8代目スレ 投稿日:2006/01/26(木)
ハザリア「フハハハハ。書けたぞ!
ウム。何度読んでも素晴らしい出来だ。俺、恐ろしい子! フハハハハ!」
マリ「寒中水泳にも出ないで引きこもってたと思ったら、新しい台本書いてたのか」
ハザリア「フハハハハ! 今度のはすごいぞ! タイトルは『からくりユーゼス』!
謎が謎を呼ぶサスペンス劇でな・・・」
マリ「主役はヴィレアムか?」
ハザリア「なっ!? 貴様、念動力を使うなんて悪趣味だぞ!」
マリ「使うかそんなもの。ハザリア坊ちゃんは案外友達思いだからな」
ハザリア「黙れ、黙れよ! お、俺がそんなわけあるか!
バルマーで冷血無比といえば俺というくらいに冷血なんだぞ、俺は!」
マリ「あー、真烈火武者寿泥華カッコいいなあ」
ハザリア「無視するなよぅ! 寂しいじゃないか!
あと、いい加減ホビーヤーパンを返せよ! 俺はまだ読んでいないんだぞ!」
ハザリア「あー、主役のヴィレアムは複数の女に想いを寄せられていながら、
人形にしか愛情を示さない変態騎爵だ。
それが、ある日突然不可思議な事件に巻き込まれ、ジワジワと追い詰められ、最後には殺されてしまう。
緊迫感が演技の鍵だからな。よく台本を読んでおくように」
ヴィレアム「・・・なあ、主役はうれしいんだが、
なんで俺が大きい役を演るといつも最後は死ぬんだ?」
ハザリア「ああお前の顔死相が出てるからな。
次に、変態騎爵に想いを寄せる村長の娘役にレイナ」
レイナ「任せなさい!」
ヴィレアム「おいちょっと待て! お前いまサラリと恐ろしいこといわなかったか?」
ハザリア「変態騎爵に想いを寄せるレストランのウェイトレス役にリトゥ」
ヴィレアム「こっち向け! あと、変態騎爵っていうのは役名なのか!?」
ハザリア「変態騎爵に想いを寄せる村役場の娘にゼラド!」
ヴィレアム「任せろ。俺は、この役に命を賭ける・・・!」
レイナ「・・・あんた、騙されてるわよ」
ハザリア「そしてマリ。貴様には変態騎爵に愛される人形バランシュナイルの役をやってもらう」
マリ「人形役?」
リトゥ「ちょっと、なに考えてるのよ!? 人形役なんてすぐにやめさせて!」
ハザリア「ああ、マリはなんでだか知らんが舞台で異常に目立つからな。
特に背が高いわけでも派手な顔立ちをしてるわけでもないのに、存在感が圧倒的過ぎる。
今回のような群像劇では、そういうのが邪魔なのだ。
いいか、俺は今後マリを様々な役で使いたいと思うからこそ、己を殺す演技を身につけて欲しくてだな・・・」
リトゥ「そういうこといってるんじゃないの! 人形役だけはダメなのよ!」
ハザリア「あん? 貴様血相変えてなにいってるんだ」
リトゥ「マリはね、人形がダメなのよ」
ハザリア「フハハハハ! 奇妙なことをいうな!
マリはあんなにジュデプラを持っているではないか!」
リトゥ「ロボットと一緒にしないでよ!
どうしてかわからないけど、マリはちっちゃいころから人形をすごく怖がるの!
マイ母さんも人形が苦手みたいだし、ウチには昔から人形が1体もないくらいなのよ!」
ハザリア「ム・・・。そういうことなら仕方がない。
その辺からレラかルサイケでも攫って来て・・・」
マリ「そんな必要はない。リトゥ、気持ちはうれしいけど、余計なことをしないでくれ」
リトゥ「マリ、でも貴女・・・」
マリ「どんな役でもやってやるさ。それに、人形が怖いなんて、いつまでも子供みたいなこといってられない」
ハザリア「フン、ほざいたなマリ。あとで吠え面かいても知らんからな!
だが、泣きつくなら早めにするがいい。スケジュールの変更が面倒だからな!」
稽古中
レイナ『騎爵さま、今朝もパンと牛乳をお持ちしましたわ』
ヴィレアム『ああ、そこに置いておいてくれ。そしてさっさと帰ってくれ』
ハザリア「よーし、いいぞ! そんな女どうでもいいといわんばかりの演技だ!」
ヴィレアム『生きた女など、醜くおぞましいばかりだ。
ああバランシュナイル、可愛いバランシュナイル。私には君だけがいればよい』
ゼラド『騎爵さま、村役場からの回覧板をお持ちしましたわ』
ヴィレアム「やあよく来たね。上がってお茶でもどうだい」
パカーン!
ハザリア「いきなり変態騎爵の人物を変える奴があるかぁ!?
なんで貴様はいつもいつも村娘相手の場面でわけのわからんことをし始めるのだ!?
それに、人形に対する異常な執着もロクに出ていないぞ!
部屋に貼ってあるバカでかい乳のポスターに毎朝ほお擦りしているときの気色悪さはどうした!?」
ヴィレアム「なんでお前がそんなことっ!?」
ゼラド「ふぅん。男の子ってそういうことするんだ」
ヴィレアム「おい! 俺は優遇されてるフリしていじめられてないか!?」
ハザリア「おいマリ貴様もだ! どこの世界に主人に撫でられて冷や汗をかく人形があるか!?
気色悪いのはわかるが、吐くなら後でいくらでも吐け!
貴様はいま人形なのだ! 動けない! 喋らない! なにも感じない!
変態の思うがままにされる人形なのだぞ!」
リトゥ「人形人形連呼しないでよ!
ただでさえ人形役で無茶やってるのに、その上変態にぺたぺた触られて、マリはもう精一杯なのよ!?」
ヴィレアム「おい、なんかもう役名じゃなくなってないか?」
ハザリア「ああもう! なんなんだリトゥ、貴様はマリのマネージャーか!?
おせっかいを焼く暇があったら自分の稽古をしたらどうだ!」
リトゥ「マリ! やっぱり無茶よ。今からでも遅くないから役を・・・。マリ?」
マリ「・・・・・・」
リトゥ「そんな、気絶するまで・・・」
マリ(・・・・・・)
レビ(マリ・・・、マリ・・・)
マリ(・・・・・・)
レビ(人形のフリなどしていると、本当に人形になってしまうぞ・・・。
私に乗っ取られてしまうぞ・・・)
マリ(・・・久しぶり)
レビ(それとも、お前は人形になりたいのか?
いいんだぞ? 私はいつでもお前に成り代わってやる・・・)
マリ(黙れ)
レビ(マリ?)
マリ(人形なんて、私が被る何千何万の仮面のうちの、たった1枚だ。
お前は黙って、特等席で私の演技を見ていろ)
レビ(・・・フフフ。マリ・・・、マリ・・・、強くなったのだな)
ハザリア「フン、目を覚ましたか」
リトゥ「マリ! やっぱり・・・」
マリ「・・・おいハザリア、気が変わった。出演料を寄こせ。
そうだな。あのホビーヤーパンをもらおうか」
ハザリア「はん、減らず口を叩くな。貴様ごときが俺を満足させるなら、創刊号を進呈してやる」
マリ「その言葉、忘れるなよ」
劇当日
ヴィレアム『レイナが死んだ。リトゥが死んだ。俺の周りをうろついていた女たちが次々と不可解な死を遂げた。
私に疑いがかけられている。ついさっきも警官が来た。
ああバランシュナイル。泣いちゃいけないよバランシュナイル。私は怒っちゃいないよ。
犯人は、きっと君なのだろう? 私にまとわりつく穢れた女たちに天罰を下したんだね。
フフフ。焼きもち焼き屋さんめ』
ザワ ザワ ザワ
レイナ「すごいわヴィレアム。観客が本気でキモがってる」
ハザリア「フハハハハ。やはり俺が睨んだとおりだ。
ヴィレアムの奴、報われるわけがない恋の演技をさせれば抜群の輝きを放つ・・・!」
レイナ「あんたさあ、そのたまに働く直感はなんなわけ?」
リトゥ「マリ・・・、大丈夫かしら」
ヴィレアム『ゼラドが死んだ! 全身の血を抜き取られ、丘の上に転がっていた!
ああ、死体を発見したのは私だ。あんなにも恐ろしいものを見たのは初めてだ!
バランシュナイル、君なのか? 本当に君があんなに恐ろしいことをしたのか!?』
レイナ「・・・なんか、怖い・・・!」
リトゥ「マリ・・・、舞台が始まってから身動きひとつしてない・・・。
本当に息をしてるのかしら? 変態にしたい放題されてるのに眉ひとつ動かしてない・・・」
ハザリア「フハハ・・・。おいリトゥ、俺はいまどんな顔をしている?
舞台が始まってから鳥肌が止まらん! 俺は今日ほど奴を恐ろしいと思ったことはないぞ・・・!
だがなんだこの感覚は・・・! 怖いというのとは違う気がする・・・。マリから目を離すことが出来ん!」
ヴィレアム『村では私が女の血をすする吸血鬼だという噂が広まっている!
屋敷の外では悪魔狩りの怒号が止まらない。私はもうこの村にはいられない!
バランシュナイル、バランシュナイル! どうして黙っているんだ!?
君は女どもの血肉を食らい、生命を受けたのではなかったのか?
どうして声を聞かせてくれないんだい? どうして微笑んでくれないんだい?』
???『泣かないで。微笑みなら私があげるわ』
ヴィレアム『どこから入った。小学校の教師がなんの用だ!?』
アクア『邪魔者はもういない。貴方ももうこの村には住めやしない。
いいえ、どこに逃げたって無駄よ。貴方に近づく女は1人残らず・・・』
レイナ「いや、なんでアクア先生出てるのよ!?」
ハザリア「ああ、ラミア先生に打診したらあっさりOKもらえた」
レイナ「いや、本人に聞きなさいよ!?」
ハザリア「いやあ、やはり不幸な役をやらせるとこれ以上なくハマるな、あの人」
ヴィレアム『それ以上いうな! 違う! お前などであるはずがあるか!?』
アクア『いいえ私よ。私が、貴方のために少女たちを殺めたの。
貴方は気付きもしなかった。私の姿など見ようともしなかった。
いいわ。私と貴方以外は全員殺してしまおう。そうすれば貴方には私しかいなくなる』
ヴィレアム『違う! 違う! あれはバランシュナイルが私のために・・・』
アクア『そうよ。私と貴方が生きる世界は、別にこの世でなくてもいい。
生きていなければならない必要すらない。だって、私たちの愛はそれほど神聖なんだもの』
ドスッ
アクア『これで、ずっと一緒よ・・・』
ヴィレアム『いやだ。いやだ・・・。どうしてお前ではないんだ・・・、バラン・・・シュナイル・・・』
シーーーン
レイナ「すごい・・・。閉幕から何秒もしても、お客が1人も立ち上がろうとしない・・・」
ハザリア「フハハハハ。なんとかやりおおせたようだなマリ。
どうやら減らず口ばかりというのではないらしい」
マリ「フン・・・、ホビーヤーパン創刊号、忘れるなよ」
ハザリア「あー、済まん。この間キャクトラの奴が間違えて古紙回収に出してしまってな」
マリ「・・・そんなことだろうと思った」
キャクトラ「友よ、見事でしたぞ! 見ていて震えが止まりませんでした!
今後姫様には近づかないでくださいね!」
ヴィレアム「・・・ありがとう」
アイミ「すごかったよ! もう絶対近づきたくないと思ったもん!」
クリハ「うん! 虫唾が走った!」
ゼフィア「街の防犯について考えさせられた」
イルス「あははー☆ オマエもう夜出歩くなよー? 通報されるからナ☆」
ヴィレアム「・・・えっと」
ルナ「よかったぞ。今度の各校親睦会で再演してもらいたいくらいだ」
トウキ「おいよかったな! またお前の変態騎爵が見れるなんてうれしいぜ!」
ゼラド「よかったよヴィレアム君! 私、本気で怖かったもん!
もう、絶対ウチのガンスレちゃんたち近づかせたくないと思っちゃった!」
ヴィレアム「・・・なんか、大切なものを失ったような気がする」
レビ(フフフ・・・、なかなか面白かったぞ。子供たち)
最終更新:2009年10月17日 11:43