15代目 2006/12/24(日)
居間
キャクトラ「これやこの~行くも帰るも~」
ゼラド「はいっ!」
ルナ「うむぅ、ゼラドは強いの」
レイナ「なんでクリスマスに百人一首やってるのかしら?」
イングレッタ「そこのクネクネ前髪。シャンメリーをあけなさい。
もちろん、充分振ってから栓が顔面に向くようにね」
ヴィレアム「わかったよ若い母さん。
その前に、俺、ちょっと」
ガチャッ
ディストラ「みなさん、ケーキですよー」
ヴィレアム「うああぁぁぁっ!」
クヴォレー「どうしたっ!?」
2階の部屋
キャクトラ「おぉ、友よ、これはどうしたことだ!
絹に似た白さ持つ膜が敷き詰められた上に、
青色の海藻に似た髪を、ゆらゆらゆらゆらとうねりながら広げて・・・!
なんと背徳的な、なんとワカメタル的な!」
レイナ「なんに対する背徳なのよ。
ぶち撒けられたケーキの上にヴィレアムがぶっ倒れてるだけでしょ?」
ルナ「しかし、ケーキならさっきディストラ殿が持ってきていたではないか。
なぜこの部屋にもあるのだ?」
ゼラド「ペロッ
間違いない。これはワタシダ堂のケーキ! 今日のために前々から予約していたものだよ!」
ルナ「なんと、舐めただけでわかるとは」
キャクトラ「床に落ちたものは舐めない方がいいですよ」
クォヴレー「待て。それでは居間にあるケーキは・・・。
いかん、みんな、あのケーキに触れるな! すり替えられたものだ。有害な仕掛けがされている可能性がある!」
ルナ「しかし、誰がケーキをすり替えたのだ?」
クォヴレー「警戒しろ。何者かが侵入しているかもしれない」
イングレッタ「それはないわ。小一時間ほど玄関の前に立たせておいた
アストラナガンに確認した。
この家に新しく入ってきた人間は一人もいない」
ルナ「アストラナガンに小一時間もなにをさせているッ!」
イングレッタ「そんなもの、道路に置いておいたら路駐で切符切られるからに決まってるじゃない」
ルナ「まず、家の中に入れてやるという選択肢はないのかッ」
イングレッタ「機動兵器ごときに屋根なんて、不相応だわ」
ディストラ「えぇと」
キャクトラ「では、この家の中にいる誰かがケーキのすり替えを謀ったと?」
ルナ「どうせまた、ゼラドがケーキを丸々独り占めしたくて
ケーキを別室に隠したのではないか?」
ゼラド「そんなことしないよぉ」
クォヴレー「いや、ゼラドはずっと居間で百人一首をやっていた」
ゼラド「ヴィレアムくんが出てったあと、レイナも出てったよね?」
レイナ「なによ、あたしを疑ってるの!?」
キャクトラ「私は読み手を務めていましたから、ずっと居間におりましたが」
イングレッタ「そこの見た目OLの娘が出て行ったあと、ファザコン娘が出て行くのを見たわ。
白状するなら今のうちよ」
ルナ「あれは飲み物を取りに行っていただけだ!
お主こそ、わたしが戻ったときには姿が見えなかったぞ!」
クォヴレー「よさないかお前たち」
ディストラ「私はキッチンにあったケーキを運んだだけですが」
ルナ「わたしがキッチンに行った時点では、すでにすり替えられていたのとおなじケーキが
テーブルの上に載せられていた」
クォヴレー「考えられるのは、そうだな。
おそらく、犯人はヴィレアム自身だ。
すり替えたケーキを別室に隠しておこうとして、足を滑らせて倒れた・・・」
ゼラド「待ってお兄ちゃん。犯人、わかっちゃった!」
クォヴレー「なにっ!?」
ゼラド「まずは、ヴィレアムくんの状態を見てみて。
ケーキの上に倒れてる。ケーキを持っていて足を滑らせたなら、こうはならないよね?
ヴィレアムくんが二階の部屋に入った時点で、ケーキはすでにぶち撒けられていたのよ」
クォヴレー「それでは、ケーキのすり替えとヴィレアムが倒れているのは別件だと?」
ゼラド「居間を出て行った人は何人かいたけど、全員ヴィレアムくんが出たあとだったよね。
そして、キッチンにはすり替えられたケーキがあったことをルナちゃんが確認してる」
ディストラ「もういい! ごめんなさい。ケーキをすり替えたのは私です。
隠したときに床に落としてしまって、あとで片付けようと思っていたのですが」
クォヴレー「ディストラ、お前」
ディストラ「お許しください。クリスマスにはワタシダ堂のケーキを頼むと聞いたとき、
わたしはたまらない嫉妬に取り憑かれたのです。
ワタシダ堂のケーキが素晴らしいことはわかっているんです。
でも、わたしのケーキだって負けてない!
それに、ご主人さまには、わたしの作ったケーキを食べていただきたくて・・・」
クォヴレー「頭を上げろディストラ。
済まなかったな。正月には、お前が作ったケーキを食べよう」
ディストラ「ずるいお方! そんなこといって、正月には餅つきをする気が満々のくせに・・・!」
ルナ「しかし、ヴィレアムがこの部屋に入っていったのは、なぜなのだ?」
ゼラド「誰かに呼び出されたのよ。
呼び出したのはあなたね、イングレッタちゃん」
イングレッタ「フフ。なぜそう思うのかしら?」
ゼラド「だって、ヴィレアムくんはイングレッタちゃんをなぜか『若い母さん』って呼んでて
親の言いつけを聞くみたいにイングレッタちゃんのいうこときくから」
イングレッタ「フフ。ご明察。パーティを盛り上げる仕掛けを渡そうとしたのよ」
ゼラド「そういえばレイナ、今回は静かだったね。
いつも事件が起こったら、お父さん譲りの推理力を発揮しようとするのに」
レイナ「なにいってるのよ! あたしは、そんなもの受け継いでいないからっ!」
ヴィレアム「・・・なぁ、なにがあったんだ? 頭が痛くて、なんだかよく思い出せないんだが」
レシタール家
イングレッタ「や」
レイナ「なぜいるのよ」
イングレッタ「ソーメンが食べたいからよ。この季節になると、なかなかコンビニに置いてなくてね」
レイナ「ちっ!」
イングレッタ「さしものゼラドも、クネクネ前髪を呼び出したのがあなただとはわからなかったようね。
それで、なんの用があったのかしら?」
レイナ「ハイハイ! 細切りにした卵焼きとハムも付けさせていただきます!」
イングレッタ「メリークリスマス」
レイナ「うるさい!」
最終更新:2009年10月17日 11:33