仮面ライダー、一文字隼人は改造人間である。
肉体のプロフィールはその一文から始まり、悲痛でありながらも気高い物語を綴っていた。
SHOCKERなる悪の組織に拉致、改造されて怪人になるも正義の心に目覚めて戦うことを決めた誇り高き戦士だと。
肉体のプロフィールはその一文から始まり、悲痛でありながらも気高い物語を綴っていた。
SHOCKERなる悪の組織に拉致、改造されて怪人になるも正義の心に目覚めて戦うことを決めた誇り高き戦士だと。
(……さて、おれとは縁もゆかりもねェジャッジ〈あのおっさん〉とどっちがマシだ?どっちもクソか)
その肉体に宿る男、ヴィンスモーク・サンジもまた改造人間である。
悪の王国ジェルマの第三王子として産まれ……産まれる前から父親に改造手術を施され、科学の力を身に宿した。
本来なら心まで失くした怪物になるはずで、事実彼と同じ改造を施された三人の兄弟は感情の一部を失ったが、サンジだけは母親の命を懸けた献身によって心を持って産まれることができたのだ。
悪の王国ジェルマの第三王子として産まれ……産まれる前から父親に改造手術を施され、科学の力を身に宿した。
本来なら心まで失くした怪物になるはずで、事実彼と同じ改造を施された三人の兄弟は感情の一部を失ったが、サンジだけは母親の命を懸けた献身によって心を持って産まれることができたのだ。
「まあ、そんな感じだからおれをこの男の体にぶち込んだんだと思うぜ、ルリ子ちゃん」
『そう。軽く言うつもりはないけれど、あなたも大変ね』
『そう。軽く言うつもりはないけれど、あなたも大変ね』
サンジが手に持つ、ヘルメット状のもの……仮面ライダー第2+1号のマスクに宿った人格、緑川ルリ子に語り掛ける。
彼女もまたSHOCKERに産み落とされた人造人間であり、そして一文字を洗脳から解放し、SHOCKERと戦った女傑である。
血のつながった息子を改造した科学者と何の関わりも持たない一般人を改造する組織とどちらが邪悪か、など論じる価値もない目クソと鼻クソだが、互いの近似する環境が二人に奇妙な連帯感を生んでいた。
とはいったものの。
彼女もまたSHOCKERに産み落とされた人造人間であり、そして一文字を洗脳から解放し、SHOCKERと戦った女傑である。
血のつながった息子を改造した科学者と何の関わりも持たない一般人を改造する組織とどちらが邪悪か、など論じる価値もない目クソと鼻クソだが、互いの近似する環境が二人に奇妙な連帯感を生んでいた。
とはいったものの。
「ルリ子ちゃんも大変だったな……そして今も大変な事態だ。だが安心していい。これからはおれが君を守る。そう、君という天使を宿したマスクのように、心に愛という力を宿したこのおれが……!」
『あー、はいはい。そうね、まあそういうのは後でいくらでも聞いてあげるから』
『あー、はいはい。そうね、まあそういうのは後でいくらでも聞いてあげるから』
二言目には口説き文句を混ぜ始めるサンジの態度にはさしものルリ子も辟易する。
これが本当にただの軟派男なら適当にあしらうし、おれも君と同じなんだなどというのも同一性を提示して親近感を抱かせる話術だろうと切って捨てるのだが。
他人の体に押し込められて殺しあえなどと命じられた超常の異常事態まっただ中で、自分も悪の組織に改造されたんだなんてホラを吹ける人間はまずいないだろう。
これが本当にただの軟派男なら適当にあしらうし、おれも君と同じなんだなどというのも同一性を提示して親近感を抱かせる話術だろうと切って捨てるのだが。
他人の体に押し込められて殺しあえなどと命じられた超常の異常事態まっただ中で、自分も悪の組織に改造されたんだなんてホラを吹ける人間はまずいないだろう。
(嘘ならもう少しマシなものにするでしょうし……あまりにも突拍子がなさすぎるもの)
身の上だけではない。
そもそも生まれた世界がまるで違うとしか思えない、絵物語のような自己紹介をされた。
大海賊時代に生きるコックで、偉大なる航路を旅する海賊。改造人間というだけで十二分におとぎ話だろうに、嘘ならこれ以上設定を盛る必要はないだろう。
そして逆にサンジはルリ子の生きる世界のことを初めて聞いたようなリアクションをする。
いくらなんでも日本やアメリカのような国名まで知らないなど、そんな嘘はつく意味はない。
ならばこの男の持つ情報は真実だと判断し、ルリ子はさらなる提示を求めた。
そもそも生まれた世界がまるで違うとしか思えない、絵物語のような自己紹介をされた。
大海賊時代に生きるコックで、偉大なる航路を旅する海賊。改造人間というだけで十二分におとぎ話だろうに、嘘ならこれ以上設定を盛る必要はないだろう。
そして逆にサンジはルリ子の生きる世界のことを初めて聞いたようなリアクションをする。
いくらなんでも日本やアメリカのような国名まで知らないなど、そんな嘘はつく意味はない。
ならばこの男の持つ情報は真実だと判断し、ルリ子はさらなる提示を求めた。
『人格を入れ替える能力に思い当たる節があるって?』
「ああ。オペオペの実と、一応カゲカゲの実も体に別の人格を宿す能力ってことになるかな」
『ふぅん。私もプラーナを機械に移植できるのは知っているけど、人格の入れ替えなんてうまくいくかは正直わからない。あなたのいう能力者がバックにいる可能性は高いと思う?』
「ああ。オペオペの実と、一応カゲカゲの実も体に別の人格を宿す能力ってことになるかな」
『ふぅん。私もプラーナを機械に移植できるのは知っているけど、人格の入れ替えなんてうまくいくかは正直わからない。あなたのいう能力者がバックにいる可能性は高いと思う?』
無駄な口説き文句を交えながらも進めていた情報交換で互いに推察を進めていく。
サンジも女好きではあるが、幸い頭の回る部類ではあるので必要な説明や質問などは粛々と行われていく。
サンジも女好きではあるが、幸い頭の回る部類ではあるので必要な説明や質問などは粛々と行われていく。
「トラ男…オペオペの能力者がこんなマネするとは思えねェな。カゲカゲの方はやるかどうか判断できるほど人柄を知らないんでどうにも」
『微妙なところね』
「あ、いや」
『なに?』
「カゲカゲの能力者は確か2年前の新聞で死亡記事が出てたから、別のやつが食ってるかもしれないな……そいつが関わってる可能性はある」
『…えーと。代替わりするものなの?能力者っていうのは』
「ああ、それはーーー」
『微妙なところね』
「あ、いや」
『なに?』
「カゲカゲの能力者は確か2年前の新聞で死亡記事が出てたから、別のやつが食ってるかもしれないな……そいつが関わってる可能性はある」
『…えーと。代替わりするものなの?能力者っていうのは』
「ああ、それはーーー」
悪魔の実についてサンジが話し、続けてルリ子はプラーナについて解説を返す。
それ以外にもいくつか議題を投じあうが、結局は推察に過ぎないことなので重点は置かない。
目にした確かな情報が一つある。
それ以外にもいくつか議題を投じあうが、結局は推察に過ぎないことなので重点は置かない。
目にした確かな情報が一つある。
『それで、あのウタって子のことだけど』
「ああ。ウチの船長の幼馴染らしい。ウタウタの実の能力者で……」
「ああ。ウチの船長の幼馴染らしい。ウタウタの実の能力者で……」
つい先ほど、命を終えた。そうサンジは記憶している。
ネズキノコという覚醒作用のあるキノコを口にし、その副作用で最期を迎え、家族である赤髪海賊団に看取られて、棺の中で眠っている。
そのはずなのだが……
ネズキノコという覚醒作用のあるキノコを口にし、その副作用で最期を迎え、家族である赤髪海賊団に看取られて、棺の中で眠っている。
そのはずなのだが……
「四皇から娘の遺体を奪うなんてマネがよくできたもんだとは思うがそれはともかく。亡骸を動かせるのはおれの知識じゃカゲカゲだけだ。死んだ人間を生き返らせるのは……」
ヨホホと笑うガイコツがサンジの頭の中に浮かんだがいったんそれは追い払う。
「全くないわけじゃないが、彼女には無理かな」
『彼女の死体を動かす意味は何かしら?知り合いの動揺を誘うため?悪魔の実って死んだら使えなくなるんだったら、死体を動かしても意味ないんじゃないの?』
「それは……」
『彼女の死体を動かす意味は何かしら?知り合いの動揺を誘うため?悪魔の実って死んだら使えなくなるんだったら、死体を動かしても意味ないんじゃないの?』
「それは……」
どうなのだろうか。
ルリ子の提示した疑問の答えをサンジは示せない。
ルリ子の提示した疑問の答えをサンジは示せない。
(トラ男の能力で入れ替わったとき、フランキーはヒトヒトの変形に手こずってたし、たしぎちゃんもケムリ野郎の能力を使いこなせてなかったらしい。
逆にルフィの影が入ったオーズに能力はなかった。悪魔の実は体の方に宿るってことだ。じゃあ、能力者の死体を動かしたらそこに能力は残ってるのか……?)
逆にルフィの影が入ったオーズに能力はなかった。悪魔の実は体の方に宿るってことだ。じゃあ、能力者の死体を動かしたらそこに能力は残ってるのか……?)
スリラーバークで能力者の死体は確認できなかったからその答えは分からない。
参考でしかないがヨミヨミの実の能力者であるブルックは魂が実態に近いエネルギーを持ち、それでも骨が傷つくとダメージになると。
なにより、ルリ子の言う通り。ウタは可憐な少女だが、彼女を利用するというなら容姿や強さよりもその能力こそが目的と見るべきだろう。
参考でしかないがヨミヨミの実の能力者であるブルックは魂が実態に近いエネルギーを持ち、それでも骨が傷つくとダメージになると。
なにより、ルリ子の言う通り。ウタは可憐な少女だが、彼女を利用するというなら容姿や強さよりもその能力こそが目的と見るべきだろう。
「遺体に能力が残る可能性はある。悪魔の実を食った銃なんてのもあったらしい。命のないモノ、っていうとなんだが、そういう方向では近いかもしれない……」
つまり敵はウタウタの能力をものにしている可能性が極めて高い。
彼女ほどに能力を使いこなせる歌姫がそういるとも思えないが、一つの仮説に思い至る。
彼女ほどに能力を使いこなせる歌姫がそういるとも思えないが、一つの仮説に思い至る。
「ウタウタの実もある意味肉体の入れ替えができる能力だな……」
『あの子の能力が?』
『あの子の能力が?』
実際に入れ替えるわけではないが、そう見せかけることはできるはずだ。
『彼女はどういう能力なの?』
ルリ子から当然の質問が飛ぶ。
当然これまでのようにサンジからすぐに答えが返ってくるものと思っていたが、合槌もなく思った以上に長い沈黙が下りた。
聞こえなかったのか、あるいは言語化するのがそれほど難しいのか、それにしても一言も返さないのはこの男らしくない、などと思い改めてルリ子の口から問いが発されようとした瞬間。
やおらサンジが立ち上がり、彼方へと視線をやる。
当然これまでのようにサンジからすぐに答えが返ってくるものと思っていたが、合槌もなく思った以上に長い沈黙が下りた。
聞こえなかったのか、あるいは言語化するのがそれほど難しいのか、それにしても一言も返さないのはこの男らしくない、などと思い改めてルリ子の口から問いが発されようとした瞬間。
やおらサンジが立ち上がり、彼方へと視線をやる。
『なに?どうしたの!?』
これまでにない真剣な表情と佇まいにルリ子も意識新たに警戒心を強める。
殺しあえと放り込まれた環境なのだ。油断はならない、とサンジの次の言を待つが
殺しあえと放り込まれた環境なのだ。油断はならない、とサンジの次の言を待つが
「女の涙が落ちる音がした……!」
真剣な表情はそのままに、口から発せられたのは軟派男の妄言としか思えないものだった。
真面目な話の最中だというのに妄想を豊かにするのはやめてほしいとルリ子の心中が呆れに満ちる。
感想も当然辛辣なものだ。
真面目な話の最中だというのに妄想を豊かにするのはやめてほしいとルリ子の心中が呆れに満ちる。
感想も当然辛辣なものだ。
『何言ってるのあなた……って、ええ!?』
文字通りに、サンジが飛び出す。
跳躍以上、飛翔未満。
空を蹴り、天を駆けていずこかへと向かっていくサンジの歩法にはさすがのルリ子も驚いた。
さらにサンジの目指す方向に、何者かに追われる女性の姿が見えた時にはさらに驚いた。
跳躍以上、飛翔未満。
空を蹴り、天を駆けていずこかへと向かっていくサンジの歩法にはさすがのルリ子も驚いた。
さらにサンジの目指す方向に、何者かに追われる女性の姿が見えた時にはさらに驚いた。
逃げているのは美しい少女だった。
艶やかな黒髪を腰のあたりまで伸ばし、学生服の上から赤いカーディガンを纏った大和撫子といった女の子が涙を浮かべて駆けている。
それを追うのは金髪の男。
右目を覆うように前髪を伸ばし、黒いスーツに革靴のフォーマルスタイル。渦のようにカールした眉が特徴的だ。
男が少女に追いつかんとするその刹那。
艶やかな黒髪を腰のあたりまで伸ばし、学生服の上から赤いカーディガンを纏った大和撫子といった女の子が涙を浮かべて駆けている。
それを追うのは金髪の男。
右目を覆うように前髪を伸ばし、黒いスーツに革靴のフォーマルスタイル。渦のようにカールした眉が特徴的だ。
男が少女に追いつかんとするその刹那。
「おれの身体で何しとんじゃクラァ!!!」
怒声を上げてサンジが割り込む。
そう、少女を追っているのはサンジの肉体だった。
自分の体を使って女性に危害を加えるなど断じて許すまじと蹴足を構え……その足が即座に止まる。
それを見てサンジの肉体が嗤う。
そう、少女を追っているのはサンジの肉体だった。
自分の体を使って女性に危害を加えるなど断じて許すまじと蹴足を構え……その足が即座に止まる。
それを見てサンジの肉体が嗤う。
「あら?あらららら~ぁ?どうしたの、新しい王子様?何か用事かと思ったら、エスコートしてくれるのかしら?」
吐き出された挑発的な言葉とその口調、見聞できる気配にサンジが眉根をひそめる。
(なんてこった、おれの体にレディが)
案の定、というかそんな予感はした。だから攻撃をとっさに止めたのだ。
しかし状況次第では歓喜するであろうシチュエーションも、別人の体を使って殺しあえと言われたさなかで、さらにはその女性が別の女性に危害を加えようとしていたとなると悪夢の一言に尽きる。
しかし状況次第では歓喜するであろうシチュエーションも、別人の体を使って殺しあえと言われたさなかで、さらにはその女性が別の女性に危害を加えようとしていたとなると悪夢の一言に尽きる。
「一応、事情を聞かせちゃくれねぇか。なんだってその子を追っていた?」
持ち物を盗られたとか先に襲ってきたのは向こうだとか何か主張はあるかもしれない。
だからといって自分の身体がレディに手を上げるのをよしとはしないが。
そんな類推も裏切るように、サンジの身体は笑って答えた。
だからといって自分の身体がレディに手を上げるのをよしとはしないが。
そんな類推も裏切るように、サンジの身体は笑って答えた。
「中身は違うかもしれないけど、天城雪子の、その身体は私のモノよ。私が私のモノをどうしようと勝手でしょう?」
器を満たしていたのは虚ろな影。
天城雪子という少女の逃避願望が歪んだ形で具現化された天城雪子のシャドウであった。
本体に受け入れられないシャドウは本体を殺そうとするもの、という性質が他者の肉体と入れ替わる特異な環境で歪に発現しているらしい。
サンジはそれを知るべくもなく、言葉面だけでは自殺願望に近似する何かのよう程度にしか理解も及ばず。
ひとまず悲劇を止めるために言葉を紡ぐ。
天城雪子という少女の逃避願望が歪んだ形で具現化された天城雪子のシャドウであった。
本体に受け入れられないシャドウは本体を殺そうとするもの、という性質が他者の肉体と入れ替わる特異な環境で歪に発現しているらしい。
サンジはそれを知るべくもなく、言葉面だけでは自殺願望に近似する何かのよう程度にしか理解も及ばず。
ひとまず悲劇を止めるために言葉を紡ぐ。
「心が体を自由にしていいってんなら、おれの言葉に従ってもらおうかレディ。おれの身体でレディを傷つけるのはやめてくれ」
「そうなの!?あなた、北の海の王子様!?もしかしてぇ、私をここから連れ出すために来てくれたの?」
「そうなの!?あなた、北の海の王子様!?もしかしてぇ、私をここから連れ出すために来てくれたの?」
サンジの名乗りにシャドウ雪子は媚びるような声を漏らす。
カマーランドの奴らみたいで勘弁してほしい、どうやらおれのプロフィールには目を通しているのかなどとイヤな思いを何重にも味わうがそれはこらえて。
カマーランドの奴らみたいで勘弁してほしい、どうやらおれのプロフィールには目を通しているのかなどとイヤな思いを何重にも味わうがそれはこらえて。
「まず、おれをヴィンスモークと呼ぶのはやめてくれ。そして残念ながら脱出の案はおれにもないし、キミだけを助けにきたとは言えない」
もちろん、それでも必ずみんな助けてみせるがねと口説き文句を添えようとするが
「あら、そう」
冷え切ったシャドウ雪子の声がそれを遮った。
期待を裏切られた失望だろうか。あるいは器と中身でぶつかり合うシャドウの本能だろうか。
雪子の体だけでなく、サンジの精神にまで敵意が向けられる。
期待を裏切られた失望だろうか。あるいは器と中身でぶつかり合うシャドウの本能だろうか。
雪子の体だけでなく、サンジの精神にまで敵意が向けられる。
「一人前気取りで文句か?偉くなったな、チビナスがよ」
女性的な口調だったのが突如として低く威圧的なものに変わった。
天城雪子の影ではなく、お前はおれなんだと突きつけるようにその声色はサンジのそれと等しく響く。
天城雪子の影ではなく、お前はおれなんだと突きつけるようにその声色はサンジのそれと等しく響く。
「一人じゃ何もできねえ、どこにも行けねえ恥晒しが。ジェルマから逃げ出すのも、バラティエから飛び出すのも!自分一人じゃできなかったクセして文句ばかり一丁前か」
知っているのか。あるいは同類、囚われのものである故に理解できるのか。
精神〈サンジ〉のトラウマを肉体〈ヴィンスモーク〉が抉り出す。
精神〈サンジ〉のトラウマを肉体〈ヴィンスモーク〉が抉り出す。
「檻の中で、鎖につながれて、鉄仮面を被されて!ケージの中のネズミじゃねえか!姉上か船長に連れ出されなきゃどこにも行けない、弱くてちっぽけで哀れなネズミ!」
「お前……」
「不服か?そうだな、たしかにネズミは言い過ぎだった。産まれた時から外も中も弄られてるのはそれ以下のモルモットと言うべきか?」
「お前……」
「不服か?そうだな、たしかにネズミは言い過ぎだった。産まれた時から外も中も弄られてるのはそれ以下のモルモットと言うべきか?」
似ている。
当たり前のことが思い出され、突きつけられる。
自分に、ではない。
ヴィンスモーク・サンジは容姿だけならば兄弟〈ジェルマ〉にそっくりだ。紡ぐセリフが近いモノなら吐き気を催すほどによく似ている。
当たり前のことが思い出され、突きつけられる。
自分に、ではない。
ヴィンスモーク・サンジは容姿だけならば兄弟〈ジェルマ〉にそっくりだ。紡ぐセリフが近いモノなら吐き気を催すほどによく似ている。
「モルモットでも非常食でも飼ってくれるんだ、ありがたいことだよ。さすが器のデカい船長だ。あいつにはおれなんかいらねえ。放っといても海賊王になれる。
あんまりに弱っちくて群れから迫害されたモルモットは、ただじーっと、夢の果てに連れてってくれるのを期待してるだけでいいんだ。だからおれは群れの主に餌を運ぶだけで……」
あんまりに弱っちくて群れから迫害されたモルモットは、ただじーっと、夢の果てに連れてってくれるのを期待してるだけでいいんだ。だからおれは群れの主に餌を運ぶだけで……」
キレる。
サンジを貶めるだけでなく、尊敬する船長への無理解な言葉と、料理という神聖な行為まで貶されたことでサンジの頭に血が上った。
サンジを貶めるだけでなく、尊敬する船長への無理解な言葉と、料理という神聖な行為まで貶されたことでサンジの頭に血が上った。
「ふざけんな!!!お前は、おれじゃねえだろ!ちょっと体に入っただけで知ったようなことほざいてんじゃねえ!」
その言葉が、きっかけとなった。
それを影は待っていたのだ。
それを影は待っていたのだ。
「ふふ…はは。あははははははははははは!!」
あたかもサンジのように言の葉を紡いでいた雪子の影が、本来の女性的な口調と声色に戻る。
そう、この瞬間に一個の存在を確立したと言わんばかりに。
そう、この瞬間に一個の存在を確立したと言わんばかりに。
「ええ、そうよ。私は、あなたじゃあない……!」
嘲笑うように口元を歪めて、シャドウ雪子はサンジの言葉を肯定する。
そしてサンジの存在を否定するべく、一つの武器を取り出す。
そしてサンジの存在を否定するべく、一つの武器を取り出す。
「そいつ、は……」
サンジにとって見知った、唾棄すべきものだった。
3というナンバーが刻まれた筒状の金属管。それを腰だめに構えて装着すると、シャドウ雪子は宣言する。
3というナンバーが刻まれた筒状の金属管。それを腰だめに構えて装着すると、シャドウ雪子は宣言する。
「ジェルマ…!」
内部からスーツが展開しシャドウ雪子に装着された。
黒を基調としたマントにマスクにスーツを纏う戦士の姿へと彼女は転じた。
その名はステルス・ブラック。
悪の王国ジェルマ66の戦闘員であり、本来のヴィンスモーク・サンジに与えられた科学の力である。
黒を基調としたマントにマスクにスーツを纏う戦士の姿へと彼女は転じた。
その名はステルス・ブラック。
悪の王国ジェルマ66の戦闘員であり、本来のヴィンスモーク・サンジに与えられた科学の力である。
「我は影…真なる我…さあ、出来損ないの王子様。私の王子様じゃないなら、死んじゃってよ」
サンジの肉体で、サンジの忌避する能力を行使して、サンジの精神を破壊にかかる。
シャドウとしてこれ以上の所業はなかろう。
シャドウとしてこれ以上の所業はなかろう。
「千枝の、マネっ!!!」
拙い構えから鋭い蹴りをシャドウ雪子が繰り出す。
格闘経験は素人同然だが、秀でた肉体と装備に加えて我流ながらも積み上げた功夫の模倣は侮れるものではなかった。
想定以上に速い回し蹴りをサンジはかろうじていなし、さらに二撃三撃と蹴りを交差させる。
シャドウの本能か器の扱いを心得ているようで、シャドウ雪子は蹴撃中心の戦術を繰り広げた。
サンジが女性に反撃できないことも含めてだが、一方的に優位な戦況を作り上げる。
格闘経験は素人同然だが、秀でた肉体と装備に加えて我流ながらも積み上げた功夫の模倣は侮れるものではなかった。
想定以上に速い回し蹴りをサンジはかろうじていなし、さらに二撃三撃と蹴りを交差させる。
シャドウの本能か器の扱いを心得ているようで、シャドウ雪子は蹴撃中心の戦術を繰り広げた。
サンジが女性に反撃できないことも含めてだが、一方的に優位な戦況を作り上げる。
「あはは!どうしたの!?反撃できないのかしら!?」
技巧と経験など内面では圧倒的にサンジが勝る。
しかしレイドスーツを纏ったサンジの肉体に、ただの一文字隼人では及ばない。武装色もなよって使えず、ガードの上から強靭な装甲を叩きつけられて小さくないダメージになる。
しかしレイドスーツを纏ったサンジの肉体に、ただの一文字隼人では及ばない。武装色もなよって使えず、ガードの上から強靭な装甲を叩きつけられて小さくないダメージになる。
「こんなのはどう!?」
二連牙、シャドウやペルソナの放つ二連続物理攻撃系スキル。
シャドウ雪子はそれを高速の二連脚として放った。
スキルとしては下位のものだが、レイドスーツの機能であるブースターで加速して放たれた連撃は上位のペルソナから放たれる一撃に劣るものではなく、人体程度ならば容易く貫通する。
シャドウ雪子はそれを高速の二連脚として放った。
スキルとしては下位のものだが、レイドスーツの機能であるブースターで加速して放たれた連撃は上位のペルソナから放たれる一撃に劣るものではなく、人体程度ならば容易く貫通する。
「“三級挽き肉”(トロワジェム・アッシ)!!!」
防御、迎撃のために小規模だが技で返す。
双方小技とはいえ、生物として超級の二人だ。
その衝突は尋常でないエネルギーを産み、炸裂して互いの距離が離れる。
双方小技とはいえ、生物として超級の二人だ。
その衝突は尋常でないエネルギーを産み、炸裂して互いの距離が離れる。
『…くん!サンジくん、あなたも変身しなさい!このままじゃ本当にやられるわよ!?」
先刻から呼びかけていたのだろうか。
動揺してほぼ聞こえていなかったが、ルリ子の声に悩みながらもサンジは応えた。
動揺してほぼ聞こえていなかったが、ルリ子の声に悩みながらもサンジは応えた。
「くそ、こうか?変身!」
科学の力を行使するのに僅かに逡巡するが、自分の肉体とジェルマの力はよく知っているため迷ってはいられないと腰に手を伸ばした。
奇しくもステルス・ブラックが変身時に取る構えと近似するポーズとなり、鏡合わせのように対峙する。
タイフーンが起動し、取り込んだ大気のプラーナを己が力へと変換し、そしてルリ子の宿るマスクを装備。
悪の軍団SHOCKERにより生み出された正義のヒーロー仮面ライダーが、悪の軍団ジェルマ66の戦闘員ステルス・ブラックとの戦いに臨む。
奇しくもステルス・ブラックが変身時に取る構えと近似するポーズとなり、鏡合わせのように対峙する。
タイフーンが起動し、取り込んだ大気のプラーナを己が力へと変換し、そしてルリ子の宿るマスクを装備。
悪の軍団SHOCKERにより生み出された正義のヒーロー仮面ライダーが、悪の軍団ジェルマ66の戦闘員ステルス・ブラックとの戦いに臨む。
「へえぇ、あなたも変身するんだ。それじゃあ、もぉっと強さを見せてちょうだい!」
僅かな距離を一瞬にして詰め、シャドウ雪子が前蹴りを打ち込む。
サンジもそれを蹴りでいなすが、彼の騎士道が反撃を許さない。マスクが闘えと機能的に干渉するが、それを戯言と流す心意気だ。
変身して身体スペックでも双方五分といえるまで持ち込んだが、その信念がサンジを劣勢に追い込む。
シャドウ雪子が操るのは我流クンフーのそのまた真似事という格闘技未満の戦闘術のため有効打には及ばないが、一方的な戦況には変わりない。
そして拮抗と言えない停滞ではあるが、それを良しとするほどシャドウ雪子は怠惰ではない。何より女性に手を上げないという騎士道も、戦場では手を使わないというコックの誇りも、本来サンジの肉体ならば持ち得るそれらを欠片ももたない彼女に戸惑いはない。
サンジもそれを蹴りでいなすが、彼の騎士道が反撃を許さない。マスクが闘えと機能的に干渉するが、それを戯言と流す心意気だ。
変身して身体スペックでも双方五分といえるまで持ち込んだが、その信念がサンジを劣勢に追い込む。
シャドウ雪子が操るのは我流クンフーのそのまた真似事という格闘技未満の戦闘術のため有効打には及ばないが、一方的な戦況には変わりない。
そして拮抗と言えない停滞ではあるが、それを良しとするほどシャドウ雪子は怠惰ではない。何より女性に手を上げないという騎士道も、戦場では手を使わないというコックの誇りも、本来サンジの肉体ならば持ち得るそれらを欠片ももたない彼女に戸惑いはない。
「皆殺しよ!!!」
焼き払い。
扇を振るうように片手を振るい、一帯へと火炎を放つ。
サンジも、ルリ子も。そして恐怖に震える天城雪子の肉体に対しても諸共に焼き尽くさんと。
扇を振るうように片手を振るい、一帯へと火炎を放つ。
サンジも、ルリ子も。そして恐怖に震える天城雪子の肉体に対しても諸共に焼き尽くさんと。
「させるかよ、“悪魔風脚”〈ディアブル・ジャンブ〉!!!」
炎を征するならより熱きものを。
大気の摩擦と燃え上がる情熱が、肉体は違えどもサンジの脚に火をつけた。
一流コックならば火も得手として当然といわんばかりにシャドウ雪子の炎を迎撃する。
大気の摩擦と燃え上がる情熱が、肉体は違えどもサンジの脚に火をつけた。
一流コックならば火も得手として当然といわんばかりにシャドウ雪子の炎を迎撃する。
「“揚げ物盛り合わせ”〈フリット・アソルティ〉!!!」
燃え盛る高速の蹴りで放たれた炎を巻き込み、瞬時にかき消す。
火力も技巧もモノが違うと一蹴されシャドウ雪子が不快感に顔をしかめるが、それ以上の興味が浮かぶ。
火力も技巧もモノが違うと一蹴されシャドウ雪子が不快感に顔をしかめるが、それ以上の興味が浮かぶ。
「それ…」
炎熱で赫く染まった脚。
常人ならば耐えられるはずのない熱量を改造人間の頑健さと装備、さらに本人曰くより熱く燃える心でモノにする。
―――ステルス・ブラックと仮面ライダー2+1号は身体スペックにおいておおむね五分である。ならば。
常人ならば耐えられるはずのない熱量を改造人間の頑健さと装備、さらに本人曰くより熱く燃える心でモノにする。
―――ステルス・ブラックと仮面ライダー2+1号は身体スペックにおいておおむね五分である。ならば。
「その技、変身したから使えるの?カラダの技?いいえ、違うわね。熟達してる……ココロのものよね?つまり」
シャドウ雪子の顔に歪んだ笑みが浮かぶ。
「ヴィンスモーク・サンジの技なら、この肉体でも使えるでしょう?」
ヴィンスモークと呼ぶな、と声を上げる間もなく。
シャドウ雪子は掌に炎〈アギ〉を生成し、それを自らの脚へと放った。
―――そして足が赫く染まる。
シャドウ雪子は掌に炎〈アギ〉を生成し、それを自らの脚へと放った。
―――そして足が赫く染まる。
「“悪魔風脚”〈ディアブル・ジャンブ〉……!!!だったかしら?ふふ」
それにサンジが瞠目する時間も与えず、燃え盛る蹴撃を叩きこんだ。
「痛ッ…!」
反射的にサンジも自らの“悪魔風脚”〈ディアブル・ジャンブ〉で迎撃し、それによって理解する。
シャドウ雪子のそれは自分に匹敵する威力だと。
仮面ライダーの装甲が悲鳴を上げるほどのエネルギーをステルス・ブラックの燃え盛る足は秘めていた。
シャドウ雪子のそれは自分に匹敵する威力だと。
仮面ライダーの装甲が悲鳴を上げるほどのエネルギーをステルス・ブラックの燃え盛る足は秘めていた。
「千枝とぉ、アナタのマネッ!!!」
拙いカンフーに“悪魔風脚”〈ディアブル・ジャンブ〉を加えた蹴りを続けざまに叩き込む。
サンジがそれを迎撃することで赫い足がぶつかり合い火花を散らす。
さらに二撃、三撃、交差するたびにシャドウ雪子はじわりと練度を増す。
そしてついに
サンジがそれを迎撃することで赫い足がぶつかり合い火花を散らす。
さらに二撃、三撃、交差するたびにシャドウ雪子はじわりと練度を増す。
そしてついに
「これでいいかしら?“揚げ物盛り合わせ”〈フリット・アソルティ〉……!!!」
サンジの技も模倣する。
燃え盛る脚での高速の連打。
七武海ドフラミンゴをして強力と言わしめる威力の蹴りをシャドウ雪子は再現した。
秀でた戦闘力をした一文字の肉体であっても容易く受けられるものではない。
短いうめき声をあげてサンジが吹き飛ばされる。
燃え盛る脚での高速の連打。
七武海ドフラミンゴをして強力と言わしめる威力の蹴りをシャドウ雪子は再現した。
秀でた戦闘力をした一文字の肉体であっても容易く受けられるものではない。
短いうめき声をあげてサンジが吹き飛ばされる。
「色々ご教授ありがとう。お礼にぃ、立派な鉄くずにしてあげる」
そう告げるとシャドウ雪子が姿を消す。
ステルス・ブラックにはその名の通りステルス機能がある。全身に背景を投影することで姿を消すのだ。
鋼鉄にすら足跡を残す実力者が透明化するその脅威は計り知れない。
容赦なく、シャドウ雪子がサンジへとどめの連撃を繰り出した。
ステルス・ブラックにはその名の通りステルス機能がある。全身に背景を投影することで姿を消すのだ。
鋼鉄にすら足跡を残す実力者が透明化するその脅威は計り知れない。
容赦なく、シャドウ雪子がサンジへとどめの連撃を繰り出した。
しかしそれで散るほどサンジという男は甘くない。
見聞色の覇気という技法がある。人や物がそこに在るだけで発する声を聞き取る技術で、姿が見えずとも相手を捉えることができる。
サンジはその達人だ。
ステルス・ブラックが姿を消しても、容易く惑わされはしない。
良くも悪くも戦況は変わらず、シャドウ雪子の攻撃をサンジがしのぎ続ける。
見聞色の覇気という技法がある。人や物がそこに在るだけで発する声を聞き取る技術で、姿が見えずとも相手を捉えることができる。
サンジはその達人だ。
ステルス・ブラックが姿を消しても、容易く惑わされはしない。
良くも悪くも戦況は変わらず、シャドウ雪子の攻撃をサンジがしのぎ続ける。
そこへ一手、シャドウ雪子が勝負に出た。
一足飛びに距離をとり、炎をともして決着に向かう。
それによって生じる空間の歪み……炎の熱で空気が歪んだことで投影機能にほころびが生じた。
そのリスクもよしとしたのか、さらに火力を上げた巨大な炎の塊がサンジへと飛び掛かった。
一足飛びに距離をとり、炎をともして決着に向かう。
それによって生じる空間の歪み……炎の熱で空気が歪んだことで投影機能にほころびが生じた。
そのリスクもよしとしたのか、さらに火力を上げた巨大な炎の塊がサンジへと飛び掛かった。
「“悪魔風脚”〈ディアブル・ジャンブ〉!!!」
その炎を自らの燃え盛る脚で受け止めんとするサンジ。だが
(な、すりぬけっ…!?)
その一撃もシャドウ雪子の纏う“悪魔風脚”〈ディアブル・ジャンブ〉と想定していたが当てが外れる。
それは囮で放った単なるアギだったのだ。
そのすぐあとからシャドウ雪子はステルスして追撃することで、ついにサンジに決定的な一撃を入れることに成功する。
それは囮で放った単なるアギだったのだ。
そのすぐあとからシャドウ雪子はステルスして追撃することで、ついにサンジに決定的な一撃を入れることに成功する。
「ふふ。どーん……!!」
意識を刈り取るほどの一撃でサンジが吹き飛ぶ。
バッタオーグの機能で少しずつ回復するものの、その程度では牛歩に等しい。
とどめの追撃にシャドウ雪子が踏み込む。
バッタオーグの機能で少しずつ回復するものの、その程度では牛歩に等しい。
とどめの追撃にシャドウ雪子が踏み込む。
そこへ新たな炎が奔り抜けた。
放ったのは肉体の方の天城雪子だ。
炎の壁がシャドウ雪子とサンジを阻む形で燃え広がり、歯噛みしながらシャドウ雪子は距離をとる。
放ったのは肉体の方の天城雪子だ。
炎の壁がシャドウ雪子とサンジを阻む形で燃え広がり、歯噛みしながらシャドウ雪子は距離をとる。
「あら。怯える以外にできることがあったのね、ワタシ」
シャドウ雪子は肉体と遭遇した時に真っ先にテラーボイスというスキルを放ち、雪子を恐怖のバッドステータスに陥れていた。
それゆえに闘うすべがあるにもかかわらず彼女は怯え逃げまどっていたのだが、窮地で何もしない無能ではない。
そしてダメージがあろうとも、サンジは好機を見逃しはしない。
それゆえに闘うすべがあるにもかかわらず彼女は怯え逃げまどっていたのだが、窮地で何もしない無能ではない。
そしてダメージがあろうとも、サンジは好機を見逃しはしない。
追われていた少女が動けると分かればこの場にとどまる理由は皆無といえよう。
雪子の肉体を抱えて空を蹴り、撤退を選ぶ。
雪子の肉体を抱えて空を蹴り、撤退を選ぶ。
「“空中歩行”〈スカイウォーク〉!!!」
消えたように見えるほどの爆発的な脚力で空を走る。
当然それを黙って見ているシャドウ雪子ではない。レイドスーツのブースターで飛んで追いすがろうとする、が。
わずかな飛行や攻撃に用いる短時間の発動はともかく、長距離を安定して飛ぶには練度が足りていなかった。
当然それを黙って見ているシャドウ雪子ではない。レイドスーツのブースターで飛んで追いすがろうとする、が。
わずかな飛行や攻撃に用いる短時間の発動はともかく、長距離を安定して飛ぶには練度が足りていなかった。
「ざぁんねん、上手く飛べない。仕方ないわね、私って籠の中の鳥だもの。翼を広げるのは向いてないわ」
自発的に動くことを得手としない性質のシャドウである故、彼女はそこで足を止める。
どこまでも受け身な逃避願望の結晶、認めがたい天城雪子の暗黒面。それがヴィンスモーク・サンジの闇も新たに抱えてゆっくりと歩き始めた。
どこまでも受け身な逃避願望の結晶、認めがたい天城雪子の暗黒面。それがヴィンスモーク・サンジの闇も新たに抱えてゆっくりと歩き始めた。
「それじゃあ、王子様♡もしくは船長♡首を洗って待ってろよ♡」
ギシリ、と。
躰の内で科学の目覚めを蠢かせつつ。
躰の内で科学の目覚めを蠢かせつつ。
その彼方で、腕の中でいまだに恐怖に震える少女にサンジは名を問うた。
「わたくし……斗和子と申します」
心の奥に闇を潜ませつつ、女はそう応えた。
【シャドウ天城雪子@ペルソナ4】
[身体]:ヴィンスモーク・サンジ@ONE PIECE
[状態]:健康、レイドスーツによる科学の目覚め(微小)
[装備]:レイドスーツNo3(ステルス・ブラック)@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:ここではないどこかへ自分を連れてってくれる人を探す。
1:我は影、真なる我。私じゃない天城雪子/ヴィンスモーク・サンジは殺す。
2:誰かぁ私をここから連れ出して♡できないなら死んじゃってよ。
[備考]
※参戦時期は本編で雪子の体に戻る前です。
※召喚を除くシャドウとしてのスキルを使用できます(二連牙、白の壁、焼き払い、アギ、コーチング、テラーボイス、戦慄のロンド)。
※アギを纏うことで悪魔風脚を発動できるようになりました。
※レイドスーツを装備したことで肉体の科学が目覚めつつあります。具体的な影響や進展は後続の書き手にお任せします。
[身体]:ヴィンスモーク・サンジ@ONE PIECE
[状態]:健康、レイドスーツによる科学の目覚め(微小)
[装備]:レイドスーツNo3(ステルス・ブラック)@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:ここではないどこかへ自分を連れてってくれる人を探す。
1:我は影、真なる我。私じゃない天城雪子/ヴィンスモーク・サンジは殺す。
2:誰かぁ私をここから連れ出して♡できないなら死んじゃってよ。
[備考]
※参戦時期は本編で雪子の体に戻る前です。
※召喚を除くシャドウとしてのスキルを使用できます(二連牙、白の壁、焼き払い、アギ、コーチング、テラーボイス、戦慄のロンド)。
※アギを纏うことで悪魔風脚を発動できるようになりました。
※レイドスーツを装備したことで肉体の科学が目覚めつつあります。具体的な影響や進展は後続の書き手にお任せします。
【ヴィンスモーク・サンジ@ONE PIECE】
[身体]:一文字隼人@シン・仮面ライダー
[状態]:ダメージ(極小、回復中)
[装備]:タイフーン&ライダースーツ&仮面ライダー第2+1号マスク@シン・仮面ライダー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを打破し、ウタちゃんたちを救う
1:一時撤退。自分の身体とは言え中身がレディーじゃ手は上げられねえ。
2:ウタちゃんがいろんな意味で心配。
[備考]
※参戦時期はFILM RED終了後です。
※ルリ子とお互いの世界についてある程度情報交換をしました。
[身体]:一文字隼人@シン・仮面ライダー
[状態]:ダメージ(極小、回復中)
[装備]:タイフーン&ライダースーツ&仮面ライダー第2+1号マスク@シン・仮面ライダー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを打破し、ウタちゃんたちを救う
1:一時撤退。自分の身体とは言え中身がレディーじゃ手は上げられねえ。
2:ウタちゃんがいろんな意味で心配。
[備考]
※参戦時期はFILM RED終了後です。
※ルリ子とお互いの世界についてある程度情報交換をしました。
【斗和子@うしおととら】
[身体]:天城雪子@ペルソナ4
[状態]:恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3
[思考・状況]基本方針:陽より産まれたもの全てを滅ぼす。主催も参加者も関係ない。
1:サンジを利用して人間に取り入り、内部から滅ぼす。
2:獣の槍があるなら破壊したい。
[備考]
※手のひらから炎を放つ妖術を行使できます。他どの程度の能力を行使できるかは後続の書き手にお任せします。
[身体]:天城雪子@ペルソナ4
[状態]:恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3
[思考・状況]基本方針:陽より産まれたもの全てを滅ぼす。主催も参加者も関係ない。
1:サンジを利用して人間に取り入り、内部から滅ぼす。
2:獣の槍があるなら破壊したい。
[備考]
※手のひらから炎を放つ妖術を行使できます。他どの程度の能力を行使できるかは後続の書き手にお任せします。
[意思持ち支給品状態表]
【緑川ルリ子@シン・仮面ライダー】
[身体]:仮面ライダー第2+1号マスク@シン・仮面ライダー
[状態]:正常
[思考・状況]基本方針:一度失った命にこだわるつもりはないが、SHOCKERが殺し合いに関わっているのならばなんとしても止める。
1:脱出のすべを探る。
2:SHOCKERの関わりの有無を調べる。
【緑川ルリ子@シン・仮面ライダー】
[身体]:仮面ライダー第2+1号マスク@シン・仮面ライダー
[状態]:正常
[思考・状況]基本方針:一度失った命にこだわるつもりはないが、SHOCKERが殺し合いに関わっているのならばなんとしても止める。
1:脱出のすべを探る。
2:SHOCKERの関わりの有無を調べる。
[備考]
※参戦時期は映画本編終了後です。
※サンジとお互いの世界についてある程度情報交換をしました。
※参戦時期は映画本編終了後です。
※サンジとお互いの世界についてある程度情報交換をしました。
[支給品紹介]
【タイフーン開閉式安全装置付初期改良型@シン・仮面ライダー】
ヴィンスモーク・サンジに支給された。
一文字隼人の腰に装着されているベルト。
風車を回転させてプラーナを取り込み、防護服とマスクと連動して仮面ライダーに変身する。
ヴィンスモーク・サンジに支給された。
一文字隼人の腰に装着されているベルト。
風車を回転させてプラーナを取り込み、防護服とマスクと連動して仮面ライダーに変身する。
【防護服@シン・仮面ライダー】
ヴィンスモーク・サンジに支給された。
タイフーン、マスクと連動して仮面ライダーに変身する。
ヴィンスモーク・サンジに支給された。
タイフーン、マスクと連動して仮面ライダーに変身する。
【仮面ライダー第2+1号マスク@シン・仮面ライダー】
ヴィンスモーク・サンジに支給された。
タイフーン、防護服と連動して仮面ライダーに変身する。
マスクには生存本能と闘争本能を刺激し、容赦なく人を殺せる状態にする効果があるほか、データを受信・送信・保存する機能がある。
仮面ライダー1号本郷猛の死後、一文字が受け継いだ1号マスクに本郷のプラーナを移植し、彼の意思を宿した。現在は緑川ルリ子の人格と入れ替わっているため彼は不在。
ヴィンスモーク・サンジに支給された。
タイフーン、防護服と連動して仮面ライダーに変身する。
マスクには生存本能と闘争本能を刺激し、容赦なく人を殺せる状態にする効果があるほか、データを受信・送信・保存する機能がある。
仮面ライダー1号本郷猛の死後、一文字が受け継いだ1号マスクに本郷のプラーナを移植し、彼の意思を宿した。現在は緑川ルリ子の人格と入れ替わっているため彼は不在。
これら3つで1セットである。
【レイドスーツNo3(ステルス・ブラック)@ONE PIECE】
シャドウ雪子に支給された。
ジェルマ66の強化スーツ。平時は筒状に収納されており、腰に当てることで起動・装備される。
本来は適合者であるサンジ以外には装備できないのだが、本ロワでは制限によりそれ以外の者でも装備できる。
足のブースターによる加速と飛行、耐熱・耐衝撃をはじめとした装甲、全身に背景を投影することで疑似的に透明化するなどの能力を持つ。
なお副作用か正規の仕様かは不明だが、本編において何度かスーツを用いたサンジの肉体は失ったはずのジェルマの科学を取り戻してしまうことになった。ヴィンスモーク・サンジの肉体で使用した場合、その作用は免れない。
シャドウ雪子に支給された。
ジェルマ66の強化スーツ。平時は筒状に収納されており、腰に当てることで起動・装備される。
本来は適合者であるサンジ以外には装備できないのだが、本ロワでは制限によりそれ以外の者でも装備できる。
足のブースターによる加速と飛行、耐熱・耐衝撃をはじめとした装甲、全身に背景を投影することで疑似的に透明化するなどの能力を持つ。
なお副作用か正規の仕様かは不明だが、本編において何度かスーツを用いたサンジの肉体は失ったはずのジェルマの科学を取り戻してしまうことになった。ヴィンスモーク・サンジの肉体で使用した場合、その作用は免れない。
194:男の裏技 | 投下順に読む | 196:pray to god before you die |
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GAME START | 緑川ルリ子 |