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  • 真贋バトルロワイヤル
  • ヴィランたちのセカンドライフ

真贋バトルロワイヤル

ヴィランたちのセカンドライフ

最終更新:2024年09月09日 00:44

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だれでも歓迎! 編集
「これが神の思し召しなんだろうな……」

 だれも、第三門までやってこなかった。
 だれも、もう俺と会うことはなかった。
 だれも、俺を殺すことが出来なかった。

 俺の後ろで、銃を構えた女が泣いている。
 向けられた銃口から、弾が出ることはない。
 カチカチと何度引き金を引いても。女は俺に死を与えてはくれなかった。
 神は女が数十年抱え続けた復讐より、俺を生かし続けることを選んだ。

 生かして、生かして。死ねないで、死に損なって。
 俺にできることは、この苦難の道を歩み続けることだけだ。
 それ以外のことを考える余裕など、とっくの昔に擦り切れていた。





 「これから君たちには我々の用意したゲームをプレイしてもらう。
 形式はバトルロワイヤル。
 己が存在と理想を叶える権利かけて最後の1人になるまで殺し合うんだ」

 直前の記憶さえ曖昧なまま、暗い部屋の中に神を見た。
 神の額には縫い目があった。神の頭上には環があった。
 神の名は梔子ユメ。あるいは羂索。
 何十年と生きて、神は初めて生以外の試練を与えられた。

 神は望んだ。俺たちに殺し合いをしろと。
 強すぎる者には制約を。弱すぎる者には救済を。
 そんな手のかかることをしてまで、俺たちに殺し合うよう神は言った。

「そうか……」

 神の説明を聞いて、俺は心の底から救われた気がした。
 周りからは悲鳴が上がっていた。罵声が聞こえていた。泣いている奴もいた。
 そんな奴らの只中で俺は思ったのだ。

 「これでようやく死ねる。」


◆◇◆◇◆


「貴様ァ!このヒーロー タンクトップタイガーの邪魔だてをするなど!
 まさか!あの羂索とかいう怪人の一味ではないだろうなぁ!」
「んなわけないでしょ。
 悪党面で暑っ苦しい声出さないでよ!」
「何おぅ!この俺が悪党面だとぉ!
 やはり貴様は怪しい!正義執行だ!!」

 トラ柄のタンクトップを着た男が唾を飛び散らせて叫び、相手の頭を狙って思いっきり殴りかかる。
 遠目から見ても男の拳は鍛え上げられ、丸太のように太く硬い。
 腕が一薙ぎされるごとに周囲の木々がその風圧で揺れ、当たってもいないのに枝葉が音を立てて宙を舞う。
 並の人間の骨程度容易にへし折りかねない。
 そんな凶器を前に、女は俊敏な動きで悠々と躱す。
 道化師を思わせる奇抜な化粧の裏で、向けられる死に対して女は。
 ――ハーレイ・クインは、不敵に笑う。

「くそぉ!なぜ当たらん!」

 二度、三度。男が振るう拳を、体を傾け、あるいはくるりと回転しアクロバティックに避ける。
 タンクトップタイガーと名乗った男の目が血走りぴくぴくと血管が震えるさまを前に、ハーレイ・クインはニヤリと笑いさすまたのような棒を取りだした。
 天上からゴミが振る世界で、怪物を狩る掃除屋たちが文字通り愛用する『人器』。
 その1つである二股の形状をしたただの棒。通称:愛棒。それがハーレイ・クインに支給されたアイテムだ。

 腹部を狙って振るわれたタンクトップタイガーの爪撃。
 後方に1回転し華麗に避け、その遠心力ごと棒を振るう。

「真下が、がら空きっ!」

 男の股に差し込まれた棒が上に大きく振り上げられる。
 見た目はただの棒だったその武器は、ハーレイの意思に応じて硬質化し巨大化する。
 正中線に向けまっすぐに振るわれたその棒が、男にとって最も致命的な個所にクリーンヒット。
 股間がメリメリと嫌な音を立て。タンクトップタイガーは思わず膝をつき首を絞められたかのような声をあげる。
 ハーレイの手元から棒が落ちカランと立てた音を完全にかき消す絶叫が、暗い森に響き渡った。

「ホンデュワァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 首を絞められたような切ない悲鳴を前に。「あっ。ゴメン」とハーレイは片手で会釈した。
 ろくに謝意も感じられない。何か一発文句を言ってやりたいと気が済まない。
 起き上がり口を広げようとも、股間から雷のように迸った痛みのせいか、コヒューと擦り切れた風と泡が出てくるだけだった。

 白目をむいて倒れるタンクトップタイガー。彼の睾丸がどうなったかは書き記すに余りある。
 土埃をたてて巨体が倒れこみ、その反動で腰につけられた二丁の銃が勢いよく浮きあがる。
 獣道にぶつかった二丁の銃は、トランポリンで跳ねたようにタンクトップタイガーの腰を離れ。大きく弧を描きハーレイ・クインの手元に収まった。

「イエーイ。ゲッチュ!」

 リボルバーをクルクルと回しながらハーレイは彼女の背後に歩を進める。
 タンクトップタイガーの隣に落ちた人器を拾うより前に、彼女にはすべきことがあった。
 陽気な笑顔のまま銃口を向ける。その先では片膝を立ててしわがれた老人が座っていた。
 ボロボロのケープコートを着て顔には深いしわが目立つ。ハーレイの知識に照らし合わせるなら、川の下で空き缶を拾っているホームレスに近い様相をしていた。

「どうやったんだそれ?」

 向けられた銃口など気にも留めず、木にもたれ掛かり一部始終を眺めていた老人が尋ねる。
 銃を奪った方法のことだな。そう理解して「これのこと?」とハーレイはバックパックから支給品を見せる。
 取り出された羊皮紙は一見するとただの手紙か書類のようだが、老人が目を凝らしてみると妙な力が感じられた。
 とうぞくの秘伝書。この場でその名を知る者はいないが、その巻物はそのような名をしていた。

「この紙ペラ持ってると倒した相手の道具を盗れるんだってさ。
 多分これソードスキルってやつよね?」
「それはまた、随分な当たりだな。
 俺に支給されたスキルもなかなかのもんだが、アンタのは特別厄介そうだ。」

 ハーレイの身体能力は一般の女性のそれを遥かに超える。
 現に急所を突いたとはいえ、鍛え上げられた男をノックアウトしたのだ。
 そんなに人間が棒だの銃だの振り回し、負けたらアイテムを盗られるのだ。低確率とはいえこれほど厄介なことはあるまい。
 カラカラと老人は喉鳴らして愉快そうに笑う。
 ずっと寝ていないかのように隈のできた彫りの深い顔だ。
 麻薬中毒のジジイがこんな感じの顔をしていたなとハーレイは思った。

 「それで、おじいちゃんは何?
 ずーーーっと見てばっかりで戦う気もないし。オクスリ切れた?」

 挑発のつもりで引き金に指をかける。老人が薬などやっていないことは百も承知だ。
「いらねえよそんなもん。」そう吐き捨てる老人からは、敵意も殺意も感じられない。
 怯える人間。憤る人間。命を諦める人間。ジョーカーと暴れまわりそんな人間はごまんとみてきた。
 目の前で無気力に座る男の目はそのどれでもない。

「そういう薬ってのは『幸せになりたいヤツ』が使うもんだろ?
 俺の目を見ろよ。そんな面してるか?」

 生きる希望をどこかに落っことしたような。
 淡い光すら抱かない、はなから勝つ気も生きる気もない者の目をしていた。
 下らない殺し合いの只中になぜこんな老人がいるのか、ハーレイにはさっぱり分からない。あまりにもやる気どころか殺意も生気もなさすぎる。
 敵意と生気メラメラでいかにもな”敵”でいてくれた方が、ハーレイにしてはずっとやりやすかった。

「してないね。自分がこの世で一番不幸ですとでも言いたげな顔しちゃってさ。」
「そこまで己惚れちゃいないさ。」
「そういやプリンちゃんが言ってたっけ。
 みんなが思ってる。ここから新しいどこかに行ってしまいたい。
 俺は私はこんなもんじゃないのに!ってね。」

 おじいちゃん、まさにそう言いたげなツラしてるね。
 愛嬌のある笑顔からはそんな意図が滲み出ていた。
 笑っているのもただプリンちゃん――誰のことなのか老人にはさっぱり分からないが、友人か恋人だろう――の言葉を引用できてテンションが上がってるだけのことだ。
 だがその言葉は、妙に老人の――タケ=プラムパインの耳に残った。

「ここではない世界。俺はこんなもんじゃない……ね。」

 タケにとって理想の世界とは何だろうか。
 彼が自分に満足できる世界とは何だろうか。
 そんなもの、彼にとっては1つしかない。

 冒険者として仲間たちと暴れる日々。彼にとって最も幸せだった時間。
 国家を敵にし反逆者となって戦う相手がモンスターから人に変わっても、タケにとっては幸せだった。
 半分。エンディ。ミノル。コージ。ソウタ。コゲ。
 あの頃の仲間たちは、タケを残してみな死んだ。
 国王軍に敗け。青の水晶に敗けた。
 レイン・ガーランドとその仲間たちに、彼の仲間たちは敗けたのだ。
 ここにいるのはただの敗残兵。
 敗けて。死ぬこともできず。生きる理由を失い続けるだけの男だ。

「俺にはそんなもんねえんだよ。」

 タケは穏やかな顔で目を閉じる。
 目の前の女は人を殺せる側だ。いくつも命を奪ってきたタケには感覚的にわかる。
 ここで死んだとて悔いはない。
 未練もなければ未来もない。

(感謝するぜ羂索。ようやく俺の暗い人生が終わる)

 とっくに決まっていた覚悟を決めなおす。
 彼の後ろで、銃声が雷のように轟いた。



 銃声は響いた。ピストルは見慣れていたし銃声も聞きなれている、ハーレイの持つ巨大なリボルバーの殺傷力は疑う余地などない。
 半分がコーネリアスを撃った時よりずっとデカい音だったが、弾丸は放たれたはずだ。
 だが、いつまでたっても痛みがない。
 骨が砕けない。血が噴き出ない。命が終わらない。意識が消え去らない。

 (ん……?)

 タケは振り返る。
 背後に立っている女は、既にタケに背を向けていた。
 タケから180度視線を移し、ハーレイが銃口を向ける先。その先で別の女がハーレイに銃を突き付けている。
 ハーレイはまだ引き金を引いていなかった。
 リボルバーの弾倉には、残らず弾丸が装填されている。

 なら、さっきの銃声は?
 タケが尋ねる前に。二度目の雷が落ちた。
 ここで初めてハーレイは引き金を引き。火薬が飛び散る狭間に紫色の稲妻が華のように爆ぜた。
 向き合う銃口が緋色の光を放ち、加速した弾丸を撃ちだすのはほぼ同時だった。

 「やっば!」
 銃口の向きから推測してハーレイは相手が引き金を引く前に回避の動作をしていた。
 森の暗がりから放たれた弾丸がライフル以上の速度を見せて、ハーレイの背後で数本の木々に風穴を開ける。
 もしハーレイが戦いなれておらず、回避に失敗していればハーレイの頭蓋にも同じ風穴があいていただろう。
 木々をよく見ると、同じ大きさの風穴が綺麗にふたつ並んでいる。
 最初の弾丸はハーレイのリボルバーではなく、緋色の光を放った闖入者の銃弾だとタケはようやく理解した。

 木々の生い茂る暗がりから足音が近づいてくる。
 鋭い目つきをした青い髪の少女が赤い宝石のはめ込まれた金色の銃をハーレイに向けたまま、その姿を二人の前に表す。

 「銃を下ろせ。」

 騎士のような鎧を纏い、落ち着いた声で青い髪の少女はそう言った。
 体に傷のようなものは見受けられない。どうやらハーレイの撃った弾丸も外れたらしい。少女の後ろの森でバチリと紫の稲妻が爆ぜた。
 タケにはハーレイの顔は見えないが、声からは冷汗を垂らしたような焦りがわずかに見て取れた。

「それ撃ってから言うセリフ?しかも頭狙ったよね?
 それに……随分個性的な格好ね。なんのコスプレ?ディズニープラスでやってるアニメ?」
「銃を下ろせと言っている。
 こちらは殺し合いに乗るつもりは無い。」
「そっちが先に下ろしてよお嬢ちゃん。
 ところでその頭の輪っか、ルール説明してた子もつけてたけど流行ってるの?」

 へらへらとした調子でハーレイは少女の頭上を指さした。
 指さす先には星のような環が浮かんでいた。

「なんだよ……”アレ”は」
 タケはただ茫然と。目の前の光景を眺めている。
 その眼は二人の女傑ではなく、彼女らの武器に向けられていた。


 ◆◇◆◇◆

「すまない……てっきり殺し合いに乗っている手合いがおじいさんを襲っているものだとばかり。」
「別にいいって。
 状況としては何も間違ってないし。」

 互いに警戒は残ったまま。二人の女は腰を下ろして情報交換を行っていた。
 錠前サオリ。騎士ような鎧を解除した少女の礼儀正しい態度に、ハーレイは少し面食らっていた。
 鉄火場に慣れているだろうなとは思っていたが、いきなり頭を狙ってぶっぱなすような人間にしてはとても素直だ。
 聞くところによると、威嚇射撃でヘッドショットをすることは彼女のいたキヴォトスではさして珍しいことではないらしい。
 どうやらキヴォトスという場所にいる人間――特に梔子ユメや錠前サオリのように環(ヘイロー)を持つ人間はハーレイやタケより数段頑丈なのだという。

 「何してくるかわかんなかったからおじいちゃんに銃向けた。
 まあ、何もしなければ撃たなかったよ。弾の無駄でしょ。」
 「そうなのか。」

 錠前サオリが警戒していたことは、ハーレイ・クインが平気で他人に牙をむく危険人物であることだ。
 ましてやサオリが目撃したのは、座り込むタケに銃口を向ける姿。もはや現行犯と言って差し支えないだろう。
 だから撃った。その判断自体に誤りはないと思っているし、ハーレイ自身過度に責めるつもりは無かった。

 サオリの予想と異なる点は、ハーレイは別に殺し合いに乗っているわけでもタケを撃つつもりもなかったということだ。
 ハーレイ・クインが平和を願う人格者という訳では断じてない。サオリの経験から見てもこの女は間違いなく危険人物であったし、ハーレイ自身否定しない。
 ハーレイ・クインが凶行に及ばなかった理由は2つ。いきなりこんなゲームに巻き込んだ羂索の思い通りにことを勧めるのは腹立たしいというある種のプライドが1つ。
 無気力で殺気もない。ただの老人であるタケは警戒すべき対象ではない。短い会話の中この正体不明の老人をそう判断していたことが2つ目だ。

「喋って見たらわかる。このおじいちゃんは”何もする気がない”。日本語でなんていうんだっけ、毒にも薬にもならないってやつ?
 そんな枯れ枝みたいなおじいちゃんに撃つくらいなら、あの羂索だかいうビッチに一発ブチ当てるほうが優先でしょ?」
「……ところで当のそのおじいちゃんは何をしているんだ?
 私が来てからめっきり喋らなくなってしまったが。」
「両手に花で照れてるんじゃない?」

 冗談をよそに、思い出したかのようにハーレイはタケを見る。
 サオリの言う通り彼女が来てからこの男は一言もしゃべっていない。
 両名が未だ腕に構え続ける銃を見つめ、瞳孔を見開いて微かに震えている。
 信じられないものを見たかのように。無気力な男の顔に青い色が浮かんでいた。

(なんだ。今の銃は。
 あの加速、あの光。まさか魔力か?)

 ハーレイの銃から迸る紫の閃光。――銃の名はドンナー・シュラーク。ある錬成師の持つ二丁の雷。
 サオリの銃が照らした赤い閃光。――武装の名はファウストローブ。錬金術師が扱う完璧に至る輝き。
 銃の類は何度も見てきた。ヤクザどもが機関銃をもってやってきたことだってあった。
 だが二人の弾速は機関銃を軽く超えていた。
 何より、あの輝きからは紛れもなく魔力に類する力が働いていた。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 科学の産物とは両立しないはずの力が、彼女らの武器には働いている。
 魔力は科学技術と成り立たない。
 塗料を劣化させ、内部機構を破壊する。魔力を込めた弾丸を放つことなどできやしないのだ。
 錠前サオリの存在よりも、この二丁の銃が魔力を秘めている。否、魔力に類する力を動力としているといってもいいことのほうが、タケにとっては異常事態であったのだ。

(ありえねえ。科学技術と魔力は今をもって両立などできないはずだ!
 例外があるとしたらレインの付与……。)

 タケが知る例外は、あの最後の戦いで中心にいた男。レイン=ガーランドの強化付与。
 自動車にさえ強化付与をして見せた力だが、この中に施された力はレインのそれでは違うように見える。
 ただ銃身の強度や火薬の威力を強化付与するだけなら、あのような紫の稲妻や緋色の閃光は生じない。
 ではこの銃はなんだ?疑問がタケの中から溢れ出る。

 「なあ、お嬢さんがた。
 1つ尋ねるが、お前たちにとってさっきみたいな魔力を持った武器ってのは当たり前のもんなのか?」

 突然の質問に、ハーレイとサオリは顔を見合わせる。

「んなわけないでしょ。撃ったこっちがびっくりしたわ。」
「ミレニアムであれば閃光を撃てる武器くらいはるだろうが。自分で目にした中で、あのような力を持った武器は初めてだ。」

 はっきりと返された言葉に「そ……そうなのか?」とタケは困惑を強める。
 ならその武器は何なんだ?タケが続ける前にハーレイが答えを返した。

「これあれじゃない?ISEKAIってやつ。」

「「異世界?」」
 タケとサオリが同時に返す。
 頷いたハーレイは上機嫌に憶測を続けた。

「だって明らかおかしいでしょ。デカくなるさすまた。持ってるだけでアイテムを盗れる紙。バチバチなるリボルバーに着脱可能なコスプレ鎧。
 サオリちゃんの体だって輪っかあるし頑丈だし、アタシの世界にこんな子が居たら速攻バズるわ。」
「確かに。羂索の発言からも別の世界の存在を示唆するものはあったが。
 なぜ言い切れる?突拍子のない話だぞ。」
「ついさっきまで異世界に行ってたからね。
 ヘリが落ちてゴタゴタに巻き込まれたと思ったら今度はデスゲーム。チケット代くらい出してほしいんだけど。」

 この場にいるハーレイ・クインは、A.R.G.U.S長官アマンダにより4人の囚人と共に異世界に送り出された直後のハーレイ・クインだ。
 彼女らを輸送したヘリは落ち。近くで暴れていたオークをぶちのめし。言葉の通じない騎士の集団に捕らえられた。
 直前に見た世界。同じ囚人クレイフェイスの言葉を借りるならISEKAIとこのバトルロワイヤルは全く別の世界だが。
 どちらにしてもハーレイ・クインの世界とは違うのだ。
 それは錠前サオリにとっても、タケ=プラムパインにとっても同じであった。

「異世界か。」
 ハーレイの話はサオリの常識の外にある部分も少なくないが、話自体は納得できる。
 右手に構えるフリントロック式の拳銃。ファウストローブを起動するためのスペルキャスターと呼ばれるユニットの存在。
 またハーレイ・クインのような苛烈な人物の存在を、噂でさえ知らなかったことも納得がいく。

 一方のタケは、ハーレイの言葉に目を丸くしていた。
 魔力のある世界の住人とはいえ、並行世界の存在についてはサオリ以上に意識の外だ。
 だが、そう考えると全てのつじつまがあう。
 ――彼の支給品も含めて、全てのつじつまが。

 ハーレイの推論への疑いはあるが、その推論が真実かどうかはタケにとっては関係ない。
 別の世界。常識外のアイテム。そんなものがあるとは信じられないが受け入れよう。
 ただ一つ、タケには知っておきたいことがある。

 「なあ、お前らに尋ねる。
 世界が変わっても。神は俺たちを見ていると思うか?」

 ――神は人間を見ている。でも助けねえ。
 ――その人に合わせた苦難を与えるだけらしいんだよぉ

 敬愛する男。『半分』と呼ばれた冒険者の言葉がタケの脳裏によみがえる。
 もし神が見ているなら。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 今までと同じ苦難を与えられているのなら。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 さっきハーレイがタケを撃たなかったように、タケはここでも何も為せないのではないか?

 笑われるだろうか。苦笑と共に投げかけた言葉に。女二人はきょとんとした顔を向けた。

 「そこ、気にするべきところ?
 おじいちゃんがやりたいようにやればいいじゃん。
 アタシは別に元の世界に戻れたらいいし、羂索とかいうビッチの都合に興味ないし。」

 ハーレイは随分と分かりやすい結論を返す。
 信心深い性格には見えなかったし、彼女自身そうした生き方をしているのだろう。

 アンタはどう思う?ハーレイよりも神妙に悩む錠前サオリに問いかける。
「そうだな。」言葉を返す少女の声は、低くよく通るものだった。

「生憎だが、その質問に満足に答えられるほどまっとうな育ちをしていない。
 だが、たとえ神が見ていようと見ていなかろうと。同じことのように私は思う。」
「アンタも俺がやりたいようにやればいいと?」
「……私はあまり口が上手いほうではないからな。
 便乗する形になるが、そういうことになるのだろうな。」
「……たとえ、その先に何もないもしてもか?
 何の救いもなく、何の禍福もなく。何の結果もない。それでもか?」
「『たとえ全てが虚しいことだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。』
 私の友人が言っていた言葉だ。」

「最善ね。」サオリの言葉を噛み締める。
 タケにとって最善とは何だろうか。
 そんなもの、彼にとっては1つしかない。

 ――己が存在と理想を叶える権利かけて最後の1人になるまで殺し合うんだ

 羂索ははっきりそう言っていた。
 タケにとって理想は死ぬことだ。ハーレイでもサオリでもいい。殺してくれたらそれでよかった。
 だがもし、彼が”最善”を望むなら。”こんなもんじゃない今の自分”を超えることを願うなら?
 ――仲間との本当の意味での再会を。羂索(かみ)に望むなら?

 ひょっとしたら、その可能性はずっとタケの頭の中にあったかもしれない。
 どうしていつ死んでもいいと思っていたのに。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ハーレイが引き金を引く前に、目を閉じ覚悟を決めたんだ?

 ポケットに手を突っ込むと、爪に冷たい何かが触れた。
 取り出してみるとそれはタケの支給品の1つ。金属の球体だった。
 古代遺物。ライフイズストレンジ。
 その効果を思い出し、タケはのそりと立ち上がる。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 どうして羂索は、俺にこんなものを支給した?

 覚悟を決める。死を前にした冷たい覚悟ではなく。生きるための汚泥のような覚悟を。
 サオリとハーレイ動く前に、ことを成す必要がある。
 タケは二人の肩に手を置き。息を整え集中する。
 いきなり近づいてきたタケに、少女二人の反応は早い。
 視線は既にタケの側に向き、ハーレイに至っては銃を構え引き金に指をかけていた。
 それでも数秒、タケが能力を使うほうが早かった。

 「感謝するぜお嬢ちゃんたち。さよならだ。
 次に会う時は、多分殺し合いだな。」
 「何を――」
 投げかけられた質問が終わる前に。錠前サオリとハーレイ・クインの姿がタケの視界から消え去った。

「さて。嬢ちゃんたちは消した。
 ……そう遠くには飛ばせてないな。そのくせ随分体が重い。」

 タケの能力。自身から2.5m以内の空間と中距離の空間を入れ替える力。
 だがその能力は大幅に制限されている。
 これが羂索の言う制限なのだろうか。それとも自身が数十年と冒険者家業から離れていたことによる老化とブランクによるものなのか。
 おそらくその両方だろう。そしてそのどちらでも関係ない。

 検証などしていないが入れ替えられる距離は短くなっているだろうし。地中や空中と言った死に直結する場所に入れ替えるには外部からのバフか令呪が必要だ。
 2人を転移させた範囲も150mほどの場所。錠前サオリとハーレイ・クインならば夜の森でも30秒とかからず戻ってこれるだろう。

 「十分だ。
 実際はもっと慎重に状況を確認するし、こっちに来ない可能性もある。時間は足りるはずだ。」

 一人残ったタケは準備運動を思わせる動きで両肩を思いっきり動かした。
 数十年と使っていなかった骨と筋肉がコキりと鳴く。
 自分の意思で何かを成そうと体を動かしたのは、いつ以来だか本人にも分からない。

 これからすることを前にすれば、サオリはともかくハーレイは間違いなく引き金を引くだろう。
 あの女は平気で人を殺せる。そういう人種だ。つまりタケと同族だ。
 そうなれば終わりだ。紫の稲妻で加速した弾丸は、当たるどころか掠っただけで年老いて脆弱なタケは死ぬ。
 ついさっきまでその弾丸で命尽きることを望んでいたのに、コロッと死にたくないなど考えてしまう自分がなんだかおかしかった。

「さて、頼むぜ神様。」

 タケはポケットから自分の支給品を取り出す。
 手のひらに収まる機械の球体だ。
 てっきり冒険者にとっては禁忌である科学技術の産物――使うと魔力が落ちるのだ――かと思っていたが。説明を読む限りそうではないらしい。

「異世界……こことは違う世界か。
 こんなものがある理由は分かったよ。
 それにこんなものが、俺に支給された理由もな。」

 泡を吹いて倒れる男――タンクトップタイガー球体を向けると。球体が目覚め熱を帯びる。
 その古代遺物(アーティファクト) ライフイズストレンジ。
       ・・・・・・・・・・
 その効果は、人間の肉体時間の操作。

「タンクトップタイガー 4年。」

 球体が開き、放たれた光が倒れる巨漢を照らす。
 巨漢の体がわずかに萎む。男の肉体が4年巻き戻りその間の鍛錬が失われていく。
 そして使用したタケの姿は、その代償を支払う。

 使用した年度の10倍の変化を、彼はその身で受ける。ライフイズストレンジを使用したリスクだ。
 40年。
 ただ死なず。ただ終わらず。ただ潰えず。ただ消えず。誰にも会えない40年。
 半分。エンディ。ミノル。コージ。ソウタ。コゲ。
 顔も朧気になった仲間たちと会うことだけを望んだ40年。

 光が収まり。巨漢の変化が止まった時。
 古代遺物を持つ青年から、暗い時間は全て雪がれていた。

 ◆◇◆◇◆

 サオリとハーレイが飛ばされたのは先の森林からそう離れていない。苔むした岩のそばだった。
 両者ともに身体能力は折り紙付きだ。いきなりの転送にもバランスを崩すことなく冷静に周囲を見渡した。

「何これワープ?あのおじいちゃんそんなこともできるの?」

 周囲を見渡すハーレイ。森の中であることは変わらず、獣道からそれてしまい方向がさっぱり分からない。
 きょろきょろと動くハーレイが銃を構えていることにサオリは気づく。
 ついさっきではない。おそらくタケに触れられた時にはいつでも撃てる状態だっただろう。
 続けてサオリもフリントロック式の銃の引き金に指をかけ、ハーレイと背中合わせで構える。
 現状を理解するために思考を纏めているようで。涼しい夜なのに頬に汗が垂れていた。

 「これも魔法というものなのか?
 私たちの武器と同様。異世界にはそういう力があると?」
 「案外、あのおじいちゃんははじめっから魔法を使えたのかもよ。
 魔力を持った武器って、逆に言えば『魔力』はあって当たり前の場所にいないと出てこない発想だし。」

 ハーレイもサオリも『魔力』という言葉に聞き馴染みはない。
 もっと言えばサオリの支給品、ファウストローブは厳密には魔力によるものではない。
 それでもタケにとって魔力という言葉があっさり出てきたことは、タケにとってそれだけなじみ深い存在ということだ。

「ということは、あの右足も魔法によるものなのか?」

 サオリの指摘に、「へ?」と頓狂な声で応じた。

「足?」
「ああ、彼の右足を中心に風……空気と言ったほうがいいのか?
 妙に渦を巻いていたような。」
「よく見てんね~。」

 転送だけでなく空気を動かす。おそらく魔法。
 いよいよもってロードオブザリングじみてきたが、自分の人器やソードスキルもサオリのファウストローブもファンタジーな代物であることは変わらないのだ。
 そういえばあの棒を置きっぱなしにしてたっけ。
 一瞬そのことを思い出したが、今のハーレイにはもっと気にすべきことがあると思考の片隅に押し込んだ。
 錠前サオリの見間違いと切って捨てるには、サオリの気づきはあまりに具体的だった。

「じゃあよく見てるサオリちゃんに質問。
 その右足の風……めんどくさいし魔法ってことにしとこう。
 その風の魔法であのお爺ちゃんは何をする?」
「……足に風か。イメージは出来ないが、速度を上げてここから離れるのでは?
 身体能力が高く銃を持つ私たちのほうが危険度は高いだろう。」

 サオリの答えにハーレイは「ノンノンノン。」と首を横に振る。

 「なら一人でさっさとワープすればいいじゃない。
 アタシらを飛ばせるのに自分が飛ばない理由はないでしょ。」
 「それはそうだ。」

 先ほどの異世界の推測も含め。ハーレイは奇抜な見た目だがかなり頭が明晰な人物だ。
 相手をそう評価したサオリは、素直に「貴方はどう考える?」と答えを尋ねた。

「おじいちゃんの目、さっきまでのヤク切れジャンキーみたいな死んだ目じゃなかった。
 アレは、何か企んでる人の目。」
「確信をもって言い切るじゃないか。」
「実体験実体験!
 サオリちゃんも色々経験してるみたいだけど、ああいう奴が景気づけにやることは1つしかない。
 殺し合い上等のデスゲームなら猶更。
 だからそうだね、サオリちゃんの質問にはこう答えるよ。」

 タケが元々自分のようなアウトローであることは、ハーレイもサオリも薄々は気づいていた。
 だがあの無気力な老人にできることはたかが知れている。
 生きる希望がないことを発言から受け取ったハーレイはなおさらだ。

 二人の肩を掴み転送させたときのタケは、既に無気力な老人ではなくなっていた。
 何か目的を持ち。何かしでかすつもりの目。
 ギラつきを秘めた自身やジョーカー。多くの者たちと同じ野望を秘めた目。
 ハーレイに銃口を向けられたときは使うそぶりすら見せなかった転送を使う理由。
 この場において、理由は1つだけだ。

「あのおじいちゃん。今から誰か殺すよ。」

 ・・・・・・・・・・
 殺し合いへの本格参戦。
 男の目的はそれだと、確信をもって言い切るハーレイの言葉は軽い。
 けれどもサオリには、そんなカフェでする世間話のようにあっさりと言い切られた言葉を。
 否定することが出来なかった。

 ――次に会う時は、多分殺し合いだな。
 老人のしゃがれた声が、サオリの耳に残り続けていた。



 【錠前サオリ@ブルーアーカイブ】
状態:タケへの警戒(中)
服装:いつもの服装
装備:ファウストローブ・ラピスフィロソフィカス(銃型スペルキャスター)@戦姫絶唱シンフォギアAXZ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:このゲームから脱出する
01:この女性(ハーレイ・クイン)は信用できるのだろうか。危険な雰囲気がする。
02:さっきのおじいさんはどうなったのだろうか。
参戦時期:少なくとも最終編終了後
備考 


 【ハーレイ・クイン@異世界スーサイド・スクワッド】
状態:タケへの警戒(中)
服装:本編の衣装
装備:ドンナー&シュラーク@ありふれた職業で世界最強 ハーレイ・クインの服@異世界スーサイド・スクワッド
令呪:残り三画
道具:とうぞくの秘伝書(ソードスキル:オート盗む)@ドラゴンクエストシリーズ ホットライン
思考
基本:ジョーカーの元に帰る。
01:あの爺さん(タケ)。絶対何かやらかすじゃん
02:サオリちゃん可愛くない?コスメ何使ってんの?てかそれコスプレ?
参戦時期:異世界にやってきた直後 1話終了前後
備考 


◆◇◆◇◆

 姦しい女たちが居なくなった場で、タンクトップタイガーは目を覚ます。
 傷がすっかり癒え、あのうさん臭い女も辛気臭い老人もいない。
 股間からの激痛が脳天まで突き抜けたはずだが、今は一切の痛みも傷も残っていない。
 不思議に思い立ち上がると目の前には褐色の青年が立っている。
 虫でも見るかのような青年の視線に一瞬ぎょっとしたが、状況としては彼が何らかの能力かアイテムを使って助けてくれたとみるべきだろう。

 「アンタが助けてくれたのか?
 あの道化師女はどこだ?アンタ知らないか?」

 周囲を見渡しても道化師女の姿は無い。どれだけ時間が経ったのかさえタンクトップタイガーには分からない。

「別に助けたわけじゃない。
 この道具を使うには俺一人じゃダメだった。それだけの理由だ。」

 照れ隠しと呼ぶには冷めきった目だ。
 タンクトップタイガーは褐色の青年の苛立ちさえ感じるその態度がわずかに気になったが、恩人だからと馴れ馴れしく近づいた。

 「なんにせよだ!お前はこのヒーロータンクトップタイガー様の恩人という訳だ。
 ヒーローは恩は必ず返す!あの羂索だとかイカレ女だとかいるこの厄介な場所を共に切り抜けて……」
「あ、そういうのいいから。」

 瞬間、タンクトップタイガーの前を黒い何かが横切り。視界が90度傾いた。
 ハーレイに股間を殴られた時よりもずっと痛々しい音が、すぐ真下から骨を伝って響く。

 「へ?」
 「やっぱりなかなかのもんだ。
 空気を操る魔法……お前もこんな気持ちだったのか?半分。」

 冒険者として活動していたころの筋力に、滅竜魔法の威力がプラスする。
 天空の滅竜魔法。ハーレイには「なかなかのもん」と言ったが。彼が得たソードスキルは文字通り竜を殺しえるほど極めて強力な代物だった。
 天竜の鍵爪。本来の使用者によりそう名付けられた鋭い蹴りが、風を纏いタンクトップタイガーの首をへし折り、顎を粉々に砕いた。

 脳を揺らし倒れる巨体から、ごぼりと音を立てて血があふれる。
 抉れた喉からわずかに骨が見え、赤い泡が勢いよく噴き出ていた。
 既に青年は、タンクトップタイガーに視線すら向けていなかった。

「なん……」
「だから言っただろ。確認だよ。
 今の俺が人を殺せるのか。人を殺して今の俺はどう思うのか。
 ……今まで通りだったら。きっとお前は死ななかった。」

 悪いな。褐色の青年がそういったことがタンクトップタイガー最後の記憶だ。
 あの道化師女の会釈よりは本心だったなと。そんなことを思いつつ。

「ここでお前が死ぬのも、まあ神の思し召しってやつだ。」

 皮肉交じりに告げられた言葉をタンクトップタイガーが聞くことはなかった。
 もし本来のタンクトップタイガーであれば、致命傷ではあれ死ぬことはなかっただろう。
 だが、今の彼の体はバグスターウイルスに侵され。さらに古代遺物(アーティファクト)により4年近く若返っている。
 つまり、彼の筋力は4年分の鍛錬と増強の成果を失っているに等しく。
 致命傷を絶命の一撃に変えるのに、充分な差であった。

【タンクトップタイガー@ワンパンマン 死亡】

男の死体に手を当て、先ほどサオリとハーレイにやったように集中する。
 タケの全身から漏れでる光が収まると、タンクトップタイガーの死骸が土塊に変わっていた。
 これは天空魔法によるものではなく、タケが本来有する空間転移によるものだった。
 タンクトップタイガーの死骸は数十mの地中に埋まり、二度と顔を出すことはない。
 そんな真似をしたのも、反逆者となった時に暗殺の母と戦った時以来のことだ。

 「懐かしいな。」

 何に向けていったのかは、タケ自身にも分からない。
 人を殺したことか?死体を埋めた事か?
 それとも、人を殺してまで前に進もうとしたことか?

 うん十年とあった空虚な思いが消えていく。
 取り返しのつかない一線を越えた現実を前に、生ゴミをぶちまけたような気色の悪さが広がり。
 その感覚に、形容し難い懐かしさを覚えてしまった。

「あいつらといたころは、こんな事珍しくもなかった。」

 タケにとって人を殺したのは初めてではない。
 冒険者としての戦いの中命を奪うなど何度もしてきたし。反逆者となった後だって人を殺すことは何度もやってきた。
 モンスター相手に暴れるのも、人を相手に暴れるのも。タケにとっては変わらない。
 仲間がいたころは誰が相手でも楽しかったし。
 仲間が居なくなった後は、誰を相手にしてもつまらなかった。

 仲間の居ない人生。ただ一人死に損なった半生。
 どれだけ会いたいと思っても、どれだけ彼らと同じ知識を身に着けても。
 タケの脳の中にさえ、彼らの姿は既にない。

 ――思う存分呪いあえ。
 羂索はそんなことを言っていたが、タケにとっては今の人生が呪いそのものだ。
 この戦いに巻き込まれたときは、自分の事など知らない誰かの手でさっさと殺してほしいとさえ思えていた。

 なぜ今になって。戦おうと思えたのだろうか。
 ハーレイ・クインと錠前サオリの言葉に感化されたからか?
 二人が持つ銃を前に、魔科両立の奇跡を――レイン・ガーランドの存在を思い出したからか?
 それとも、ここが彼の世界ではないのだと。神の目の届かない場所にあるのだと。
 そう思ったからか?
 この場の神。あえていうなら羂索。
 彼女が殺し合いを望んだからか?

「どうでもいいか。
 俺はそもそもそんなこと考えるキャラじゃなかった。」

 タケ=プラムパインにとって確かなことはただ一つ。
 この遊戯の先に、自分がずっと会いたかったものがある。
 あえて言葉にするなら、それは希望だった。

「神はその人に合わせた苦難をあたえるだけ。か」

 女二人は、タケの常識から外れた魔術と科学の融合技術が。
 そしてタケの手には、彼が慕った男と同じ空気を司る魔法がある。
 わざとだというなら、この盤上の神は――羂索一派は趣味が悪い。
 あらゆる願いを叶える権利。それを手にするには、一度負けた相手と戦わねばならないのだ。

 タンクトップタイガーの荷物を漁ると、天然繊維でできたと思しき薄緑色の服がある。
 未知の服だったが微かに魔力が感じられる。科学技術を利用できない自分が来ても問題ないだろう。
 ボロ布のような服を脱ぎ捨て、薄緑の服――みかわしの服に袖を通す。
 てっきり大柄なタンクトップタイガーに合わせたサイズなのかと思ったが、タケにとって多少緩い程度で動きに支障はないのは良い意味で意外であった。

 「さて、いくか。」

 落ちていた棒。ハーレイ・クインが残したさすまたのような棒をタケは拾い上げる。
 長物をあまり扱わない彼だが、棒を握る手は何故だかしっくりきた。
 ただの棒に薄い冒険服。
 科学技術を使用しない冒険者の装備としては、これ以上ない最高のものだ。
 そういえば、俺は冒険者だったなと。今更ながら思い出した。

 「羂索(かみ)よ。
 お前らがそう望むのなら。
 思う存分、呪いあってやる。」

 タケの言葉に、返してくれる人は誰もいない。
 静寂には慣れたはずなのに、そこに仲間がいないことが久方ぶりに寂しく思えた。

【タケ=プラムパイン@追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~(漫画版)】
状態:わずかな希望 疲労(大)
服装:みかわしの服
装備:人器・棒@ガチアクタ みかわしのふく@ドラゴンクエストシリーズ
令呪:残り3画
道具:ライフイズストレンジ@アンデッドアンラック ランダムアイテム×0~2、ホットライン
   ソードスキル:天空の滅竜魔法@FAIRY TAIL
思考
基本:また仲間と会いたい
01:殺して勝つことが俺にとって最善だ。その先が理想の世界だ
参戦時期:47話直後 本ロワにおいて全話より40年前後経過したことにしています。
備考 空間置換の能力が制限かかっています。
 また天空の滅竜魔法@FAIRY TAILのうち、治癒や付与の能力は使用できません
 ライフイズストレンジ@アンデッドアンラックの効果で肉体は46話以前の状態に戻っています。
  タンクトップタイガーの残り1つの支給品を回収しています。内容は後続の書き手様にお任せします


支給品一覧

 ライフイズストレンジ@アンデッドアンラック
 ・タケに支給
 対象者の名前と年数を言うことで、対象者の肉体時間を変化させる道具。
 肉体そのものの時間を動かすため致命傷さえ元に戻すことが可能だが、効果は永続である。
 寿命より長い時間に進めたり、生まれる前の時間に進めると対象は死亡あるいは消滅する。
 使用者にはリスクとして対象の10倍の時間変化が起こるほか、一度使用すると使用者の変化と同じ期間使えなくなる。現在使用不可

 ソードスキル:天空の滅竜魔法@FAIRY TAIL
 ・タケに支給
 天竜グランディーネに育てられた少女が使用する滅竜魔法の一種。
 魔力の原動力は空気であり、澄んだ空気を食うことで魔力が回復するようになる。
 本来は攻撃・回復・付与と多岐にわたる能力を有する魔法。
 現在のタケの場合 本人との相性のためか攻撃以外の魔法は殆ど使えない(使う気がない)状態である。

 人器・棒@ガチアクタ
 ・ハーレイ・クインに支給
 大切に扱ってきたモノに思念が宿ってできる「人器」の1つ。自称:凡人の掃除屋の愛棒。
 さすまたのような形状のただの棒ながら、巨大化や鋭利な棘を生やすなど戦闘向きの姿になり。反響を用いて周囲の空間を把握することもできる。
 本来十全の力を引き出すには使用者の思い入れが必要だが、本ロワにおいては誰であれ相応に力が引き出せるようになっている。
 現在:タケが使用中

 とうぞくの秘伝書/ソードスキル:オート盗む@ドラゴンクエストシリーズ
 ・ハーレイ・クインに支給
 職業秘伝書の一つ 盗賊職の奥義
 戦闘終了後相手のドロップするアイテムを一定の確率で盗むことが可能
 本ロワにおいては、相手にダメージを与えることで相手の所持するアイテムを奪うことができる
 盗める確率はかなり低いが、ハーレイは「相手が敗北を認めるほど盗める確率が上がるのでは」と推測している

 ハーレイ・クインの服@異世界スーサイド・スクワッド
 ・ハーレイ・クインに支給
 赤と黒を基調としたジャケットとホットパンツ
 ジャケットにはパーカーがついており、被ると赤と黒の二股帽子をかぶった道化師のような格好になる。

 ファウストローブ・ラピスフィロソフィカス(銃型スペルキャスター)@戦姫絶唱シンフォギアAXZ
 ・錠前サオリに支給
 錬金術の戦士たちが有する戦闘装備で、高質量のエネルギーを錬金技術の粋によってプロテクターの形状として錬成させたもの。
 闇の力を浄化する性質を持つ賢者の石(ラピス・フィロソフィカス)を核とし、普段はスペルキャスターと呼ばれるコンバーターユニットの形状を保っている
 錠前サオリに支給されたのは銃型のスペルキャスターで、使用すると銃と剣の形状を持つ武器を備えた騎士のような姿になる
 本ロワにおいては女性であればだれでも装備できる

 ドンナー&シュラーク@ありふれた職業で世界最強
 ・タンクトップタイガーに支給 
 銃口に雷を纏うことで、レールガンの弾速で弾丸を放てるリボルバー型のレールガン
 右手用のドンナー及び左手用のシュラークからなる二丁拳銃。 
 純粋な射撃武器として使える他、本ロワにおいては魔力に類する力が無くてもその真価を発揮できるが、その場合体力が消耗することになる
 現在:ハーレイ・クインが使用中

 みかわしの服@ドラゴンクエストシリーズ
 ・タンクトップタイガーに支給
 重い鎧を装備できない人たちのために作られた、魔法の服。
 重さを感じさせないほど軽く使用者の回避率を上昇させる。
 細かな設定は作品ごとに異なるが、タンクトップタイガーに支給された服はDQ8準拠の「装備者の反射神経を鋭くする魔法の力を秘めている」もの
 現在:タケが使用中

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