランスパンで。
「ふう…磔刑『フランスパンの杭』…とでもしとこうか……
…そういえば咲夜が呼んでたな」
モガモガ言って動けない二人を置いて、サーレーは咲夜を探しに地下室を出る。
後にはフランスパンを口にぶち込まれ、『磔刑』にされた吸血鬼の姿があった。
―――――――――――紅魔館:廊下――――――――――――
「買い物ォ?」
「そうよ、人里に行って買ってらっしゃい」
咲夜がサーレーを呼んだ理由は買い物、それも菓子を買ってこいというものだった。
「おいおい、またティータイムか?俺は甘いもんは好きじゃねーんだがな、名前の通り」
「塩辛いものが好きなのね。でも安心して、お嬢様が買ってこいと言ったのは塩羊羹だから」
「塩羊羹って何だよ。というかオレは菓子なんか買いに行きたくねーんだよ」
当然の疑問である。ここのところは咲夜から文化やマナーを教えてもらっているが、まだ知らないところはたくさんある。
「甘くてしょっぱい黒光りするヌルヌルした長方形よ。あなたは人里に行くことでこっちの常識を学んでこなきゃいけない、分かる?」
「…まあ分かった。行ってきてやる、行ってきてやるけど急激に食欲が減退した。話を聞く限りだとゲテモノにしか思えん」
明らかに咲夜の説明が悪い。食欲減退すること請け合いだ。
「まあ見ればわかるわ。あ、あと敬語を使っときなさいね。一応執事服なわけだし」
「わかった…いや、わかりました…か」
「そうそう、その調子で行ってらっしゃい」
―――――――――――紅魔館:庭――――――――――――
「…全く、何でオレが」
ブツブツつぶやきながら紅魔館から出てくる。門が正面に見えるが誰もいない。
「アイツ…どこでサボってやがんだ?門番ではないだろもはや」
呆れながら持っている地図に目を落とす。紅魔館から人里までは徒歩だと結構距離があるようだ。
「遠いだろ…あいつらみたいに飛べりゃ別だろーが…ん?」
サーレーは庭の一か所に何かが積み上げられているのを見つけた。
様々なものが積み上げられている。CDのようなもの、謎の仮面、銃火器、鉄球。
「おいおい、何だこりゃ。レミリアの言ってたガラクタの山なんだろうが…CDかこれ」
一枚拾い上げると何かが書いてある。そこには『マンハッタン・トランスファー』と書いてあった。
「なんかのCDだろうな…後でプレイヤーがあったら聞いてみるか。
…お、ボディーガードとかもあんじゃあねえか。護身用にもっていくか、隠しやすいしな」
彼の執事服は冬なのでロングジャケット。ディスクをジャケットの左ポケットに入れる…
「って、おい!このCD曲がるぞ!これは絶対CDじゃあねー」
軽い突っ込みも欠かさない。完全にツッコミキャラになりつつある。
そして「S&W M649 ボディーガード 」をズボンの左ポケットに、38スペシャル弾と357マグナム弾を右ポケットに入れる。
「まあ、これで一応途中でおそわれ………」
ガラクタの山を回りこんでサーレーの視線は一点にくぎ付けとなった。
ガラクタの山の裏側に寄りかかった、黒光りする流線形を描く車体。
「…なんで歴史においてけぼりくらったようなとこにバイクがあんだよ…」
そこにあったのはベスパでもラッタッタでもなく、ハーレーダビッドソンのCVO(Custom Vechicle Operation)…ストリートグライドである。
CVOとは少数生産のバイク。ストリートグライドはその1車体で、400万くらいします。
「ハーレーの技術の粋を込めた逸品…クラフトマンシップの極み…だったか?」
無い頭でバイクを使えば速く人里に着くと思い付き、点検を始める。
「状態がいいな……ん?生産2011年?…待てよ…オレが死んだのは確か2000年だったはず…」
紅魔館のカレンダーを見てしっかり2000年だと把握していた。何故2011年製造のバイクがあるのか奇妙だ。しかし…
「まあいいか、時間を止めれるんなら逆行もできるだろ。それよりハーレーか、なんか親近感がムンムンわいてくるな」
自分の名前と語感が似ているので少し気に入ったようだ。そして一点に目が行く。
「ガソリンタンクまで落ちてやがる…どうなってんだ」
どうなってんだ…といいつつも、『クラフト・ワーク』にタンクを持たせガソリンを注ぎ、エンジンを起動させる。
「ったく、なんでオレが塩羊羹?なんぞを買いに行かなきゃいけねーんだ…
…お、流石未来じゃねーか。乗り心地は半端ねえな。そうだな、名前も似てるしよ、気に入ったーッ!」
サーレーはハーレーにまたがると、エンジンの音を響かせて人里に向かった。
――――――――――――――――――――――
―――――――――――
…そんなサーレーの姿を、木々の陰から観察するように見ている外国人の男がいた。
「塩羊羹…と彼は言いマシタネ…つまりあっちの方角に店があるということ…」
その男は白い…そう、いうなればコックのような服を着ていた。
「それに今のは…スタンド…?まずは追いかけてみマショウ…」
TO BE CONTINUED → 後篇へ続く