29代目スレ 2009/08/23(日)
【南仏 プロヴァンス地方 アルル】
マリ「クソッ、離せよ!」
ラインX1「
ハザリア・カイツというのは、あなたで間違いないのね?」
ハザリア「フン、貴様のツラはどこかで見たことがあるぞ。
たしか、エリ・アンザイのところにいた助手かなにかだったな」
ラインX1「『カラコルム山脈における闇の帝王の作り方』、
『アボリジニの天体観測と捕鯨文化』、
『ウツノミヤにおける餃子文化の隆盛』、
『マヤ文明、クリスタルスカルと夫婦生活』。
あなたの書いたレポートは読ませてもらったわ」
マリ「お前、そんなもの書いてたのかよ」
ハザリア「定期的に留学の成果を出しておかぬと、学費をもらえぬのでな」
ラインX1「地球をあちこちほじくり返してきたあなたが、
このところ南フランスを嗅ぎまわっている。
ただのヴァカンスとはいわせないわ」
マリ「わたしは本場のプロヴァンス風駅弁を食べに来ただけだ!」
ラインX1「そんな駅弁はないわ」
マリ「そんなことない! 諦めずに探せば、きっと見つかるはずだ!」
ラインX1「なぜそこまで駅弁に執着を」
ハザリア「ま、そういうわけだ。そやつはなにも知らぬ。離してもらおうか」
ラインX1「そうはいかない。
答えなさい。あなたが探しているのは、『アシヤのひまわり』ではないの?」
ハザリア「違うな。『アルルの8番目のひまわり』だ」
ラインX1「では、行きなさい。このお嬢ちゃんの身がかわいいのならね」
ハザリア「フン、そのような駅弁狂いの女、どうなろうと知ったことか。
腰が痛くなる前に手を切るのも、ひとつの選択肢だろう」
ラインX1「レポートを書く上で、ひとつアドヴァイスをあげる。
あなたはね、まわりくどくものをいうクセがあるのよ」
ハザリア「黙れ、黙れよ!」
【田舎町】
キーキーッ!
ミズル「あっぶないなあ!」
ランディ「あれ、お前なんでこんなところに?」
ハザリア「貴様らか。ちょうどいい、乗せろ」
ミズル「あっ、ちょっと待って! ハンドルさわっちゃイヤだよ!」
ガタゴト ガタゴト ガタゴト
ハザリア「しかし、このポンコツでよく南フランスまで来れたものだな」
ミズル「う~ん、ヒョーゴ県までドライブするはずだったんだけど、
気が付いたらこんなとこまで来てたんだよ。Pちゃんのせいで」
ハザリア「なるほど」
ランディ「なるほどじゃねえよ! 俺、なんもしてねえよ!
ハンドル握ってたの、ミズルじゃないか!」
ミズル「だって、Pちゃんが火の精霊がどうとかコワいこと言い出したから」
ハザリア「ピースケ、子供をコワがらせるな」
ランディ「電波者を見るような目で俺を見るんじゃねえっ!
ほんとだよ! ほんとに火の精霊がこっち方面向かって騒いでたんだよ!」
ハザリア「火の精霊云々の妄言はともかくとしてだ」
ランディ「ともかくで片付けんなよ!」
ハザリア「貴様ら、ここがアルルであることをわかっているのか?」
ミズル「へ? アルル? へえ、ここアルルなんだ。
例の跳ね橋はどこにあんの? おれ、スケッチしたいな」
ランディ「なんだ、ここ、有名な観光地なのか?」
ハザリア「炎の画家、フィンセント・ウィリアム・ファン・ゴッホ。
ここアルルは、かのファン・ゴッホが『芸術家たちのコロニー』を作ろうとして、
知っている限りの知り合いに手紙をだしたものの、来たのはゴーギャンひとり。
しかもゴーギャンという画家は当時としては珍しく画商として成功した人物で、
アルルに行ったのは商売上のトラブルから身を隠すためで、
特にファン・ゴッホに友情を感じていたわけではないという説が有力だ。
そんなだから、ふたりの間にはとんでもない温度差があった。
上手く行っていたのはほんの一時期のみ。
やがて口論が絶えなくなり、とうとうファン・ゴッホはカミソリ持ってゴーギャンを追い回した挙げ句、
みずからの耳を切り落とし、いきずりの娼婦にプレゼントするという奇行に走った」
ランディ「聞いたことあるぞ。『耳切り事件』てやつだよな」
ミズル「まあ人間関係は上手く行かなかったけど、
ファン・ゴッホの代表作はほとんどこのアルルで描かれたんだよ」
ハザリア「ファン・ゴッホは自分の魂の象徴としてひまわりを好んで描いた。
全部で12点ある『ひまわり』のうち、7枚はここで描かれたものだ」
ランディ「へえ、『ひまわり』ってそんなにあったんだ」
ハザリア「アルル以前に描かれた5点と、アルル時代の4点は現在でも美術館が所有しておる。
残りの、1点はどこぞの富豪が、1点はバブル期にニホンの保険会社がオークションで競り落とした」
ミズル「で、残り1点はヒョーゴ県アシヤ市の個人が所有してたんだよね。
第2次世界大戦で燃えちゃったっていうけど、
ほんとはどっかに隠してるんじゃないかーって、だからおれ、アシヤに行こうとしてたんだよ。
見たいもん。『アシヤのひまわり』」
ハザリア「あれは本当に燃えてしまったのだ。あきらめろ。
それよりも、俺は『アルルの8番目のひまわり』を探さねばならぬ」
ミズル「8番目? そんなのがあるの?」
ハザリア「アルルで描かれた7点のうち、4点は1888年8月に、残り3点は1889年1月に描かれたものだ。
ファン・ゴッホはモデルがないと描けぬ画家でな、
他人の作品も自分の作品もよく模写していたといわれている。
1月に描かれた3点は、ゴッホ自身の手によるレプリカだといってもいい。
オリジナルが4点あったのに対し、レプリカが3点しかないというのはおかしい」
ミズル「単に気が乗んなかったんじゃないかなあ。
『耳切り事件』のあとのファン・ゴッホって、心身共にまともな状態じゃなかったでしょ?」
ハザリア「黄色に執着し、自宅を真っ黄色に染め上げるほど偏執的な画家だぞ。
むしろ、サン・レミの療養院にぶち込まれるまで『ひまわり』の創作をやめなかったと考えるほうが自然だ」
ミズル「でもさ、それ、テオさんへの手紙に書いてあるの?」
ランディ「誰だよテオさんて」
ハザリア「ファン・ゴッホの弟だ。
存命中のファン・ゴッホはまったくの無名画家で、
画商をやっておった弟テオにパラサイトしっぱなしだった。
話し相手もおらぬものだから、異様に細かい手紙を668通も出していた」
ランディ「ちょっとキモい数だな」
ミズル「まあ、ちょっとイタいひとだったんだよ」
ハザリア「無名画家だったわりにファン・ゴッホの人生が詳細に伝えられておるのは、この書簡集があったからだ。
しかし、『耳切り事件』の前後はテオが嫁をもらったり子供が産まれたり商売が傾いたり、
いろいろあって兄弟はやや疎遠になっていた。
手紙に書かれておらぬ作品があってもおかしくはない」
ミズル「そりゃまあ、おかしくはないけどさあ」
ハザリア「手紙に書かれなかった理由は、なんとなく想像が付いておる」
ランディ「ところでさ、お前らなんでファン・ゴッホ、ファン・ゴッホって、
いちいち『ファン』て付けるんだ?
ゴッホでいいじゃないか」
ミズル「あのねPちゃん、『ファン』ていうのは家格を表すものなの」
ハザリア「ファン・ゴッホをゴッホと呼ぶのは、
ダ・ヴィンチをヴィンチと呼んでしまうようなものなのだ」
【裏通り】
ランディ「なんだか、雰囲気悪いとこに入ったなあ」
ハザリア「ファン・ゴッホは自分の耳を切り落としたあと、公娼館に行った。
昔そういうものがあった場所だから、現在でも空気は大して変わっておらぬ」
ミズル「うわっ! フランスすごっ! あんなおっぱい出して歩いてるひとがいるよ!」
ハザリア「骨格を見ろ。あれはゲイだ」
ミズル「フランスはじまってるねっ!」
ランディ「ミズル! 前見て運転しろ! お前も、中学生をこんなとこに連れてくるな!」
ハザリア「心配するな。現在はただのモーテルのはずだ」
【モーテル】
ラインX1「そう、ここまで辿り着いたのね」
ハザリア「まわりくどいのはどちらだ」
マリ「お前、早く来すぎだよ! まだフランス鉄道に乗ってないのに!」
ハザリア「黙れ、黙れよ! 貴様、自分の立場がわかっておるのか!」
ラインX1「ここまで辿り着けないような人物なら、この子はそのまま連れて行こうと思っていたわ」
ミズル「あれ? あのひと、捕まってたの?」
ランディ「お前な! そういうことは最初にいえよな!
俺、今の今まで完全に観光気分だったよ!」
ミズル「やいやい、そのひとを早く離さないと、
ここにいるPちゃんが精霊についてコワく語り始めるぞ!」
ランディ「風でも火でも土でもいいから、精霊! こいつにバチを当ててやれ!」
ハザリア「貴様は、エリ・アンザイのところにいたのなら専門は超考古学のはずだろう。
ファン・ゴッホは、考古学というには新しすぎないか?」
ラインX1「学究にはおカネがかかるのよ。
こんな娼館が建ち並ぶ町の出身の私にとって、それは大変な問題なの。
ファン・ゴッホはカネになるわ。しかも『ひまわり』なら、ニホン円で58億にもなるんでしょう?」
ランディ「無茶いうなよ。それはニホンがバブルだったころの値段だろ?」
ハザリア「いや、58億は適切、むしろリーズナブルな値段だ。
ファン・ゴッホはニホン人受けがいいからな。
『ひまわり』を買い取った保険会社が開いた展覧会は客入りもよく、収支はトントンになったそうだ。
おなじファン・ゴッホで、『アイリス』は72億で売れたし、
『医者ガシェの肖像』は個人が125億で買った。
新たに発見された『ひまわり』となれば、最低でも80億程度はするだろう」
ラインX1「それだけじゃない。ファン・ゴッホの名前は名誉になるわ。
私は、世紀の発見者として美術史に歴史を残すの」
ハザリア「自分で描いたわけでもない絵を捕まえて栄誉か。
他力本願な女だ」
ラインX1「うるさい!
片手間に書いたようなレポートであなたの名前が広まっているのはなぜかわかる?
あなたが、
バルマーの貴族だからでしょう!」
ハザリア「貴族といっても、王位簒奪車の孫だぞ、俺は」
ラインX1「ファン・ゴッホは、切り落とした自分の耳をガビィという娼婦に渡した。
臆病な田舎娘に過ぎないガビィは大いに怖がった。
でもね、ほんとはそれだけじゃない。
1889年3月、頭のおかしい画家は再びやって来て、
お詫びだといってガビィに包みに入ったなにかを贈った」
ハザリア「サン・レミに送られる直前だな」
ラインX1「ガビィは気味悪がって、包みを公娼館の主に渡したの。
主の名はドナウα1、私の祖先よ」
ハザリア「フン、だったら絵は貴様の家の蔵にでもあるはずだろう。
なぜやらんでいい恐喝までして探す」
ラインX1「ファン・ゴッホが天才画家として名を馳せたのはずっとあとのことよ。
当時は、真っ黄色に塗られた家に住んでる変人がおかしな荷物を持ってきたくらいの認識しかなかった。
あるとき、公娼館にひとりのニホン人留学生がやって来た。
ピロートークのついでかなにかで包みの存在を知ったニホン人は、
是非譲って欲しいと頼み込んできた。
ドナウα1にとっては、ゴミ同然の包みよ。
葡萄酒1本で渡してしまったそうよ」
ハザリア「そのニホン人留学生の名はなんだ」
ラインX1「カザーライロム。でも、そんな名前の日本人はどこにもいない。
そこで、わたしの持っている情報は途切れてしまったの」
ハザリア「たわけが」
ランディ「中国人かなんかと間違えたんじゃないのか?」
ハザリア「フランス語はhの発音をせぬ。
ヒロシマはイロシマになるし、ホンダはオンダになる。
カザーラというのは、カザハラという日本姓だろう。
そして、1889年といえばニホンは明治時代だ。
そんな時代にフランス留学をする人種といえば、限られてくる」
TELLLLL
イルム『おぉ、マサキんとこの、久しぶりだなあ』
ランディ「えぇっと、イルムさん。
ひょっとしてなんだけど、ヒロム・カザハラっていう名前の親戚いません?」
イルム『うん? 話したことあったか?
いるよ、何人も。
なんでも明治の頃、ドイツだかフランスだかに留学して森鴎外とかとも交流あった
偉いじいさんがいるって話でさ、そのじいさんにちなんでるんだとさ』
ランディ「あ、あのっ! そのひと、なんかドギツい黄色い絵を持ってたと思うんですけど!」
イルム『さあ、聞いたことないなあ。
あるとしたら、ニホンの本家の蔵じゃないのか?』
【日本 カザハラ邸の蔵】
マリ「ブースター付きの三輪車に、変形機構付きの自転車。
ガラクタばっかりだな」
ラインX1「ないじゃない!」
ハザリア「そりゃ、ないだろう。
絵画の保存には、室温20℃、湿度55%程度が望ましい。
このような、すきま風が吹いて蜘蛛の巣まで張られておる蔵になど置こうものなら、
1年もしないうちにカビまみれで虫に食われておるわ」
ランディ「なあ、庭のあっちのほうで、火の精霊がヘンなテンションで踊ってるんだけど」
ハザリア「そういうのはいらん」
ランディ「もうちょっと俺を有効活用しろよ!」
ミズル「ほんとだ。なんか古いタイプの定着液の匂いがする」
ハザリア「なるほど。おい、火の精霊とやらに掘り起こしてもらえ」
ランディ「火の精霊は土木作業なんかしねえよ」
ハザリア「なんだ、使えぬな、火の精霊」
ランディ「しょうがないだろ!
俺は本来風の精霊使いで、火の精霊はなんか知らないけどいうこと聞いてくれるだけの存在なんだから!」
ハザリア「なあ、これ以上、痛々しいウソをつくのはやめたらどうだ」
ランディ「憐れむような目で見るな! 俺は妄言吐いてるわけじゃねえ!」
ガッ ガッ
ミズル「あ、なんかあったよ」
マリ「なんだ、これ。防空壕か?」
ハザリア「第2次世界大戦中、金持ちどもは自宅の隅に防空壕を作っていたらしい。それだろう」
ミズル「でも、ヘンだなあ。油絵の具の匂いが、妙に少ないよ。
なんかすごく古い顔料の匂いばっかし」
ラインX1「そんなこと知らないわよ! 早く絵を取ってきなさい」
【地下室の中】
ハザリア「フハハハ、なるほど。
モロノブにキヨナガか。カザハラの祖先め、よい趣味をしておるわ!」
マリ「美人画ばっかりっていうのが、なんていうかイルムおじさんのご先祖だよな」
ハザリア「明治期に海外へ流出した浮世絵の類だろう。
祖国の財産を取り戻そうとしていたのか、単に美人画が好きだっただけか」
ランディ「たぶん、後者だな」
ラインX1「いまや二束三文の浮世絵なんかどうでもいいわ。
『ひまわり』よ、『ひまわり』なら、ここにある浮世絵全部を合わせたよりも価値があるのよ!」
ミズル「あったあった。ねえ、これじゃない?」
バサッ
マリ「エ?」
ランディ「これは」
ハザリア「下書きだけか」
ラインX1「想定外だけれど、まあ仕方がないわ。
ひまわりが描いてあって、ゴッホのサインがあるなら」
ミズル「うわっ、スゴい!
クローム・イエローに薄目のヴェロネーゼ・グリーン、ロイヤル・ブルー!
19世紀に使われてた、本物の画材だ!」
ラインX1「待て、お前、なにをしている」
ミズル「ん? うんうん、聞こえるよ。
黄色はイヤなんだね。じゃあ、いっそブルーにしちゃおうか。
塗りはこれでもかってくらい厚いのがいいって?
わかったよ。任せといて」
ラインX1「なにと会話している! 離れろ! その手を止めろ!」
ハザリア「おい、火の精霊でその女を捕まえろ」
ランディ「風の精霊よ!」
ラインX1「うぐっ!」
ハザリア「あれだけ火の精霊火の精霊といっておいて、
いざというとき使うのが風の精霊とはどういうことだ!」
ランディ「ムチャいうなよ! こんな地下室で火の精霊なんか使えるわけないだろ!」
ラインX1「くっ、動けない!」
ミズル「え? なんだって?
もう、絵の具を直でキャンパスに塗りつけて欲しいって?
オシャレさんだねえ」
ラインX1「止めろ! その子供を止めろ!」
ハザリア「黙れよ。これ以上騒げば、耳を切り落とすぞ。
イカれたファン・ゴッホマニアとして名を馳せたいか」
ランディ「なあ、お前、ひょっとして怒ってるのか?」
ハザリア「怒ってなどおらぬ。怒る理由がどこにある」
ランディ「いや、だってさ」
マリ「ン?」
ハザリア「黙れ」
ランディ「わかったよ、もう」
ミズル「さあ、おれの絵筆は性格悪いよ!」
ラインX1「やめろーっ!」
ラインX1「お前たちは、なにをしたのかわかっているの?
ファン・ゴッホによる最後の『ひまわり』、
地球人類の財産が、私の栄誉が!」
ハザリア「故人の遺志をやたら尊重するのは、地球人類の習性ではなかったか?
ファン・ゴッホは下描きのままの『ひまわり』を、画材と一緒にして娼婦に渡した。
そして1889年1月以降、『ひまわり』は制作されておらぬ。
画家として成功もせず、唯一の友人にもどん引きされた。
ファン・ゴッホは、それまでの自分と決別したのだ。
誰か別の人間に『ひまわり』を完成させて欲しいと、そういう未練を残してな」
ラインX1「19世紀に死んだ人間のことなど知ったことか。
下描きのみとはいえ、世界遺産級の絵画を子供に完成させるなんて。
しかも、色まで変えて」
ハザリア「ま、あと100年もすれば
ミズル・グレーデン名義で価値が出るかも知れん。
気長に待つのだな」
ラインX1「そんな・・・・・・、バカな・・・・・・」
【カザハラ邸 庭】
マリ「よかったのか? あれ、お宝だったんだろ?」
ハザリア「フン。俺は、『アルルの8番目のひまわり』の実在を確かめたかっただけだ。
レポートさえ書ければ、実際の有無はどうでもよかった。
それに、これ以上俺が『ひまわり』を所有すれば、地球政府になにかいわれかねないからな」
マリ「これ以上?」
ハザリア「西暦にして1940年以降、ある役人がある未開惑星の監視任務に就いた。
その星では、蛮族どもが飽きもせず世界規模の戦争をし続けていた。
役人は蛮族どもの習性は心から軽蔑していたが、
蛮族どもの作る芸術には惚れていた。
そして、1945年1月以降、ちっぽけな島国の、
芸術的な建物や絵画が密集しているエリアが何度となく空襲されるようになった。
役人は、己の心を惹いた素晴らしい黄色が戦火に消えてしまうことを悲しみ、
こっそりと回収して実家に持って帰ってしまった」
マリ「エッ」
ハザリア「役人の日記には、何度となくアシヤという地名が出ておった」
マリ「おい、まさか」
ハザリア「見たいというなら見せてやる。
俺の実家に行かんとならんがな」
最終更新:2009年10月17日 11:38