「手を組まねぇか?」
差し伸べられた手は、正しく運命の選択肢なのだろう。
刀使たる十条姫和はそれを認識した。
刀使でありながら御刀は無く、荒魂ではない敵対NPCに襲われて万事休すと思われた時に。
頑強な肉体を持った二人の男子に助けられたという体たらく。
情けない、などと己を卑下する余裕もない。かつ男子二人のその片側は間違いなく御刀を持っていたとしても勝てるかどうかわからない実力者。
刀使たる十条姫和はそれを認識した。
刀使でありながら御刀は無く、荒魂ではない敵対NPCに襲われて万事休すと思われた時に。
頑強な肉体を持った二人の男子に助けられたという体たらく。
情けない、などと己を卑下する余裕もない。かつ男子二人のその片側は間違いなく御刀を持っていたとしても勝てるかどうかわからない実力者。
「組まない理由があるわけではない。だがお前たちが乗っているのであるならばその誘いは断らせてもらう」
だが、"間違ったやり方"を望むほど今の十条姫和は愚かではない。
かつての自分ならまだしも、今の自分には大切なものというものが増えすぎた。
己の復讐の根源も思い違いだと知った。何より、衛藤可奈美のことが放っておけない。
「手を離すな」と言っておいてこんな事で自分から約束を破ってしまってバツが悪い。
かつての自分ならまだしも、今の自分には大切なものというものが増えすぎた。
己の復讐の根源も思い違いだと知った。何より、衛藤可奈美のことが放っておけない。
「手を離すな」と言っておいてこんな事で自分から約束を破ってしまってバツが悪い。
「手厳しい嬢ちゃんだ。その気難しさは堀北と似てるな」
「誰かに例えられるのは構わないが、先の返答の答えは」
「乗るつもりはねぇ。現時点はってとこだが」
「誰かに例えられるのは構わないが、先の返答の答えは」
「乗るつもりはねぇ。現時点はってとこだが」
二人組の片方。紫掛かった黒髪の青年が卒なく答える。
猛禽類の如き鋭い眼光。引き締まった体躯。
それでも刀使から見ればまだ常人の域。
ただし、男から感じる凄みは、恐怖(ころしあい)という脅しに屈しないというその意志だけは本物のように思えた。
猛禽類の如き鋭い眼光。引き締まった体躯。
それでも刀使から見ればまだ常人の域。
ただし、男から感じる凄みは、恐怖(ころしあい)という脅しに屈しないというその意志だけは本物のように思えた。
「ただし、場合によっては、って話だ。殺しの引き金なんざ当然のように引く機会なんて訪れるだろうな。こんな場所じゃ当然か」
「貴様は、人を殺したことはあるのか?」
「そこまで落ちぶれちゃいねぇし、余程の事がなければするつもりもねぇさ」
「貴様は、人を殺したことはあるのか?」
「そこまで落ちぶれちゃいねぇし、余程の事がなければするつもりもねぇさ」
この男にとっては「殺し」というのは最終手段でしかない。
あくまで、「余程のことがなければ」というのは当人としても好ましいことではないという事。
手段は選ばないが、一線を越えるのはなるべくは避ける、ともいう考えか。
あくまで、「余程のことがなければ」というのは当人としても好ましいことではないという事。
手段は選ばないが、一線を越えるのはなるべくは避ける、ともいう考えか。
「……かつてある人物に復讐しようとした私が言えたたちではないが、その一線は超えるべきではないな」
「そういうてめぇの方は殺そうとしたことあるのか?」
「殺そうと思っていたほど憎んでいた相手はいた。……今となっては過ぎた話だがな」
「そういうてめぇの方は殺そうとしたことあるのか?」
「殺そうと思っていたほど憎んでいた相手はいた。……今となっては過ぎた話だがな」
母の仇を打たんとして、その過程で知った真実は複雑なもの。行き場のない怒りのままに禍神へと落ちかけた。
「そんな私を、無理矢理にでも引きずりあげようとした人がいる。優しいけれど、自分本位」
「てめぇも難儀なら、そいつも難儀なやつってか」
「否定はしない。あいつは……可奈美はそういうやつだ」
「てめぇも難儀なら、そいつも難儀なやつってか」
「否定はしない。あいつは……可奈美はそういうやつだ」
そんな己を止めた友がいた、優しい反面で自分本位。
禍神を宿し、未来を視る眼を持ってなお勝てる未来視(ビジョン)が見えないほどに強く。
最後まで「半分持ってあげる」という言葉を守り抜いた。
そういう彼女である衛藤可奈美に自分は見事救われたのかもしれない。
禍神を宿し、未来を視る眼を持ってなお勝てる未来視(ビジョン)が見えないほどに強く。
最後まで「半分持ってあげる」という言葉を守り抜いた。
そういう彼女である衛藤可奈美に自分は見事救われたのかもしれない。
「いつの間にか、私の回りにそういうものが増えてしまった」
辛い時に重たい荷物を一緒に持ってくれる大切な人、仲間たち。
復讐に捧げようとしたこの生を、一人闇へと向かおうとする自分に手を伸ばしてくれた皆がいたからこそ。
復讐に捧げようとしたこの生を、一人闇へと向かおうとする自分に手を伸ばしてくれた皆がいたからこそ。
「そんな皆に。そして衛藤可奈美に救われてしまった。だから皆に恥じないような、そして刀使としても。私はこの殺し合いに抗う道を選ぶ。」
道を外れるわけには行かないし、彼女たちの思いを裏切る真似もしたくはない。
「それに、可奈美とのちゃんとした決着が。御前試合の決勝戦も中断したままだからな」
「……なるほどな」
「……なるほどな」
透き通るほどに冷涼で、さりとて雷の如くまっすぐ貫く姫和の瞳を男は見た。
頑固だが、確固たる決意があった。
これを無理矢理従わせるのは骨が折れると、半ば諦め気味になった。
彼女は周りによって変わったというが、男の方というのも結局回りに動かされて動いたというべきか。
信頼と友情で繋がった彼女は、自分や"やつ"とは違う。
だがそれがどうしたと言わんところではある。そうと表明されたら仕方もない。
――少なくとも、その決意だけは及第点と認めた。
頑固だが、確固たる決意があった。
これを無理矢理従わせるのは骨が折れると、半ば諦め気味になった。
彼女は周りによって変わったというが、男の方というのも結局回りに動かされて動いたというべきか。
信頼と友情で繋がった彼女は、自分や"やつ"とは違う。
だがそれがどうしたと言わんところではある。そうと表明されたら仕方もない。
――少なくとも、その決意だけは及第点と認めた。
「おい、その可奈美ってやつにはちゃんとした舞台で勝ちたいってことか?」
「そういう解釈でも構わない。一度暴走していた私を止める形で可奈美と剣を交えた事はあるが、如何せん勝てるビジョンが文字通り全く見えなかった」
「……俺にもな。いや俺のは違うな。俺にはリベンジしたいやつがいる。ここで決着を付けてもかまわねぇと思ったが、どうせ果たすなら元の世界の方がいいだろとでも思っただけだ」
「そういう解釈でも構わない。一度暴走していた私を止める形で可奈美と剣を交えた事はあるが、如何せん勝てるビジョンが文字通り全く見えなかった」
「……俺にもな。いや俺のは違うな。俺にはリベンジしたいやつがいる。ここで決着を付けてもかまわねぇと思ったが、どうせ果たすなら元の世界の方がいいだろとでも思っただけだ」
男の――龍園翔の脳裏に浮かぶ一人の存在。自らに闇を垣間見させ、恐怖を認識させた唯一無二の男。
己を負かした綾小路清隆という男に対して、このまま負けたままであることが気に入らなかった。
蠱毒を推し進めるような学園に興味はない。だが負けたままなのが不満だったから。
己を負かした綾小路清隆という男に対して、このまま負けたままであることが気に入らなかった。
蠱毒を推し進めるような学園に興味はない。だが負けたままなのが不満だったから。
『俺は……俺は、龍園さんについていくって決めたんだよ』
『あんたは、勝つためなら何でもする男だった』
『あんたは、勝つためなら何でもする男だった』
……それだけじゃない、かもしれない。
なんて下らない考えを頭の隅に思い浮かべて、「それはない」と振り払おうとして。
なんて下らない考えを頭の隅に思い浮かべて、「それはない」と振り払おうとして。
「もしかしたら、俺も回りに絆されたか? ……なんてな?」
「………」
「………」
何故そんな言葉が出たのかなんて、わからなかったが。
この女の態度が多少は軟化したのを考えれば、いい反応を見れたということか。
この女の態度が多少は軟化したのを考えれば、いい反応を見れたということか。
「……手を組まないか、と言う話だが、乗ることにしよう。……勘違いするな、あくまで監視も兼ねてだ。もし外道に堕ちるというのなら容赦はしない」
「そんじゃ、交渉成立だな」
「そんじゃ、交渉成立だな」
手を出した龍園に、ぎこちないながらも姫和は握手をもって態度を示した。
思想も本質も真逆な二人は、ここに手を組むことを選択した。
思想も本質も真逆な二人は、ここに手を組むことを選択した。
○ ○ ○
(あっちはうまく行ったようだな)
建物の壁にもたれかかるように暇をつぶしていた男。
天与の暴君"伏黒甚爾"は二人のやり取りを見守っていた。
天与の暴君"伏黒甚爾"は二人のやり取りを見守っていた。
(だが、加茂憲倫か。あの御三家の汚点が、どこぞのガキの身体手に入れてこんな催しとはな)
呪術界御三家が一つ。加茂家の汚点。史上最悪の呪術師。
禪院家にて蔑まれてきた伏黒甚爾とて、加茂憲倫は耳に入っている。
そも死人が蘇って殺し合いを開く、というのも常軌を逸している。
呪霊にでも成り果てたか、とは思うものの。五条悟に倒された自分すらこうして蘇っているのだ。
禪院家にて蔑まれてきた伏黒甚爾とて、加茂憲倫は耳に入っている。
そも死人が蘇って殺し合いを開く、というのも常軌を逸している。
呪霊にでも成り果てたか、とは思うものの。五条悟に倒された自分すらこうして蘇っているのだ。
(バックに誰がいるんだかし知らねぇが、それは俺の関与することじゃねぇな)
少なくとも、御三家絡みのいざこざに巻き込まれた、というわけではないらしいにしても。
自分のような猿まで呼び込んで、一体何を望んでいるのやら。
自分のような猿まで呼び込んで、一体何を望んでいるのやら。
(もらった金の分の仕事ぐらいはこなすさ)
最初に出会った龍園翔から提出されたトランクケースに敷き詰められた諭吉の束。この状況で札束なんて自分のような金づるでなければ価値なんてあってないようなもの。それでも支払われた料金分の働きはする。
あれが冷徹そうに見えてその実甘ちゃんにも思える少女を引き込んだところで関係はない。
払ってもらった分の仕事は果たす。場合によっては殺す。
あれが冷徹そうに見えてその実甘ちゃんにも思える少女を引き込んだところで関係はない。
払ってもらった分の仕事は果たす。場合によっては殺す。
――あの二人の過去に何かしらあったか、それを断片的に知る術しかないとして。
暴君はただ見定める。異なり、その上で求めるものが似ている二人の男女を。
暴君はただ見定める。異なり、その上で求めるものが似ている二人の男女を。
【十条姫和@刀使ノ巫女】
状態:健康
服装:平城学園の制服
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない、元の世界に帰る
01:業腹だが、この男(龍園)の誘いに乗る。あくまで監視のため
02:可奈美や皆のことが心配
03:殺すという手段は選びたくないが、もしもの時は……
参戦時期:最終回、隠世から柊篝と別れて可奈美と共に現世へと戻る最中
備考
状態:健康
服装:平城学園の制服
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン
思考
基本:殺し合いには乗らない、元の世界に帰る
01:業腹だが、この男(龍園)の誘いに乗る。あくまで監視のため
02:可奈美や皆のことが心配
03:殺すという手段は選びたくないが、もしもの時は……
参戦時期:最終回、隠世から柊篝と別れて可奈美と共に現世へと戻る最中
備考
【龍園翔@ようこそ実力至上主義の教室へ】
状態:健康
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:元の世界に戻る。恐怖に屈するつもりはない。
01:まずは仲間集め。一先ずはこの女を引き入れれたのは上出来か。
参戦時期:11巻、Bクラスに勝利後
備考
状態:健康
服装:高度育成高校の制服(男)
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~2、ホットライン
思考
基本:元の世界に戻る。恐怖に屈するつもりはない。
01:まずは仲間集め。一先ずはこの女を引き入れれたのは上出来か。
参戦時期:11巻、Bクラスに勝利後
備考
【伏黒甚爾@呪術廻戦】
状態:健康
服装:仕事用の私服
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン、100万が入ったトランクケース@現実
思考
基本:生存優先。
01:支払われた報酬分はきっちり働く
02:加茂憲倫、と来たか
参戦時期:死亡後
備考
状態:健康
服装:仕事用の私服
装備:
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0~3、ホットライン、100万が入ったトランクケース@現実
思考
基本:生存優先。
01:支払われた報酬分はきっちり働く
02:加茂憲倫、と来たか
参戦時期:死亡後
備考
- 100万が入ったトランクケース@現実
…龍園翔に支給。文字通り100万円分の札束が入ったトランクケース
この殺し合いにおいてお金の価値なんてあってないような気がするが、少なくとも金にがめつい傭兵をや糖分には役に立ったようである
この殺し合いにおいてお金の価値なんてあってないような気がするが、少なくとも金にがめつい傭兵をや糖分には役に立ったようである
候補作061:スケィス | 投下順 | 候補作068:百日草想話 |
時系列順 | ||
GAME START | 十条姫和 | 017:バトラーズ・プライド |
龍園翔 | ||
伏黒甚爾 |