23代目スレ 2008/04/28(月)
バァーナァーナァー ノォー ナァミダァー
ゼラド「あれ、なんだか、町がどこかおかしいような?」
ヴィレアム「俺たち、なんでこんな道ばたに立ってるんだろ」
ゼラド「ヴィレアムくん? わたしたち、さっきまでなにしてたんだっけ?」
スゥーナァーオォーデェー イ~レェタァラァー
ヴィレアム「あっちの店からかかってる曲、なんだ?
聞き覚えがないけど、ミナトが好きみたいなモームスとかAKBなんとかかな」
ゼラド「違うよ、これ『バナナの涙』だよ。奇面組のエンディングだった」
ヴィレアム「えっ、スキャットマンジョンからスチャットマンジョンまで押さえてる俺が知らないなんて、
よっぽどマニアックな曲なのかな」
ゼラド「前から思ってたけど、ヴィレアムくんて音楽の趣味悪いよね」
ヴィレアム「えぇっ、そんなはずは」
ゼラド「あれ? 『新曲 バナナの涙入荷』?
誰かがカバーでもしたのかなぁ」
ウゥー! ウゥー! ウゥー!
トウキ「待てぇ~! 待て待てぇ~!」
ミナト「待つだぎゃぁ!」
ヴィレアム「なんでトウキたちがパトカーに!?」
ゼラド「しかも、ミナトくんがなんか名古屋弁だ!」
ヴィレアム「名古屋弁なのか、あれ?」
ゼラド「それより、見てあそこ! レオタード着た三人がビルの上走ってる!」
シュタッ シュタッ シュタッ!
マリ「誰が待つか!」
リトゥ「マリ、こっちに」
ユウカ「みぃ~つめるキャッツアイ♪ マージックプレイイズダンシン、みぃどりいろにひかぁ~るぅ~♪」
リトゥ「ユウカさん! 歌ってないで!」
キキッ
ハザリア「遅いぞ貴様ら、乗れ!」
ゼラド「ハザリアくんだ」
ヴィレアム「なんであいつがフィアット500なんか運転してるんだ? しかもあのジャケット」
ばきぃっ!
マリ「なんでピンクのジャケットなんか着てるんだお前は!」
リトゥ「ちゃんとシティーハンターのカッコ渡したでしょう?」
ハザリア「やかましいわ! あんな新連載、知ったことか!
鈴木清順が、バビロンの黄金伝説が!」
ユウカ「だからって、歴代でもっともどうでもいい評価されてるサードシーズンルパンとか」
マリ「次元、目ぇ出しちゃってるし」
リトゥ「ゴエモンさん、なんで柔道着の上着て外ウロウロしてるのかしら」
ハザリア「第三期ルパンの悪口はそこまでだ! 行くぞ!」
パリイィィィンッ!
マリ「なんだ!?」
ハザリア「わぁぁっ! 納車したばかりのフィアットのフロントガラスが!」
シャーッ パシッ シャーッ パシッ シャーッ パシッ
レタス「分家に生まれたこのわたくし。何の因果かマッポの手先。
トロイエたければトロイエればよろしい。それでも、食物繊維だけはおろそかにはさせなくてよ」
リトゥ「桜の代紋!?」
レタス「スケバン刑事
レタス・シングウジ。見た目は淑女、中身はインジュウ!」
ヴィレアム「なんだ、あの無闇にエロいキャッチフレーズ」
ゼラド「レタスちゃん、スカート長っ!」
マリ「本庁直属の特命刑事か」
ユウカ「あんなのが出てくるなんて、あたしらもビッグネームになってきたものね」
レタス「怪盗気取りのお笑い集団の皆さま。
ここらで年貢を納めてはいかがです」
ハザリア「笑止千万! ワダとモンキーパンチでは格が違うわ!
クールタッチのゲバルト、このパワースケールが世のゴキブリ野郎どもをダメージする!」
ぶわっ!
レタス「煙幕!?」
ハザリア「フハハハハ! あーばよ、ヘッポコ刑事とヘッポコ巡査ども!」
ブロロロロロッ
ゼラド「行っちゃった」
ヴィレアム「ヘンなこといってたな。『シティーハンター』が新連載?」
トウキ「刑事! ご無事ですか」
レタス「わたくしのことよりも」
ミナト「すぐに本庁に連絡だがや! 応援を呼ぼうまい!」
トウキ「ミナト、お前それ訛ってるのか?」
ゼラド「えっと、あのぉ、いいですか」
レタス「あなたは?」
ミナト「ボインちゃん、民間人の出る幕じゃねぇギャよ。
ここは危ないから、早く逃げなあかんがね」
ヴィレアム「ミナト、お前その名古屋弁、たぶん間違ってるぞ」
トウキ「あれ、ミナト、お前の知り合いか?」
ミナト「知らんがね」
トウキ「俺たち兄弟なのに、なんでお前だけ訛ってるんだ?」
ミナト「おいどんは、郷土を愛しているでごわスマッシュ」
トウキ「お前、どこの出身だよ!」
ミナト「ごわストロベリー」
レタス「あちらのヘッポコ巡査たちは放置してくださいませ」
ゼラド「いまのひとたちって、ドロボーさんだよね?」
レタス「ええ、OGキャッツアイなどと名乗る、ふざけた集団でしてよ」
ゼラド「なにを盗んだのか知らないけど、たぶん追いかけてってもなにもみつかんないよ。
女の子たちはあんなレオタード姿で、なにか隠し持ってるようには見えなかったし、
あのピンクのジャケットのひとはあとから来たみたいだもん。
ドロボーって普通コッソリやるものなのに、あんなに目立つカッコしてるっていうことは、
きっとなにか考えがあるんだよ」
レタス「たとえば?」
ゼラド「えぇ~と、モノはまだ現場にあって、
警察のひとたちが追っ手に人手割いてる間に回収するとか」
レタス「カノウ巡査の、スーパーマリオブラザーズを陰湿なやり口でクリアする方」
ミナト「ひとのプレイスタイルにケチつけんで欲しいがね!」
トウキ「あれ、無線が繋がらないな。
おいミナト、お前のテレカコレクションから一枚出せよ」
ミナト「イヤだぎゃぁっ! 10円玉使えばいいがね、10円玉!」
トウキ「10円玉だと、あとで経費請求するのがややこしいんだよ」
ミナト「兄貴はそういうセコいとこがいかんがや!」
ヴィレアム「待てよ、テレフォンカードなんてそんなレアアイテム使わなくても」
ゼラド「はい、ケータイ」
ミナト「なんだがや、これ」
レタス「おかしなことをいうのですね。テレフォンカードがレアだなんて」
ヴィレアム「なにいってるんだ?」
ゼラド「そうだ! ヴィレアムくん、なんか街に違和感あると思ったら、ケータイだよ!
歩いてるひとが、誰もケータイ持ってない!」
ヴィレアム「そんなバカなことが!」
ゼラド「ねえ! いまって、新西暦何年なの!?」
ミナト「なんだがや、新西暦って」
レタス「西暦でしたら、1986年ですけれど」
ゼラド「えぇ~っ!?」
ヴィレアム「いったいどういうことだ? 俺たち、タイムスリップでもしてしまったのか?」
ゼラド「でも、ここが本当に西暦1986年のトーキョーだとしたら、
なんでみんなにそっくりなひとたちがいるんだろう?」
レタス「トーキョー? ここは
ODEポリスという、ナウでサイケでトレンディな街でしてよ?」
ヴィレアム「なんなんだよ、そのダメなトレンディぶり!」
ゼラド「ヘンだよ! やっぱりヘンだよこの街!」
トウキ「刑事、現場と連絡取ってきました」
ミナト「あ~! 俺のナンノテレカに穴が! なんてことするがね!」
トウキ「今日廃棄予定の家電製品の中からブツが発見されました。
業者に確認したところ、今日は引き取りの依頼など受けていないと」
レタス「業者に化けて回収するつもりだったのですね。
洒落臭い真似をしてくださいます」
ゼラド「どうしよう、どうしよう!
1986年なんて、地デジも始まってないし地上波デジタルも来てないし、
地上デジタルテレビジョン放送も始まってないよぉっ!」
ヴィレアム「落ち着くんだゼラド! なんでそんなに地上波デジタルを重要視してるんだ!」
レタス「あなた方、少しよろしくて?」
ゼラド「レタスちゃん」
レタス「どうやらなかなか優れた観察力をお持ちのご様子。
いかがでしょう。その能力、わたくしどもの元でお役に立てるつもりは」
ヴィレアム「悪いけど、いまそれどこじゃ」
ゼラド「でもヴィレアムくん、こんなわけわかんないとこでウロウロしてても、迷子になっちゃうだけだよ」
レタス「ご決断はあとでも構わなくてよ。
とりあえずいまのお礼に、お茶でもごちそうさせてくださいませ」
トウキ「うっし、いつもの喫茶店ですね!」
ヴィレアム「喫茶店て・・・・・・」
【ヴァニシングな青空の喫茶店】
レタス「料理は不味いし頑ななまでにコーヒーを出さない店ですが、
紅茶だけはわりといけますのよ」
ユウカ「店をディスるのは、マスターのいないとこでやって」
レタス「紅茶を五つ。間違っても料理は出さないでくださいませ」
マリ「リップ・ヴァン・ウィンクルの話って知ってます?
いい名前でしょう、リップ・ヴァン・ウィンクル。
彼がね、山へ狩りに行ったんです。山へ、狩りにね」
ハザリア「違う違う、そこはもっと、亡霊のような目で」
マリ「その夢は、どんな狩りでも許される、すばらしい夢だったんです
ところが、目を覚ましたウィンクルが慌てて村に帰ると、妻はとっくの昔に死んでいたんです。
村の様子もすっかり変わっていましてね。わかります?」
ハザリア「そこで、『貴様には、はじめから妻などいなかったではないか』」
マリ「僕の話をしているんじゃないでしょう。
リップ・ヴァン・ウィンクルの話をしてるんですよ」
ハザリア「違う違う! ぽかんと口をあけて! 月が動くほどのゆっくりした仕草で!」
マリ「あ、もう、うるさいな」
ハザリア「やめだやめだ! しょせん貴様と『野獣死すべし』のユーサクとでは格が違いすぎる。
おいグラマーインパクト! ラム、コァントロー、それにレモンジュースを少々、シェイクせよ!」
ユウカ「うちはアルコールは出さないの」
アイ セイ バイバイ~哀愁ディト~
ハザリア「チャンネルを換えんか! まったく、タノキンだかワラキンだか知らんが」
リトゥ「もう、いまどきトシちゃんでもないわよ。
ほら、うしろで踊ってるアカサカくん。
前までミュージカルで活躍してたんだけど、今度なにかのグループ結成するんだって」
ハザリア「貴様は、つくづく男を見る目がないな。
そやつの目をよく見てみろ。そのうちシャブかなにかに手を出すぞ」
リトゥ「イヤなこといわないでよ。アカサカくんがそんなわけないでしょう!」
ゼラド「ヴィレアムくん」
ヴィレアム「うん、特に変装してるわけでもないのに、なぜか正体気付かれてないんだ」
ゼラド「1986年て、まだ光GENJIすら結成されてないんだ」
ヴィレアム「そっちに食い付くのか!?」
ミナト「ああ、そいつらは気にしなくていいがね。
売れない劇作家と、売れない舞台女優と、え~と、あと、売れない眼鏡」
リトゥ「わたしはただの学生です!」
トウキ「売れてないもんだから、いつもこの喫茶店にたむろしてるんだ」
マリ「売れてない売れてないっていうな!」
リトゥ「わたしはべつに売ってません!」
ハザリア「向こうの角にある『カフェ・マル・ダムール』は、
最近妙なバイオリン男が出入りするようになって、うるさくてかなわんからな」
ゼラド「いるんだ。オトヤさん」
ミナト「あそこのマスターはいかんがね!
ヤマモト・スーザン・クミコとか、名前の響きだけで選んだりなんかして!」
ハザリア「黙れヘッポコ巡査め。どうせまた、件の怪盗たちにしてやられたのだろうが」
レタス「彼らはOGキャッツアイ。
変装の達人であるちっこいのと、ギターピックとか投げてくるグラマラスと、ええと、あと」
ミナト「なんだったがね」
トウキ「眼鏡とか投げてくる」
リトゥ「投げてない。眼鏡なんか投げたことない」
レタス「それから、ピンクのジャケットを着たふざけた男が指令を出しているようです」
ミナト「毎回毎回、しょうもないもんを盗むために、わざわざ予告状を出してくるヘンなヤツらだがや!」
トウキ「あいつらのおかげで、警察の威信は丸潰れだ」
ヴィレアム「とんちんかんだ。『キャッツアイ』っていうより、ただの『ついでにとんちんかん』だ」
トウキ「とんちんかん? ジャンプで連載してるやつか」
ゼラド「そっか、『バナナの涙』が新曲ってことは、『ついでにとんちんかん』はまだアニメになってないんだ」
レタス「今回彼らが狙っているのは、ODE動物園で保管されている『青い狼のキバ』」
トウキ「最近街で出没してる、全身真っ青な狼男のキバだっていう話だけど」
ゼラド「いるの、青い狼男!」
ミナト「怪しいもんだ~がや。
青い狼男だの、緑色のカメレオン男だの、見たって主張してるのは例のバイオリン男だけだがね」
トウキ「ミナト、お前その訛り、いい加減にしないと名古屋のひとに怒られるぞ」
ハザリア「それで、貴様らはまたしても怪盗どもにしてやられたということか」
レタス「いいえ、今回は痛み分けというところでしてよ。
なんといっても、彼らは今回お宝を盗み出せなかったのですから」
マリ「でも、また来るんじゃないのか?」
トウキ「今度はやらせないよ。警備の手を倍に増やしてだな」
リトゥ「へえ。ヘリなんかも飛ぶの?」
ミナト「いんや、今までの手口から見るに、ヤツらは航空手段を持ってないがね。
だから今回は、検問のほうに力を入れて」
ユウカ「それから」
ヴィレアム「あぁ、警備体制がダダ漏れだ。こうやって情報を引き出してたのか」
ゼラド「なんか、ヌルい時代なんだねぇ、80年代って」
【ODE動物園】
トウキ「人員の配置、終わりました」
レタス「ご苦労」
ヴィレアム「しかし、どうして制服警官がスケバン刑事にアゴで使われてるんだ?」
トウキ「なんだ、お前。
協力を依頼されたからといって、本官にタメ口をきいていいということにはならないだろう」
ヴィレアム「お前って、けっこう権力をカサに着るタイプなんだな」
ミナト「どうせだったら、コードネーム麻宮さんたちにアゴで使われたかったけんのう」
トウキ「しょうがないだろ。あのひとたちは全国を転校してまわってるんだ」
レタス「あなた方、なにか文句がおありなのでして?」
ゼラド「待って、そのミナトくんを止めて!」
ヴィレアム「どうしたんだ、ゼラド」
ゼラド「言葉が、名古屋弁じゃなくなってる!」
ミナト「な、なにをいうんじゃけんのぉ、ワレ」
レタス「いわれてみれば、たしかに!」
トウキ「元々明らかに名古屋弁じゃなかったから気が付かなかった!」
ヴィレアム「あの広島弁も、たぶん間違ってる!」
ミナト「ちぃっ!」
ビリリッ
マリ「面が割れた、第2フェーズへ!」
ガシャン! ガシャン! ガシャン!
トウキ「窓ガラスが!」
ヴィレアム「長距離からの射撃! ユウカか!」
ゼラド「あれ、なんか、ヘンだな」
レタス「なにをやっているのですか、あなた! 伏せていないと危なくてよ!」
ゼラド「あんまりにもあっさり顔を見せすぎてる。
それにいきなり撃ってくるなんて、ハザリアくんは『青い狼のキバ』が壊れちゃっても構わないのかな」
ミナト「わわわっ、何事だぁがや、これは」
トウキ「ミナト、ホンモノか!?」
ミナト「ホンモノぉ?」
ゼラド「ミナトくん! あそこに置いてある『青い狼のキバ』って、どこで見つかったものなの!?」
ミナト「どこって、だからバイオリン男が持ち込んで来たもんだがね」
ゼラド「そのあと! あの子たちに盗まれかけてから!」
ミナト「えぇと、だから、廃棄予定の家電製品の中に」
ゼラド「見つかったのは、1つきりだったの!?」
ミナト「1つも2つも、『青い狼のキバ』はもともと一本きりしか」
ゼラド「いけない!」タタタッ
ヴィレアム「ゼラド! どこに行くんだ」
ゼラド「そこにある『蒼い狼のキバ』もニセモノだよ!
あらかじめニセモノをいくつも用意しておいて、見つけやすいところに隠しておいたんだ!」
レタス「では、これも陽動だと」
トウキ「じゃホンモノはどこにあるんだよ!」
ゼラド「木を隠すためなら森の中だよ!
もしもホンモノがニセモノといっしょに見つかっちゃっても、それはそれで警察を混乱させるために!」
ヴィレアム「敵にまわすと、なんてややこしいことをするやつなんだ!」
【廃品物保管所】
ハザリア「フハハハハ。どうやら今回、ずいぶん頭のキレるやつが混じっているらしいな。
いや、この反応速度からしてみると、動物的な勘に恵まれているというクチか」
ゼラド「ハザリアくん、なんでこんなことを!」
ハザリア「俺は、夢を盗まれたからな。取り返しに行かねば」
レタス「夢というのは、女のことでして?」
マリ「くそっ、離せ!」
トウキ「仲間のひとりは捕まえたぞ!」
ミナト「ここはもう警官隊に囲まれてるぎゃぁ! 往生際よく観念するがね!」
ハザリア「ほぉう、どうやら、メンツが揃っているようだな。
都合がよい。やれ、マリ」
マリ「構わないのか」
ハザリア「頃合いだ。解禁せよ」
マリ「わかった」
バッ
レタス「なにを!」
マリ「傷だらけのメテオ3から、わけもわからずサルベージ。
いまじゃなんの因果かタガスの手先。
この身ひとりの覚悟のはずが、不意に出会ったダチのため」
ヴィレアム「あの口上は」
マリ「期間限定スケバン刑事!」
ゼラド「ボディスーツに、赤いスカーフ!?」
マリ「てめぇら全員ヤキ入れっぞ!」
レタス「ひっ!」
トウキ「なんて殺気みなぎる口上なんだ!」
ミナト「知らん! あんなボディスーツ着たスケバン刑事は知らんがね!」
ヴィレアム「2005年版スケバン刑事!?」
ゼラド「なんで!? 1986年じゃなかったの!?」
ハザリア「フハハハハ! 死屍累々の失敗作の上に作り上げられた、最強のアイドルサイボーグ!
ピアノ線で吊られなければ腕立て伏せひとつできなかった80年代のアイドルなど問題にならんわ!」
ミナト「なにが失敗作だがね! ひどいこというと許さんぎゃぁ!」
ハザリア「失敗作で悪ければ、手近なバンドマンとくっついたのと、
復帰後微妙でやっぱり手近なバンドマンとくっついたのと、
太ったバンドマンとくっついたのと、イケメン俳優食らいこんでトンズラこいたリーダーと、
イケメンウルトラマンとくっついたのと、イケメン芸人食らいこんでた貧乳と、
あぁ、たいてい男絡みだな!」
ミナト「マイナスな方向ばっか見るなギャ!
なっちはまだ頑張っとるがね!」
ハザリア「いの一番にプレステやらかした盗作ポエマーがどうしたぁっ!」
ヴィレアム「ミナトもなんかヘンだ!」
ゼラド「えぇ~、いったい、なにがどうなってるのぉ?」
ミナト「あれ、俺、なんで警官のカッコなんかしとるがね」
ヴィレアム「それより先に疑問におもうところがあるはずだろ、口調とか!」
マリ「どうやら、ミナトが正気に戻ったようだな」
ハザリア「よりにもよって、正気になったところでへの役にも立たん男か」
ミナト「誰がへの役にもたたないだぎゃ! パンチを! 俺のパンチを受けてみるギャ!」
ハザリア「ああ、わかったわかった、とりあえず、一緒に来い」
マリ「オイ、お前たちも正気なんだろ。一緒に来い」
ゼラド「マリちゃん! いったいこれは」
マリ「あとで話す」
キキーッ
リトゥ「ハザリアくん、乗って!」
ハザリア「よし、退くぞ貴様ら!」
リトゥ「『青い狼のキバ』は?」
ハザリア「段取りの悪い女だな、貴様は!
捨て置け。あんなものはただのガラクタだ。行くぞ!」
レタス「逃がすとお思いですの?」
トウキ「ミナトを離せ!」
ハザリア「ふん、こやつらは、まだ、か」
ゼラド「無茶だよ、まわりにはお巡りさんたちが!」
ヴィレアム「それに、そっちには池しかないぞ」
ハザリア「フハハハ! 1986年で頭が止まっとる連中のようなことをいうな!
水陸両用車両なら、ギブス・テクノロジー社から発売済みだ!」
キキキキッ ヴァシャーンッ!
【ヴァニシングな青空の喫茶店 地下】
ハザリア「おめでたい連中だ。
まさか、タイムスリップなどという現象が本当にあるとでも思っていたのか?」
ゼラド「じゃあ、これはいったいどういうことなの?」
ハザリア「集団催眠のようなものだ。
なんらかの作用で、我々は1986年に生きていると錯覚していたに過ぎん。
ここも、トーキョーでもなければ、ODEポリスなどという得体の知れん街でもない。
ただの
OG町だ。
貴様らが催眠にかかっていないのは、おそらく並行世界を行き来しとるとかいう
非常識な輩と日常的に接触していたからだろう」
ゼラド「じゃあ、ハザリアくんたちが催眠にかかってないのは、どうしてなの」
ハザリア「ああ、こやつだ」
ガラッ
マーズ「んきゃーっ! なにこれ!? なにこれ!?
『聖闘士星矢』! 『ドラゴンボール』! 『シティーハンター』!
『北斗の拳!』! 『キャプテン翼』! 『ハイスクール! 奇面組』!
こんなの、全部おんなしザッシに載っけちゃっていーの!?
よその出版社はモンクいわなかったの!?
やーん! もー、サーキットがふっとーしちゃう!」
ハザリア「チャンネルを換えんか、バカモノ」
げしっ
マーズ「あっ、あぁ~、クラウザーさんにレイプ完了済みのジャンプに戻っちゃったぁ~。
えーん、えーん、テンション下がるよー」
リトゥ「もう、隠しておいたのに、どこから持ってきたの」
マーズ「やーん、持ってかないでー」
ヴィレアム「四本脚、なにやってるんだ」
ゼラド「マーズくんなら、バブル期だしイキイキ仕事してると思ってたんだけど」
マーズ「ちぇっ、ちぇっ! じょーだんじゃねーや。
カネってなぁーね、もっとズシンとくるもんさ。
帳簿を右から左に移し替えただけで利益はっせーさせるなんざ、ジャドーもジャドーの国会議員だよ!」
ハザリア「どうやら、1986年という時代はこやつの哲学には合わなかったらしい。
それで、グレて当時のジャンプにどんばまりしておるところを俺が見つけて拾ってきたのだ」
ヴィレアム「どんなグレ方だ、それ」
ゼラド「でも、なんでマーズくんが1986年当時のジャンプにハマるとハザリアくんたちが正気になるの?」
ハザリア「エガシラ伝説のひとつなのだがな。
あるとき、テレビの企画でエガシラ氏が精神病棟に行ったことがあった。
精神病棟だから、ウンコを投げつけてきたり、うわごとを休むことなく呟いているような輩が山ほどいる。
ところが、エガシラ氏が奇声を発したとたん、一時的とはいえ正気に戻ったそうだ」
ゼラド「スゴいなぁ、エガシラさん」
ヴィレアム「待て、テレビの企画ってことは、それひょっとして放送したのか」
ハザリア「人間というものは、あまりにもイカレたものを前にすると、逆に冷静になってしまうもののようだ。
我々も、こやつの痴態を見て正気に戻ったという経緯だ」
ヴィレアム「いったいこいつ、どんなハマり方してたんだよ」
ハザリア「それはそれは、みっともないハマり方だった」
マーズ「しょーがねーじゃん、しょーがねーじゃん!
この当時のジャンプっつったら、男の子にはヘタなシャブより効くんだもん!」
ゼラド「でも、正気に戻ってたんなら、怪盗ゴッコなんかしてないで、ちゃんとみんなに教えてあげればいいのに」
マリ「そういうわけにもいかない。
ほかのみんなは、心底1986年に生きてると思ってるんだ。
そこに来ていきなり、いまは新西暦だっていったって、頭のおかしいやつだと思われるだけだ」
ユウカ「よもや、昔主人公だったのにOGシリーズで存在ヴァニシングしてたり、
専用機なかったり、イジワル眼鏡に口封じされそうになった男がいるなんて信じてもらえるはずがない」
ハザリア「そこで、怪盗騒ぎで世間をひっかきまわし、
その中で少しずつ違和感を自覚させて正気に戻そうとしていたのだ」
ヴィレアム「それで、『キャッツアイ』じゃなくて『ついでにとんちんかん』なのか?」
ハザリア「いや、それは気付かなんだ。そら、貴様、尻を出してみせよ、いきなりな」
ユウカ「シャラップ、ヌケサク」
ゼラド「そのピンクジャケットは?」
ハザリア「これはただの鈴木清順リスペクトだ」
マリ「いまのとこ、催眠解除に成功したのはミナトだけなんだけどな」
ハザリア「ああ、予想外のガッカリだ」
ミナト「ガッカリとかいうんでにゃぁっ!」
ヴィレアム「そのエセ名古屋弁は直らないのか?」
ハザリア「ともあれ、いつまでもチマチマやっているわけにはいかん。
もっとドラスティックなショックを与えてやらねば。
おいロボ、貴様、まさかずっとジャンプ読んでたわけではあるまいな」
マーズ「ちゃんと仕事したよー。だからジャンプ読ませてよー、続き読みてーよー」
ゼラド「マーズくんは、なにかしてたの?」
ハザリア「一体誰がこの茶番を仕組んだのかわからんが、完璧に1986年を再現できるはずがない。
どこかにほころびがあるはずだ。そいつを探させていた」
マーズ「あいこれ。うかつ賢也さんが2巻以上単行本出してたよ」
ハザリア「マジでか」
マリ「待て待て待て、それもたいがいマニアックだろ」
マーズ「『ふぁいてぃんぐスィーパー』3巻だよ」
ハザリア「3巻という名の短編集だそれは!」
マーズ「わーっかったよ。んじゃー、これなんかどーよ。
サイタマ県トコロザワ市オオアザカミヤマグチ、サヤマコハンれーえん」
マリ「お墓?」
ヴィレアム「待てよ、そこ、キャクトラに連れてかれたことあるぞ。
尾崎豊の墓があるところじゃないか」
マーズ「うん、なんか、あるんだよね」
ユウカ「彼が他人様の庭先でヌードさらしてカラテの稽古してたのが原因で亡くなったのは、1992年のはず」
マリ「べつに、カラテの稽古してたのが原因じゃないでしょう」
ユウカ「そういうことにしてるの」
ハザリア「現代でも、こういうややこしいファンが付いているカリスマの墓か。
なるほどおあつらえむきだ」
マーズ「カリスマだったら、松田優作さんのお墓もあったりするんだけど。こっちは1989年没ね」
ハザリア「それはいかん。幻覚とはいえユーサクの墓前を汚すことは俺が許さん」
マーズ「勝手だなーっ!」
ハザリア「それに、約1名スケバン刑事を気取っておるなら、オザキは有効だろう」
ミナト「そういうネタは、控えた方がいいきゃぁもぉ?」
ハザリア「よし、それでは標的はサヤマコハン霊園だ。予告状を書け!」
リトゥ「なにを盗むの」
ハザリア「なんでもよいわ。供え物のマンジュウでも盗むといっておけ!」
リトゥ「はいはい」サラサラ
ゼラド「リトゥちゃん、字ぃ上手だね」
リトゥ「日ペンの美子ちゃんで練習したから」
ヴィレアム「あったなぁ、そういうの」
【サヤマコハン霊園】
ハザリア「オージー!」
マリ「キャッツ!」
リトゥ「にゃー!」
ユウカ「キャッツ!」
マーズ「にゃー!」
ヴィレアム「キャッツ?」
ゼラド「にゃぁーっ!」
ハザリア「サヤマコハン」
ハザリア「よし、行くぞ」
ヴィレアム「なぁ! いまのは、絶対やらないといけなかったのか!?」
ハザリア「絶対やらないとダメだ」
レタス「来ましたのね。先輩がた、よろしくお願いいたします」
スレイチェル「性別不詳で世に生まれ、身の証すら立たないこのあてが、なんの因果かマッポの手先。
供え物のマンジュウ奪うとは、死者にむち打つ生者の恥さらし。
2代目スケバン刑事
スレイチェル・ファインシュメッカー。
おまんら、許さんぜよ」
ラン「ビー玉のおラン」
ゼフィア「・・・・・・ふくさのゼフィア」
ゼラド「スケバン刑事が3人も増えた!」
ヴィレアム「違う! 一人、明らかにスケバンじゃないのがいる!」
ゼフィア「よくわからんが、オーディションに受かってしまったらしい」
ヴィレアム「しっかりしてくださいゼフィア先輩!」
リトゥ「ここはわたしたちが!」
マリ「タイマンはりてえならひとりで来い!」
がしぃぃぃぃんっ
ゼフィア「婦女子が、そういう喋り方をするものではない」
スレイチェル「いけないのはお前だ、友よ」
ラン「そやねえ。ふくさのゼフィアちゃんは、お嬢様口調やないと」
ゼフィア「ふ、婦女子は、上品な喋り方をなさらなくては、いけないですわでしてよ?」
ハザリア「倒せとはいわん! ひとりでもいい、オザキの墓に辿り着け!」
がしぃぃぃぃんっ!
トウキ「血迷ったか、ミナト!」
ミナト「目を覚ますんだぎゃぁっ、兄貴!」
トウキ「目を覚ますのはお前だ!」
ミナト「決着をつけようまい。
兄貴のキックが上か、俺のパンチが上か」
トウキ「お前は、パンチなんか撃ったことないだろ」
ミナト「兄貴だってキック撃ってるとこなんか見たことないぎゃぁっ!」
トウキ「いいからそのエセ名古屋弁をやめろぉっ!」
ギンッ! ギンッ! ギンッ!
ユウカ「そんななまっちろい腕で、あたしとやりあえると?」
レタス「決定打に欠けるかたがなにをおっしゃいますやら。
いかがです。負けた方が男に戻るとは」
ユウカ「なかなかクールなアイデアね。
あんたが男になったなら、キスのひとつもしてあげる」
レタス「その言葉、そっくりしのまま返してさしあげましてよ」
ユウカ「キスはするもんよ。されるのはノーサンキュー」
ユウカ「ハイ、これを」ヒュンッ
パシッ
ヴィレアム「ギター?」
ユウカ「弾けるんでしょう。ステージは、譲ってあげる」
ヴィレアム「ああ!」
【尾崎豊の墓前】
ゼラド「着いたけど、なにすればいいんだろう」
ヴィレアム「歌うんだ。俺が演奏をする」
ゼラド「えぇっ! でもわたし、歌なんて」
ヴィレアム「いや、歌えるよ。みんなのための歌なら、ゼラドはきっと歌える」
ゼラド「みんなのため?」
~♪ ~♪ ~♪
ゼラド「えぇっと、ラクガキの教科書と空ばかり見てるぅ~♪」
スレイチェル「この曲は!?」
ラン「オザキはん?」
ゼフィア「なんだあの墓は。『尾崎豊、ここに眠る』だと?」
トウキ「バカな! オザキはNYで充電中のはずだ!」
ゼラド「自分の存在がなんなのかさえわからず震えてる~♪ 15の夜~♪」
レタス「違いましてよ! ユタカ、いえオザキさんは尊敬するアーティストであり」
ユウカ「ビー・クール、あんたはスケバン刑事でもサイトーユキでもない。
ただの野菜よ」
レタス「あたいは、僕は、わたくしは・・・・・・!?」
ゼラド「ぬぅすんだバイクではぁしりだすぅ~♪
行くさぁきもぉ~♪ わかぁないまま~♪」
スレイチェル「スレイチェルは母上の手によって鉄仮面をかぶせられ、いや、違う?
うぅ、どうしたことだこれは!」
ラン「ウチは、なんでビー玉なんか?」
ゼフィア「なぜ俺はこんな長いスカートを」
ミナト「なんでだぎゃ! このエセ名古屋弁に、微塵の疑問も覚えんぎゃぁっ!」
トウキ「それはほんとになんでだよ!」
ゼラド「みんな、思い出して!
わたしたちが住んでた町のこと! わたしたちが生まれた時代のこと!」
【イスルギフード】
ミツハル「いやぁ~、まいったまいった。
うちのアミューズメント部門で作ってたヴァーチャルマシンが暴走するなんてねえ」
スレイチェル「お前が元凶か!」
マーズ「でもー、なんでオザキさんやユーサクさんのお墓があったの?」
ミツハル「だぁーって、生前のオザキさんもユーサクさんも、けっこう気さくなあんちゃんだったみたいだし。
イメージくずれるんだよね」
スレイチェル「ファンなら生かしておけばいいだろう」
ミツハル「80年代とともに生き、80年とともに天に昇ったから意味があるのさ、あのひとたちは」
マーズ「屈折したファンだなーっ」
ゼラド「戻ってよかったけど、あの時代も悪くなかったな。
みんなユルくて、どこか余裕があって、楽しそうで」
ハザリア「無条件に過去を美化するものではない。
人種差別も病人差別も平気でテレビに垂れ流していた、無自覚な差別の時代だ」
マーズ「当時のひとがなにかとやらかした結果が、なが~い不況なわけだしね」
ゼラド「う~ん」
ヴィレアム「俺たちは、生まれた時代で生きてくしかないんじゃないのかな」
ゼラド「そうなんだけど」
レタス「ともあれ、今日もODEシティはユルゲン晴れでしてよ!」
ハザリア「だから、なぜ貴様がシメる!?」
ゼラド「あれ? でも、まだ町がどこかおかしいような」
バチバチバチバチッ
イングレッタ「神は、過ちを犯した」
ゼラド「えぇっ!?」
【終わり!】
最終更新:2009年10月17日 12:15