28代目スレ 2009/03/14(土)
ハザリア「フム」
レイナ「なによ」
ハザリア「こっちに置くとどうだ」
レイナ「なによ、ひとを右から左に」
ハザリア「なぜだ! まったくしっくりこない!」
レイナ「舞台やってるわけでもないのに、
あたしを右に置こうが左に置こうがしっくりくるわけないじゃない」
ハザリア「この役立たずめ!」
レイナ「なんであんたにしっくりこないってだけで役立たず呼ばわりされなきゃならないのよ!
マリはどうしたの、マリは!」
ハザリア「ここ数日、姿を見かけん!」
レイナ「自分が捨てられた鬱憤をあたしにぶつけないでよ!」
ハザリア「すっ、捨てられるとか捨てられないとか、そういうのではないっ!」
レイナ「まあね、マリの気持ちもわからないじゃないわよ。
あんたときたら声はでかいし自分勝手だし、
なぜか女の子とばっかりつるむし、かと思えばヴィレアムにデレる始末だし」
ハザリア「なにをわけのわからんことをいっておるか!
俺は、自分の手駒が手元にいないのがイヤなだけだ!」
レイナ「マリなら、さっき小走りで校門に向かってくのを見たわよ?」
【校門】
マリ「すみません、お待たせしちゃって」
アンダーゴーレム「いや、いま着いたばかりですよ」
【物陰】
ハザリア「な、ん、だ! あの複数での運用を前提としたオーバーマンのような男は!」
レイナ「まあ自業自得ね」
ハザリア「俺になんの業があるというのだ!」
レイナ「じゃあ訊くけどさ、あんたマリのためになんかしてあげたことってあるの?」
ハザリア「ん、んん? おぅ、そうだ。
東北の田舎とか、マヤの遺跡とか、12月に真夏のオーストラリアとか、いろいろ連れていったぞ」
レイナ「それは、あんたが自分の都合にあの子を巻き込んだだけじゃない。
しかも、女の子が喜ぶスポット1個も入ってないし」
ハザリア「アホか! オーストラリアとか、メチャクチャ青い空と海だったわ!」
レイナ「その青い空と海で、あんたはなにやってたのよ」
ハザリア「捕鯨だ!」
レイナ「うん、喜ばない。それは女の子、喜ばない」
ハザリア「船に上げたら、臭いのなんの」
レイナ「もはやイヤガラセの粋に達しているから」
ハザリア「捕鯨民族なのにか?」
レイナ「あのね、捕鯨民族でもなんでも、女の子は愛されたい生き物なのよ。
誰にもマリを責められないわね」
ハザリア「知ったふうなくちを聞くな!
愛されたこともない女が!」
レイナ「はぁっ!? ふざけないでよ!
愛されてるし! メチャクチャ愛され上手だし!」
ハザリア「もの悲しくなるような虚勢を張るな!」
レイナ「悲しくなんてなってない!」
ハザリア「貴様ごときが愛を語るな! 愛が汚れるわ!」
レイナ「あら、ふたりが行っちゃうわよ? 追わなくていいの?」
ハザリア「追うとか追わないとか、そういうのではない!
単に足がこちらを向くだけだ!」
レイナ「バッカなんじゃない、あんた」
【公園】
マリ「すみません、お待たせしちゃって」
アンダーゴーレム「いえいえ」
【物陰】
ハザリア「あやつめ、こんなところに、なんの用だというのだ!」
レイナ「ここ、最近整備されたばっかりで、けっこう人気あるのよ?
あそこの池でボートに乗ったカップルは必ず上手く行くって」
ハザリア「情報通ぶるな! 役にも立たない情報ばかり集めおって!」
レイナ「なにいってんの! 役に立つし! いつかきっと役に立つし!」
ハザリア「現実を見ろ! 貴様は愛されておらぬ!」
レイナ「ショックなのはわかるけど、あたしの精神を攻撃するのやめてよ!」
ハザリア「ショックなど、なにも受けておらぬ! 受ける理由がない!」
レイナ「へえ、マリたち、ボート乗り場の方に行ってるけど!?」
ハザリア「この愛されベタが!」
レイナ「ほら見なさい!」
ドカアァァァァァァァァンッ!!
【ボート乗り場】
メックスブルート「爆発だぁーっ!」
ジンバ「あんた、あんたぁ、大丈夫?」
ラッシュロッド「げほっ、げほっげほっ、いったいなにが」
ジンバ「いきなりボートが転覆して」
メックスブルート「こいつらだ! こいつらが池に近づいた途端、爆発が!」
マリ「エッ!?」
アンダーゴーレム「待ってください、僕たちは」
【物陰】
レイナ「ねえ、ちょっと、妙なことになってるんだけど」
ハザリア「フム、先ほどの発言を撤回しよう。
たしかに、少々ショックだった。
具体的にいえば、眩いばかりの閃光が水の上を走り、
白煙とともに大量の水飛沫が頬を叩くような」
レイナ「ふざけたこといってる場合じゃないでしょう!」
【ボート乗り場】
メックスブルート「すぐに警察に連絡を!」
ジンバ「え、ちょっと待って、あたしたち、事情聴取かなんかされるの!?」
ラッシュロッド「ジンバ、僕の後ろに隠れてるんだ!
まだ武器を持っているかもしれない!」
マリ「いやいやいや、持ってないから、そんなの」
アンダーゴーレム「話を聞いてください!」
メックスブルート「そっから動くんじゃねえっ!」
ラッシュロッド「両手を上に挙げろ!」
アンダーゴーレム「いったい、なにがどうなって」
ハザリア「ほたえなっ!」
マリ「ハザリア?」
ハザリア「ふん、馬鹿者どもは、くだらんことでやいのやいの騒ぎおる」
マリ「お前、なんでこんなところにいるんだよ」
ハザリア「いちゃいかんかっ!?」
マリ「いけなくはないけど、なんでいるんだよ」
ハザリア「いるとかいないとか、そんなことはどうでもいい!」
マリ「いるもいないも、いるし」
ハザリア「黙れ、黙れよ!」
マリ「お前、どうしたんだよ。ちょっとヘンだぞ?」
ハザリア「涼しい顔をしおって! 女というものは!」
メックスブルート「そいつらの仲間か!」
ハザリア「こんな女は知らん!」
ラッシュロッド「なにいってるんだ、明らかに知り合いじゃないか!」
ハザリア「知らんといったら知らん!」
マリ「知らないんなら、なんでここにいるんだよ」
メックスブルート「爆破犯の仲間か!」
ハザリア「そんなわけがあるか! こやつは爆破などしていないのだからな!」
ジンバ「でも、池のそばにいたのはその二人だけだったのよ?」
暗黒鳥人の子(♂)「事件は、まだ夕方にもなり切らない午後の公園で起こりましたでやんすカァー。
恋人たちがボートを漕ぐ穏やかな池が、突如爆発したのでやんすカァ。
ボートに乗っていた2名のうち、女性のジンバさんが脚に擦り傷を負うという、
痛ましい悲劇を呼びましたでヤンスカァ~」
レイナ「あっ、こいつ、またカァーカァーいって」
暗黒鳥人の子(♂)「おや、これはこれは、元部長」
レイナ「元って付けないで!」
ランル「果たして、事件の真相は、そして動機は?
犯人は、いかなる心の闇に囁かれてこがいな愚挙ばしちょぉのか」
レイナ「なにこのヘンな組み合わせ」
ランル「ママンの日記は、昔世界ば救ったそうっちゃ!
だからあたしも、そんなビッとした文章ば書こうと新聞部のドアば叩いたとね!」
レイナ「いや、叩かれた覚えないんだけど」
ランル「え、だって新聞部って」
暗黒鳥人の子(♂)「あ、そのひとは違うでヤンスカァ。
諜報部という名のパパラッチ部で、他人の個人情報を暴き立てて喜ぶという、
報道人の風上にも置けない行為を繰り返したから、あっしとは道を違えたんでヤンスカァ」
レイナ「来たばっかの子に、あたしの悪口吹き込まないでよ!」
ハザリア「なんだ、フクミツシゲユキの嫁か」
ランル「せんよ! 悪いことはせんよ!」
ハザリア「やかましいわ! 貴様、うっかりひとりで出版社のパーティにでも行こうものなら、
やれ奥さんにお会いしたかった奥さんを見たかったなどといわれる
フクミツの気持ちを考えたことがあるのか!」
ランル「そげなこと考えたことなかけん、
ジャンプSQの星占いコーナーの隅っこにあった四コママンガのことは前にブログで取り上げちょおよ!」
ハザリア「貴様かっ! 貴様のせいかぁっ!
あんな、存在意義のよくわからん四コマでもフクミツの大事な収入源だったというのに!」
ランル「あと、アキバザイジュウも終わっちゃって悲しか!」
ハザリア「ふざけるな貴様っ! あれをもか!」
ランル「なんでマンガ打ち切られるのあたしのせいにしちょぉのかわからんけど、
モーニングなんてメジャー誌で連載持っちょって、
マンガよりカワイかとか、マンガのほうがカワイかとかいわれつつ、
総合すると普通にカワイイ奥さんを専業主婦にしてあげられる甲斐性ば持った、
三十過ぎの立派なマンガ家さんば、当然のように呼び捨てにするのはよすっちゃ!」
ハザリア「ダメ人間のフリした成功者なんぞクソくらえだ!」
レイナ「フクミツシゲユキの話をやめなさい!」
暗黒鳥人の子(♂)「では、事件の経緯をまとめてみるでヤンスカァ」
ラッシュロッド「僕たちがボートの発着場に向かおうとしたら、突然爆発が」
ジンバ「あたしは発着場に背中向けてて、よくわかんなかったんだけど」
メックスブルート「私は発着場に、お二人のボートをお迎えに出たところでした。
そのとき、池に近づいて来たのは、そこの2人だけで」
マリ「待ってくれ、わたしたちは本当になにも」
ハザリア「たち、だと」
マリ「なんだよ」
暗黒鳥人の子(♂)「やはり、動機は痴情のもつれで?」
マリ「なにをいってるんだ」
レイナ「あんたは、なんで同級生が不利になるようなこというのよ」
暗黒鳥人の子(♂)「あっしら、辛くても悲しくても、
ただありのままの真実を伝えることが報道魂だと心得ているでヤンスカァ」
レイナ「いらない、そのムダに真面目な報道魂」
ランル「でも、この公園、テロ警戒かなんかで、
入り口のとこに危険物検知センサーばついちょぉはずだけど」
マリ「へえ、そんなのあったんだ」
暗黒鳥人の子(♂)「おふたりからは、火薬の臭いなんかはしないでヤンスね」クンクン
アンダーゴーレム「そんなもの持っていませんから」
ハザリア「ふん、貴様、鼻が利くか。ほかの連中の臭いも嗅いでやれ」
暗黒鳥人の子(♂)「男性の方は、なにも。
女性の方は、水でだいぶ薄まってやすけども、香水の匂いが少々。
それから、監視員さんからは石油の臭いが」
メックスブルート「ああ、さっき、ストーブの灯油を入れ替えてて」
ランル「おふたりは、あたしの先輩方が爆発物かなんか仕掛けてるの見よん?」
ラッシュロッド「いや、そういう様子はなかったけど」
ハザリア「ふん、そちらの監視員の様子はどうだった」
ラッシュロッド「べつに、ただ立ってるだけだったけど」
レイナ「夜のうちにでも、時限爆弾かなんか仕掛けてあったんじゃないの?」
ジンバ「茂みもなにもない見晴らしのいいとこだから、
そんなものがあったらすぐわかりそうなものだけどねえ」
ハザリア「ああ、つまらん、くだらん。もうよい。
おい貴様、監視員が発着場まで迎えに出ていたといったな。
そのときこやつ、メガネかゴーグルをかけておらなんだか」
ラッシュロッド「そういえば」
メックスブルート「それがどうしたっていうんだ、メガネくらい」
ハザリア「黙れっ!」
メックスブルート「っ!」
ハザリア「つまらん消去法だ。
まず、こやつら我々はこやつらが歩いているのを後ろから監視していたから、
爆発物など仕掛けていなかったことを断言できる」
マリ「なんでわたしを見張るような真似してたんだよ」
ハザリア「次に考えられるのは、被害者による自作自演だ。
その場合、自分が怪我をすることを覚悟した上での犯行ということになる。
動機として考えられるのは、無理心中か別れ話のこじれといったところか。
しかし、それにしてはそやつらは仲が良すぎる。
爆発の直後にお互いの身の安全を考えるなど、こじれたカップルにはあり得んことだ」
ラッシュロッド「いやぁ、だって」
ジンバ「ねえ、えへへ」
ハザリア「すると、残るは貴様だけだ」
メックスブルート「言いがかりだ!
どうして自分の職場を吹っ飛ばさなくちゃならないんだ!」
ハザリア「動機なんぞ知るか」
メックスブルート「俺からも火薬の臭いなんかしてないって、
そっちのトリがいってたのは聞いてただろ!」
ハザリア「だが、灯油の臭いがしていた」
メックスブルート「理科のお勉強したほうがいいんじゃないのか?
灯油を池にまいたら爆発するなんて話、聞いたことがねえ」
ハザリア「貴様の前職を当ててやろうか?
化学の教師か、工業用薬品を扱う工場勤務か」
メックスブルート「なにを根拠に」
ハザリア「爆発に火薬が必要など、つまらん発想だ。
水の上を転がりまわる炎、大量の白煙、そして激しい爆発。
これは金属ナトリウムを水にブチこんだときの反応だ。
それほど量はいらん。
2グラムもあれば、ひとを驚かせる程度の爆発は起こせる。
ただし、問題はある。
反応の際、強アルカリ性の溶液が飛び散り、これが目にはいると失明の危険すらある。
医薬用外劇物であるナトリウムを調達できる立場の人間が、この程度のことを知らないはずがない。
ゆえに、犯人は犯行時にメガネなりゴーグルなりで目を保護していたはずだ。
さて、メガネをかけていたのは誰だ?」
メックスブルート「そんな、メガネくらいで」
ハザリア「大気と触れても危険な金属ナトリウムは、通常灯油などの中で保管される。
灯油の臭いをさせていたのは誰だ?」
ラッシュロッド「まさか」
メックスブルート「うるせえ! うるせえうるせえ!
こっちは工場で派遣切りされて、こんな面白くもねえ仕事やらされてるってのに、
どいつもこいつも幸せなカップル面してボートなんか乗りやがって!
俺はな、バカどもの目を覚ましてやっただけだ!
現実は甘くねえぞって!」
ハザリア「つまらん主張だ。
続きは、裁判官にでもいうのだな」
【ボート乗り場】
アンダーゴーレム「ありがとうございます。おかげで疑いが晴れました」
ハザリア「よせ。俺は、いっそ貴様が真犯人ならよかったと考えたいたのだ」
マリ「なにいってるんだ、失礼じゃないか」
ハザリア「やかましいわ! だいたい、なんだこの男は!」
マリ「なんだって、ヨガ教室の体験入会生だよ」
ハザリア「は?」
マリ「ちょっと前からヨガ教室行ってるんだ。
演技やるのに、身体の扱い方は知ってたほうがいいからな。
それで、今日体験入会のひとが来るから、道案内してやってくれって頼まれてたんだよ」
ハザリア「ふざけるな! なぜヨガをやろうという人間とボートに乗ろうとするか、貴様!」
マリ「ボートなんて乗るつもりないよ!
ほら、公園突っ切ったとこにある町民体育館、あそこでヨガ教室やってるんだよ。
ちょっとわかりにくいところにあるから、道案内が必要なんじゃないか」
アンダーゴーレム「それが、こんなことになっちゃって」
ハザリア「貴様は失せろ!」
マリ「オイ、なにするんだ、せっかくの入会希望者を」
ハザリア「貴様も、勝手なことをするな!
マリ「なんだよそれ、なんでヨガするのにいちいちお前の許可取らなくちゃならないんだよ」
ハザリア「俺はっ!」
マリ「お前は?」
ハザリア「こっ、駒がっ、自分の駒が勝手に動くのが気に食わんだけだ!」
マリ「誰がお前の駒だよ!」
ハザリア「それを貴様、ここ数日俺を避け続けていたのはどういう了見だ!」
マリ「どういうって、べつに、深い意味はないけど。
ほら、時期が時期じゃないか。
お前のまわりウロウロしてるのも、なんか催促してるみたいっていうか、
期待してるみたいっていうか、なんか、そういうふうに思われるんじゃないかなあって」
ハザリア「なにをゴニョゴニョいっておるか!
時期とはなんだ、時期とは!」
マリ「いや、3月14日」
ハザリア「春分の日にはまだ速いぞ!」
マリ「お前、ひょっとしてホワイトデーって」
ハザリア「俺はもらうもんはもらうが、他人にものを与えるのは大嫌いだ!」
マリ「このっ、こいつ! こいつ! こいつ!」
ハザリア「わっ、なにをする! 押すな! 突き飛ばすな!」
ガタンッ!
ハザリア「なにをするか、このたわけ!」
マリ「ボートの上なんかに逃げるな!」
ハザリア「貴様が突き飛ばしたのだろう!」
マリ「さっさと降りればいいじゃないか」
ハザリア「イヤだ、降りない」
マリ「妙な拗ね方するなよ」
ハザリア「ひとりでは重心が取れんな。おい、そこに座ったらどうだ」
マリ「エ?」
ハザリア「俺はな、他人にものを与えるのは嫌いだ。
ものなど、いつかは壊れる。
それでなくても、季節の変わり目あたりにゴミ箱に入って終わりだ。
どうせゴミになるようなものをわざわざくれてやるのはアホらしい」
マリ「ああ、ほんと、メンドくさい男だなあ」
キィー キィー キィー キィー
レイナ「あ~あ、乗ってっちゃった。
このあと警察の現場検証なんかもあるだろうに、いいのかしら」
ランル「あれ、そういえばここのボートって」
暗黒鳥人の子(♂)「元部長、ホワイトデーでヤンスけど、
なんか欲しいでヤンスカァ?」
レイナ「やめて。暗黒鳥人に憐れみの目を投げかけられる覚えない」
暗黒鳥人の子(♂)「かっ、勘違いしないで欲しいでヤンスよねっ!
あっしだって、張り合う相手がいないとつまんないってだけなんでヤンスカァーからねっ!」
レイナ「ヘタクソなツンデレをしないで!」
ランル「写メ撮ってよかと?」
レイナ「絶対にやめて!」
最終更新:2009年10月17日 11:37