ゼラド消失


22代目スレ 2008/01/28(月)

 【朝 路上】
ヴィレアム「う~ん、いつも通りの朝のはずなんだけど、なんだか違和感があるなあ。
 なんだろう?」
ミナト「おうヴィレアム、おはよう」
ヴィレアム「ああ、おはよう」
女の子「おはようございますアル」
ヴィレアム「うん、おはようございますアル」

ヴィレアム「えっ!? えぇ~っ!?」
レイナ「おはよ。なに朝から騒いでるの」
ヴィレアム「いまっ! いまっ! ミナトの横に女の子が! しかも語尾が『アル』って!」
レイナ「そりゃいるわよ。ミナトのカノジョだもん」
ヴィレアム「そんなっ、いつの間に!? しかも語尾が『アル』って!」
レイナ「いつの間にって、半年くらい前からいるじゃない」
ヴィレアム「俺は知らないぞ! しかも語尾が『アル』だし!」
レイナ「リーさんの姪っ子さんだもの。そりゃ、語尾に『アル』くらい付けるでしょ」
ヴィレアム「誰だよリーさんの姪っ子って! 語尾に『アル』付ける理由になってないじゃないか!」

ヴィレアム「そうだ! なにかおかしいと思ったら、ゼラドだ!
 家を出たとき、バランガ家を見なかった!」
レイナ「ゼラチン? ちょっと、なにいってるの?」
ヴィレアム「お前こそなにいってるんだ! ゼラドだよ! ゼラド・バランガ!」
レイナ「ああ、人の名前なの? 最近引っ越してきたひと?」
ヴィレアム「違う! うちの隣りに住んでる!」
レイナ「寝ぼけてるの? あんたのうちの隣は、空き地じゃない。
 ちっちゃいころ、よくかくれんぼしたものよねぇ」
ヴィレアム「どういうことだ? ゼラドが、いや、バランガ家が存在していない!?」


 【学校】
ハザリア「ゼラド・バランガ? 誰だい、それは。カワイイ子かい?」
ヴィレアム「いや、誰だお前」
ルナ「もーっ、ハザリアぁ、浮気はダメぇーっ!」
ヴィレアム「お前も誰だぁーっ!?」
ハザリア「おいおい、いくら君でも、俺の可愛いルナを『お前』呼ばわりはヒドイじゃないか」
ルナ「いつも仲良し、ルナとハザリアじゃない!」
ヴィレアム「キャクトラ! キャクトラはどこに行った!?」
ルナ「キャク・・・・・・? それ誰」
ヴィレアム「誰って、お前たちのボディガードじゃないか!
 キャリコさんとスペクトラさんの息子の!」
ハザリア「ヘンなこというなぁ、君は。
 そりゃあのふたりは仲良しだけど、兄妹みたいなものじゃないか」
ルナ「バルシェム同士で子供なんかできるわけないじゃなーい」
ハザリア「だいたい、ボディガードなんかいらないもんなー。
 ルナには俺がいるもんなー?」
ルナ「ねーっ」
ヴィレアム「ハザリアっ! お前、マリはどうした!?」
ハザリア「マリ? ああ、リュウセイ・ダテの娘だね。
 いつも姉だか妹だかと一緒にひっそり生きてる」
ルナ「ちょっと、ハザリアぁ~?」
ハザリア「ん~、初いやつ、初いやつ。
 心配しなくても、リュウセイ・ダテとの禍根など、父上の代で昇華しているよ」
ルナ「んもーっ!」
ヴィレアム「ちょっと待て、じゃ、お前、演劇はどうした!?」
ハザリア「なにいってるんだいヴィレアムくん。
 虚構を見てちゃダメだよ。人間は現実を見つめなくちゃぁ」
ヴィレアム「とりあえず君付けをやめてくれ! 虫唾が走る!」

ヴィレアム(そういえば、ハザリアは小さい頃、チョコレート製巨大アルマナ様立像を
 平らげてるゼラドを見て恐怖したって聞いたことあるな)

ルナ「ハザリアハザリア、あ~ん」
ハザリア「あ~ん」

ヴィレアム(つまり、トラウマのないコイツは正真正銘ただのアホってわけか。
 なんか、おそろしくキモい口調になってるし。
 ダメだ! こいつは役に立たない!)


 ガラッ
ヒューゴ「おいイェーガー、なに立ってるんだ。
 ホームルーム始めるから、席に着けぇー」
ヴィレアム「ヒューゴ先生? なんで、ラミア先生は!?」
ヒューゴ「おいおい、なにいってるんだ、イェーガーは。
 お前の担任は、ずっと俺だろう?」
ヴィレアム「じゃ、B組は!? B組の担任は誰が!」
ヒューゴ「ゾンビ兵じゃないか」
ヴィレアム「ウソだぁーっ!」
ヒューゴ「イェーガー、いい加減席に着け。
 カミさんが産休中だからって、あんま先生をからかうな」
ハザリア「せんせーい! お子さんはいつ生まれるんですかぁー?」
ヒューゴ「オイオイ、焦らせんなよ。ミッテは超高齢出産なんだから」
ヴィレアム「なんだそりゃぁーっ!?」
ヒューゴ「イェーガーはいったいどうしたんだ?」
ハザリア「なんだか、朝からヘンなんです」
ヒューゴ「よくわかんないけど、とりあえず保健室に行って休んでろ」

 【図書室】
ヴィレアム(あった、軍人名簿・・・・・・。
 ラミア・ラヴレス、バルトール事件で戦死? どうなってるんだ?
 いや、それよりもゼラドだ。アラドさんは・・・・・・。
 ない! アラド・バランガの名前がどこにもない!)

ゼフィア「イェーガー。こんなところでなにをしている。
 2年は授業中のはずだぞ」
ヴィレアム「ゼフィア先輩! ちょっと聞いてくださいよ! ゼラドが!」
ゼフィア「図書室で大きな声を出すんじゃない」
レモン「ねえユミル、頭痛薬かなにか、持ってないかしら」
ゼフィア「アルマー、お前顔色が悪いぞ。ちゃんと寝てるのか」
ヴィレアム「なんで名字が違うんですかぁっ!?」
ゼフィア「だから、図書室で大きな声を」
レモン「そうよねえ、お母さんとおなじ名前なんて、手抜きよねぇ。綴りは違うっていっても」
ヴィレアム「そうだ! ふたりとも、ゼラドを、いや、アラド・バランガさんてひとのこと」
ゼフィア「誰だ、それは」
レモン「聞いたことない名前ねぇ」

 【廊下】
スレイチェル「あらイェーガー君、廊下を走っちゃダメじゃない」
ヴィレアム「スレイチェル先輩! 先輩なら知ってますよね!
 ゼラド・バランガ! いつも竜巻亭で食べてる!」
スレイチェル「んふふ、イェーガー君?
 作り話なんかして、お姉さんをからかっちゃ、ダ・メ・よ?」
ヴィレアム「誰がお姉さんですか! やめてください! 鼻をちょんて突かないでください!」

 【グラウンド】
クリハ「ゼラド? さあ、聞いたことない名前ね」
ヴィレアム「なにいってるんだ、ゼラドだよゼラド!
 お前と違って巨乳の!」
トウキ「おいおい、クリハが貧乳みたいなこというなよ」
クリハ「いっそ、貧乳のほうがよかったなぁ。肩が凝っちゃって」
ヴィレアム「違う! こいつはクリハじゃない! 誰だお前!」
トウキ「お前、ほんと大丈夫か?」


 【道ばた】
ヴィレアム(くそっ、なんで誰もゼラドを知らないんだ!?)

女の子「じゃ、マーズくん、ばいばーい」
マーズ「うん、ばいばーい」
ヴィレアム「そうだ、ロボ! お前のデータベースは!?」
マーズ「ちょっと、なに、アッ、痛たたたた!
 なんで髪の毛引っ張んのぉー!? あかねーよ、そんなとこ!
 しかも、なによロボって! 狼王!?」
ヴィレアム「えっ、あれ? お前、なんでランドセルなんか背負ってるんだ!?
 しかも二本足!?」
マーズ「驚いてるポイントがよくわかんねーよ。
 足が三本も四本もあったら、キモいでしょー?」
ヴィレアム「平気でキモがられてるのがお前ってロボじゃないか!」
マーズ「なにいってるんだろーね、このひとは。
 あー、ちょっと待って。ケータイブルった。
 もしもーし、あ、おかーさん? うん、いま帰るとこ。
 えっ、晩ご飯はシチュー? やったぁー」
ヴィレアム「誰だよ、お母さんて! アーディガンさんに奥さんなんかいるはずないだろ!」
マーズ「なにいってんの。おかーさんがいなきゃ、おれが生まれてくるハズねーでしょー」

ヴィレアム(ダメだッ! こいつ、ただの人間の子供になってる!
 ほかに誰かいないのか! 誰か・・・!)

 【喫茶店】
ユウカ「ハーイ! いらっしゃいませ、セニョール!
 当店今月はサンバフェアとなっております!
 さあ、バモス・バイラ! バモス・ダンサール!」
ヴィレアム「違う! お前はユウカさんじゃない!」
ユウカ「えっ、なにいっちゃってんの。
 年がら年中頭がサンバなことでお馴染み、ユウカちゃんじゃない!」
ヴィレアム「怖い! なんか別のベクトルで怖い!」

ユウカ「え、バランガって、アラド・バランガさん?
 どこで知ったの、そんな名前」
ヴィレアム「よかった、やっと知ってるひとがいた!」
ユウカ「パパの昔の部下よ。
 あたしたちとおなじくらいの歳だったんだけど、かわいそうに、
 マシンガンで撃墜されちゃったそうよ」
ヴィレアム「えっ、それじゃあ」
ユウカ「ああいう悲劇は繰り返しちゃいけないって、パパ、よくいってた」
ヴィレアム「待ってくれ! じゃあ、ゼオラさんは?
 ゼオラ・シュバイツァーさんは!」
ユウカ「えっと、何回か会ったことあるけど。
 たしか、どこかでパン屋さんやってるんじゃなかったかな」
ヴィレアム「そんな」


 【山の中】
ヴィレアム「いったい、なにがどうなってるんだ?
 俺は、いつの間にか別の世界に紛れ込んでしまったのか!?」
XNガイスト「いいえ、あなたはどこにも移動などしていません。
 世界が組み変わっているだけです」
ヴィレアム「ガイストさん、なぜそんなことが」
XNガイスト「宇宙とは常に崩壊と再構成を繰り返しているんです。
 人間が突然消えたり出現したり、そんなことは割と日常的に起こっているんですよ。
 ただ、人間のレベルでは知覚できないだけで」
ヴィレアム「じゃあ、俺は! どうして俺にはゼラドの記憶が残っているんだ!」
XNガイスト「私と接触していたためでしょう」
ヴィレアム「別の世界に迷い込んだわけじゃないなら、俺はずっとここで生きていかなきゃならないのか。
 ゼラドのいない、この世界で」
XNガイスト「どうせ、世界は秒間何億回も崩壊しているんです。
 そこに私が干渉すれば、なんとかできると思いますが」
ヴィレアム「でも、そうすると、この世界は」
XNガイスト「消滅します」
ヴィレアム「それは、俺がこの世界を壊すってことになるじゃないですか!」
XNガイスト「そうですよ」
ヴィレアム「そりゃ、この世界は俺にとって不自然極まりないとこですよ。
 でも、だからって、俺の一存で消すだなんて!
 それはあまりにも傲慢ですよ!」
XNガイスト「傲慢さは責められるものではありません。
 テロもボランティアも、すべて人間の傲慢が行っているものです。
 結果生まれるのが笑顔か涙か、そのくらいの違いです」
ヴィレアム「でも、この世界じゃ、みんなが笑ってる。幸せそうなんだ」
XNガイスト「あなたは泣いています」

XNガイスト「唱えればいいのです。あなたが欲するその名前を」
ヴィレアム「ゼラドの名を」
XNガイスト「世界なんて、案外そんなことくらいで変わってしまうものなのです」
ヴィレアム「ゼラドと世界を引き替えにする。それは、どれほどの罪なんだ。
 でも、でもっ、俺には、ほかのことを考えられない!」
XN「呼べばいいのです。
 純粋な傲慢さとは、きっと優しい罪なのです」

ヴィレアム「ゼラドッ! ゼラドッ! ゼラドォーッ!」

 ガサッ
ゼラド「なに?」
ヴィレアム「ゼラド! ゼラドか!?」
ゼラド「うん、ゼラドだけど。ヴィレアムくん、こんなとこでなに叫んでるの?」
ヴィレアム「ははっ、ゼラドだ! ゼラドだ! ゼラドだぁーっ!」
ゼラド「え、なに? わっ! ちょっと、苦しいよぉ~!」
ヴィレアム「ゼラドがいる! ここにゼラドがいるんだ! やったぁ!」
ゼラド「ねえ、ほんと、どうしちゃったの?」


XNガイスト「私に関わったものは、皆罪を犯す運命なのでしょうか。
 ともあれヴィレアム、あなたは罪を犯しました。
 その傲慢さは、あがなわなければなりません。
 世界を滅ぼしてまで呼ばわった名前です。
 必ず、手に入れてください・・・・・・」

 【翌日 学校】
ハザリア「ああ、黙れ黙れよ。そんな話は聞きたくない。
 まったく、ふたことめには並行世界だ因果律だ、貴様のそういうところには反吐が出るわ」
ヴィレアム「よかった、ハザリアだ。いつものハザリアだぁ~」
ハザリア「わっ! やめろ、気色悪い!」
マリ「なに泣いてるんだ? ヘンなの」
ユウカ「この男はLSDでもやってるのか」
ハザリア「で、どうした。どうせ、また俺の機転でどうにかなったのだろう」
ヴィレアム「いや、お前は、なんかルナといちゃついてた」
ハザリア「はぁ? 聞くだに恐ろしいことをいう男だな、貴様」
ヴィレアム「あと、ミナトにカノジョがいた」
ハザリア「それはまた、おそろしく遠くまで行ったものだな」

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最終更新:2009年10月17日 11:35
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