南十字星と捕鯨


27代目スレ 2008/12/24(水)

 【オーストラリア】
マリ「暑いよ!」
ハザリア「肉だーっ!
 低脂肪高タンパクのオージービーフを、束にして持ってこーいっ!」
キャリコ「ビールを! XXXXとかいう商品名が伏せ字っぽくてドキドキする
 オーストラリア名物フォーエックスビールを樽に入れて持ってきてください!」
ハザリア「カンガルー肉、エミュー肉、ワニ肉!
 次々と持ってこい! オーストラリアの肉という肉をを食い尽くしてくれる!」
キャリコ「サマーヌーヴォーも一本あけちゃいましょうか!」
マリ「なんでクリスマスシーズンまっただ中に真夏の国なんかに来ちゃうんだよ!」
ハザリア「なんだ、夏は嫌いか」
マリ「嫌いじゃないけど、クリスマスは寒くあって欲しいよ!」
キャリコ「でもマリ嬢、ビキニ風のサンタ服着た金髪のチャンネーって、ありじゃないですか?」
マリ「奥さんに言いつけますよ」
キャリコ「おお、そうだ!
 奥さんへのお土産に買っていきましょう!」
ハザリア「待てオッサン、早まるな。
 着るのか、ビキニ風サンタ服を、スペクトラのおばちゃんが」
マリ「だから、なんでビキニ風サンタ服なんか存在する国に」
ハザリア「真冬にミニスカサンタがうろちょろしてる国の人間がなにをいっておるか」
マリ「返す言葉もないよ!」
ハザリア「危険極まりない米国牛や、バカ高い和牛など食えるか。
 安価でボリューム満点のオージービーフ!
 オージービーフ第2世代として!」
マリ「わたしたちのお父さんがオージービーフで育ったようなこというなよ」
キャリコ「え、オージービーフで育ったんじゃないんですか?」
マリ「知らないですけど」
キャリコ「ヤバイですよ坊、マリ嬢がなんかご機嫌斜めです」
ハザリア「やっぱ、オーストラリアには駅弁とかないから」
マリ「そういうことじゃないよ!」
ハザリア「まあそうむくれるな。
 そら、カンガルーの缶詰をくれてやるから」
マリ「ずいぶん気前がいいじゃないか、ふたつも」
ハザリア「やったぞオッサン、なぜか誤魔化せそうな雰囲気だ」
キャリコ「乙女心は複雑ですからね」
ハザリア「ああ、その缶詰だが、
 片方にはカンガルー肉が、片方にはカンガルーのヌイグルミが入っておる」
マリ「そのふたつを並べるなよ! やるせないよ!」


 【グレートバリアリーフ】
マリ「そりゃあ、夏は海に行ったけど、
 あれは行ったっていうか遭難して流れ着いたようなもので、
 わたしは水着着なかったけどさ。
 あ、なんだ、お前ひょっとして」
ハザリア「ふぅ~、やはり砂風呂はいい。
 体中の毒素がぐいぐい抜けていくようだ」
マリ「・・・・・・どっこいしょっと」
ハザリア「こらこら! 頭の上に座るでない!」
キャリコ「そうですよマリ嬢!
 坊がヘンな性癖に目覚めたりなんかしちゃって、苦労するのはあなたですよ!」
マリ「苦労する筋合いなんかありませんよ!」
ハザリア「しかしゴリゴリしておるな、貴様のケツは」
マリ「ああ、そうか」
ハザリア「左右に振るな! 首が折れる!」
マリ「オーストラリアくんだりまで来て砂風呂入りに来ただけなら、
 わたしは適当にダイビングでもして帰るからな!」
ハザリア「まあ待て、見てみぬか、この青い海、広がるサンゴ礁を」
マリ「まあ、普通にキレイだけど」
ハザリア「この、ずうっと向こうの、南太平洋マーケサズ諸島沖アイドネウス島に、
 新西暦179年、我らがバルマーがメテオ3を落としただろう」
マリ「ああ、地球人にEOT与えて、お前のとこの先兵にしようっていう迷惑な計画の第1弾な」
ハザリア「実は、それよりもかなり前、西暦にして1790年前後、
 俺の何代か前のお祖父さまが、ここになにかしら持ち込んだらしい」
マリ「なにかしらって、なんだよ」
ハザリア「なにかしらはなにかしらだ」
マリ「そのなにかしらを訊いてるんだ!」
ハザリア「それを調べに来ておるのだ!」
キャリコ「前の母星が吹っ飛ぶとき、引っ越しでバタバタしてましたからね。
 けっこう失われた記録が多いんですよ」
ハザリア「宇宙的にかなりレアなトロニウムとまではいかなくても、
 それに準ずるなにかしらであった可能性がある」
マリ「そんなもの、危ないじゃないか」
ハザリア「そう、危ないのだ。うっかり地球のテロリストにでも拾われた日には、面倒なことになる」
キャリコ「ですから、うちうちに回収しときたいんですよ」
マリ「ウン、まあ、メテオ3だったらうちの母さんも無関係じゃないし。
 そういうことなら手伝いますけど。
 それで、どこにあるんですか?」
ハザリア「南半球の大陸と記録されていたから、おそらくオーストラリアだと思うのだが」
キャリコ「細かい場所がさっぱりでして」
ハザリア「1790年ごろといえば、紅茶と香辛料欲しさに世界征服を企んでいた
 大英帝国がアボリジニをいびり倒していた時代だ。
 地球側の資料も混乱していて調べることができん」
キャリコ「発信器がついていたはずなんですが、まったく反応がないんですよ」
マリ「ずいぶん昔のことだし、壊れてなくなっちゃったんじゃないのか」
ハザリア「いや、『宇宙の終わりが来ても決して壊れない』だの、
 『この硬さは永遠のもの』だの『星々のぶつかり合いもこの結びつきの前には無力』
 だのと記されていたから、数百年程度で壊れるものではないだろう。
 可能性が高いのは、なにか生き物の腹に入ってしまっていることだ」
マリ「腹って」
ハザリア「ブツはかなりの高エネルギーを放射していると予想される。
 それを食っても平気で生きているとすると、
 相当巨大なサイズであると思われる!」
マリ「待て、まさか」
ハザリア「クジラだ! クジラを捕るぞーっ!」
マリ「やめろーっ!」

キャリコ「ヴァルク・ベン捕鯨装備、すでにスタンバイしてあります」
マリ「なあ、よそうよ。
 お前異星人だから知らないだろうけど、
 オーストラリアのひとってカンガルーにも先住民族にも容赦ないけど、
 なぜかクジラだけは異様に大切にしてるんだ」
ハザリア「そのようなことは百も承知。
 血に飢えたイギリスのブタどもに侵略され、
 ひところは30万人以上いたアボリジニは、わずか数年で実に数万人にまで激減してしまった!
 いまや、わずかな数が居住区に住み着いている程度だ。
 純血のアボリジニはほとんど残っておらず、
 融和といえば聞こえはいいが、とっかかりは強姦だ!
 そんな彼らだが、なぜかクジラだけはやたら大事にしている。
 19世紀ごろまでは自分らも捕鯨していたにもかかわらず!」
マリ「わかりすぎるほどにわかってるなら、なんでわざわざオーストラリアで捕鯨しようとするんだよ!」
ハザリア「なんだ、貴様はそれでも捕鯨民族か」
マリ「クジラなんて食べたことないし、特に食べたいとも思わないよ!
 そんなに美味しくないっていうし!」
ハザリア「食ってみないことには美味いかまずいかもわからんだろうが!」
マリ「捕鯨メインになっちゃってるじゃないか!
 祖先の宝はどうした!」
ハザリア「貴様こそ、民族の誇りはどこにやった!」
マリ「いうほど捕鯨文化に誇り持ってないよ」
ハザリア「嘆かわしい!
 食物連鎖の頂点に立つ身として、最大の海洋生物を食らうことになんのためらいがあろうか!」

 ドーン! ドーン! ドーン!
シーシェパート『しょうこりもなく捕鯨してんじゃねーぞ色つきどもがぁーっ!』
マリ「そら見ろ、シーシェパードが来た!」
ハザリア「白豪主義の白ブタどもが!
 真っ昼間から暇なことだ! 仕事はしていないのか仕事は!
 なんだ、無職が暇つぶしに反捕鯨しているという噂は本当か!?
 そんなことで老後はどうするつもりだ!?」
マリ「シーシェパードの老後なんか気にしてる場合か!?」
ハザリア「あのような者ども、しょせん国際捕鯨委員会からもハブられた海賊だ!
 オッサン、構わんから撃沈してやれ!」
キャリコ「大変です、坊!」
ハザリア「どうした!?」
キャリコ「ヴァルク・ベンて、海適応Cでした!」
ハザリア「なぜヴァルク・ベンをチョイスしてしまったのだオッサン!」
キャリコ「しかも捕鯨装備だから、大銛くらいしか持っていませんよ!」

シーシェパード『すぐに捕鯨装備を解除せよっ!
 そして砂浜に額をすりつけて頭よくてカワイイクジラさんに謝れーっ!』

 パーン! パーン! パーン!
マリ「うわっ、照明弾なんか投げてきた!」
ハザリア「チッ、エコテロリストどもが。
 クジラなど、リアルで見るとグロいだけだろうが」
キャリコ「とりあえず、大銛でできるだけやってみます!」
マリ「なんでそんな無謀な挑戦を!」
???「こちらへ!」

 【森の中】
FBz-99G「キャリコ・マクレディ氏からは聞いています」
ハザリア「オッサンが事前調査に使っていた現地の人間か」
FBz-99G「白人たちの宝を探しているとか」
ハザリア「白人、ということは貴様アボリジニか」
FBz-99G「父の代に居住区に移りました」
ハザリア「一度は都市で白人社会に溶け込んだが、
 その後民族のアイデンティティに目覚めて回帰していったクチか」
マリ「ちょっと待て、何代前か知らないけど、お前のお祖父さん白人だったのか?
 親父さんもお母さんも、肌の色は濃かったじゃないか」
ハザリア「アボリジニは長い間オーストラリア大陸に隔絶されてきた存在だ。
 どうやら、異邦人という概念がなかったらしい。
 侵略する気満々で乗り込んできた英国人を前に、呑気に魚釣りなどしていたといわれている。
 異邦人は全部ひっくるめて白人扱いなのだろう」
FBz-99G「アボリジニは文字を持ちません。
 歴史はドリーミングストーリーと呼ばれる寓話で伝承されます。
 長い期間のうちに、あちこちあやふやになっているんですよ」
マリ「そっか、異星人なんて、理解もできなかったろうな」
FBz-99G「『親切な白人』というドリーミングストーリーが残っています。
 ”奇妙な仮面を被った白人あり。
  天にも届く光の柱を立て、邪悪な白人たちを追い払った”と」
ハザリア「さすがは俺の祖先だ。粋なことをする」
マリ「何十年か前に地球を侵略に来てたのはどこの星のひとだっけな」
FBz-99G「『優しい白人』は、キラキラと光る石を宝物にしていたと伝えられています」
マリ「そうすると、『親切な白人』はあなたたちの英雄なんですよね。
 いいんですか? こいつ、その宝を回収するつもりなんですよ」
FBz-99G「『親切な白人』を本物のイギリス人だと思っている層もいます。
 そういう人種に、宝を渡したくないだけです」
ハザリア「白人のブタどもにイヤガラセができれば、それでいいということか」
FBz-99G「彼らは、我々の祖先からあらゆるものを奪っていきました。
 だから、いま我々は白人から宝を奪うのです」
ハザリア「マルコムXはおなじようなことをいって白人のメスブタどもを食い散らかしたそうだな」
マリ「取りあえず、デフォルトで白人をブタ呼ばわりするのやめようよ」
FBz-99G「私も、若い頃は白人の女たちを食い散らかしました。
 それも飽きたので、今度は宝を奪います」
ハザリア「俺は、地球に来て初めて尊敬できる相手に出会えたのかも知れぬ」
マリ「尊敬しちゃダメだ!」

 【洞窟の中】
マリ「この絵は?」
ハザリア「アボリジニが残した壁画だな。
 近年ではアボリジナル・アートといって、高く評価されておる」
FBz-99G「『親切な白人』の伝説を描き残したものだといわれています」
マリ「仮面かぶってる。明らかにお前とこの星のひとだな。
 それにこれ、なんだろ、沼から、ネッシーみたいな」
FBz-99G「『優しい白人』は乙女を伴い、巨大な怪物を使役していたといわれていますが」
ハザリア「ふぅむ、機動兵器の類だろうか」
マリ「なあ、こういう伝説があるって知ってたんなら、
 なんで最初海なんかに行ったんだよ」
ハザリア「なんでもいいからクジラが捕りたかった!」
マリ「お前みたいのがいるから反捕鯨運動が加熱するんだよ!」

ハザリア「フム、この、横に描かれているのはウォンバットだな」
マリ「ウォンバット?」
ハザリア「マダム・ウォンという中年中国人女性がコウモリのコスプレをしたスーパーヒロインで」
マリ「嘘はいいから」
FBz-99G「モコモコしたフクロネズミです。カワイイですよ」
ハザリア「カワイさはいい、食えるのか」
FBz-99G「まあ、食べていた部族もあります」
ハザリア「舌なめずりをせずにはおれんな」
マリ「なんでもかんでも食べようとするなよ!」
ハザリア「ウォンバットは、遠目にはファンシーだが、近くで見ると潰れたイノシシのようなツラをしておる。
 草食で、平原や低木林に住んでいるはずだ。
 おい、この近くにそういった場所はないか」

 【低木林】
ハザリア「喉が渇いてきたな。おい貴様、水は持っているか」
FBz-99G「すいません、持ち合わせがなくて」
ハザリア「ふん」

 【沼】
マリ「ここが、絵に描かれてたところなのかな」
FBz-99G「この中に、『優しい白人』が使ったという怪物が眠っているのでしょうか」
マリ「でも、あの絵が描かれたのは何百年も前だし」
ハザリア「貴様、まだ下に水着を着ているか」
マリ「お前、わたしにこんな泥沼泳がせるつもりなんじゃないだろうな」
ハザリア「イヤか」
マリ「イヤだよ!」
ハザリア「泥まみれでのっぺりするのはイヤか!」
マリ「なんでわたしを泥まみれにしたいんだ!」
ハザリア「なんだか、いっているうちに貴様をもの凄く泥まみれにしたくなってきた!」
マリ「やめろよ! リアクションに困るよ!」
FBz-99G「私が潜って来ましょうか」
ハザリア「ほぉう」クチャクチャ
マリ「おい、なに噛んでるんだ」
ハザリア「ドゥボイシアという木から作られた噛み煙草だ。やるか」
マリ「お前みたいのは煙草ひと箱1000円時代に泣け!」
ハザリア「オーストラリアは、すでに煙草がひと箱1000円ほどするぞ」
マリ「どんどん高くすればいいんだよ」
ハザリア「あまり高くなると喫煙者が減って税収が下がるから、ならんようだぞ。
 見ろ、たばこ増税も見送られた」
マリ「煙草事情に詳しくなるのやめろ!」
ハザリア「まあ見ていろ、これをだ」パラパラ
マリ「おいおい、そういうものを池に捨てるなよ」
ハザリア「見ろ、なにも起こらん」
マリ「地球を汚すな!」
ハザリア「ドゥボイシアの成分は、人間にとってはイイ感じにアタマをクラクラさせてくれるだけだが、
 魚にとっては全身をシビレさせる猛毒だ。
 アボリジニは、そこらへんを知っていたらしい。
 池や川などにドゥボイシアの枝を浮かべて魚を捕っていたそうだ」
マリ「そういう危ないものを、よく口に入れる気になるよな、お前は」
ハザリア「タバコとて、うっかりコーヒーかなにかの中に落としたのを、
 まあいいや的に飲んだりするとぶっ倒れるぞ」

マリ「お前は、自分が未成年だっていうことを思い出せ」
ハザリア「バルマーではすでに成人だ」
マリ「地球に来たら地球の法律に従え!」
ハザリア「ドゥボイシアに無反応ということは、この沼に魚などおらぬということだ。
 そして、アボリジニのくせにアボリジニの漁獲法を知らない貴様は、いったいなんだ」
FBz-99G「それは」
マリ「だってそのひと、お父さんの代に居住区に移ったっていってたじゃないか。
 そんな昔の魚獲りの方法、知らなくても」
ハザリア「それだけではない。
 貴様、水の持ち合わせがないといっていたな。
 乾期のあるオーストラリアで暮らしていたアボリジニは、さまざまなやり方で水を確保していた。
 ブッシュに溜まった朝露、デザートオークの木の根、
 さらには穴掘りガエルが腹にため込んでいる水!
 どのような民族であっても水の確保は最重要課題!
 その知恵をまったく知らんとはどういうことだ!」
FBz-99G「く」
ハザリア「貴様、アボリジニではないな」
FBz-99G「くくく」

 バリッ
凄くイイ声のベガ兵「勇気など通用せんぞ!」
マリ「凄くイイ声だ!」
ハザリア「なんと勇気みなぎる声なのだ!」
凄くイイ声のベガ兵「宝の所在さえわかれば、もう用はない」
ハザリア「どうせ白人女性を食い散らかしたというのもハッタリだろう!」
凄くイイ声のベガ兵「それは本当だ!」
ハザリア「うぅ・・・・・・っ!」
マリ「ひるむなよ!」

 ターンッ!
ハザリア「ぐっ!」
凄くイイ声のベガ兵「倍返し、いや4倍返しだぁーっ!」ドカッ
ハザリア「なんのだぁーっ!?」

 バシャーンッ!
マリ「ハザリアーっ!」
凄くイイ声のベガ兵「心配か、心配だろう。
 さあ、潜って探したらどうだ。宝より先に男を引き上げてくれば、お前も撃つがな」
マリ「卑怯だぞ!」
凄くイイ声のベガ兵「勇気など通用すると思うな!」
マリ「勇気の権化みたいな声して何いってるんだ!」
凄くイイ声のベガ兵「ゴッツォ家秘蔵のお宝か。
 それさえあれば、『ガイゾックにどん引きしている姿がなんかカワイイ』
 などといわれているベガ大王も、覇気をお取り戻しになられるだろう。
 祖国のためなら、泥すらもかぶるさ!」
マリ「くそぅ、カッコいい声だなあ」
凄くイイ声のベガ兵「さあ、沈め。泥まみれになれ! 着衣のままな!」
マリ「イイ声で変態的な要求するなよ!」

 ブクッ ブクブクッ
凄くイイ声のベガ兵「なんだ、あぶくが」

 ザパーンッ!
凄くイイ声のベガ兵「なんだぁっ!?」
マリ「怪獣!? いや、あれは」
凄くイイ声のベガ兵「バカな! これが、こんなものが!
 ゴッツォ家が使役した怪物だというのか!?」
ハザリア「なぁに、ちょっとした手品だ。
 沼の底に沈んでいた古木が、時折噴き上がるメタンガスによって浮き上がっていたのだ。
 迷信深いアボリジニどもには、古木の影が怪物に見えたのだろうよ」ポタポタ
凄くイイ声のベガ兵「うぅ、貴様」
ハザリア「まんまと度肝を抜いてくれたものだな。
 背中ががら空きだったぞ、んん?」
凄くイイ声のベガ兵「待てっ、話せばわかる!」
ハザリア「なぁに、そう怖がるな」
 がしっ

凄くイイ声のベガ兵「なにをする、放せっ!」
ハザリア「暴れるな暴れるな。
 なるほど、たしかに腕力では貴様の方が上だろう。
 しかしこの姿勢からでは、貴様は鼻をつまむ俺の手すら払いのけられない。
 人体とは面白い具合にできているではないか」
凄くイイ声のベガ兵「むぐっ、むぐっ!」
ハザリア「おや、急に黙り込んでどうした。
 鼻をつままれては苦しかろう? 口をあけたらどうだ」
凄くイイ声のベガ兵「うぐ~っ!」
ハザリア「こいつを口の中に放り込んでやる。
 見ろ、ドゥボイシアの枝だ」
凄くイイ声のベガ兵「んっ、んぐ~っ!」
ハザリア「なぁに、死にはせん。
 嘔吐、腹痛、下痢、目まい、痙攣などの諸症状がやって来るだけだ」
凄くイイ声のベガ兵「いくら俺でも、ここまではせんぞ・・・・・・」
ハザリア「誰に着衣の泥まみれを命じたか、貴様は」

 どさっ

ハザリア「ふぅ」ペタン
マリ「おい、血が出てるじゃないか!」
ハザリア「銃弾がかすっただけだ」
マリ「なにいってるんだ、貸してみろ」ペロ
ハザリア「あっ、こら、なにをする!」
マリ「恥ずかしがってる場合かよ。
 泥沼に浸かったんだろ。キレイにしないと」
ハザリア「・・・・・・フン」
マリ「おい、なにするんだよ」
ハザリア「借りを作るのはご免だからな。毛繕いしてやる」
マリ「なにいってるんだ、泥まみれの手で」
ハザリア「なんだ貴様、髪がキシキシしておるな
マリ「弄ぶなよ」
ハザリア「ちょうどよい、泥パックだ」
マリ「ヘンな言い訳するなよ」
ハザリア「なにがヘンないいわけだ!」
マリ「素直にいえよ、ようするにお前はさ」
ハザリア「なんだ」

 ガサッ
キャリコ「あのですね、ちょっとした後戯みたいになってますから」
マリ「ワッ!」
ハザリア「オッサン! なんだいまごろ!」
キャリコ「やぁ、すいません。
 なんか異様にイイ声出してくるドートレスが妙に手強くて」
ハザリア「では、やむを得んか」
キャリコ「恐縮です」
マリ「どんだけイイ声のひといるんだよ、オーストラリア大陸!」
キャリコ「あと、なんか強いムラサメいるなあと思ってたら、中にババさん乗ってたり」
ハザリア「ああ、あるな」
マリ「なんだこのあるあるネタ」

 【日没後】
ハザリア「よし、あったぞ。古木の中に埋まっていた」
マリ「宝石? 水晶玉みたいだけど」
キャリコ「ん~?」
マリ「どうしたんですか?」
キャリコ「いえ、これ、特になんのエネルギーも検知されないんですけど」ピッピッ
ハザリア「そんなことはないだろう」
マリ「じゃ、これ、単なる水晶玉ですか?」
キャリコ「そりゃあ、地球のとは成分が違うんでしょうけど」
ハザリア「う~む、蓄光塗料のようなものが塗ってあるが」
マリ「あっ」

 カッ
マリ「夜空に」
ハザリア「えぇ~と」
キャリコ「なんですか、これ」
ハザリア「南十字星に沿って、プラネタリウム的な絵を映し出しておる」
マリ「このあと、なにか起こるのか?」
ハザリア「いや、台座の中に入っている装置は、地球でいうところの学研の付録程度のものだ。
 これ以上のことができるとは思えん」
キャリコ「じゃあ、なんですか。これ、ただのプラネタリウム装置ですか」
ハザリア「どうも、そうらしい。
 位置をずらすと竜骨座が映る。いや、時代を考えるとまだアルゴ座か」
マリ「なにをやってるんだ、お前の祖先は」
ハザリア「バルマー人のくせに地球の星座に精通しているとは、さすが俺の祖先だ」
マリ「そういうとこじゃなくて!」
キャリコ「あっ、なんか書いてありますよ。
 かすれててほとんど見えませんが、ははあ、バルマーの文字ですねえ」
ハザリア「・・・・・・これは!」
キャリコ「ああ、宇宙の終わりが来ても決してとかなんとかっていうのは、
 なるほど、そういう」
ハザリア「やかましい!」
マリ「なにが書いてあったんですか?」
キャリコ「ああ、それは」
ハザリア「黙れ、黙れよ!」
キャリコ「はははは、どうやら坊のご先祖さま、
 白人追っ払うとかなんとかとは全然関係なく、
 単に南十字星の下で奥さん口説いてただけみたいですね」
ハザリア「アホかぁーっ!」
マリ「こらこら! 投げ捨てようとするなよ! 一応祖先の宝だろ!」
ハザリア「このようなもの、欲しければくれてやる!」ポイッ
マリ「エ」
キャリコ「もらっといた方がいいですよ。縁起のいいものですから」
マリ「うん、まあもらっとくよ。フツーにキレイだし」
ハザリア「気分がくさくさしてたまらん!
 クジラだ! クジラを捕りに行くぞぉーっ!」
マリ「だから、クジラはあきらめろって!」

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最終更新:2009年10月17日 11:37
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