まだ暗い夜の中、不気味な人面の月が浮かんでいる。
―その月の光を受けて、銀色に輝く鎧が空を飛んでいた。
鎧を着た身体に宿る精神の名はゾーフィ。
赤い異星人と袂を分かったゾーフィは空中を移動していた。
空中からといっても、深夜の闇の中では周囲は見えづらい。
しかし、月明かりで見えた街の様な場所を目指して移動する。
しかし、月明かりで見えた街の様な場所を目指して移動する。
人間の身体となり、元々の飛行能力を支給されたスーツで補っているゾーフィだが、
身体に対して不思議と違和感を感じていなかった。
身体に対して不思議と違和感を感じていなかった。
ふと、プロフィールに書いてあった早田進次郎の情報を思い出す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数十年前、科学特捜隊の一員だった父・早田進が光の国の巨人と同化し、地球を怪獣・宇宙人から守る為、戦っていた。
その後、とある侵略者が送り込んだ“宇宙恐竜”との戦いで、早田と光の巨人は分離し、巨人は母星へ帰ってしまう。
その後、とある侵略者が送り込んだ“宇宙恐竜”との戦いで、早田と光の巨人は分離し、巨人は母星へ帰ってしまう。
しかし、巨人の力の一部は早田隊員に残り、
その息子の進次郎にも光の巨人の身体・特殊能力、―通称“ウルトラマン因子”が受け継がれた。
その息子の進次郎にも光の巨人の身体・特殊能力、―通称“ウルトラマン因子”が受け継がれた。
そして、進次郎も父と同じく、科特隊に入り、
新たな“ウルトラマン“として、侵略者から地球を守る為、戦っている。
新たな“ウルトラマン“として、侵略者から地球を守る為、戦っている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(“ウルトラマン”…、不思議と縁のある言葉だ。)
“”光の国”、光の星とは似て異なる…
多次元宇宙(マルチバース)の中の一つの世界か。
多次元宇宙(マルチバース)の中の一つの世界か。
成程、ウルトラマン因子―光の国の力を受け継いでいるだけあって、この身体は本来の身体より劣るものの、動きやすい。快適さも感じる。
しかし、夜中の移動と先程の戦闘の緊張感からか、段々と眠気を感じて来た。
そして、元々の身体では感じる事のなかった眠気が不本意ながら、人間になってしまった事を否応なく思い出させる。
(放送の事もある。早く、身体を休ませる場所を見つけよう。)
気を紛らす為に使命について―人間について、改めて考える。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
地球に来る前の情報では人間―地球人は文明も低く、肉体も脆い存在との事だった。
しかし、地球を観察する中で、短期間の内に発達する技術力や危機的な状況での団結力など
称賛すべき所もあるが同時に
警戒に値する力を持っていると感じていた。
称賛すべき所もあるが同時に
警戒に値する力を持っていると感じていた。
更に、この会場では進化した存在と思われる強力な能力を持った者も現れた。
この殺し合いを開いた強い悪意を持った者―魘夢。
先程出会ったどのような攻撃も効かなかった名前の知らない男。
そして、この身体―早田進次郎。
多次元宇宙の存在とはいえ、異星人の力を持った新しい人類―。
多次元宇宙の存在とはいえ、異星人の力を持った新しい人類―。
それらを踏まえ、“光の星”の判断は正しかったと思う。
―彼らの様な人間が宇宙に進出し、他の星々に害を及ぼす前に“駆除”しなければ。
人間の進化は早い。
優勝し、生き延びる者は勿論、
月の墜落でも生き延びる者―
主催を倒し、生き延びる者―
主催を倒し、生き延びる者―
そのような有り得ない者が現れてもおかしくはない。
この会場で、人間が生き延びる可能性
はごく僅かでも潰さなければならないのだ。
はごく僅かでも潰さなければならないのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
心の中で、自身の使命を振り返った後、眼下の景色が変わり、周囲を見渡す。
(ここは…、廃墟の群れのようだな。)
そこは災害や核戦争で住民も死に絶えてしまったかの様な、壊れた民家やビルが並ぶ区画であった。
(だが、この壊れた町並みも永遠ではないだろう。どこかに終わりがある筈だ。)
予想通り、程なくして廃墟の中に建つ一軒の正常な屋敷を見つけた。
着陸し、待ち伏せている者がいないか気を付けながら、屋敷内へ足を運ぶ。
(そろそろ、時間だ。ここで放送を待つとしよう。)
殺し合い開始以来、動き続けた光の使者はそこでようやく足を止めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
屋敷の中に入ったゾーフィは屋敷内の一室―
何故かテレビや机等の家具が積み上げられていたが、恐らく客間―で放送を待っていた。
何故かテレビや机等の家具が積み上げられていたが、恐らく客間―で放送を待っていた。
やがて、自動的にタブレットが起動し、放送が始まった。
「一時間の内に、二人も…、何という事だ…。」
タブレットに送られた画像を見て、愕然とする。
予想はしていたが、やはり赤い外星人以外の異星人達―人外の者達―も参加させられていた。
人間と違い彼らは助けたいが、現状ではそれは難しいだろう。
予想はしていたが、やはり赤い外星人以外の異星人達―人外の者達―も参加させられていた。
人間と違い彼らは助けたいが、現状ではそれは難しいだろう。
「玉壺、クラウンイマジン…、違う星から来た知的生命体よ。
済まない、愚かな人間の開いた殺し合いに巻き込まれてしまって。
…どうか安らかに眠ってくれ。」
済まない、愚かな人間の開いた殺し合いに巻き込まれてしまって。
…どうか安らかに眠ってくれ。」
ゾーフィは、犠牲となった人外の参加者に―
知らない事とはいえ、殺し合いに乗る予定だった外道達に哀悼の意を示した。
知らない事とはいえ、殺し合いに乗る予定だった外道達に哀悼の意を示した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
弔いを終え、ゾーフィは今後について思案する。
一時間に六体もの人間が“駆除”されたという事は
この悪趣味な催しに積極的な者は多い。
自分が動いて、殺し回る必要はないという事だ。
しかし…。
この悪趣味な催しに積極的な者は多い。
自分が動いて、殺し回る必要はないという事だ。
しかし…。
(人間の参加者が多いとはいえ、中には地球外の生命体もいる。彼らが犠牲になる事は避けたい。
…無論、メフィラスの様な悪質な内面を持っていれば、殲滅の対象に含むが。)
…無論、メフィラスの様な悪質な内面を持っていれば、殲滅の対象に含むが。)
続いて、名簿を確認する。そこには知った名前があった。
(やはりいたか…、リピアー。)
名簿にある“ウルトラマン”の名。
それは地球に来た同族、リピアーに人間が付けた名前だった。
(その名で載っているという事は、人間の為に戦うのか、リピアー。)
無論、進次郎の情報に乗っていた多次元宇宙から来た別人の可能性もある。
しかし、まずは本人が居ると考えて、行動した方がいいだろう。
しかし、まずは本人が居ると考えて、行動した方がいいだろう。
(リピアー…。再会すれば、私は協力を持ち掛けるつもりだ。しかし、断われば…。)
排除も視野に入れなければならない。
と、頭の中に浮かんだ言葉を飲み込み、再度、名簿に目をやる。
どうやら、人間を殲滅する切掛を作ったメフィラスも招待されていたようだ。
(メフィラスについては、話す事はないな。
その口が甘言を囁く前に、処断するとしよう。)
その口が甘言を囁く前に、処断するとしよう。)
悪質宇宙人にはそう切り捨てると、他の情報について考える。
入れ替えの名簿については人間と異星人の区別の為に必要だが、殺し合いに肯定的な以上、いずれ手に入るだろう。
が、先程の放送で気になる言葉が出て来た。
(入れ替え装置か…。)
個人的な思いはあるものの、自身の身体はこのままでも構わない。
しかし、人間にされてしまった他の宇宙人らを元に戻す事が出来るかもしれない。
しかし、人間にされてしまった他の宇宙人らを元に戻す事が出来るかもしれない。
(それが在りそうな場所は―)
科学特捜隊 日本支部―
進次郎のプロフィールと新たに更新された地図に載っている建物だ。この場所から近くにある。
進次郎のプロフィールと新たに更新された地図に載っている建物だ。この場所から近くにある。
(この人間の情報に載っていた科学特捜隊…。行って見る必要はありそうだ。)
組織の活動内容・研究からして入れ替え装置の様な機械を扱っている可能性は高い。
そして、ゾーフィに支給されたスーツもそこで開発されたらしい。
戦闘で破損する事も考え、修理道具・方法を手に入れる事も必要だ。
戦闘で破損する事も考え、修理道具・方法を手に入れる事も必要だ。
問題は都市部にあり、人が集まるかもしれないが…、本心さえ隠せば誤魔化せるだろう。
それにしても…。
(この近くに私を配置したという事は、この建物へ誘導する為か? 魘夢。)
ゾーフィの初期配置は科特隊の基地へ近く、
彼は記載されている情報を見て、基地への移動を考えたが、その思考も織り込み済みかもしれない。
彼は記載されている情報を見て、基地への移動を考えたが、その思考も織り込み済みかもしれない。
しかし、この会場での足掛かりは必要であるし、
この屋敷に滞在し使える物はないか詳しく調べる事も頭に浮かんだが、
時間をかけるとまだ近くにいるであろう初めに敵対した男か、本心を漏らした赤い外星人が装備や協力者を携えて、挑んで来るかもしれない。
この屋敷に滞在し使える物はないか詳しく調べる事も頭に浮かんだが、
時間をかけるとまだ近くにいるであろう初めに敵対した男か、本心を漏らした赤い外星人が装備や協力者を携えて、挑んで来るかもしれない。
……それを考えると仕方ない。
積極的な参加者を迎え撃つ為にも予定通り、基地へ向かおう。
積極的な参加者を迎え撃つ為にも予定通り、基地へ向かおう。
思考をまとめるとゾーフィは立ち上がり、部屋を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部屋を出たゾーフィは、顔を覆っていたマスクを外し、洗面所にいた。
科特隊へ行く前にまだ少し残っていた眠気を振り払う為、顔を洗いたかったからだ。
『顔を洗う』という行為も元の身体には必要のなかった行動だ。
人間の身体というものは食事以外にも、
普段の状態を維持する為の行動が多いとつくづく感じる。
普段の状態を維持する為の行動が多いとつくづく感じる。
と、その時に洗面台の鏡で、初めて仮初めの身体の主を見る事が出来た。
まだ若い、未来ある少年の姿がそこにあった。
(進次郎…。君の身体を宇宙の平和の為に…。人間を滅ぼす為に使わせて貰おう。
……心配する事はない。全てが終われば君も…、皆と同じ所へ連れて行こう。)
……心配する事はない。全てが終われば君も…、皆と同じ所へ連れて行こう。)
そう呟き、ゾーフィは歩き出す。
この身体の職場に向かって。
人類を葬る為、人類を守る為の場所に向かって。
この身体の職場に向かって。
人類を葬る為、人類を守る為の場所に向かって。
【D-7 句楽邸/深夜】
【ゾーフィ@シン・ウルトラマン】
[身体]:早田進次郎@ULTRAMAN
[状態]:健康
[装備]:ULTRAMANSUIT〈B TYPE〉@ULTRAMAN
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:(魘夢を含めた会場内の)人類の殲滅
[身体]:早田進次郎@ULTRAMAN
[状態]:健康
[装備]:ULTRAMANSUIT〈B TYPE〉@ULTRAMAN
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:(魘夢を含めた会場内の)人類の殲滅
1:科学特捜隊 日本支部へ行き、入れ替え装置の捜索及びスーツの修理道具・方法を手に入れる。
2:人間と入れ替わってしまった異星人達を救いたい。(メフィラス・赤い外星人〈メトロン星人〉を除く。)
3:人間以外の協力者を見つけたい。リピアー(ウルトラマン)を説得して、仲間にしたい。
4:殺し合いに乗っている者が多いと判断し、様子見に回る。
又、優勝を狙うつもりはないが、光の星からの後任の為に、少しでも危険な人間を減らしておきたい。
又、優勝を狙うつもりはないが、光の星からの後任の為に、少しでも危険な人間を減らしておきたい。
5:“切り札”こと天体制圧用最終兵器(ゼットン)の奪還・回収。
[備考]
※参戦時期は天体制圧用最終兵器(ゼットン)起動前
※参戦時期は天体制圧用最終兵器(ゼットン)起動前
※魘夢(ウタ)と泉研(句楽)を進化した人類と思っています。
※人外の参加者を全て異星人と思っています。
※人外でも、性格によっては排除の候補に入れる可能性があります。
【ULTRAMAN SUIT〈B TYPE〉】
科学特捜隊に所属する井出光弘が開発した初代ウルトラマンを模した早田進次郎専用の戦闘用パワードスーツ。
科学特捜隊に所属する井出光弘が開発した初代ウルトラマンを模した早田進次郎専用の戦闘用パワードスーツ。
〈B TYPE〉は科特隊の協力者・ヤプールの技術が入り改良され、スーツの軽量化に成功し、高速での飛行能力等、〈A TYPE〉に比べ、各機能が格段に上昇している。
装備として、両腕に装備された兵装〈スペシウムブレード〉があり、組み合わせる事でお馴染みの『スペシウム光線』を発射する。
また、両掌部にある〈スペシウムコア〉からスペシウムエネルギーをリング状にし、ウルトラスラッシュ(八つ裂き光輪)を作成する事が出来る。
また、両掌部にある〈スペシウムコア〉からスペシウムエネルギーをリング状にし、ウルトラスラッシュ(八つ裂き光輪)を作成する事が出来る。
他に、装着者への負荷を考慮したリミッターを解除する事で3分間だけスーツの性能を限界まで引き出す事が出来る。
その際、胸のカラータイマーもとい胸部スペシウムコアが赤く発光し、全身も赤く輝く。
その際、胸のカラータイマーもとい胸部スペシウムコアが赤く発光し、全身も赤く輝く。
11:0池や 蛙飛びディアルガ』というべきそんざいになっているのだ。 水の音0ヘイヘイ! | 投下順に読む | 13:今宵は化物(わたし)たちが主役 |
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登場話253:【狙われた侵略者/狙われない人類】 | ゾーフィ |