21代目スレ 2007/12/23(日)
【アラスカ鉄道】
ガタンゴトン
キャリコ「あのぉ、クリスマス・イヴなんですけどぉ」
ハザリア「ああ、なんかそうらしいな。
そういえば、例のエセ霊帝の誕生日だとかいうウソ設定をでっち上げられたこともあったが」
ガタンゴトン
キャリコ「外、一面の銀世界なんすけどぉ」
ハザリア「アラスカだからな」
ガタンゴトン
キャリコ「明らかに日帰りムリなんですけどぉ」
ハザリア「だろうな。オッサン、宿を手配しておいてくれ」
ガタンゴトン
マリ「はぐはぐ」
キャリコ「マリ嬢いるんですけどぉ」
ハザリア「ああ、アラスカ名物アラスカサーモンをむさぼり食っておるわ」
ガタンゴトン
キャリコ「クリスマスに雪国でお泊まりデートとか、
あなたたち、ただのラヴラヴカップルじゃないですかぁっ!」
ハザリア「車内で騒ぐな」
キャリコ「あなたたち、なにか特殊なプレイでツンケンしてるだけで、
ほんとはとっくの昔にラヴ成立してんじゃないでしょうね!」
マリ「キャリコさん、『ラヴ』っていう発音はちょっと」
キャリコ「マリ嬢もマリ嬢ですよ。
なにノコノコ着いて来ちゃってるんですか。求めてるんですか、許すおつもりですか。
クリスマスにお泊まりOKとか、とんだオープンリーチですよ。
どんだけ手堅いテンパイ組んでるんですかって話ですよ。
なにされても文句いえませんよ。拒みでもしたら逆ギレ必至ですよ!」
マリ「いや、そういうんじゃなくて、家にいるとリトゥに大掃除の手伝いさせられるから」
キャリコ「リトゥ嬢はリトゥ嬢で、なんでクリスマス・イブから大掃除始めてるんですか。
どんだけお掃除好きなんですか。『フルハウス』のお父さんですか!?」
マリ「それは、わたしが普段、散らかしたまま片付けないから」
キャリコ「じゃ、逃げて来ちゃダメじゃないですか!
お姉さんがかわいそうですよ!」
マリ「いや、わたしの方が姉なんです」
キャリコ「なおさらかわいそうじゃないですか!」
ハザリア「しっかし、せっかくアラスカ鉄道まで来たというのに、
いいケツした乗務員は一向に見かけんな」
キャリコ「エクサランスあたりに乗ってるんじゃないんですかねぇ」
ハザリア「そうか、今度現れたら、ひとつ生け捕りにしてみよう」
キャリコ「でもひょっとしたら、乗ってるのはベシャリがダメなメカニックかもしれないです」
ハザリア「そうか、ベシャリがダメなのは困るな」
キャリコ「とりあえず、チャンピオンのグラビアで間に合わせておきましょうよ」
ハザリア「そうだな。おいオッサン、チャンピオン買ってこい」
キャリコ「親ほど年の離れたオッサンを平然とパシらせようとするの、やめてくれませんかぁ?」
マリ「なんでお前、最近そんな尻づいてるんだよ」
ハザリア「アギトのあれが、あんなに素晴らしいことになるとはな」
キャリコ「24のひとみは関東地域でのみ、月~水の週3回、深夜3時から4時の帯で
他番組の途中とかで唐突に放映中です。1分半のドラマはまさに一期一会の」
マリ「わかった、お前たち、オシリーナサイドの回し者だろ」
マリ「で、アラスカになんの用なんだよ。
まさか、本気でいい尻見たいだけなんじゃないだろうな」
キャリコ「マリ嬢、そういうことは、せめて空港あたりで訊いておきましょうよ」
マリ「だって、飛行機乗るのってテンション上がるから」
キャリコ「どんだけ旅でウキウキしてるんですか!」
マリ「でも考えてみると、やっぱ来るんじゃなかったな。
お前とどっか行くと、必ず血なまぐさいことが起こるじゃないか」
ハザリア「今回はそんな心配はないだろう。
なにしろ、人間がいない」
マリ「どこに行く気なんだ?」
ハザリア「アラスカ、フェアバンクスよりもさらに北東。
現地のイヌイットどもでもろくに近づかんエリアだ」
マリ「そんなとこに、なんの用なんだよ」
ハザリア「空飛ぶトナカイを見に行く」
ガシッ
マリ「お前、またヘンなクスリやってるんじゃないだろうな?」
ハザリア「嗜好品なら」
マリ「病院行こう? 行ってちゃんと抜いてもらおう?
な? 心細いなら着いてってやるから」
ハザリア「唐突な優しさを見せるな! 気味が悪い!」
マリ「トナカイが空飛ぶわけないだろう! あれは絵本の中だけの話で」
ハザリア「フハハハ! 見た目通り、硬い頭とケツの持ち主だな。
よいか、トナカイのツノがどうなっているか、よく考えてみろ。
前縁部が分厚く、後方に行くに従って平たくなっているだろう。
これは航空機の翼などとおなじ構造だ。
前縁部で切り裂かれた空気はラインに沿って流れる。
このとき、上側はカーブしている分長く、従って空気の流れる速度は下側よりも速くなる。
流速が上がれば圧力が下がるというのがベルヌーイの定理だ。
相対的に下側の圧力が高くなり、翼を持ち上げる形になる。つまりだ」
マリ「待て待て待て、なにいってるのか、さっぱりわかんないから」
キャリコ「つまりですね、トナカイって航空力学的に飛べる構造してるんですよ」
マリ「え~、ウソだぁ」
ハザリア「イヌイットの装飾品などには、サンタクロース伝説以前から空飛ぶトナカイが描かれていたりする。
空を飛ぶ動物ならいくらでもいるだろうに、なぜよりにもよってトナカイをチョイスするのか。
なにかしら、根拠があったはずだ」
キャリコ「ま、正確には『無理すれば飛べないこともなきにしもあらずなんじゃないかなぁ』ってレベルでしょうけど。
トナカイのツノって意外に丸まってますからね。
理にかなった形状してる種となると、かなり希少なので奥地まで行かないと」
ハザリア「トナカイの自体の重さもあるからな。
せいぜい、カッコつけて落ちるくらいの芸当しかできんだろうが」
マリ「お前、なんでそんなもの見たいんだ?」
ハザリア「貴様には知的好奇心というものがないのか」
キャリコ「坊って、やってることだけ見ると普通に真面目な留学生なんですけどねぇ」
ハザリア「あったりまえだ。俺がなんのために国費で留学してると」
キャリコ「あ、あなた方の留学費用、国費じゃありませんよ。
ちゃんと将来働いて返してください。
我らが祖国は、母星が吹っ飛んでるだけあって意外にビンボーなんですから」
ハザリア「年の瀬も近いというのに、イヤな情報を伝えるな!」
【アラスカ 雪原】
ビュウゥゥゥゥ
マリ「寒いよ!」
ハザリア「当たり前だ! そんなセーター一枚で、貴様、雪原を舐めてるのか!」
マリ「お前が行き先を伝えないからだ!」
キャリコ「考えてみるとぉ、クリスマスに空飛ぶトナカイ見ようなんて、メチャクチャロマンチックじゃないですか。
いったいいつのトレンディドラマですか。
しかもこのへん、へタすりゃオーロラが拝めますよ」
マリ「上手くすれば、じゃないですか?」
キャリコ「なんですか! 上手くするつもりなんですか!」
マリ「くちゅんっ! あぁ、寒い。
なぁ、でも、空飛ぶトナカイなんて、どこにいるんだ?
だいたいトナカイって、どういうとこに住んでるんだ? なに食べてるんだ?」
ハザリア「そんなもの、俺が知るか」
マリ「ツノの構造とか調べてる暇があるなら、先にそっちを調べようよ!
おい、まさか、この見渡す限りの雪景色の中をあてずっぽうにさまよう気なんじゃ」
ハザリア「そんなくたびれること、誰がするか。
現地の子供をガイトに雇ってある。そろそろ、着くはずだが」
ブワアァァァァッ!
マリ「わっ、なんだ!? 雪煙!?」
???「ごーごー、キャレットツール!」
ズシャアァァァァッ
マーズ「おれの名はマーズ! トナカイさんは狙われている!」
ハザリア「失せろ」
マーズ「あぁっ! 待って、待ってぇ!
ちょっといってみたかっただけなんだよぉ!」
キャリコ「ロボくん、『ガジェット警部』なんてよく知ってたね」
マーズ「うん、しかも実写版」
キャリコ「おそろしくレアじゃないか」
マリ「おい、まさか現地の子供って、これか?
思いっきり宇宙製じゃないか」
ハザリア「クソッ、ツアーコーディネイターに騙された!」
マーズ「あぁーっ、ちょっと待ってちょっと待って!
そっち行ったらあぶねーよ!」
パパパパパパパ!
マリ「なんだぁ、いったい!?」
マーズ「ホローポイント、別名ダムダム弾。
弾頭に細工されてて、めいちゅーすっと体内でキノコ状にへんけーしちゃうの。
貫通しないまんま鉛の毒が体内に残っちゃうから、致死率がすげー高い。
非人道的ってことで、1899年ヘーグ平和会議でせんそーに使うのが禁止されてる。
ねーっ、ニンゲンてなんで殺し合いすんのにルール決めんの?
メチャクチャいみわかんないんだけど」
マリ「わーっ、またこれだ! 結局これだ!
ゼラドのときはものが壊れたりとかそのくらいなのに、なんでわたしばっかり!
なんなんだこの、血塗られた運命!」
キャリコ「マリ嬢、お嘆きはもっともですが、今は逃げるが先決です!」
【林】
マーズ「そりゃー、おれはロボだからさ、ニンゲンのじょーちょなんかわかんねーよ。
でも、トナカイさんが空飛ぶってゆーのは、たぶんファンタジックな光景でしょー?
だからさ、ばっちりネイチャーな感じの映像撮って、クリスマスで浮かれたカップルに売りつけよーと思ったわけ」
キャリコ「ほらご覧なさいな! こんなチビッコでもこのくらいのことわかるのに!」
マーズ「おねーさんたちも、どぉ? 1枚買わない?」
マリ「わたしたちはクリスマスで浮かれたカップルじゃない」
マーズ「あー、浮かれてないカップル」
マリ「そもそもカップルじゃない!」
マーズ「えー、そーなのー?」
キャリコ「ロボくん、人間関係っていうのはね、複雑なんだ」
マーズ「ちぇっ、ニンゲンてなぁー、シンプルなもんをわざわざ複雑にするけーこーがあるから困るよ」
ハザリア「ソフトを売るも買うも、肝心のトナカイを見つけていなければ仕方がないだろう」
マーズ「そーなんだよそーなんだよ。
現着するなり、やつら、もんどーむよーでぶっ放してきてさー」
キャリコ「自然保護区で発砲するなんて、いったいどこの不心得者でしょうか」
マーズ「決まってんでしょー、そんなもん!
マオ社だよマオ社! トナカイさんのツノをすり潰してカンポー薬にするつもりなんだ!」
ハザリア「マオ社は漢方薬なんぞ作っとらんぞ」
マリ「お前イスルギとよくつるんでるけど、マオ社と仲悪いのか」
マーズ「だぁーって、マオ社ってちゅーごく系でしょ?
4本足と見りゃー椅子と机以外油でカリッと揚げて食っちまうよーな民族だよ!
許せねー! 全4本足の敵だ!」
マリ「なんだ、その間違った中国観」
パパパパパッ!
ハザリア「まずいぞ、見つかった!」
マーズ「ごーごーキャレットモービル! つかまって!」
マリ「キャリコさん、銃は!?」
キャリコ「そんなもん持って飛行機乗れるわけないじゃないですか」
ハザリア「だったらオッサン、ただのデッドウェイトではないか!?」
キャリコ「フフフ、おじさん鍛えてるから、見た目より重いですよ?」
マーズ「わー! 重い重い! ほんと重い! じゅーりょーオーバー!」
ハザリア「いいから走れ、このポンコツがぁっ!」
【森】
マーズ「ごーごーキャレットカーペンター」
キャリコ「あぁ、情けない情けない!
なんでアラスカくんだりまで来てカマクラ作らにゃならんのですか。
どんだけ正月を先取りするつもりですか」
マーズ「えぇーっと、ゴメン。ちょーしに乗って、雪でハゴイタ作っちゃった」
マリ「どんな調子の乗り方だ」
キャリコ「せっかく『あー、すいません。クリスマスだけあって、ホテル満室でしたよ。
ツイン一室しか取れませんでしたよ。
じゃ、おじさんは夜のフェアバンクスに繰り出しますので、おふたりでごゆっくり』
とか、年長者らしい気の利かせっぷりを見せようと思ってたのに!」
マリ「なんか、知らないうちに命拾いしてる、わたし」
ハザリア「しかし、これはまずいな。
追い立てられているうちに、位置がさっぱりわからなくなってしまった。
アラスカ鉄道の駅はどちらだ?」
キャリコ「携帯は当然のように圏外ですしねえ」
マリ「なあロボ、お前のとこのヴァルホークまわせないのか」
マーズ「あー、ダメダメ。あれ、ミヒロおばちゃんがスーパーに買い物行くとき使うから」
マリ「最強ロボの一角が、スクーター扱いか。
なんなんだ、この、強いロボほど適当な乗り物扱いされるっていう傾向」
マーズ「しょーがねーからおれも、ここまでスーパーカブに乗って来たんだけど」
マリ「なんかスーパーカブあるなぁって思ってたら、そんなしょうもないネタやるために持ってきたのか!」
キャリコ「いやいやマリ嬢、スーパーカブをあなどっちゃいけませんよ。
安価、高性能、低燃費!
まさにメイド・イン・ジャパンを体現した名機ですよ、これは」
マリ「なんなんですか今回! スポンサーでも付いてるんですか!?」
マーズ「あいあい、カマクラかんせーしたよー」
【カマクラの中】
マーズ「あー、ダメだ。やっぱ通信つながんねー。
マオ社めー、好き勝手やってくれちゃって。グリーンピースにちくってやる」
ハザリア「だから、勝手にマオ社の仕業にするな。
マオ社の広報に叱られるぞ」
マリ「誰だよ、マオ社の広報って」
ハザリア「知らん。だが、たぶんいいケツをしてる」
マリ「お前も、勝手にマオ社の広報をいい尻の持ち主にするな!」
キャリコ「そうですよ。マオ社の広報が男だったらどうするんですか」
ハザリア「そうか、しまった。その可能性は考慮していなかった」
マーズ「あれなんじゃねーの。OGsめーぶつ、ムダにカワイイモブキャラおねーさんなんじゃねーの」
ハザリア「なら、たぶんいいケツしてるな」
マリ「なぁ! そのミニコントは、わざわざアラスカでやる必要があるのか!?」
ハザリア「あえてアラスカでミニコント。まさにロック」
マリ「インチキプロデューサーみたいなこといったってダメだ!」
マリ「くちゅん! あー、寒い寒い! 精神的にも物理的にも寒い!」
キャリコ「わかりました。おじさん向こう向いてますから、人肌で温めあっててください」
マーズ「あー、おれヒーター付いてっから。ごーごーキャレットヒー・・・・・・」
キャリコ「わかりました。この気の利かないロボ、永久凍土の奥底に沈めてきます」
マーズ「きゃーっ! いやー! 溶けかけたマーマの横はいやー!
助けてクリスタルセイントー!」
キャリコ「ロボくん、おじさん今からショッキングなこというよ?
クリスタルセイントってね、実在してないんだ」
マーズ「ウソだい! いるもん! クリスタルセイントはいるもん!
シベリアのへーわを守ってんだ! いままさにマザコンとアイザックさんを指導中だもん!」
ハザリア「なぜアイザックにさん付けだ、貴様」
キャリコ「ここ、シベリアじゃなくてアラスカだよ?」
マリ「もういいよ! なんだよこの連続ミニコント!」
キャリコ「クリスマスだっていうのにこんなカマクラの中に入れられて!
ミニコントのひとつもやらせていただかないと割に合いませんよ!」
マリ「なんですか、その逆ギレ!」
ハザリア「オッサン、そんなにクリスマスとやらが気になるなら、
家に帰ってスペクトラに孝行でもしていろ」
キャリコ「やだなぁ、私ほどの手練れともなれば、日付変更線を駆使して常人の倍クリスマスを満喫するんですよ」
ハザリア「その能力を、もっと家庭に向けろ」
キャリコ「なにより! おじさんにはお目付役としての使命があります!
あなた方がいかがわしいことし始めるまで、ここを動きませんから!」
ハザリア「だったらずっとここにいろ!」
ドガァァァァンッ
キャリコ「どうやらその命令は実現不可能のようですね。
わははは。観念していかがわしいことしてください」
ハザリア「今さらだが貴様、お目付役として機能しとらんな!」
マーズ「RPGだぁーっ!? くっそー、マオ社のいーお尻した広報め!」
マリ「だから、マオ社じゃないし、マオ社の広報はいい尻なんかしてない!」
ハザリア「しかし、こんなこといってるうちに、マオ社の広報がとんでもなくいいケツしてるように思えてきた!」
キャリコ「あなどれませんね、マオ社の広報の人!」
マーズ「わかった! 帰ったらミツハルさんに訊ーてみる!」
マリ「過度な期待すると、マオ社の広報の人に迷惑だろ!」
ドガンッ! ドガンッ!
キャリコ「とりあえずマオ社の広報については胸に秘め、今は逃げますよ!」
マーズ「あーん! せっかくお餅焼く準備までしてたのにー!」
ハザリア「正月気分先取りする気満々か、貴様!」
マリ「ミニコントをやめろ!」
マーズ「あっ、おねーさん、そっち行ったらダメだよ!」
ハザリア「この、たわけめっ!」
マリ「エ?」
【崖の下】
マリ「いたたたた。崖があったのか。
雪煙で見えなかったけど」
ハザリア「わかったら、その硬くてちまいケツを俺の上からどけろ」
マリ「わっ、お前、なんでいるんだ!」
ハザリア「貴様に巻き込まれたのだ、この疫病神め!」
マリ「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ!」
【洞窟】
マリ「くちゅん! くちゅん! あー、寒い寒い!
服だって濡れちゃったし」
ハザリア「わかった。仕方がない。それを脱げ」
マリ「エッ」
ハザリア「脱げといっている」
マリ「えーと、あ、そっか。ウン、そうだよな。命あっての物種だもんな。
いかがわしいとか、いかがわしくないとか、そういう人肌じゃなくてこういう人肌なんだよな。
ウン、わかってる、わかってるんだ。
その、わたしだって、こんなとこまでノコノコ着いて来ちゃったわけで、まったく責任がないわけじゃ」
ハザリア「なにをゴチャゴチャいっとるか、いいから、さっさと脱げ」
マリ「アッ、ちょっと待て、乱暴にするのは」
ガシャンッ ボッ
マリ「えぇーっと」
ハザリア「おぉ、おぉ、さすが、安物の化成繊維だ。
DSぶっ壊した火花だけで、よく燃えるわ」
ポカッ
ハザリア「なぜ殴るか、貴様は!」
マリ「うるさい! 情けない! なによりもう、自分が情けないよ!」
ハザリア「なにをいっているのかよぉわからんが、せいぜいそこで自省していろ」
マリ「猛省してるよ」
ハザリア「では、俺は行くぞ。どうにも、ここは女臭くていかん」
マリ「オイ、どこ行くんだよ」
ハザリア「そんな小さな火種、すぐに燃え尽きるだろうが。
防寒具を調達してくる」
マリ「そんなの、アテがあるのか?」
ハザリア「セーターが燃え尽きるようなら、ほかの服でも燃やしていろ。
せいぜい、面白い格好になっていることを期待するぞ」
マリ「期待するなよ!」
【森の奥底】
兵士「ヘイ、やっと退散したようだな、しつこいツーリストだったぜ」
兵士「ヒュー、今から戻れば、スーパーボールの時間に間に合うぜ」
兵士「ヤヤヤヤ、青い髪した中年は手慣れた動きだったが、まさか敵国のスパイってことは」
兵士「そんなわけねぇだろ。ありゃ、ただの浮かれたジャップだ。
こんなとこにセーター一枚で来るようなカミカゼ・スピリッツの持ち主が、ほかにいるか?」
兵士「ロボもいたしな」
兵士「あの『ビーストウォーズリターンズ』みたいなセンスは、カナダ製じゃねぇのか」
兵士「なぁ、ジャップはオプティマスプライムをコンボイって呼ぶってのは本当か?」
兵士「クレイジーなセンスだぜ」
ハザリア「ひとつ教えてやる。ニホンのボイスアクターどもはクレイジーだ。
貴様らの想像をはるかに超えておる」
ピロリロリン♪ ピロリロリン♪
兵士「ヘイッ! そこでなにしてる!」
ハザリア「写メ撮ってるだけだ」
兵士「貴様、さっきのツーリスト」
ハザリア「ああ、ツーリストだ。
せっかくのネイチャーウォッチングを邪魔されて、非常に機嫌が悪いな」
ピロリロリン♪
兵士「ストップ! 撮るな!」
ハザリア「もう遅い。フン、劣化ウラン弾か。
だいぶ古いものだが、古すぎるということはないようだな。
いつごろばら撒かれたものか、実に興味深い」
兵士「ヘイ、警告はしたぞ!」
ハザリア「おっと、動くな。こいつを世界に発信するぞ?
IT革命万歳だ」
兵士「くっ・・・・・・」
ハザリア「警告。そう、まさに警告だった。
貴様らはあれほど銃弾をばらまいておきながら、一発たりとも我々に当てなかった。
追跡の手並みを見るに、ただのチャールズ・ホイットマンでないのは明らかであるにもかかわらずだ。
となれば、貴様らの目的は射殺ではなく警告、いや威嚇か。
では、どこから遠ざけたい? なにを隠したい?
つまり、こういうことか。
アラスカ。カナダをはさんだ、アメリカ最北端の州。
大自然の宝庫であると同時に、重要な軍事基地でもある。
こんな雪原の中で訓練をする理由は、少し考えればわかるが」
兵士「昔の話だ!」
ハザリア「ああ、昔だとも。劣化ウランの毒性が消えるには、少々足りんがな。
自然保護区で、ずいぶん無粋なことをするものだ。
現在の核アレルギーぶりを見るに、これが発覚すれば面白いことになるだろうなぁ、おい」
兵士「ファック! やはりスパイか!」
兵士「なにが目的だ。カネか、それなら」
ハザリア「フハハハ! 4本足がいなくてよかったな。
貴様ら、ケツの穴までほじくられてるところだったぞ」
兵士「エコノミック・アニマルめ!」
ハザリア「カネはいい。防寒具をよこせ。
そう、貴様らがいま着てる、それだ」
兵士「クレイジー! この雪原で、裸になれというのか!?」
ハザリア「正義と民主主義を守るためだ。安いものだろう。
だいたい貴様らのとこのスーパーヒーローなんぞ、全身タイツ1枚で北極に住んでるではないか」
兵士「コミックとリアルの区別が付かないのか?」
ハザリア「そうかもなぁ。なにしろ俺は今、非常に機嫌が悪い。簡単にいえば、怒っている」
兵士「構わん、撃て!」
パンッパンッパンッパンッパンッ!
兵士「なんだ、銃が!?」
兵士「雪玉? 雪玉でか!?」
キャリコ「だぁめじゃないですか、坊。迷子になっちゃ」
ハザリア「遅いわ、ボケ」
兵士「シィット!」
ハザリア「長考の時間は与えてやれんぞ。
あまりやつに面白い格好になられていると、リアクションに自信が持てん」
兵士「ジーザス」
ハザリア「おいおい、季節感を考えろ。ここで祈るのなら、サンタさんだろうが」
【数分後】
キャリコ「あーあ、どうせだったら遺跡でも見つけて、
『俺のポケットには大きすぎらぁ』とかやりたかったのに」
ハザリア「見え透いたオッサンだ。どうせ、これが目的だったくせに。
ほら、持ってけ。外交カードに使うなりなんなり、好きにしろ」
キャリコ「うひひひ!」
ハザリア「その、貸本時代の鬼太郎みたいな笑い方をやめろ」
マーズ「あーあー、やっと繋がった。
ホリスおじちゃーん? 悪いんだけど、トーレス一台まわしてくんなーい?
ギャラはホワイトハウスに請求しちゃっていーよ。
あーあ、トレーズ閣下の理想どーりいけば、世の中シンプルだったのにねー」
キャリコ「迎えも来るみたいですけど、帰りはどうしますか。
またアラスカ鉄道ですか」
ハザリア「疲れた。直で空港まで行く」
マーズ「それよりびょーいんでしょ? おねーさんの手当てしないと」
ハザリア「手当て? やつは怪我などしとらんぞ。鼻風邪はひいていたようだが」
マーズ「えーっ!? ちょっと待ってよ、おかしーよ!
おにーさんたちが落ちた崖、100メートル近くあったんだよ!?」
ハザリア「そうか、俺もなかなか運がいいようだな」
マーズ「運がいーとかの問題じゃねーよ! なんで怪我してねーの!?
あ、そーか! そーだったんだ、それしかねーっ!」
キャリコ「まさか、ほんとに空飛ぶトナカイが?」
マーズ「クリスタルセイントだーっ! クリスタルセイントが助けてくれたんだーっ!
やっぱりクリスタルセイントはほんとにいたんだーっ!」
ハザリア「それはない」
【洞窟前】
ハザリア「おい、ほら、防寒着だ」
マリ「入ってくるな! そこから投げろ!」
ハザリア「フハハハハ! どうやら、相当面白い格好になっているようだな!」
マリ「うるさいよ、バーカバーカバーカ!」
ハザリア「なんだぁ、貴様!」
キャリコ「ねえロボくん、あれ、どう思う?」
マーズ「ニンゲンの微妙な心情なんか、わっかんないもーん」
【アンカレッジ空港】
マリ「ブカブカじゃないか、この防寒着」
ハザリア「注文の多いヤツだな」
キャリコ「大丈夫ですよマリ嬢。男物のワイシャツ羽織ってるみたいでカワイイですよ。
ぱっと見、なにかあった後みたいです」
マリ「なにもありませんでしたよ!」
ハザリア「結局貴様もミニコントではないか。行くぞ、マリ」
マリ「エ?」
ハザリア「なにを、きょとーんとしておるか」
マリ「イヤ、だって、お前がわたしを名前で呼ぶのって、珍しくないか?」
ハザリア「そうかぁ?」
マリ「そうだよ! お前ときたら、いつもいつも貴様貴様って!
あーっ、気が付いたら、なんか腹たってきた!
おい、もういっぺん名前で呼んでみろ!」
ハザリア「貴様だって、いつもお前お前ばかりのくせに」
マリ「おい、待てよ、ハザリア!」
最終更新:2009年10月17日 11:36