保護者Lの献身 ◆imaTwclStk
さて、食事はデイバックの中に入っていた
よく分からん食べ物で不満は残るが何とか済ませた。
というより貴族である俺様が何故自分で自分の食べる物を
用意しなければいけないのだ、全く……
そこかしこで響き渡っていた音も今では収まって、
辺りは静けさを取り戻している。
こんな地獄から逃げるなら今のうちか?
チキの方は暇を持て余しているのか、
ベッドの上でバタバタと足を振っている。
「オイ馬鹿止めろ、誰かに聞かれたら如何する?
……ったく、これだから思慮の浅いガキは困るんだ」
「う~~~、だってレンツェンさっきからここから出ようともしないじゃん」
チキがふくれっ面で俺に言い返してくる。
「ば、馬鹿者! それだって周りが安全かどうか確かめるためであってな、
決して俺がビビってるとかそう言う訳ではないんだぞ?」
チキはジト目を使った。
レンツェンのプライドに100のダメージ!
「……な、何だその目は、明らかに信じてないって目はッ!
い、いいだろう。 今、俺様がビビッて無い事を証明してやる」
扉の傍に近寄って聞き耳を立てる、
周りに誰もいないことを信じて……
「トォッ!!」
言葉とは裏腹に物凄い慎重に表へと出た。
全力で辺りを見回し、本当に誰もいないかを確認する。
周囲に人影が無い事を理解すると今度は勢いよく
家の中へと流れ込む。
「ど、如何だ、俺が身を挺して周りの安全を確かめてやったぞ……
こ、これでも俺がビビッているとお前は思うか?」
チキは眠りかけている。
レンツェンの心が折れかけた!
「……良し、今だッ! さっさと準備しろガキ。
今すぐこんな所とはオサラバだッ!」
眠い目をこすり愚図るチキを急かして急いで準備を整える。
といっても、わたわたと慌てたもんだから、
かなり時間は経ってしまった。
大体半刻くらい? 俺が知るかそんな事!
だが、おかげで外は更にシンと静まり返っている。
さぁ、こんな地獄とはこれでお別れだ。
きっと朝になれば輝かしい栄光が俺を待っている。
これはそれへの第一歩なのだ。
隠れていた家からこそこそと抜け出して、
数分も経たずに足が止まる。
いや、普通にまだ居るんですけど、本当に本当にありがとうございました。
物陰からこっそりと何やらしている黒い全身鎧の騎士の様子を盗み見る。
その傍には二人の横たわる誰かの姿が見えるが
暗さも相俟って判別する事はできない。
判別しようとジッと目を凝らしていると黒い全身鎧の騎士が
こちらを振り返ったような気がして、慌てて身を隠す。
(いやいやいや、まさかこの距離でこっちに気づく訳ないでしょ?
気のせい、多分、気のせい。 そうに決まっている)
もう一度、こっそりと先程の騎士の方を見てみる。
(……あれ? こっちガン見してね?)
再び身を隠し、息を整える。
「……いやいやいや! 無いから! 見える訳無いから!
そんでもってさっきからガシャンガシャンて……
ガシャンガシャン?」
物凄い嫌な予感がするが、念のために振り返ってみるか?
①振り返る
ピッ! ニア②言われなくても、スタコラサッサだぜ!
うん、②だな。
そうしよう、それに限る。
「貴公、其処で何をしている?」
ハイ、正解は、
③残念、現実は非情である
でした、やったねッ!!
「全然良くないわぁぁぁッ!!」
「何が良くないのかは分からぬが、
命が惜しいのなら出て来て貰おうか?」
やっぱりこちらに気づいていた騎士が傍まで来ていた。
何か馬鹿でかい斧とか持ってるんですけど?
それ薪割りとかに使うもんじゃないですよね?
薪どころか大木切り倒せそうなんですけど?
「ちょ、ちょっと待て!! 話し合おう話せば分かるッ!」
いきなり攻撃とかされたんなら堪らないので、
騎士の忠告通りに姿を見せる事にする。
あくまでこっちは戦う姿勢は無いという事を示すために手ぶらで。
「……又、話し合いか」
どこかうんざりとした様子で騎士は構えていた斧を地面に付ける。
それだけで豪い響くんですけど、どんだけ重いんですかそれ?
「そうだ、ここは紳士的にいこうjy」
「貴公に戦う意思が無いのであれば早々に此処から立ち去られよ。
此処は闘争の場。 貴公のような者に居座られるのは無粋でしかない」
聞けよ、話。
一方通行ですか?
こっちがソフトな感じで投げたボールをホームランですかあなたは?
だ、だが、この申し出はありがたく受け取っておくとするか。
「わ、分かった。俺達はさっさと此処から離れる。
オイ、行くぞチキ! ……チキ?」
いない!
あの馬鹿ガキ、いつの間に!?
「チキ? それはあそこにいる娘の事か?」
騎士が視線を向けた先でチキが何やら屈み込んで何かを拾い上げていた。
何やってんだ、あいつは?
俺には興味が無さそうな騎士はすんなりと道を開けてくれた。
これはこれでかなり屈辱的だが命の方が断然惜しいので、
その斧で「
レンツェンハイマーの開き、一丁上がり!」とかされたくないので
そこは好意(?)に甘えておく。
騎士の脇を通り抜け、チキの傍まで駆け寄る。
「オ、オイ! さっさと行くぞ!
……ッて、ウォッ! 気持ち悪っ!!」
チキが屈み込んでいた場所、その周辺には肉片が散らばり、
最早誰とも判別しようが無くなった、人だった塊が落ちている。
その中でチキは大事そうに何かを抱えている。
それは何やら嫌な気配を放つ黒水晶。
「……お前、何を持っている」
俺に気づいたのかゆっくりとチキは顔を上げた。
口元にはうっすらと笑みを浮かべ、
少女とは思えぬ程に嫌な気配を漂わせながら。
チキが口を開くのと同時に嫌な気配は収まる。
気のせい……だったのか?
だが、全身から湧き立つ鳥肌と冷や汗だけは先程までの感触を覚えている。
「お、おぉ、それが闇のオーブか。
良かったではないか、
早速目的の一つは達したという事だな」
自分の中で湧き立つ嫌な考えを払拭する為にチキに手を差し伸べる。
闇のオーブは抱えたまま、チキは俺の手を取り、立ち上がる。
そこには先程までと変わらぬ姿のチキがいる。
気のせいだ、気のせいに違いない。
離れた所で騎士がこちらをジッと見ている。
いや、こちらというよりチキをか?
「貴公。 その娘、ただの娘か?」
心臓が跳ね上がる思いがした。
もしや、こいつはチキが普通の娘じゃないって気づいたのか?
まずい、こいつは俺が守らなくてはいけないのだ。
「そ、そそそそんな事、あ、当たり前ではないか!
お、お前にはこいつがいたいけな少女以外の何に見える!?」
言葉は震える。
精一杯の度胸を振り絞ってこれだ。
「……そうか、こちらの気のせいだったのやも知れぬ。
為らば、すぐに立ち去られよ」
騎士は何かに感ずいている様子だったが、
意外にもあっさりと応じてくれた。
何を考えているのかさっぱり分からん!
だが、これでもう気にすることは一つもない。
さっさとここから逃げてしまおう。
チキの手を引っ張りながら俺は騎士の元を後にする。
騎士は終始無言ながら、その視線だけはずっとチキを捉えていた。
……幼女趣味か?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
……ほんの少し前。
レンツェンハイマーが
漆黒の騎士に見つかるまでの間。
(もぅ、レンツェン何やってんの?
そっちに誰かいるならこっちから周ってけば良いのに)
そう思いながらチキは民家を周り込んでレンツェンハイマー達の
裏側から通りへと一人で出て行っていた。
丁度、その時に漆黒の騎士がレンツェンハイマーの元へと向かった為、
彼の騎士に見つかる事もせずに。
実に都合が良かった。
『おいで』
「だれ? だれが呼んでるの?」
『こっちだ』
チキは自分に呼びかける声に怯えつつもそれに逆らう事が出来ない。
ふらふらと誘われるままに声の元へと歩いていく。
『拾え』
人だった物が散らばる中で異様な光を放つオーブ。
「……いや」
『拾え!!』
(……助けて、レンツェン)
声は出せず、抵抗もままならずに震える手で闇のオーブを拾い上げる。
『フハハハハハ!! いいぞ、神竜王の娘よ!
我はガーネフ、このオーブに宿りし怨念なり!』
光のオーブも、ましてや封印の盾すら無い中で、
チキはその声の主に逆らう事は出来なかった。
暗黒司祭ガーネフ。
メディウスの側近にして、人間の破滅を望む者。
死して、尚、幾たびの復活を繰り返すその魔力は
再びチキを自分の支配化に置く為に蠢く。
『神竜王の娘よ、これよりはお前が地竜王メディウスの代わりとなるのだ』
【C-3/村の外れ/夜中(時刻変更直後)】
【レンツェンハイマー@ティアリングサーガ】
[状態]:疲労(小)、やすらぐかほり、顔面に赤い腫れ
[装備]:ゴールドスタッフ@ディスガイア(破損、長さが3分の2程度)、エルメスの靴@FFT
[道具]:支給品一式(一食分消費)
[思考]0:チキを連れてラゼリアに帰還する。手段は問わない
1:
マルスの首輪、封印の盾の入手
2:封印の盾完成まで、マルスの死は可能な限りチキには伏せる
3:武器がほしい
4:
オグマなど、(都合のいい)仲間を集める
5:あの少年(
ヴァイス)は極刑
6:
ハーディンの首輪はいらんな……チキの様子がおかしい?
[備考]:ヴェガっぽいやつには絶対近寄らない(ヴェガっぽいのが既に死んでる事に気づいてません)。
【チキ@ファイアーエムブレム紋章の謎】
[状態]:失血による軽い貧血(シャンタージュの力により回復は早い)
[装備]:地竜石@紋章の謎、シャンタージュ@FFT(一瓶すべて使用済み。瓶は破損)
[道具]:支給品一式(一食分消費)、肉切り用のナイフ(1本)、闇のオーブ@紋章の謎
[思考]1:……。
[備考]:闇のオーブに宿るガーネフの意思に支配されています。
【漆黒の騎士@暁の女神】
[状態]:健康、若干の魔法防御力向上(ウルヴァンの効果)、精神的喪失感(小)、
鳩尾に打撃痕、肉体的疲労(中)※いずれも所持スキル「治癒」により回復中。
装甲ほぼ全壊、全身が血塗れ
[装備]:グラディウス@紋章の謎、ウルヴァン@暁の女神、シャルトス(碧の賢帝)@SN3
手斧@暁の女神、エルランのメダリオン@暁の女神
[道具]:支給品一式×3、クレシェンテ@TO、アッサルト&弾薬10発分@TO、
エクスカリバー@紋章の謎、
エトナの不明支給品(確認済)、ハーディンの首輪
[思考] 1:催されたこの戦い自体を存分に楽しむ。勝敗には意味がない。
2:
アティに対して抱いている自分の感情に戸惑い。
ミカヤには出会いたくない。
3:オグマに出会ったら、ハーディンの事を必ず伝える。
4:優勝してしまった場合、自分を蘇らせた意趣返しとして進行役と主催者を殺害する。
5:碧の賢帝(シャルトス)をアティに渡し、戦いになれば全力を尽くさせる。
6:この場で少し休憩を取り、来るであろうアティを待つ。
7:娘(チキ)から異様な気配を感じるが……
[備考]:アティからディエルゴ、サモンナイト世界とディスガイア世界の情報を得ています。
鳩尾の打撃痕と肉体的疲労に「治癒」スキルが働いています。
漆黒の騎士は碧の賢帝の“適格者”が複数存在し、魔剣を濫用させて
己の復活を果たすのが主催者の目的ではないかと推測を立てています。
最終更新:2011年01月28日 15:16