黒川あかねという女は、役者としていわゆる「憑依型」に属する。
役作りに当たって徹底的に相手の事を調べ、見抜き、考え、学ぶ。
探偵の如き調査力とプロファイリングを基に、卓越した演技力でそれを再現する。
誰もが眼を奪われる程の伝説のアイドルを『演じた』時は、その瞳に一番星のごとき輝きを宿すことさえ可能にした。
探偵の如き調査力とプロファイリングを基に、卓越した演技力でそれを再現する。
誰もが眼を奪われる程の伝説のアイドルを『演じた』時は、その瞳に一番星のごとき輝きを宿すことさえ可能にした。
そんな彼女の瞳には今、四葉のクローバーの如し異形の形を宿していた。
◆
「知らん顔か。魘夢とやらの夢想(トボケ)た発言も、嘘ではなさそうじゃ喃。」
支給品の鏡を見て唸る人物。その顔は黒川あかねであり、その声も黒川あかねだ。
その言葉遣いと、人格。そして四葉のような異形の瞳だけが、ここにいるのが黒川あかねでないと伝えていた。
その言葉遣いと、人格。そして四葉のような異形の瞳だけが、ここにいるのが黒川あかねでないと伝えていた。
「秀麗(マブ)いツラしていると思ったが、なるほど女優か喃。それも随分有名(バズ)っている。」
黒川あかねの体を得た人物は、さっとプロフィールと荷物を確認した。特筆すべきものは黒川あかねが高い調査力と演技力をもつ人物であることと、支給品と思われる黄金色の苦無だろうか。
黒川あかねの体を得た人物は、さっとプロフィールと荷物を確認した。特筆すべきものは黒川あかねが高い調査力と演技力をもつ人物であることと、支給品と思われる黄金色の苦無だろうか。
黒川あかねの体をした人物は、殺し殺される環境に360年以上晒され続けた殺人の達人(プロ)にして戦場の玄人(プロ)。殺し合いという現状に憤りを覚えながらも適応するのは容易い。
だが、17歳の少女の肉体で殺し合いを強要されることは初めての経験である。
だが、17歳の少女の肉体で殺し合いを強要されることは初めての経験である。
その名は神賽惨蔵。忍者集団『帝都八忍』の長にして、江戸の世から悪を殺し続ける仕事人。自他ともに認める最古にして最強の忍者である。
神賽は右手の先端を鋭く集め、独自の貫手....忍者の誇る体技『暗刃』の構えを取る。
シュン。という音とともに、突かれた指が風を切る。
黒川あかねの手で目の前の空中に繰り出される突き。それは素人目に見ても、一般人に毛が生えた程度の速さでしかない。
元の体ならば音速を超え、撃たれた弾丸を超えるほどの速度で放てるが。黒川あかねの体ではこの程度である。
シュン。という音とともに、突かれた指が風を切る。
黒川あかねの手で目の前の空中に繰り出される突き。それは素人目に見ても、一般人に毛が生えた程度の速さでしかない。
元の体ならば音速を超え、撃たれた弾丸を超えるほどの速度で放てるが。黒川あかねの体ではこの程度である。
「鈍(と)ッ足(ろい)喃~~。」
神賽は嘆く。黒川あかねの身体能力は、劇団での訓練によりフィジカルは並の女子高生よりは高い。だがあくまでその程度だ。
戦闘訓練も受けていない少女なれば、人間の限界まで至る忍者の肉体とは鼠と羆の差である。
本来の神賽ならば『全姿全能』という己の特異体質により、あらゆるものに姿を変えることも、他人の能力を再現することも自由自在。
戦闘を極限まで鍛えた肉体と特異体質に頼っていた神賽は、自身の戦闘力の7割以上を剥奪されているに等しい。
戦闘訓練も受けていない少女なれば、人間の限界まで至る忍者の肉体とは鼠と羆の差である。
本来の神賽ならば『全姿全能』という己の特異体質により、あらゆるものに姿を変えることも、他人の能力を再現することも自由自在。
戦闘を極限まで鍛えた肉体と特異体質に頼っていた神賽は、自身の戦闘力の7割以上を剥奪されているに等しい。
残されたものは3つ。忍者の持つ戦闘センスと、神賽惨蔵及び黒川あかねが持ちうるあらゆる情報に対する調査・学習能力。
そして、支給品の一つである金色の苦無だ。
そして、支給品の一つである金色の苦無だ。
「この苦無....。雷のような活力(エネルギー)を秘めているか。」
金色の苦無を取り出した神賽は、タブレットでその詳細を確認する。
武器の名は、悪刀 鐚。
天才鍛冶師である、四季崎記紀の造りあげた。完成形変体刀がひと振り。
雷を帯びたその短い切っ先は、敵を打ち倒す為の者にあらず。
己の胸に突き刺すことで蓄えられた雷を体に宿し、莫大な身体能力を使用者に与えるものだ。
武器の名は、悪刀 鐚。
天才鍛冶師である、四季崎記紀の造りあげた。完成形変体刀がひと振り。
雷を帯びたその短い切っ先は、敵を打ち倒す為の者にあらず。
己の胸に突き刺すことで蓄えられた雷を体に宿し、莫大な身体能力を使用者に与えるものだ。
苦無という、忍者である神賽が持つにあまりにもふさわしい武器でありながら。
その効能は神賽ら『忍者』に敵対する『極道』、彼らが持ちうる己を超人に変える麻薬によく似ていた。
その効能は神賽ら『忍者』に敵対する『極道』、彼らが持ちうる己を超人に変える麻薬によく似ていた。
「少女の体で戦うとなると、こういう強化(ド―ピング)もやむなしか。参加者の詳細も不明な以上、この殺し合いを楽観(ナメ)てかかるわけにもいかんし喃。」
自分に刺して使うと知るやいなや、神賽は黒川あかねの胸元をはだけさせ、鐚の切っ先をその中央に向ける。
この極限状態では希少かつ有用な武器といえ、神賽にとっては気が進まない行いである。
それは『極道』のように外的要因で力を得ること....もあるが。
こんな若女優(ジェーケー)の体に苦無を刺して傷を付けねば戦えない。そんな現状に対する憂いと怒りだ。
それは『極道』のように外的要因で力を得ること....もあるが。
こんな若女優(ジェーケー)の体に苦無を刺して傷を付けねば戦えない。そんな現状に対する憂いと怒りだ。
忍者は、罪なき者を手にかけない。巻き添えであろうと殺すことは無い。
自身の主義(プライド)に反するからと巻き込まれただけの少女である黒川あかねをむざむざ殺す選択を、ここでの神賽が取ることは無い。
自身の主義(プライド)に反するからと巻き込まれただけの少女である黒川あかねをむざむざ殺す選択を、ここでの神賽が取ることは無い。
「この少女生かす為、そしてあの魘夢とやらブッ殺すため!業腹(ムカ)つくものだろうと今回ばかりは使おうぞ!」
黒川あかねの柔肌を刺す苦無。その切っ先から血が滴り、刺された端から止めどなく活力と熱が送り込まれる。
苦無の先より、雷に打たれたような衝撃が指の先まで響いた。
苦無の先より、雷に打たれたような衝撃が指の先まで響いた。
神賽は手を尖らせ、先ほどのように暗刃を放つ。
先ほどの女子高生の手遊びとは比べ物にならない、勢いある鋭い一撃が空の壁を貫き。パァンという音が響く。
本来の肉体には劣るが、先ほどまでの女子高生の体よりは遥かに強いだろう。
眠ることも無ければ疲れることもない。今の神賽....『悪刀 惡金(あかね)』とでも呼ぶべき個体は、そういうものである。
先ほどの女子高生の手遊びとは比べ物にならない、勢いある鋭い一撃が空の壁を貫き。パァンという音が響く。
本来の肉体には劣るが、先ほどまでの女子高生の体よりは遥かに強いだろう。
眠ることも無ければ疲れることもない。今の神賽....『悪刀 惡金(あかね)』とでも呼ぶべき個体は、そういうものである。
「傷は残るし副作用もあるやもしれん喃....。 黒川あかねよ!魘夢ブッ殺して元の世界に返した後、無能な儂を存分に恨めい!!」
殺意と闘気に満ちた目で、神賽は異形の月を睨む。
『100%ブッ殺すと決めた相手には堂々名乗る』。それが神賽らが戦う、元の世界の裏社会の裏礼儀(マナー)。
この殺し合い場でそのルールが通じるとは、神賽は考えていないが。それでもケジメとじて必要なことだ。
黒川あかねの顔で。黒川あかねの声で、神賽は高らかに名乗る。
『100%ブッ殺すと決めた相手には堂々名乗る』。それが神賽らが戦う、元の世界の裏社会の裏礼儀(マナー)。
この殺し合い場でそのルールが通じるとは、神賽は考えていないが。それでもケジメとじて必要なことだ。
黒川あかねの顔で。黒川あかねの声で、神賽は高らかに名乗る。
「帝都八忍 神賽惨蔵!!! 悪夢(クソゲー)に儂とこの少女を巻き込んだこと。悔いてもらおうぞ!」
【神賽惨蔵@忍者と極道】
[身体]:黒川あかね@推しの子
[状態]:健康 悪刀に対する警戒
[装備]:悪刀 鐚@刀語
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:主催者と殺し合いに乗り気な悪人は殺す それ以外は生かして帰す
1:儂とこの少女(黒川あかね)をこんな悪夢(クソゲー)に巻き込んだこと。悔いてもらおうぞ!!
[備考]
※参戦時期は情愛大暴葬より後です
[身体]:黒川あかね@推しの子
[状態]:健康 悪刀に対する警戒
[装備]:悪刀 鐚@刀語
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:主催者と殺し合いに乗り気な悪人は殺す それ以外は生かして帰す
1:儂とこの少女(黒川あかね)をこんな悪夢(クソゲー)に巻き込んだこと。悔いてもらおうぞ!!
[備考]
※参戦時期は情愛大暴葬より後です
【悪刀 鐚@刀語】
完成系変体刀のうちひと振り 活性力に重きを置かれて造られた刀
電気を帯びた苦無であり 自身に刺すことで肉体を極限まで活性化させる
寝ることも疲れることも死ぬことも無い戦士を生み出す刀
完成系変体刀のうちひと振り 活性力に重きを置かれて造られた刀
電気を帯びた苦無であり 自身に刺すことで肉体を極限まで活性化させる
寝ることも疲れることも死ぬことも無い戦士を生み出す刀
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