蒼炎の勇者、立つ
後悔の瞬間、失望の瞬間、絶望の瞬間。
その瞬間は近付いている。
刻一刻と、近付いているのだ。
この場で会った者の死、元の世界の仲間の死を知らせる放送が。
すぐそこに、今まさに始まろうとしている。
『――諸君、これから第一回目の放送を始める』
アイクはその声を聞き、閉じていた目を開く。
その声は
ヴォルマルフ当人の声だった。
間違えようもない。
流れてくる声に感情はまったくと言っていいほど感じ取れなかった。
そしてすぐ、その無感情な声が流れる。
『まずは禁止エリアを発表する。
――B-4、E-4、F-8
以上の三箇所だ。現在地が該当エリアの者は速やかに移動をせよ。
ゲームを盛り上げるためにも、つまらん死に様は曝さなぬようにしてもらいたいのでな』
「…どれも遠い…か」
あえて注意するなら、F-8だろう。
地図に何か印を書こうにも何もない。
アイクは少し考える。
少しだけ時間を置き、アイクが何かを考え付いた素振を見せる。
そこでアイクが取った行動は…。
「穴を開ければいいか」
指で禁止エリアの部分に穴をあけた。
ちなみにここは宿舎なので探せば筆記具はあるはずなのだ。
しかし、そこまで頭が回らなかったのだろう。
『続いて、ゲーム開始からこれまでの死者の発表をする。』
その声を聞いて、アイクは再び放送に耳を傾ける。
自分の仲間、そして
リチャードの安否を知るため。
呼ばれた、これにはさすがのアイクも動揺を隠せなかった。
シノン、彼がどう死んだかは分からない。
自分から挑発して殺されたのか、武器もなく追い詰められ殺されたのか、分からない。
アイクは、シノンを殺した奴に対して少なからず怒りが芽生えてしまう。
放送は続く、名前が続けて呼ばれる。
『リチャード』
その名前が出た時、アイクは一瞬後悔した。
もしも、あの時折れずに無理をしてでも戦えばリチャードは助かったかもしれない。
そんな事を考えてしまう。
だが、この考えはリチャードの勇気への冒涜だ。
あいつは俺を助けてくれた。
俺の大事な仲間なのだ。
『以上、11名。開始から12時間で約1/5の死者――なかなかだ。このペースでゲームに努めてもらいたい』
アイクはその言葉を聞いて無言だった。
それは、仲間を殺した者への怒りか。
リチャードを助けられなかった非力さを痛感しているのか。
今まで無感情に話していたヴォルマルフが笑った事による違和感か。
『失ったものは戻ってこない、と思っている者に一つ教えてやろう。ゲーム開始前に言ったことは覚えているな?
優勝者には望むままの褒賞が与えられる、と。それに例外はない――たとえ死した者を蘇らせることでも、だ』
アイクは眼を閉じ、考える。
他の奴をリチャードの二の舞にさせたくない。
自分のために死んでいった、彼。
もう、油断はしない。
俺は……。
『これにて
第一回放送を終了する。さあ――殺し合いを再開せよ』
この声と共に、彼は歩き始めた。
放送が終わり、決意を改めた彼に一つ雑念が浮かぶ。
(ああ―――――肉が食いたいな…)
【H-7/城内の兵宿舎/一日目/夕方(放送直後)】
【アイク@暁の女神】
[状態]:全身にかすり傷・左肩にえぐれた刺し傷・右腕に切り傷(全て応急処置済み)
貧血(軽度)。
[装備]:エタルド@暁の女神
[道具]:支給品一式(アイテム不明、ペットボトルの水一本消費、地図は禁止エリアに穴が開いている)、応急措置用の救急道具一式
[思考] 1:『蒼炎の勇者』として、この場で為すべきことを為す。
(テリウスの未来の為、仲間と合流しゲームを完全に破壊する)。
2:主催と因縁がありそうな者達(ラムザ・アティ)と合流し、協力者と情報を得たい。
3:リチャードとシノンの死体を見つけ次第埋めてやる。
4:
漆黒の騎士に出会ったら?
5:今度
ネサラに出会った場合は、詳しく事情を問い詰める。
6:あの石化した少女は余裕があれば対処する。
7:出来れば、肉が欲しい。
最終更新:2012年07月29日 23:52