「キリトだなー、やっぱw」
手鏡を見てキリッと決めポーズをする黒の剣士――キリト。
しかし彼はデスゲームの場で開始早々に笑う人物じゃなければ、自分の顔を見てカッコつけるナルシストでもない。
しかし彼はデスゲームの場で開始早々に笑う人物じゃなければ、自分の顔を見てカッコつけるナルシストでもない。
では今、この場に居る黒の剣士は誰なのか?
その正体は――。
その正体は――。
(その正体は――あれ、俺ってどんな名前だっけ?)
彼は名も無き一般人。
ネット上では“イキリト”と呼ばれているので、便宜上そう呼ぶことにする。
ネット上では“イキリト”と呼ばれているので、便宜上そう呼ぶことにする。
さて。
イキリトはその特殊な出自から自分の名前を思い出せない。あくまでイキリトとして参加させようとした主催者に、その名を奪われたのだ。
イキリトはその特殊な出自から自分の名前を思い出せない。あくまでイキリトとして参加させようとした主催者に、その名を奪われたのだ。
(何故か名前を思い出そうとすると、イキリトって思い浮かぶんだよな。記憶をいじくるのやめろ!笑)
こんなわけのわからない状況だが、イキリトはポジティブだ。
そもそも彼はあの有名な“イキリト構文”の生みの親であり、あの構文通りポジティブな性格だ。
クラスの女子によくたかられるのに笑って済ませられる程の度量を持ち、キリトに似てるという“弄り”も何の嫌悪感もなく受け止めてる。
そもそも彼はあの有名な“イキリト構文”の生みの親であり、あの構文通りポジティブな性格だ。
クラスの女子によくたかられるのに笑って済ませられる程の度量を持ち、キリトに似てるという“弄り”も何の嫌悪感もなく受け止めてる。
また中学一年生にしてアスナ似の彼女がいるという点からも、その性格の良さが窺える。
あなたっぽいアニメキャラというタグに「キリトかなー、やっぱw」と答えてしまったのは周りからそう言われてたことを純粋にピュアな心で受け止め、そしてオタクであるがゆえにキリトに憧れが強いからだ。
「とりあえず近くの探索でもしてみるかw」
イキリトはそこら辺を歩き始めた
〇
――男と男の拳が、ぶつかり合う。
片や丸坊主の池沼のような男。
片やうんこの擬人化のようなクッソ汚い男。
片やうんこの擬人化のようなクッソ汚い男。
彼らは身体だけなら――友人であり、同じ空手部の仲間だった。
MURと野獣先輩。意味不明な名前だが、それが彼らの肉体の名前だ。
そんな二人が互いに全身全霊の一撃を放つ。
MURと野獣先輩。意味不明な名前だが、それが彼らの肉体の名前だ。
そんな二人が互いに全身全霊の一撃を放つ。
其れは相手の意識を刈り取るための一撃。
其れは愛する者のため、他者の命を奪い取るための一撃。
其れは愛する者のため、他者の命を奪い取るための一撃。
されどもなかなか、勝負が決まらない。
幾度となく殴り、殴られ――互いに体力を消耗してゆく。
支給品もあるが、そんなものを使う必要もなし。男の喧嘩といえば、やはりステゴロに限る。
幾度となく殴り、殴られ――互いに体力を消耗してゆく。
支給品もあるが、そんなものを使う必要もなし。男の喧嘩といえば、やはりステゴロに限る。
それが彼にとっての矜恃であり。
それが彼にとって、今から己が拳で他者を殺すと誓うための“儀”であった
それが彼にとって、今から己が拳で他者を殺すと誓うための“儀”であった
「オウ、結構入ってんじゃん」
鳩尾に一撃喰らい、坊主男の身体が揺れる。
坊主男――MURに入った男の名は、KMR。MURと同じ空手部に所属する後輩だ
坊主男――MURに入った男の名は、KMR。MURと同じ空手部に所属する後輩だ
「へー、すっごい我慢強い……」
そんなKMRを見て、感心するような声を出すうんこの擬人化こと野獣先輩。その中身は遠野という、野獣のことが好きな男だ。
最初はそんなふうに強気を保ってた遠野だが、何度も殴り、殴られ――それでも倒れないKMRに徐々に恐怖を覚える。
何故、彼は倒れないのか?
これだけ何度も――それこそ頭がかち割れてもおかしくないほどクッソ殴りまくってるのに。
これだけ何度も――それこそ頭がかち割れてもおかしくないほどクッソ殴りまくってるのに。
遠野はただ野獣先輩を守りたいだけだ。
自分が野獣先輩の身体になってしまったから、それを守るために優勝することを誓った。魘夢なんて化け物に挑むことは最初から諦めている。
自分が野獣先輩の身体になってしまったから、それを守るために優勝することを誓った。魘夢なんて化け物に挑むことは最初から諦めている。
もしも野獣先輩が居るなら、もちろん彼に優勝を譲ってもいい。これもう純愛だろ。
だからKMRにはさっさと死んでほしいのだ。
手始めに誰かを自らの手で殺せば、覚悟が完全に決まると思ってた。
手始めに誰かを自らの手で殺せば、覚悟が完全に決まると思ってた。
野獣先輩の肉体は――遠野は水泳部だと思っているが、時として空手部になったりするので強くて頑丈だ。素手で空手部のKMRとやり合うには、素人の遠野でも張り合えるくらい強い。
だがそれでもKMRはなかなか倒れない。
もう顔面には幾つも痣があるのに――その坊主頭は射抜くような瞳でこちらを見てくる。
もう顔面には幾つも痣があるのに――その坊主頭は射抜くような瞳でこちらを見てくる。
「どうして倒れないんだよぉ!」
「あぁ、はぁ、あぁ……。今にも逝きそうだけど、それでも“譲れないもの”があるからよ――」
「あぁ、はぁ、あぁ……。今にも逝きそうだけど、それでも“譲れないもの”があるからよ――」
動揺する遠野に対して――KMRは拳を構える。
――それは正拳突きの構え。
――それは正拳突きの構え。
されども、侮ることなかれ。
その正拳突き、ただの正拳突きには非ず。
その正拳突き、ただの正拳突きには非ず。
そして――放たれる一撃。
たかだか正拳突きで何を今更――と遠野は嘲笑うが――刹那、彼の脳天を“突き”が直撃した。
たかだか正拳突きで何を今更――と遠野は嘲笑うが――刹那、彼の脳天を“突き”が直撃した。
――聖拳“月”
これぞ空手の真骨頂。漢の極意。
月のように腕をしならせ、脳天を一思いに突くという禁術だ。
月のように腕をしならせ、脳天を一思いに突くという禁術だ。
「~~ぁっ、ぁあああ!」
遠野がたたらを踏み、倒れる。
これにてKMRの勝利だ。
これにてKMRの勝利だ。
(すっげ……)
二人の戦いを遠目に眺めていたイキリトが感嘆する。
「……もう安全だ。来ていいぜ」
KMRが支給品のサングラスを掛けると、これまた支給品のタバコとライターでワイルドにキメてイキリトを呼ぶ。もうここは安全だ、と。
それを聞いてイキリトは向かうが――。
それを聞いてイキリトは向かうが――。
「――危ない!」
KMRの背後から再び遠野が迫るのを見て、支給品のエリュシデータを手にする。
彼はこう見えて正義感が強い。ここぞという時に退けない性格だ。
しかも遠野はナイフを手にしている。間違いなく殺す気だ
彼はこう見えて正義感が強い。ここぞという時に退けない性格だ。
しかも遠野はナイフを手にしている。間違いなく殺す気だ
(なんとかして、止めなきゃな――!)
だがイキリトが手を出すよりも早く――KMRは裏拳を放ち、遠野を返り討ちにしていた。
その首から多大な量の出血しながら――それでもハードボイルドにタバコを吸う。血液混じりのタバコを、ふぅ――とひと吹き。
その首から多大な量の出血しながら――それでもハードボイルドにタバコを吸う。血液混じりのタバコを、ふぅ――とひと吹き。
「――よぅ兄ちゃん、もう終わりか?」
薄れゆく意識の中、フッと笑う。
イキリトは。あの少年は、こんな殺し合いでも懸命に人を助けようとした。“漢”の芽は、芽吹いている。たとえこんな殺し合いだろうと――心優しい少年が最期には魘夢を倒してくれることだろう。
イキリトは。あの少年は、こんな殺し合いでも懸命に人を助けようとした。“漢”の芽は、芽吹いている。たとえこんな殺し合いだろうと――心優しい少年が最期には魘夢を倒してくれることだろう。
(先輩……俺……)
意識が朦朧とし、肉体が崩れ落ちる。
心配して駆け寄る少年に――グッとサムズアップして「後はお前に託す。この殺し合いを、止めてくれよ……兄ちゃん」と笑った。
そんなふうにKMRが笑うものだから――イキリトも持ち前のポジティブさで「任せろ。やっぱりキリトらしく、俺が止めないとなw」とニッコリ笑った。
心配して駆け寄る少年に――グッとサムズアップして「後はお前に託す。この殺し合いを、止めてくれよ……兄ちゃん」と笑った。
そんなふうにKMRが笑うものだから――イキリトも持ち前のポジティブさで「任せろ。やっぱりキリトらしく、俺が止めないとなw」とニッコリ笑った。
その笑顔に救われて――
(俺……やりましたよ……)
KMRはその息を引き取った。
(先輩……。俺は、先輩のことが好きで……――)
そして遠野も意識を手放す。
結果は引き分け。勝者など此処になし。
されども後を託された少年――ここに在り。
結果は引き分け。勝者など此処になし。
されども後を託された少年――ここに在り。
「あんたの名前はわからないけどさ。俺、頑張るよ。だってほら……俺、今キリトですよ?」
今は亡きKMRにそれだけ声を掛けて――イキリトはその場を去った。このデスゲームを生き抜き、攻略するために
【KMR@真夏の夜の淫夢(身体:MUR@真夏の夜の淫夢) 死亡】
【遠野@真夏の夜の淫夢(身体:野獣先輩@真夏の夜の淫夢) 死亡】
【遠野@真夏の夜の淫夢(身体:野獣先輩@真夏の夜の淫夢) 死亡】
※KMRと遠野の支給品が落ちてます
【イキリト@ネットミーム】
[身体]:キリト@ソードアート・オンライン
[状態]:健康
[装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:魘夢を倒して、デスゲームを攻略かな~、やっぱw
1:名前も知らない人(KMR)の意志を無駄にはしない。俺はキリトだからなw
2:名前を思い出せなくても、俺は俺だなw
[備考]
※制限により自分の本来の名前を思い出せません
[身体]:キリト@ソードアート・オンライン
[状態]:健康
[装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:魘夢を倒して、デスゲームを攻略かな~、やっぱw
1:名前も知らない人(KMR)の意志を無駄にはしない。俺はキリトだからなw
2:名前を思い出せなくても、俺は俺だなw
[備考]
※制限により自分の本来の名前を思い出せません
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