15代目 2006/12/03(日)
レイナ「エルマー! 返事をして!」
ゼラド「校門の前でシステムダウンしてるのを見つけたんだ」
アイミ「その、エルマさんの容態はどうなの?」
ルナ「故障自体は大したことないぞ。起動回路の接触が少し悪くなっていただけだ。
なにかショックを受けた拍子にシステムがダウンしただけだろう」
ゼラド「エルマさん、けっこう旧式だからねぇ」
ルナ「これなら、少し修理すれば治るぞ」
レイナ「でも、エルマをこんなにした犯人は許せない!
絶対に犯人を捕まえて見せる。エルマの娘と呼ばれた、このあたしのプライドにかけて!」
ルアフ「ねぇレイナ。もっと身近に、賭けるものがあるんじゃないかい?」
レイナ「小学生のときに書いたこの、
あたしと母さんとエルマで『わたしのかぞく』って題した絵にかけて!」
ルナ「レイナよ、お前は事件より先に解決すべき問題があるのではないか? 主に家庭内で」
レイナ「え? あたしの家庭はいたって平穏よ。
変な居候が三杯目をそっと出さない以外」
ルアフ「うわぁぁぁんっ!」
レイナ「まずは事件の経緯をまとめてみましょう。
エルマが『ちょっと出てくる』といってあたしんちを出てったのが午後4時ころ。
そのまま、7時を過ぎても帰ってこないから、心配になって探しに行ったの」
ゼラド「わたしが学校のプールから出て校門に行ったら、システムダウン状態のエルマさんが落っこちてたんだよ」
レイナ「こんな時期にプール?」
アイミ「温水プールよ。なんかゼラドは泳ぎたかったみたいで、あたしの水泳部の練習に混ざってたんだ」
ルナ「そこにわたしが通りがかったわけだが」
アイミ「そのあとに、着替え終わったあたしが来て、レイナに連絡入れたんだ」
ルアフ「あれれ~。これ、なんだろぉ~?」
レイナ「うるさい。なによこれ、寄こしなさい。
銀色の髪? 読めたわ。これは手がかりよ。つまり、犯人は銀髪の持ち主!」
レイナ「銀髪が多すぎる!」
ゼオラ「お母さんは出張中でいなかったんだけど」
レイナ「ま、いいわ。まずは髪質から見て容疑者を絞り込んでいきましょう」
アイミ「レイナ、よしなよ。友達を容疑者呼ばわりするなんてよくないよ」
レイナ「細い髪の毛ね。これは、男のもんじゃないわね。
よって、ゴワゴワ髪のゼフィアとハザリアは除外と見ていいでしょう」
ゼフィア「疑いが晴れてなによりだ」
ハザリア「変形合体もしないロボなど、なんの興味もないわ」
ゼラド「あれ、お兄ちゃんは?」
レイナ「なんですかクォヴレーさん、この細くてサラッサラの銀髪は!?
なんかトリートメントでもしてるんですか!?」
クォヴレー「いや、べつになにもしてはいないが」
レイナ「ある意味犯罪ですよ、これは!」
レイナ「もう少し詳しく見てみましょ。
・・・そうね、表面が、ちょっと荒れ気味だわ。
まずは第一発見者であるゼラド!」
ゼラド「ちゃんと手入れしてるよー? 卵の黄身とかで」
レイナ「昭和かよ!」
レイナ「ルナは・・・、これまたサラサラだわツヤツヤだわで、なんか腹が立ってくる髪の毛ね」
ルナ「椿油を使っておるからの」
レイナ「平安かよ!」
ゼラド「荒れた銀髪の人なんかいないみたいだね」
レイナ「いいえ。読めたわ。おそらく犯人が現場に髪の毛を落としていったのはわざとなのよ。
犯行後、髪の毛にトリートメントを施して、疑惑が他の人に行くように仕向けた!
・・・おそろしく狡猾な犯行だわ」
ルナ「そんな手の込んだこと、するものなのか?」
ルアフ「レイナぁ~。バカな子ほど可愛いよぉ~」
レイナ「つまり犯人は、ここ数時間で美容院に行った人物! 調べればすぐにわかるわ!」
ゼラド「えぇと、レイナ、ゴメン」
レイナ「なに、自白!?」
ゼラド「犯人、わかっちゃった」
レイナ「えぇっ!?」
ゼラド「まずは、この髪の毛をよく見て。
まったくの銀髪じゃなくて、根本の方にうっすら色が付いてる。
これ、生まれつき銀髪の人のじゃないよ」
レイナ「じゃ、犯人は髪の毛を染めてる?
でも、銀髪に染めてる人なんて」
ゼラド「染めてるんじゃないよ。この荒れ方を見ると、色が抜けちゃってるんだと思う」
ルアフ「あ、なるほどぉ。懐かしいな。僕も昔、オキシドールやなんかで脱色して、
ムラのある色になっちゃってたもんだ」
レイナ「さらっとキャラデザインに関わるようなこといわないでよ!」
ゼラド「でも、いまどき髪の毛がこんなに荒れちゃうやり方で脱色する美容院なんか考えられないでしょ?
たぶん、この人は自分でも気付かないうちに髪の毛が何本か白くなっちゃってたんだよ」
ルナ「本人が気付かないうちに脱色されることなど、あるのか?」
ゼラド「えぇと、それは、その・・・」
アイミ「もういいよゼラド。あたし、自分で名乗るから」
レイナ「アイミ、あんたがなんで?」
ルアフ「なるほどぉ。プールの塩素剤で脱色されちゃってたわけか。
にしても、これはちょっとひどいな。ゴワゴワだし、何本か白とか金になっちゃってるし。
女の子なんだから、ちょっとは気にしたほうがいいよ」
アイミ「エルマさんにも同じこといわれたの。
ゼラドと一緒にプールから出たあと、あたしは先に着替え終わって校門に出てた。
そこでエルマさんに会ったんだ。
そしたらエルマさん、『髪の毛が荒れてるから、ちょっとトリートメントした方がいいですよ』って・・・。
そういうの、自分で分かってても他人からいわれるとムッとするでしょ。
思わず手で振り払ったら、打ち所が悪かったみたいで」
レイナ「それは、エルマもちょっと悪いけど」
アイミ「名乗り出ようとは思ったんだけど、なんだか話がどんどん大きくなって、
タイミングを失っちゃってたんだ。ゴメン」
レイナ「ま、ね。大騒ぎしちゃったあたしも悪いんだけど」
ゼラド「でも、罰は必要だよね!」
ルナ「ゼラド、なにをいい出すか!」
ゼラド「アイミちゃんは、今後きちんとトリートメントすること! これが罰だよ」
ルナ「フム。では、みんなで選んでやるとするか」
ルアフ「えぇと、みんなぁ、エルマくんは、このままなのぉ~?
・・・ねぇエルマくん、今日はなんだか、ちょっぴり君と仲良くなれそうだよ?」
アイミ「ねぇゼラド、いつからわかってたの?」
ゼラド「ゴメン。わりと最初から。
だってアイミちゃん、いつもわたしより着替え早いでしょ?
なのに今日はわたしより遅かったから、なにかあったのかなぁって」
アイミ「あたしが名乗り出るのを待っててくれたんだ。ごめん。
タイミングを失ったなんていったけど、あたし、ほんとは名乗り出るのが怖かったんだ」
ゼラド「そんなこと、いいじゃない。
さ、行こ! ゼフィア先輩んちで自家販売してる、
マシンセル配合のトリートメント剤がいいって評判だよ!」
最終更新:2009年10月17日 11:33