Catastrophe ◆j893VYBPfU



なんとか、なりました――。


ガフおじいさんと、漆黒の騎士…。


傍でずっとハラハラしていましたが、なんとかガフおじいさんが彼を説得し…。
エトナさんを無事、取り戻す事に成功いたしました。

その方法には、確かにボクも賛同しかねる部分もありましたが。
ガフおじいさんには、ガフおじいさんなりの考えがあっての事なんだと、
ボクは信じています。


これまでも、これからも――。


おそらくは、ずっと――。


おんぶして移動した時のゆれで、エトナさんが目を覚まし。
怪訝そうに回りを見渡して――。

「あれ、あたし…。」

「ガフおじいさんが、助けてくれたんです。ボク一人では無理でした。
 …よかったですね。」

あー、そうなの?と気の抜けた返事をするエトナさん。
こうしていると、強面な普段とはまるで別人のようで。
触れ合った所から感じられる、肌の柔らかい感触と、
華奢なその身体に見合った、身の軽さもあいまって。
やっぱり年頃の女の子なんだなっ思えてきます。
でもそんな事口にしたら、ぶたれちゃうでしょうが。

「…ところであいつ、どうなったの?」

その華奢な身体と言葉の端が、微かに震えながらも。
エトナさんは、漆黒の騎士がどうなったかを聞き。

「…まだ、村に残っているはずです。ボク達は、見逃されただけですから。」

「まー、そりゃそうよね…。
 アタシで勝てないような奴に、アンタらが束になっても勝てる訳がねーから。
 生命があるだけ儲けもの、って奴か…。」

「でも、あの人案外良い人かもしれませんよ?」

理由は分かりませんが、ボクを随分と気遣ってましたし。
ボク達の為に気前よくマントも差し出してくれましたし。
ボクはその事も加えて、エトナさんに話しました。

でも、去り際のあの人は随分と寂しそうに。
ボクとはもう二度と逢う事もないとも仰ってましたが。

『そうか。だが自ら剣を取らず、戦いから逃げ出した貴殿に未来などない。』

そして、あの時のあの人の不吉な忠告がどうしても気にかかり。
まるで、ボクの全てが既に終わってしまったかのような…。
ふと、そんな事を考えていると。

「はぁ?あの黒いのがマントを?あいつが、そんな親切なわけないじゃん。
 ……あんた、変な薬でもキメてんじゃないの?」

「…え?ち、違いますっ!」

あまりにもエトナさんらしい酷い突っ込みに、ボクは動揺してしまい。
今エトナさんの背に掛かっているものが、あの人のマントだと言うのに。
何を話したらよいか、すっかり忘れてしまい。

「ま、シラフなのは間違いないンだがな?
 こいつのお花畑は元々だ。気にすンな。」

後ろのガフおじいさんが、助け舟(?)を入れてくれました。
「ありがとう」と言うべきか、「違います」と言うべきか。
少しだけ悩んでしまって足が止まり。その時に――。


「――だが、問題はな。」


「そのお花畑を、戦場にまで持ち込ンじまったって事なンだよ…。」


ふと、そんな言葉が聞こえたのと同時に。
とんっと、背中から軽く押されたような衝撃を感じ。
振り返ろうとしても、身体が縫われたように向きを変える事が出来ず。
なんとなく胸元を見てみると、何かがボクの胸から生えていました。


――良く見ると。


それは、大切なご主人様の剣の切っ先。


あ、あれ?


これは、今ガフおじいさんが持っていたものじゃあ?
でも、どうしてこれが今ボクの胸にしまってあるんだろ?


――どうして?


「ガゥぉじぃ…がぷっ…。」

ガフおじいさんに剣の事を聞こうとしても。
口から血が零れ、声が出ません。おかしいな?
急に、胸が苦しくなって、きちゃった…。

気が付けば、ご主人様の剣はもう胸になく。
ひゅー、ひゅー、と。代わりに何かが漏れ。
急に疲れて来ちゃったのか、顔から地面に倒れてしまい。
身体が、一歩も、前に、動かない…。

「てんめえええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」

すぐ後ろにいる筈のエトナさんの声が、酷く遠くに聞こえ。
目が、霞んで。声も、出ない…。

「心臓ブチ抜かれたって即死はしねえ辺り、流石は異世界のルカヴィって奴か。
 それとも、特別てめえがしぶといのか?」

そうしている内に、もう一度背中から熱いものを感じ。
ボク達は何か強い力で、地面に縫い付けられました…。

「だがな、目障りなンだよ。とっととくたばれ、このイカレポンチの糞女が。」

あれ?おかしいな…。
すぐ後ろにいる筈のエトナさんの声がよく聞こえないのに。
ガフおじいさんの声だけが、何故か酷くしっかり聞こえる。

そして――、

痛い!
痛い!
痛い!

――背中が、灼ける!

痛い!
痛い!
痛い!

痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!―――

俯いたボクの耳に、ひっきりなしに聞こえ続ける音は。
硬くて鋭いモノで、柔らかいモノを刺し続ける、不愉快な音。
口から血が溢れ、背中が穴だらけになり、暖かいモノが抜け落ち。
でもそれ以上に。唯一無事なはずの胸の真ん中が、一番痛くて、苦しくて――。
ただ自然と、涙が溢れて――。

「…ようやく逝ったか。化け物が。あと、すまンなレシィ
 首でも刎ねりゃ楽に逝かせたンだが、生憎返り血浴びる訳にもいかンからな。
 ま、苦しンでもそう長くは無かっただろ?」

ガフおじいさんが、そう言いながらしゃがんで顔を近づけ。
倒れたボクの瞳を不思議そうに覗きこみ。少しだけ、目を見開いて。

「…もしかして、まだ生きてやがンのか?」

「そうか。マント越しで刺したもンだから、二人とも急所を逸れてたのか。
 その上エトナを挟ンでいたから、お前もすぐには死ねなかったって訳か。
 すまンな、余計に苦しませて。だがな、すぐ楽にしてやる。」

…え?

そういうガフおじいさんの手には、ボク達の血でべったりとなった
ご主人さまの剣が握られており。それをもう一度、逆手に持ちかえ。

どうして?何が、どうなってこうなってるの?
どうして?ガフおじいさんがボク達を殺すの?
どうして?ボク達が死ななきゃならないの?

理解を求め、ガフおじいさんに目で訴えるも。

「お前達はな、悪辣な黒騎士(ダークナイト)に背後から剣で刺し殺されたンだ。
 他の仲間達には、そう伝えておく。」

でも、それは違います…。
だって、ご主人様の剣は、今ガフおじいさんが。
白騎士のガフおじいさんが握っているんだから。

――ボクは、貴方に。ガフおじいさんに。
ガフおじいさんに、刺されたんですから。

でも、そう考えると。
涙が零れ、悔しくて。
悲しくて、苦しくて。
胸が痛い、心が痛い。

でも、どうにもならなくて。どうしようもなくて。
ただ「どうして?」と、そんな感情しか湧かなくて。

でも、そんなボクの目を。
ガフおじいさんは正面から見据えて。

「お前達が足手纏いにしかならン事は十分に分かったからな、残念だがここでお別れだ」

はっきりと。
このボクに決別の理由を告げる。


――つまり、ボクはガフおじいさんの役には立てず…。


――足を引っ張っちゃったからこうなったんだ…。


辛うじて分かったことは、そういう事。
でも、ガフおじいさんの声は、どこか辛そうで。
でも、ガフおじいさんの顔は、どこか悲しくて。

まるで、涙を流さずに泣いているようにも見えて。
もしかすると、ボクの気付かない所でガフおじいさんが
ずっと傷付いていたから、迷惑を掛け続けてきたから…。
仕方なくこうしたんだって、思えてきて。

「ごぇん、なぁぃ…。」

「ゅぅしぇ、くぁさぃ…。」

ボクは上手く回らない舌で、精一杯の謝罪をする。
でも、ガフおじいさんは哀しそうな顔から、急に。
ボクを鬼のような顔で睨み付け…。

「てめえを殺った人間に謝る馬鹿が何処の世界にいるンだッ!
 たとえオレにどンな事情があったとしてもだなッ!
 てめえにとっちゃオレは、犬畜生にも劣るクズなんだぞッ!
 そんなお人好し過ぎるからお前は、こんな所で殺られるんだッ!
 てめえの身に起こった理不尽を呪えッ!憎悪を抱いて逝けッ!
 …ふざけんなッ!てめえも立派な男なンだろうがッ!」

「ごぇん、なぁぃ…。」

ボクはただただガフおじいさんに謝り。
ガフおじいさんは、一つ大きな溜息を付き。

「もしお前にも“次”があったとしたらな、今度はもっと冷酷になれ。
 オレからの、最期の助言だ。あと、何か言い残した事はあるか?
 折角だ、遺言くらいなら聞いてやる。」

これまでに見たことがない真剣な表情で
ボクに囁きかけ。それにボクは――。

「ごぅじんさぁを、ころぁぁぃで…。」

胸から漏れる息を掻き集めて、たとえ短い言葉でも。
ガフおじいさんに伝わるように。
思いを込めて。

「ごぅじんさぁを、まもってくぁさぃ…。」

護衛獣としてのボクの務めを。
たった一つのボクの願いを、ガフおじいさんに託し。
でも――。

「悪いな、オレは傭兵だ。雇われン限り約束は出来ンよ。」

「だったぁ、なんぇぉしはぁぃまぅかぁ…。」

でも、ガフおじいさんはボクのお願いを聞いては貰えず。
でも、ボクはどうしてもお願いを聞いて貰わなきゃならず。

「オレはな、報酬は貨幣(ギル)でしか受け取らン主義なンだ。
 だからな、レシィ。お前じゃオレは雇えねえ。諦めな。」

でも、やっぱり…。
ガフおじいさんは、ボクの願いを…。

ああ…。やっぱり…、ダメなんだ…。
ご主人様…、みんな…、ごめんなさい…。
レシィはもう…、お役には…立てないようです…。

「ごぇん、なぁぃ…。」

ボクはただ、情けなくて。皆にお詫びしたくて。
誰にも聞こえないのに、ただ謝りたくて、謝って。

そうしていると、いつの間にか痛みも何も感じなくなって。
ボクはいつの間にか、意識を手放していました…。


          ◇          ◇          ◇


「…逝ったか。馬鹿野郎が。」

オレはレシィの目からも完全に光を失った事を確認すると、
念入りに血振るいを行い、毟り取った漆黒の騎士のマントで拭く。
これらは、血塗れの辞書と共に、途中の森の中にでも埋めておこう。
この場で燃やしてしまうには、水分を吸い過ぎている。
効率が悪い事おびただしく、ここであまり時間はかけられン。
あまりぐずぐずしていると、目撃者を出す可能性もある。
それがあの漆黒の騎士なら、目も当てられン。

オレはレシィのデイバッグから指輪とサモナイト石のみを取り出して懐に入れ。
エトナの左側のおさげから髪留めのみを取り、こちらは遺品として預かる。
これで、仕掛けは盤石となった。

『エトナと漆黒の騎士が交戦状態になり、エトナが圧倒されていた。
 オレとレシィがエトナを救助して逃走、近くで応急手当を施したものの。
 結局は再発見された揚句剣を奪われ、追い付かれ背中から刺殺された。
 オレはエトナの遺品を回収して逃走するだけで、背一杯だった。』

――こう伝えれば良い。
漆黒の騎士は、このゲームに乗っている。戦いに飢えている。
あいつの腰には、今“碧の賢帝(シャルトス)”という凶器がある。
おまけにあいつは、至近距離から大量に血を浴びたかのような姿だ。
まるで二人にのしかかり、背後からメッタ刺しにしたかのように。

――動機、凶器、状況証拠。

いずれもが完璧に揃っている。
そして、ウィーグラフ達は“碧の賢帝(シャルトス)”については、何も知らない。
その上、漆黒の騎士はレシィがこうなる事を知った上で、あえて見逃した節がある。
二人の殺害に気付いた所で、冤罪を晴らすどころか喜んで濡れ衣を着る事だろう。
――己自身が、充実した修羅道を満喫するために。

ならば、オレに嫌疑が掛かる余地は何一つないわけだ。
無論、二人を救えずおめおめと一人逃げ帰った事についての糾弾はあるだろうが。
異世界のルカヴィを圧倒する化け物の相手だ、情状酌量の余地くらいはある。
だが、支給品袋のチェック程度はあるかもしれない。
ならば、不審に思われそうなものは、それまでに処分した方がいいだろう。

本来は隙を見てエトナのみを殺り、レシィだけは救うつもりだったのだが…。
あそこまで救えないとなれば、纏めて殺すしかなくなった。

「役立たず、足手纏いは斬り捨てる。」

オレは傭兵として当然の行為に及ンだ。
ただ、それだけの話だった。

オレは残りを放置すると、この村はずれを後にした。
後にはただ、“血塗れの排泄物”が残るのみである。

――だが。ふと思う。

オレらしくもねえ。こうまで感情的になっちまうなンてな。
おまけに、死人に説教なンぞ糞の役にも立たンってのに。

結局は、あいつに感化されている部分があったって事なンだろう。
だが、それもたった今あいつごと斬り捨てた。
あの説教も、その為に必要な儀式だったと解釈する。

そして、今のオレには如何なる枷も瑕疵も存在はしない。
悪辣なる黒騎士(ダークナイト)に立ち返る。

音を殺し、気配を殺し、心を殺す。
敵を殺し、味方も殺し、人を殺す。
全て殺して己を活かす。

華もない、雅もない、誉れもない。
ただ生き延びる術に特化した傭兵。


――だが。


そうまでして生き延びた先に、果たして何の意味があるのかと?


ふと、そんな一ギルの得にもならン世迷い言が。
僅かにオレの頭をよぎった…。


【エトナ@魔界戦記ディスガイア 死亡】
【レシィ@サモンナイト2 死亡】
【残り32人】


【C-3/村の外れ/1日目・夜(臨時放送直前)】
【ガフ・ガフガリオン@FFT】
[状態]:健康
[装備]:絶対勇者剣@SN2、天使の鎧@TO、ゲルゲの吹き矢@TO、
    死者の指輪@TO、(血塗れの)マダレムジエン@FFT、漆黒の騎士のマント
    サモナイト石[無](誓約済・詳細は不明)@SN2or3
[道具]:支給品一式×2(1/2食消費) 生肉少々、アルコール度の高い酒のボトル一本、
    エトナの髪留め一つ
[思考]:1:どんな事をしてでも生き延びる。
    2:まずはラムザと赤毛の女(アティ)を探して情報収集。邪魔者は人知れず間引く。
    3:ラハール・アグリアスには会いたくない。
    4:中ボス達には、「レシィとエトナは漆黒の騎士に殺害された」と伝える。
    5:漆黒の騎士を警戒。当面は厄介者同士を噛み合わせる事に利用する。
    6:“碧の賢帝(シャルトス)”と主催者との繋がりに興味。
    7:合流予定地に向かうまでに、漆黒の騎士のマントとマダムジエレンは処分する。
[備考]:死者の指輪とサモナイト石は自分の懐に隠してあります。


          ◇          ◇          ◇


戦場跡から残された武具類を全て回収し。
濃厚な血臭を頼りに村の外れに向かえば。

――そこには、やはり懸念した通りの光景が広がっていた。

噴出した鮮血が周囲を無秩序に穢す事無く、ただ真下にのみ広がり。
死体の浮かべる表情は、一人は憤怒の形相に、一人は絶望と悲哀の表情に。
そして、残り一人は姿が見えず、何者かと争った形跡もまるで見当たらず。
そこから推測される行為は、もはや考えるまでもない。

私は既に目から光を失った二人の目を閉ざし、そして腕を組ませる。
そこには、私のマントはなかった。おそらくはあの騎士が好きに使ったのだろう。
後には中身のある支給品袋と、二人に首輪がまだ残されてはいたが。

私はその残りすら取り上げ、二人の首級を上げる気にはならなかった。
こちらに向かう直前に、キュラーと名乗る者の放送があったにも関わらず。

ここで行われた行為は、誉れある戦闘ではなく。
ただ足手纏いを斬り捨てた、陰惨な殺戮である。

それが只、不愉快であり。
彼らから首輪を奪うという行為に、死者に鞭打つ浅ましさを感じたが故に。

私はどう堕ちようとも騎士であり。
生命は何度捨てられようとも、その矜持だけは決して捨てられず。
唯一の私の居場所である、戦場を自ら穢す事だけは決して出来ず。

――だが。

近い未来に起こる危険を、把握しておきながら二人を見殺しにした者を。
己のみの戦い(よくぼう)の為に、結局は二人を生贄に差し出した者を。
果たしてそれが騎士の行為だと言い切れるのだろうかと。

『ふふ…。騎士とは…、…るべき者…あって……もの。
 そうでな…れば、騎士は………人殺し…。』

ふと、そんな疑問と。
己が手に掛けた好敵手の言葉が、何故か頭をよぎった。

だが、今更過ぎた事を思い悩んでも無駄な事だろう。
生前に為した所業を思えば、決して他の誰とも相容れる事はないのだから。
どちらにせよ、この惨劇を回避する術はなかったのだ。

ならば、もう思い煩う必要はない。
漆黒の騎士は、漆黒の騎士らしく。

世に二度の戦乱をもたらし、全ての国を裏切った間諜として。
ただ主の為に、障害となる者を排除し続けた黒き騎士として。
梟雄らしく、不敵かつ悪辣に振舞う事しか出来ぬのだ。
テリウスでの生が、まさにそうであったように。

そして、己のような悪しき存在であっても。
私のような喧伝の為に捏造された紛いものの英雄ではなく。
アイクのような、真の英雄を生み出す試金石とでもなれば。

それでもう、充分ではないかと?
これ以上、何を求めるというのだと?


――私は込み上げる雑念を、今一度振り払った。


私は、碧の賢帝(シャルトス)を握りしめる。
案の定、この剣が抜けるという事はなかった。
私は、適格者の器には程遠い…。むしろ、対極に位置する存在なのだから。

これが、アティ殿から聞いた通りの魔剣であるというなら。
適格者を自ずから呼び寄せ、抜き放つ者を生贄として食い潰し。
最期には身体を奪い、完全なる“復活”を果たさんとするだろう。
おそらくは、ディエルゴとやらもそれが望みで
この殺し合いを主催したのかもしれない。

ならば、他の世界からも“適格者”という名の生贄の代替を揃えた可能性は充分にある。
私が知る参加者達の中にも、彼女と似た心の持ち主であり、
“適格者”たりえそうな銀髪の女性を一人知るが故に。

もし、アティ殿が碧の賢帝(シャルトス)の存在がすぐ近くにある事を知れば?
他の適格者候補の手に渡さぬよう、一刻も早く手に入れようとするだろう。
その危険性を最も良く知るのが、人の良過ぎる彼女である以上。

何も知らずに抜き放つには、余りにも危険が過ぎる剣であり。
その上、適格者達が剣を濫用せざるを得ない環境としては、
この殺し合いは最適の環境なのだから。

――つまり、これを持つ以上。

彼女が生きている限り、彼女が想像通りの人格である限り。
私との衝突は避けられぬ事態となるだろう。
私の見立て通りだと、アティ殿が本来の強さを発揮すれば、
先程の飢えた野獣程度、たとえ何人いようが相手にもならぬだろうから。
放送で彼女が呼ばれた事もなかった以上、まず生存していると見るべきである。
ならば、どこにいようが魔剣が彼女を呼び、遠からず再会する運命となる。
それが、一体何をもたらすのか?

――宿命ありき、か。

主催者の力すら御し、なおかつ私に技量は比肩しうる剣士との会合。
それは戦人としてのこの私を、この上無く心騒がせるものである。
だが何故か、同時に――。

胸を裂かれるという以外に、たとえようがない…。
心の疼きのようなものを感じさせた…。


【C-3/村の外れ/1日目・夜(臨時放送後)】
【漆黒の騎士@暁の女神】
[状態]:健康、若干の魔法防御力向上(ウルヴァンの効果)、精神的喪失感(小)、
    鳩尾に打撃痕、肉体的疲労(中)※いずれも所持スキル「治癒」により回復中。
    装甲ほぼ全壊、全身が血塗れ
[装備]:グラディウス@紋章の謎、ウルヴァン@暁の女神、シャルトス(碧の賢帝)@SN3
    手斧@暁の女神、エルランのメダリオン@暁の女神
[道具]:支給品一式×3、クレシェンテ@TO、アッサルト&弾薬10発分@TO、
    エクスカリバー@紋章の謎、エトナの不明支給品(確認済)、ハーディンの首輪
[思考] 1:催されたこの戦い自体を存分に楽しむ。勝敗には意味がない。
    2:アティに対して抱いている自分の感情に戸惑い。ミカヤには出会いたくない。
    3:オグマに出会ったら、ハーディンの事を必ず伝える。
    4:優勝してしまった場合、自分を蘇らせた意趣返しとして進行役と主催者を殺害する。
    5:碧の賢帝(シャルトス)をアティに渡し、戦いになれば全力を尽くさせる。
    6:この場で少し休憩を取り、来るであろうアティを待つ。
[備考]:アティからディエルゴ、サモンナイト世界とディスガイア世界の情報を得ています。
    鳩尾の打撃痕と肉体的疲労に「治癒」スキルが働いています。
    漆黒の騎士は碧の賢帝の“適格者”が複数存在し、魔剣を濫用させて
    己の復活を果たすのが主催者の目的ではないかと推測を立てています。

[共通備考]:漆黒の騎士がハーディンとエトナのデイバッグと手斧を回収しました。
      村外れの二人の死体のすぐ傍に、レシィのデイバッグがあります。
     (支給品のみガフガリオンに抜き去られてます。)

118 Bloody Excrement 投下順 119 arcana(前編)
118 Bloody Excrement 時系列順 111 再会、そして…
118 Bloody Excrement 漆黒の騎士 121 保護者Lの献身
118 Bloody Excrement エトナ
118 Bloody Excrement レシィ
118 Bloody Excrement ガフガリオン
最終更新:2011年07月21日 09:11