ーー超えられない山はない
◆
繰田孔富という極道の原点(オリジン)は、救われてばかりの人生である。
厳しくも優しく、恐怖の象徴だった兄の説教(シゴキ)から不良(はぐれ)の道を辞め医者としての道を歩んだ。
親の遺産だと思っていた資金は親戚に使い込まれて、兄が麻薬(ヤク)に手を出してまで稼いだ汚いお金だったという。
兄が地獄への道を背負うというのなら、弟の自分もまた。
血縁が逮捕(パク)られたらキャリアお終い、だなんて本音ではあるが詭弁でもある。
本当は、ふたりきりの兄弟だ。兄を一人にさせたくなかったから。兄あっての今の自分だから。
だから、悪くはなかった。麻薬(ヤク)作りに手を染めて、天国の回数券(ヘブンズ・クーポン)という極上の麻薬を完成させた。優秀な下働きも来てくれた。
兄は麻薬(ヤク)を救済(すくい)と言った。破滅を引き換えに心の底から欲するものだと。
厳しくも優しく、恐怖の象徴だった兄の説教(シゴキ)から不良(はぐれ)の道を辞め医者としての道を歩んだ。
親の遺産だと思っていた資金は親戚に使い込まれて、兄が麻薬(ヤク)に手を出してまで稼いだ汚いお金だったという。
兄が地獄への道を背負うというのなら、弟の自分もまた。
血縁が逮捕(パク)られたらキャリアお終い、だなんて本音ではあるが詭弁でもある。
本当は、ふたりきりの兄弟だ。兄を一人にさせたくなかったから。兄あっての今の自分だから。
だから、悪くはなかった。麻薬(ヤク)作りに手を染めて、天国の回数券(ヘブンズ・クーポン)という極上の麻薬を完成させた。優秀な下働きも来てくれた。
兄は麻薬(ヤク)を救済(すくい)と言った。破滅を引き換えに心の底から欲するものだと。
悪くない人生は唐突に終わりを告げた。
悪事(わるさ)かました極道(ヤクザ)を殺しに、忍者が兄が勤める麻薬研究所を襲撃(カチコミ)した。
債権者達(カスども)を麻薬(ヤク)漬けにしただけで、氷と雷の嵐によって極道たちは二人を除いて皆殺しにされた。
悪事(わるさ)かました極道(ヤクザ)を殺しに、忍者が兄が勤める麻薬研究所を襲撃(カチコミ)した。
債権者達(カスども)を麻薬(ヤク)漬けにしただけで、氷と雷の嵐によって極道たちは二人を除いて皆殺しにされた。
子供の頃に、兄とネビュラマンごっこをやっていた。
弟である自分はいつも怪獣役。だが本当は兄の方が怪獣役をやりたかったと言ってくれた。
弟が怪獣好きだからずっと譲ってあげていたのだ。
弟である自分はいつも怪獣役。だが本当は兄の方が怪獣役をやりたかったと言ってくれた。
弟が怪獣好きだからずっと譲ってあげていたのだ。
繰田孔富は、救われっぱなしだったのだ。
たった二人の兄弟。自分を支え続けてくれた兄。裏社会に身を落としてまで、大切に思ってくれていた。
だったら叶えてやろうと。怪獣になりたかったという兄の夢も。兄を仇を討ちたいという己の願いも。
己の半身を切り離し、兄の身体を接合する兄弟接合手術。
45時間にも及ぶ手術、永遠に押し寄す愛憎の海嘯の果てに、忍者へと復讐できる身体へ、最恐の怪獣へと産まれ直した。
怪獣医(ドクター・モンスター)、繰田孔富はこの時に産声を叫喚(あげ)た。
たった二人の兄弟。自分を支え続けてくれた兄。裏社会に身を落としてまで、大切に思ってくれていた。
だったら叶えてやろうと。怪獣になりたかったという兄の夢も。兄を仇を討ちたいという己の願いも。
己の半身を切り離し、兄の身体を接合する兄弟接合手術。
45時間にも及ぶ手術、永遠に押し寄す愛憎の海嘯の果てに、忍者へと復讐できる身体へ、最恐の怪獣へと産まれ直した。
怪獣医(ドクター・モンスター)、繰田孔富はこの時に産声を叫喚(あげ)た。
天国の回数券(ヘブンズ・クーポン)を改悪(かいりょう)した地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)を完成させ。
過去の罪やトラウマに苦しめられた医師たちを救済(すくい)上げて救済(すくい)なき医師団を立ち上げ。
麻薬水(ヤクみず)を浄水場に流し込み、東京に救済の大海嘯を齎して。
全て忍者に阻止されて、自身も死んだ。
地獄へと逝く前に、救済(すくい)が与えられた、はずだった。
過去の罪やトラウマに苦しめられた医師たちを救済(すくい)上げて救済(すくい)なき医師団を立ち上げ。
麻薬水(ヤクみず)を浄水場に流し込み、東京に救済の大海嘯を齎して。
全て忍者に阻止されて、自身も死んだ。
地獄へと逝く前に、救済(すくい)が与えられた、はずだった。
「地獄にしては陳腐(チンケ)な刑罰(ばつ)……ってわけじゃなさそうねぇ」
奪衣婆(ババァ)も裁判長(えんま)もいない。
代わりにと女子高生(じぇーけー)に身体を移植(うつ)した羂索という男。
それが殺戮遊戯(ころしあい)を行わせるために自分も含めた死人までも呼び出して。
代わりにと女子高生(じぇーけー)に身体を移植(うつ)した羂索という男。
それが殺戮遊戯(ころしあい)を行わせるために自分も含めた死人までも呼び出して。
「仮にも破壊の八極道なのよ、私(アタシ)。愚弄(ナメ)た真似してくれたわねぇ」
破壊の八極道、怪獣医繰田孔富は死んだ。
忍者兄弟の、兄が心臓(いのち)捧げて救済(すく)った弟の鎮魂の暗刃(わざ)によって鎮魂(おく)られた。
やられた怪獣が蘇るだなんて、劇場版でもあるまいし。
じゃあ殺戮遊戯(ころしあい)に乗るには生前で解放(スッキリ)してまった。
優勝して大海嘯をやり直すつもりもない。
どうして、蘇ってしまったのかわからない。
でも、何となく分かる気がするのだ。
忍者兄弟の、兄が心臓(いのち)捧げて救済(すく)った弟の鎮魂の暗刃(わざ)によって鎮魂(おく)られた。
やられた怪獣が蘇るだなんて、劇場版でもあるまいし。
じゃあ殺戮遊戯(ころしあい)に乗るには生前で解放(スッキリ)してまった。
優勝して大海嘯をやり直すつもりもない。
どうして、蘇ってしまったのかわからない。
でも、何となく分かる気がするのだ。
「……私に救済(すく)えっていうの?」
思い返すのは、死んだ直後の走馬灯。
手遅れになる前に救済(すくい)たかった医師団のみんな。
麻薬(ヤク)による救済(すくい)という道を示すことでしか救済(すく)えなかったみんな。
手遅れになる前に救済(すくい)たかった医師団のみんな。
麻薬(ヤク)による救済(すくい)という道を示すことでしか救済(すく)えなかったみんな。
本来ありえない運命の分岐点に立ち寄って、救済(すくい)の手を差し伸べる機会。
夢だとしても、本当は救済(すくい)たかったという本心を。
あの時だけは、神様は叶えてくれた。
夢だとしても、本当は救済(すくい)たかったという本心を。
あの時だけは、神様は叶えてくれた。
「医者として、真っ当に人々(みんな)を救済(すく)えって?」
閻魔様を無茶を言う。地獄の刑罰の代わりに誰かを救済(すくえ)と。
今更真っ当な医者をしろだなんて、とんでもない課題(クエスト)が与えられた。
今更真っ当な医者をしろだなんて、とんでもない課題(クエスト)が与えられた。
「…………無理でしょ」
神様は、今更自分に正しい道を示してきた。医者として正しい生き方を。
よくよく考えれば、死の間際にあんな幻想(ユメ)を見せてくれた神様だ。
憐れんだのだろう。間違ったやり方で救済(すくい)を齎そうとして、その実自分自身が救済われたかった怪獣の本心。
よくよく考えれば、死の間際にあんな幻想(ユメ)を見せてくれた神様だ。
憐れんだのだろう。間違ったやり方で救済(すくい)を齎そうとして、その実自分自身が救済われたかった怪獣の本心。
「なんで私を救済(すく)ったのよ」
自分以外に適任がいるはずだ。例えば、弟生かす為に生命落とした忍者とか。
人民(パンピー)救済(すく)うなら、少なくともそっちの方がよっぽど理に適っている。
じゃあ自分は無理です、と言ったところで優勝を狙う気力(やるき)は無い。
自分(やく)の救済(すくい)が間違っている事なんて最初から知っている。
でも、そうでなければ救済(すく)われない人たちがいることを知ってしまったから、そうするしかなかったから。
そんな事を考えていれば、背後から聞こえる警戒心の籠もった声。
人民(パンピー)救済(すく)うなら、少なくともそっちの方がよっぽど理に適っている。
じゃあ自分は無理です、と言ったところで優勝を狙う気力(やるき)は無い。
自分(やく)の救済(すくい)が間違っている事なんて最初から知っている。
でも、そうでなければ救済(すく)われない人たちがいることを知ってしまったから、そうするしかなかったから。
そんな事を考えていれば、背後から聞こえる警戒心の籠もった声。
「おい」
声の主は赤いジャージの女。
前髪の赤いメッシュが目立つが、孔富に向けているその巨大な太刀バサミも視線を惹く。
初対面の少女に恨まれるような因縁があるかどうかと言われると全く覚えがない。
だが仮に麻薬水(ヤクみず)ばら撒きの被害者(がいしゃ)の誰かの娘だったら言い訳は出来ないだろう。
前髪の赤いメッシュが目立つが、孔富に向けているその巨大な太刀バサミも視線を惹く。
初対面の少女に恨まれるような因縁があるかどうかと言われると全く覚えがない。
だが仮に麻薬水(ヤクみず)ばら撒きの被害者(がいしゃ)の誰かの娘だったら言い訳は出来ないだろう。
「まどろっこしいのは無しだ、直球で聞かせてもらう。てめぇは乗ってる側か?」
どうやら思い違いのようである。
少なくとも殺し合いに乗っているかどうかの真偽を問い質しに来たようだ。
この怪獣の図体だ、1つ2つは疑いを持たれても仕方はない。
少なくとも殺し合いに乗っているかどうかの真偽を問い質しに来たようだ。
この怪獣の図体だ、1つ2つは疑いを持たれても仕方はない。
「……乗る気なんてないわよ。でも、見ず知らずの誰かさんに睨まれても仕方のない悪事(わるさ)やってたのも否定はしないわ」
「そりゃそんなでっかい図体してるやつが、マトモなわけねぇよな」
「そうよ、正気(まとも)だとやっていけなかったからこうなったのよ、私(アタシ)も、あの子たちも」
「そりゃそんなでっかい図体してるやつが、マトモなわけねぇよな」
「そうよ、正気(まとも)だとやっていけなかったからこうなったのよ、私(アタシ)も、あの子たちも」
そう。正気(まとも)何ぞ見当たらなかった。狂乱(イカ)れないとやっていけなかった。
自分が出産に付き合った子供たちの不幸の末の死を、偶然で割り切れなくなり麻薬に手を出した看護師がいた。
寄り添わないことをモットーとしていたが、唯一寄り添った親が認知症で汚れた事実に耐えきれなくなりその手で殺してしまった精神科医。
僻地医療という過酷な現場で、疲弊して我儘(クズ)になった村人を見捨ててしまった二人の医者がいた。
法に背いてでもある少女を救済(すく)おうとして、救えなかった外科医がいた。
自分が出産に付き合った子供たちの不幸の末の死を、偶然で割り切れなくなり麻薬に手を出した看護師がいた。
寄り添わないことをモットーとしていたが、唯一寄り添った親が認知症で汚れた事実に耐えきれなくなりその手で殺してしまった精神科医。
僻地医療という過酷な現場で、疲弊して我儘(クズ)になった村人を見捨ててしまった二人の医者がいた。
法に背いてでもある少女を救済(すく)おうとして、救えなかった外科医がいた。
「正気(マトモ)じゃいられなかったから、悪事(わるさ)した。東京中に麻薬水(ヤクみず)バラ撒いて偽りの救済(すくい)を与えようとして、その報いで私は死んだの」
「……そりゃ当然だな」
「そしてこのまま地獄行き、だなんて思ってたら誰かの都合で勝手に蘇らせられて、神様は私に「真っ当に医者の領分を果たせ」でも言ってるのかしら?」
「……そりゃ当然だな」
「そしてこのまま地獄行き、だなんて思ってたら誰かの都合で勝手に蘇らせられて、神様は私に「真っ当に医者の領分を果たせ」でも言ってるのかしら?」
医療でも、法でも救済(すく)われないそんな皆を集めた救済(すくい)なき医師団。
既に手遅れだった彼らには、麻薬で人々を救済(すく)うという道筋を示す形での救済(すくい)しか与えられなかった。
ただの救済(すくい)では救済(すく)えないから、そうする他なかった。
少女も、孔富のその言葉にはそう頷くしかない。そうするしかなかった人間の、吐き出した思いの丈に。
既に手遅れだった彼らには、麻薬で人々を救済(すく)うという道筋を示す形での救済(すくい)しか与えられなかった。
ただの救済(すくい)では救済(すく)えないから、そうする他なかった。
少女も、孔富のその言葉にはそう頷くしかない。そうするしかなかった人間の、吐き出した思いの丈に。
「無理よ。私は殺(や)りすぎた。今更真っ当にだなんて無理(クソゲー)。……嘲笑(わら)いなさいよ、私のことなんて」
今更蘇ったところで。
間違った救済の道しか彼らに示せなかった私自身が。
だから。
間違った救済の道しか彼らに示せなかった私自身が。
だから。
「笑えない。……いいえ、笑わないわよ、アタシは。」
怪獣の悔恨を切り裂く光の如く、新たな少女が姿を表した。
彼女の存在を言い表すならば、輝ける黒であろう。
アイマスク、ネクタイ、ネクタイ、オーバーニーソックス。それら全てが黒で統一されており、唯一白でまとめているトップスが、逆に彼女の黒を引き立てている。
怪獣を倒すネビュラマンとは違う、等身大の正義のヒーローのような、黒の少女。
彼女の存在を言い表すならば、輝ける黒であろう。
アイマスク、ネクタイ、ネクタイ、オーバーニーソックス。それら全てが黒で統一されており、唯一白でまとめているトップスが、逆に彼女の黒を引き立てている。
怪獣を倒すネビュラマンとは違う、等身大の正義のヒーローのような、黒の少女。
「と言うか流子、いきなり先走って知らない人に刃物向けてるんじゃないわよ」
「どー考えてもあの図体怪しいだろ! 本能寺学園でもあんなでけぇのいなかったぞ!」
「それとこれとは話は別よ。あとはこっちが話すから一旦静かにして」
「どー考えてもあの図体怪しいだろ! 本能寺学園でもあんなでけぇのいなかったぞ!」
「それとこれとは話は別よ。あとはこっちが話すから一旦静かにして」
登場早々、ハサミの少女もとい「流子」と黒の少女に呼ばれた彼女との軽い言い合い。
流子の孔富への対応がやりすぎ、ということでのお叱りなのだろう。
「わーかったよ」と頭をかく流子を他所に、黒の少女が孔富へと視線を向ける。
流子の孔富への対応がやりすぎ、ということでのお叱りなのだろう。
「わーかったよ」と頭をかく流子を他所に、黒の少女が孔富へと視線を向ける。
「それで、怪獣(わるもの)に何のようかしら? 淑女(レディ)?」
「確かにあんたがやったことは絶対に許されないことよ。それでも、誰かを救いたかったあなたの気持ちも理解できる」
「確かにあんたがやったことは絶対に許されないことよ。それでも、誰かを救いたかったあなたの気持ちも理解できる」
その視線は、忍者を彷彿とさせる強い意志からなるもの。
気圧される程の強さはないものの、曲げたくない思いを抱えている者の瞳。
気圧される程の強さはないものの、曲げたくない思いを抱えている者の瞳。
「それが救いでもなんでもないと分かっていても、その救いで手を伸ばしたかった。救えなかった誰かに救いを示すことで」
「分かってるじゃないの。ただの少女(マセガキ)にしては言い洞察力(カン)ね」
「見習いだけどこれでも看護師なのよ。ヒーローとの二足のわらじ何だけど」
「分かってるじゃないの。ただの少女(マセガキ)にしては言い洞察力(カン)ね」
「見習いだけどこれでも看護師なのよ。ヒーローとの二足のわらじ何だけど」
納得(なるほど)、と頷いた。
看護師。つまり医者の端くれであり、孔富からすれば後輩にあたる。
そしてヒーロー、とも名乗った。
ネビュラマンもまたヒーローではあるが、あれとは全く違う。
凶暴で残酷だが、時に悲しき経歴を持つ怪獣たちを退治する光の巨人とはまた違う。
看護師。つまり医者の端くれであり、孔富からすれば後輩にあたる。
そしてヒーロー、とも名乗った。
ネビュラマンもまたヒーローではあるが、あれとは全く違う。
凶暴で残酷だが、時に悲しき経歴を持つ怪獣たちを退治する光の巨人とはまた違う。
「でも、本当はそうなる前に救いたかったのよね、あなたは」
「………」
「………」
救済なき医師団は、救われなかった者たちだ。
現代の医療では救えず、麻薬を使って現実逃避しなければ狂ってしまう程に手遅れになってしまった者たち。
人を救済しようとして、自分たち自身が救済されず壊れてしまった者たち。
救済うことに純粋すぎて、壊れるしかなかった者たち
麻薬による救済(すくい)は方便であり、縋り付ける唯一の拠り所。
救済(すく)いたかった。手遅れになる前に、医者として。
現代の医療では救えず、麻薬を使って現実逃避しなければ狂ってしまう程に手遅れになってしまった者たち。
人を救済しようとして、自分たち自身が救済されず壊れてしまった者たち。
救済うことに純粋すぎて、壊れるしかなかった者たち
麻薬による救済(すくい)は方便であり、縋り付ける唯一の拠り所。
救済(すく)いたかった。手遅れになる前に、医者として。
「そんなもんじゃないわよ、私は。救済(すくい)いたかったのは真実(ほんね)の1つよ。でも……」
「だったら今度は救いなさいよ、助けを呼ぶ誰かを」
「だったら今度は救いなさいよ、助けを呼ぶ誰かを」
だったら今度こそ救えと、少女は叱責する。
救いようのない外道、東京に麻薬水を蔓延らせ、救済という名の大海嘯を起こした大罪人。
でも、救いたかったという思いは本物だから、と。
救いようのない外道、東京に麻薬水を蔓延らせ、救済という名の大海嘯を起こした大罪人。
でも、救いたかったという思いは本物だから、と。
「言い方が悪いけれど、あなたは悪行の報いを受けて死んで、生き返った。……あんたはまだ何も、終わってない」
彼の人生が仮にバッドエンドの物語だったとして。バッドエンドで全てが終わった訳では無い。
彼の終わり方はどういうものだったかを、黒の少女が知るすべは今は有らずとも。
その最後に、ほんの少しの救いがあったとしたならば。
彼の終わり方はどういうものだったかを、黒の少女が知るすべは今は有らずとも。
その最後に、ほんの少しの救いがあったとしたならば。
「だから、ヒーローらしくあんたを更生させてやるわ。怪獣(わるもの)さん」
「……いや、バカでしょ。東京で大惨事(テロ)起こしたやつにそれを言うの?」
「……いや、バカでしょ。東京で大惨事(テロ)起こしたやつにそれを言うの?」
ヒーローの言葉に、怪獣は驚愕の色を隠せない。
更生させてやると言われたのは、流石に始めてなのだ。
極道(ヤクザ)相手に更生、とは。忍者では絶対にない選択。
少女の決意に、文字通り面食らった。
更生させてやると言われたのは、流石に始めてなのだ。
極道(ヤクザ)相手に更生、とは。忍者では絶対にない選択。
少女の決意に、文字通り面食らった。
「あんたの暗闇がどれだけ暗くても、アタシが黒い星としてそばにいてあげる。黒を見るたび、思い出させてあげる。」
絶望という名の。静観という名の。
そんな真っ黒な谷底にいる人の力になりたい。
いくら逃げようとも、目を逸らそうともへばりつく暗闇に、星と言う名の黒で上書きする。
誰かに寄り添う黒き星として、誰かの心を癒やしたいと。
そんな真っ黒な谷底にいる人の力になりたい。
いくら逃げようとも、目を逸らそうともへばりつく暗闇に、星と言う名の黒で上書きする。
誰かに寄り添う黒き星として、誰かの心を癒やしたいと。
「だってあたしは、『癒やし系』ヒーローなんだから」
彼女は、本物だ。
本物のヒーローなのだ。
聳え立つ山を越え、誰かの苦しみを癒す黒い星。
救えぬ人もいただろう。そんな現実に打ちひしがれもしただろう。
それでも黒い星は輝くことを辞めなかった。
絶望を乗り越えて、ここに立っている。
本物のヒーローなのだ。
聳え立つ山を越え、誰かの苦しみを癒す黒い星。
救えぬ人もいただろう。そんな現実に打ちひしがれもしただろう。
それでも黒い星は輝くことを辞めなかった。
絶望を乗り越えて、ここに立っている。
「言って、くれたわね。若造(ヒーロー)」
極道なんて割に合わない立場だったと、今更になって己の過去を自嘲する。
兄を殺した忍者への復讐のため、救われなかった医者(なかま)に仮初でも良いから救済(すくい)を与えるため。
そもそも、医者なんだから麻薬(ヤク)が駄目(アウト)なのは分かっている。
麻薬(ヤク)の救済(すくい)が詭弁なのは知っていた。
本当は、手遅れになる前に救済(すくい)たかった。
歪罹井、美陀、嫌慈、叛巻、艶道。
誰かを救い、救われなかった、道を外れた同胞たち。
間違った選択だとしても、彼ら自身の中にその救済が間違っていると自覚していたとしても。
それでも、救いたかったから。
兄を殺した忍者への復讐のため、救われなかった医者(なかま)に仮初でも良いから救済(すくい)を与えるため。
そもそも、医者なんだから麻薬(ヤク)が駄目(アウト)なのは分かっている。
麻薬(ヤク)の救済(すくい)が詭弁なのは知っていた。
本当は、手遅れになる前に救済(すくい)たかった。
歪罹井、美陀、嫌慈、叛巻、艶道。
誰かを救い、救われなかった、道を外れた同胞たち。
間違った選択だとしても、彼ら自身の中にその救済が間違っていると自覚していたとしても。
それでも、救いたかったから。
「……怪獣役、お兄ちゃんに譲ったんだわね」
今際の際、本来ならば地獄に落ちるはずの寸前で。
兄と再会(であ)って、ネビュラマンごっこで兄自身が願っていた怪獣役を兄に譲った。
本当は怪獣役やりたかったと、兄が言っていた。
兄と再会(であ)って、ネビュラマンごっこで兄自身が願っていた怪獣役を兄に譲った。
本当は怪獣役やりたかったと、兄が言っていた。
「怪獣役? 何の話よ?」
「看護師見習いだったわよね、癒し系ヒーローちゃん?」
「看護師見習いだったわよね、癒し系ヒーローちゃん?」
そうなったら、自分がネビュラマン役じゃないか。ネビュラマンは、ヒーローなんだから。
恩人でもある極道(きわみ)BOYの意図に反することになるけれど。
彼は死んだ人間に長く引きずられるような男ではない。
一度死んでしまったんだ、だったら来世(セカンドステージ)は好きにやる。
今度は、ちゃんと医者として。
恩人でもある極道(きわみ)BOYの意図に反することになるけれど。
彼は死んだ人間に長く引きずられるような男ではない。
一度死んでしまったんだ、だったら来世(セカンドステージ)は好きにやる。
今度は、ちゃんと医者として。
「私は闇医者だけど、技術(ウデ)はこっちが上なのよ。先輩(としうえ)は素直に頼りなさい?」
「あなたみたいな優秀な医者が相棒(サイドキック)になってくれるなら、心強いわ」
「あなたみたいな優秀な医者が相棒(サイドキック)になってくれるなら、心強いわ」
決心(ひらきなお)った怪獣の言葉。
怪獣役は兄貴だから、今度は自分がヒーロー役。
ヒーロー役になったんだから、今度は真っ当に医者として人々を救済(すく)おう。
そんな言葉に、ヒーローは感謝を込めて喜びの返答。
怪獣役は兄貴だから、今度は自分がヒーロー役。
ヒーロー役になったんだから、今度は真っ当に医者として人々を救済(すく)おう。
そんな言葉に、ヒーローは感謝を込めて喜びの返答。
「……シャイならもうちょっと気の利いた言葉でも言ってたかしら」
「おーいピルツ、用事は終わったのか?」
「おーいピルツ、用事は終わったのか?」
医者二人のやり取りが終わったのを見計らい、ハブられ気味だった流子が一言。
二人の世界に割り込むのも野暮だと静観を決め込む程度には空気は読んでいた。
あの怪獣みたいな医者は、もう問題はなさそうとは見ていた判断はしている。
二人の世界に割り込むのも野暮だと静観を決め込む程度には空気は読んでいた。
あの怪獣みたいな医者は、もう問題はなさそうとは見ていた判断はしている。
「ま、こいつがそういうんだったらあたしも異論はねぇ。変なことしたら容赦はしねぇがな」
「あら畏怖(びび)っちゃうわ、最近の女子不良(レディース)は荒っぽいわねぇ?」
「彼女は彼女で相棒奪われてるのよ。相棒っていうかセーラー服?らしいわよ」
「ああ。鮮血っていう、あたしの大切なパートナーだ」
「あら畏怖(びび)っちゃうわ、最近の女子不良(レディース)は荒っぽいわねぇ?」
「彼女は彼女で相棒奪われてるのよ。相棒っていうかセーラー服?らしいわよ」
「ああ。鮮血っていう、あたしの大切なパートナーだ」
纏流子には取り返すべき相棒がいる。
生命戦維で構築された意志持つ衣服、神威鮮血。
切り刻まれ、奪われたその断片を取り返すために大阪に殴り込んだらこの殺し合いだ。
取り戻すためにも、こんな下らない殺し合いに付き合ってるつもりはない。
父の死の真相を知る、鬼龍院皐月が仮にこの場にいたとしても、こんな場所での決着はお互いスッキリはしない。
生命戦維で構築された意志持つ衣服、神威鮮血。
切り刻まれ、奪われたその断片を取り返すために大阪に殴り込んだらこの殺し合いだ。
取り戻すためにも、こんな下らない殺し合いに付き合ってるつもりはない。
父の死の真相を知る、鬼龍院皐月が仮にこの場にいたとしても、こんな場所での決着はお互いスッキリはしない。
「その鮮血ちゃんって服(ひと)も、救済(すく)わないといけないわね」
ならば、救済(すく)おう。
今度こそ、偽りではなく、本当の意味で。
本当は正しく救いたかったという本音を抱えながら。
救いきれぬ罪を背負いながらも、今度こそ救済(すく)う為に。
今度こそ、偽りではなく、本当の意味で。
本当は正しく救いたかったという本音を抱えながら。
救いきれぬ罪を背負いながらも、今度こそ救済(すく)う為に。
「せっかくのいい機会だから、改めて名乗っておくわね」
「名乗るって、さっき流子ちゃんがアナタの名前喋ってたわよね?」
「そうじゃないの、ヒーローとしての名乗りよ」
「名乗るって、さっき流子ちゃんがアナタの名前喋ってたわよね?」
「そうじゃないの、ヒーローとしての名乗りよ」
【ピルツ・デュナン@SHY-シャイ-】
状態:健康
服装:ヒーロー姿
装備:転心輪@SHY-シャイ-
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。ヒーローとして手の届く人たちを助ける
01:怪獣医(孔富)の更生の行く末を見守る、更生させる。相棒としても先輩としても頼りにしてる。
参戦時期:74話
備考
状態:健康
服装:ヒーロー姿
装備:転心輪@SHY-シャイ-
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない。ヒーローとして手の届く人たちを助ける
01:怪獣医(孔富)の更生の行く末を見守る、更生させる。相棒としても先輩としても頼りにしてる。
参戦時期:74話
備考
【纏流子@キルラキル】
状態:健康
服装:赤いジャージ
装備:万物切断エクスタス@アカメが斬る!
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らねぇし、あの羂索とかいうやつはぶっ飛ばす
01:鮮血がいてくれたら探すのは楽なんだが……
02:鬼龍院皐月がいても決着をつけるのは元の世界に戻ってから
参戦時期:14話、鮮血の断片を取り戻しに大阪に向かう最中
備考
状態:健康
服装:赤いジャージ
装備:万物切断エクスタス@アカメが斬る!
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らねぇし、あの羂索とかいうやつはぶっ飛ばす
01:鮮血がいてくれたら探すのは楽なんだが……
02:鬼龍院皐月がいても決着をつけるのは元の世界に戻ってから
参戦時期:14話、鮮血の断片を取り戻しに大阪に向かう最中
備考
【繰田孔富@忍者と極道】
状態:健康
服装:医師の服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン
思考
基本:救済(すく)う。お兄ちゃんに怪獣役譲っちゃったから、今度は私がヒーロー役ね
01:短い間だけれどよろしく頼むわね、黒いヒーローちゃん
02:忍者と出会(カチ)っちゃったらどうしよ
参戦時期:死亡後
備考
状態:健康
服装:医師の服装
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン
思考
基本:救済(すく)う。お兄ちゃんに怪獣役譲っちゃったから、今度は私がヒーロー役ね
01:短い間だけれどよろしく頼むわね、黒いヒーローちゃん
02:忍者と出会(カチ)っちゃったらどうしよ
参戦時期:死亡後
備考
【支給品紹介】
【転心輪@SHY-シャイ-】
ピルツ・デュナンに支給。SHY作中に置けるヒーローたちに共通する腕輪状の変身アイテム。
持ち主の持つ「心の力」を物理的エネルギーに変換して、変身者に応じた能力を発言させる。腕輪自体にも翻訳機としての機能がある。
【転心輪@SHY-シャイ-】
ピルツ・デュナンに支給。SHY作中に置けるヒーローたちに共通する腕輪状の変身アイテム。
持ち主の持つ「心の力」を物理的エネルギーに変換して、変身者に応じた能力を発言させる。腕輪自体にも翻訳機としての機能がある。
【万物切断エクスタス@アカメが斬る!】
纏流子に支給。鋏の形をした帝具と呼ばれる超兵器。万物両断の二つ名に偽りのない切断力と純粋な硬度が強み。
奥の手と呼ばれる切り札として、金属部分を発光させ目眩ましを行う「鋏(エクスタス)」がある。
纏流子に支給。鋏の形をした帝具と呼ばれる超兵器。万物両断の二つ名に偽りのない切断力と純粋な硬度が強み。
奥の手と呼ばれる切り札として、金属部分を発光させ目眩ましを行う「鋏(エクスタス)」がある。
「光の届かぬ深淵に」
「それでも黒はそばにいる」
「世界の心を照らすのは」
「地上に輝く黒の星!」
「黒十字看護部、レディブラック!」
「ーーアタシは生命を、諦めない…!」
候補作116:Try&Fight | 投下順 | 候補作121:This is a Fight to Change the World |
時系列順 | ||
GAME START | ピルツ・デュナン | 050:優しい言葉 |
纏流子 | ||
繰田孔富 |