沖田ゼラドはBカップってレベルじゃない


25代目スレ 2008/09/15(月)

チャリーン チャリーン

ゼラド「御用改めであるーっ!」

 ズシャッ ズシャッ ズシャッ

ヴィレアム「あれ、ゼラド? これはいったい」
ゼラド「困るな、土方さん。隊士の前なんだから、沖田って呼んでくれないと」
ヴィレアム「土方って、俺のことか? それに、そんなダンダラ模様着て沖田って・・・・・・!」
ゼラド「新撰組一番隊組長、沖田ゼラドでしょ?」
ヴィレアム「そんな、沖田総司が女だったなんて!?」

カル「あ、いたいた。おふたかたー」
ゼラド「あ、武田カル柳斎さん」
ヴィレアム「よりにもよって観柳斎なのかよ!?」
カル「申し訳ありませんが、手が空いているなら寺田屋に行っていただけないでしょうか。
 おかしな志士が騒いでいるらしいんです」

 【寺田屋】
ハザリア「♪土佐の高知のォ~
 ♪はりまや橋でェ~、坊さんかんざし買うを見たぁ~、よさこいよさこい」

ヴィレアム「あいつっ! なに背中に毛なんか生やしてるんだ!」
ゼラド「待って土方さん、まだ出ちゃダメ!」
ヴィレアム「だから俺は土方じゃ」
ゼラド「坂本ハザリアほどの大物が飲んで歌ってるんだよ?
 もうちょっと待ってれば、また誰か来るよ」

 ガラッ
マリ「ハザリアっ!」
ハザリア「わっ、貴様! なんという格好で」
マリ「いま外に」
ハザリア「いいからなにか羽織らんか」

 バンッ! バンッ! バンッ!
ユウカ「サカモトを出しな」
ハザリア「なんだグラマーか」
ユウカ「グラバー」
マリ「あれ、ユウカさん? でもさっき風呂から見えたのは伏見の」
ユウカ「アァ~、外にいた連中?」
マリ「あっ、さっきの銃声、まさか」
ユウカ「あんた最近京大阪に出没し過ぎなのよ。
 命狙われてるじゃない。ライフが残ってる間に、うちの払いちゃんとして」
ハザリア「あぁ、うるさい海賊だな」

 バンッ
ゼラド「そこまでっ! 全員、動かないで!」
マリ「わっ、新撰組!?」
ハザリア「相変わらず、刀を振りまわすしか能のない連中か」
ゼラド「問答無用、いざ尋常にぃっ!」

 バンッ
キャクトラ「待たれよ、沖田殿!」
ゼラド「山崎さん?」
ヴィレアム「山崎って、監察方か?」
ハザリア「なんだ、針医者のせがれではないか」
キャクトラ「坂本殿を捕まえることはならん!」

 【新撰組屯所】
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「『では、ラミア容保公の決定を伝える』と、
 新撰組局長近藤レラ殿みずからの言である!」
ヴィレアム「なんて、明らかに拳が口に入りそうもない近藤勇なんだ」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「『そんなことない。口に合わせて手も小さいから、
 入れようと思えばけっこう入る』と、レラ殿猛抗議だ」
ヴィレアム「いや、いいよそんな抗議は」
キャクトラ「『まずグラバー・ユウカだけど、こいつをうっかり捕まえたりなんかすると、
 ものすごくめんどくさいっていうか、
 背後に控えてるあれやこれやとケンカする羽目になりそうだから、
 その場にいなかったことにして、これでお帰り願う』と、レラ殿さっさと追い払う構えである!」
ユウカ「オフコース」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「『そして坂本ハザリアだが』と、レラ殿若干煮え切らない顔である」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「『軍艦奉行の方から、坂本のことは放っておけという命令が出てるから、
 もの凄く納得できないけど、そのまま帰せ』という、なんとも後味の悪い決定だ!」
ゼラド「おかしいよ! なんで軍艦奉行が維新志士の口添えなんかするの!?」
ハザリア「それは、俺が軍艦奉行の弟子だからだろう。
 俺は維新志士などではない。貴様らとおなじ幕臣だ」
ゼラド「ウソッ! こないだ、長州藩邸から出てきたじゃない!」
ハザリア「高杉と都々逸歌って遊んでただけだ」
キャクトラ「じゃあ、薩摩藩邸に出入りしてるのは!?」
ハザリア「あそこに行くと、なんだかいろいろくれるのだ」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「『脱藩してるはずなのに、普通に山内容堂と会見しているのはどういうことだ』
 と、レラ殿もはなはだ不思議そうなお顔である」
マリ「武市さんとも岡田さんとも普通に交流あったし。
 お前、ほんとは全然脱藩してないんじゃないのか?」
ハザリア「適当に付き合っておかんと、地元に帰りにくいではないか」
マリ「脱藩してるくせに帰るつもりだったのかよ!」
ハザリア「フハハハハ! 聞いて驚け、俺の野望はただひとつ!
 都会で一発当てて、ガキの頃さんざん俺をいじめくさった上士のブタどもに足の裏舐めさせることだ!」
マリ「なんだよその元いじめられっ子の発想」
ヴィレアム「この龍馬、スケール小っちゃ!」

ハザリア「特に板垣退助は絶対に許さぬ!」
マリ「取りあえず、いい歳して実家から仕送りもらうのやめようよ。
 ただでさえ末っ子が脱藩してて肩身狭いのに」
ハザリア「貴様は”かんぱにぃ”をやるのにどれだけの金額が必要かわかっておらんのか!
 奉行殿も長州も薩摩も、しょせん赤の他人!
 最初と最後に頼りになるのは血を分けた肉親だけだ!
 よって、俺は誇りを持って実家から仕送りをもらう!」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「『それで結局、お前は何者なんだ』と、レラ殿が小首を傾げておられる」
マリ「単純にいうと、”とりぷるすぱい”ってやつだよ」
ハザリア「単純にいうな! 4重5重はいっている!」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「『もうめんどくさいから、さっさと帰ってくれ』と、レラ殿さじを投げられた様子だ」
ゼラド「あっ、ちょっと、待ちなさい!」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「『ゼラド、お前もちょっと待て』とレラ殿が制止なさっている。
 『容保公から苦言があった。お前最近人斬りし過ぎだ。
  少しは自重してくれないと、新撰組が一両放り込めば誰でも斬ってくれる危険集団だと勘違いされる』
 と憂いの表情を浮かべていらっしゃる」
ゼラド「だって、わたしたちは京のあぶれ浪人を斬ってお給料もらってるんでしょ。
 斬ってなにが悪いの!」
レラ「『話はまだある。お前自分は男とかいってるけど、バレバレだから、胸で。
 局長が女なのになんで男の振りしてるのかわからないし胸が全然男じゃないし、
 なんなんだそれあてつけか、その胸の丸みは局長に対するあてつけなのか。くやしくなんかないからなほんともうマジで』
 と、レラ殿若干我を失っている」
ゼラド「知らないよそんなこといわれたって!」

 ばたばたばた
ヴィレアム「あっ、ちょっと待てよゼラド」

 【屯所前】
マーズ「あいー、ダンナ、出所おめでとー。シャモ買って来たよシャモ」
ハザリア「貴様は、なぜやたらと俺にシャモを食わせようとするのだ?」
マーズ「いーじゃねーの。シャモ嫌い? シャモ」
ハザリア「嫌いではないが、誕生日には食いたくないな」
マーズ「そんなことゆわずに、タンジョービにもシャモ食おーよシャモ」
ハザリア「なぁ、俺を暗殺するのは貴様ではあるまいな?」
マーズ「なにをゆってんの?」
ヴィレアム「おい、そいつは」
ハザリア「ああ、マーズ弥太郎。元は俺がいた土佐勤王党を妨害していたのだが、
 なんだか知らんうちに俺のところにいて、勝手にソロバンを弾いとる」
マーズ「ここに来る前はー、竹島センリョーしてましたー」
ハザリア「どうもこやつは、俺が死んだあと海援隊のかの字も残さずに海運業をかっ払って行きそうなところがある」
マーズ「なにをゆってるのかわかんねーけど、
 とりあえず旗印は菱形が三つとかどーよ」
ヴィレアム「こいつまさか、タイヤがすぐふっとぶトラックとか作る」
マーズ「薩摩藩邸が受け入れてくれるってさ。行ってお芋食べよーよ、お芋」

 【薩摩藩邸】
スレイチェル「なんだ、またスレイチェルのフンドシを盗みに来たのか」
ハザリア「人聞きの悪いことをいうな。
 フンドシをくれといったら、なぜか貴様のフンドシを渡されただけだ」
マリ「そもそもなんで人んちにフンドシもらいに行ったんだよ」
スレイチェル「新品のフンドシをくれてやるから、スレイチェルお気に入りのフンドシを返してくれ」
ハザリア「質屋のせがれが、一度もらった物を返すと思うのか」

ゼラド「坂本ハザリア、抜きなさい!」
ハザリア「なんだ、まだ着いてきたのか」
スレイチェル「無礼だぞ新撰組の!
 この薩摩藩邸での狼藉は、この西郷スレイチェルと」
ムラタ「・・・・・・」
スレイチェル「そこで雌伏してるムラタ半次郎が許さないでごわスマッシュ!」
ヴィレアム「あれっ、人斬り半次郎そっち? じゃ、そこで突っ立ってるゼフィア先輩は」
スレイチェル「スレイチェルの右腕、ゼフィア新八がどうした」
ヴィレアム「おかしくないですか? 普通にムラタさんが村田新八やればいいんじゃないですか?」
ゼフィア「・・・・・・」

ゼラド「あなたも武士なら尋常に勝負しなさい!」
ハザリア「フハハハ、どうやら貴様は俺が北辰一刀流免許皆伝だと思っているようだが、
 持っている免許は薙刀だ。
ゼラド「えぇっ!?」
ハザリア「うちの実家のカネで北辰一刀流土佐道場かなにかを作るための義理許しに過ぎん!
 そして貴様は俺に小千葉道場の娘と縁談があったと心配しているだろうが」
マリ「そんな心配してないよ」
ハザリア「あれはおっかない女だった!
 真夜中の道場で防具着込んで待ちかまえているし、
 片袖が破れたんで持っていったら、タンスにしまい込んだまま返してくれん!
 あまりに恐ろしいので逃げてきた!
 しかもあの女、どうも俺が死んだあともやけに長生きして女学校の舎監などに収まった挙げ句、
 生徒を集めては例の片袖引っ張り出して、
 『自分は坂本の許嫁だった』とか電波まき散らしそうな気がする!」
マリ「心配しすぎだよ。そんな執念深い女、実在するわけないだろう」
ヴィレアム「えぇっと、そのひと、かなり長生きするよ」
ハザリア「そういう貴様は、俺が死んだあと、
 あっさりそのへんの行商人と再婚して酒に溺れそうな気がする!」
マリ「お前は自分が死んだあとのこと心配しすぎだよ。だいたい再婚ていうのはさ」
ハザリア「む、そうか。よし、結婚しよう」
マリ「お前は急になにをいいだしてるんだ」
ハザリア「イヤか」
マリ「ヤじゃ、ないけど」
ハザリア「よし、では三千世界の鴉を殺し、貴様と朝寝をするとするか!」
マリ「それ高杉さんのだろ、パクるなよ!」

 どたどたどた!
ゼラド「あっ、ちょっと、待ちなさい!」
ハザリア「ん、なんだしつこいな。我々はこれから新婚初夜だ。
 それでも着いてくるか。近くで見ているか、それとも混ざるか。
 え? おいどうなのだ貴様、見られながらというのはどういう気分だ。
 んん? そら、口に出していってみよ」
マリ「アッ、バカ、そゆこと・・・・・・、んっ」
ヴィレアム「取りあえず引くんだゼラド! なんかすでに言葉責めに入ってる!」

 【翌朝 薩摩藩邸】
 チュンチュン
ゼラド「西郷さん! 坂本たちは!?」

スレイチェル「彼らなら、西洋人のマネして”はねむぅん”とやらに行くといっていたでごわストロベリー」
ゼラド「ッ!」
ヴィレアム「おい、ゼラド、もうよせよ。向こう一応新婚さんなんだから」
ゼラド「土方さんのバカ! こんな状況でのんびり旅行するようなひとがいるわけないじゃない!」

 【港】
ユウカ「それで、この船を売れって?」
ハザリア「その通りだ。ちくと足が必要なのでな」
マリ「・・・・・・違う、これ新婚旅行じゃない。・・・・・・ただの根回し行脚っ!」
ユウカ「あのね、あんたあたしが誰だかわかってるの」
ハザリア「紅茶と香辛料欲しさに世界征服を企む悪の大英帝国の手先だろう」
ユウカ「特に否定はしないけど。
 だったら、こんな民主化もできてない国の、王族でもない政府の人間でもない男が
 ひょっこりと来て船売ってくれっていっても信用されないことくらいわかるでしょう」
マーズ「おっけー、ふんじゃー手付け金代わりに、そっちの商品を買っちゃるよ。
 てっぽーの在庫、あるんじゃねーの?」
ユウカ「ゲベール銃なら1丁5両で売るけど」
マーズ「ヘイヘイヘイ、出し惜しみしてんじゃねーよ。
 そいつぁー幕府側が持ってんのとおんなしじゃねーの。
 わかってんだよ、あんだろ、ミニエー銃がよー」
ユウカ「あっちはニューモデルだから1丁18両になるけど、大丈夫なの」
マーズ「任せなって。4300丁、一括払いで買ったらぁー。
 あとついでだ。ゲベール銃も3000丁ばかっち売ってくんな」
ユウカ「オールドモデルだって、あんたがいったんじゃない」
マーズ「コケオドシぐらいにゃならーね。アキナイじゃー、ハッタリが重要なんだよ」
ハザリア「ついでだから阿片もちくとまわせ。捨てるほどあるだろう」
マリ「阿片戦争みたいにならないようにって、みんなで頑張ってるときにお前は!」

ユウカ「でもね、カネがあるだけじゃ信用にはならないよ」
ハザリア「よかろう。この身で払ってやる」
ユウカ「いらない」
ハザリア「そうではない。貴様のとこのフリーメイソンに入ってやるといっているのだ。
 必要なのだろう、適当にひっかきまわしてくれる人間が」
ユウカ「でもうちは、妻帯してないと入れないよ」
ハザリア「ああ、嫁なら昨日作ってきた。ほれ」
マリ「・・・・・・利用っ! ・・・・・・隠れ蓑っ! わたしは駒・・・・・・っ!」
ユウカ「ええと、後悔しない?」
マリ「やめてください、後悔しそうになるから」
ユウカ「一応、うちの亭主に聞いてみるけど」
ハザリア「貴様の亭主というのを見たことがないのだが、本当にいるのか」
ユウカ「見たら男でも恋しちゃうような素敵なひとだから、隠してるのよ」
ハザリア「それは軽い軟禁なのではないか?」
マリ「女房思うほど亭主はもてずっていいますよ」

ゼラド「坂本、待ちなさーいっ!」
ハザリア「チッ、面倒なのが来た」
マーズ「いーからやっちまおーよ!
 あんな借金踏み倒すことでテーヒョーがある組織、
 ぶっつぶしちまったほーがミヤコのアキンドのためじゃねーの!」
ゼラド「新撰組は勝手に借金なんかしないもん!」
マーズ「してるよ! 後世に借用書さらされて恥じかきゃーいーんだ!」
マリ「いま京都で活動してる人間なんて、みんなそんなもんじゃないか」
ユウカ「どうする? 生麦事件以降、あたしらは事実上治外法権だから撃ち殺してやれるけど」
ハザリア「もう面倒くさいから、錨を上げてしまえ。海の上なら滅多なこともできまい」

 【海の上】
ゼラド「早く下ろしてよ!」
ヴィレアム「いったいどうしちゃったんだゼラド? そんな子じゃないだろ?」
ゼラド「土方さんこそ、鬼の副長の凄みはどうしちゃったの?」
ヴィレアム「だから俺は土方じゃ」

ハザリア「まったく、血の気の多いやつだ」
ヴィレアム「違うんだ。ゼラドはホントはこんな子じゃ」
マーズ「ふりーんだよ、あんたらさー。
 もーカタナだのテッポーだの振りまわしてる時代じゃねーんだよ。
 いまや世界はカネ中心に動いてんだ。アキンドの時代なんだよー」
ハザリア「ま、聞け。もはや話は天皇とか将軍というレベルではないのだ」
マリ「そうなんだ、だから日本人として」
ハザリア「これはイギリスとフランスの代理戦争だ!」
マリ「説得する気あるのかお前!」
ユウカ「間違っちゃいないけど」
ハザリア「こんな資源もなにもない国でな、武器といったら人材しかないだろうが。
 それを貴様ら、ばったばったと斬りおって。
 池田屋騒動のおかげで、予定が1年は遅れたわ!」
ゼラド「それはあなたたちが京の都に火を点けようとしたから!」

 ガアァァァァァンッ
ハザリア「何事だ!」
ユウカ「シィット、どっかのバカがカマ掘ってきた」
マリ「あれは、紀州藩の船だ!」
ハザリア「船を止めろ! たわけ者どもめ! 万国公法を盾に近代的に言い負かしてやる!」
ユウカ「バーカ、海の上で法律がなんの役にたつの。
 ヤロウども、いいから全砲門ひらきな。
 あたしらが、どうやって大英博物館の展示物充実させたのか教えてやる!」
ハザリア「しょせん海賊だな、貴様!」
マーズ「ダメだ、船が沈むよ! セントーなんざーできたもんじゃねーっ!」
ゼラド「船を横付けしてっ、わたしが斬り込む!」
ユウカ「オーライ、アボルダージュってわけね」

 ズシャッ ズシャッ ズシャッ

マリ「すごいもんだな。あれが天然理心流ってやつか」
ハザリア「あぁ、また貴重な人材が失われていく」
ヴィレアム「おかしいよゼラド、なんであんなに斬りまくるんだ」

 【水戸】
ハザリア「芹沢っ、芹沢はいるか! 坂本が来たぞーっ!」
ゼラド「えぇっ、芹沢さん!?」

マキネ「うぃーす。おっ、土方と沖田じゃん。おひさー」
ヴィレアム「なんで新撰組初代局長がこの時点で生きてるんだ!?」
マキネ「あっはっはっは!
 あたしの首斬ったのって、あんたらのどっちかだっけ?
 でもあたし、梅毒病みってことになってたじゃん。
 顔どろっどろで、判別なんか付かなかったっしょ」
ゼラド「騙したの?」
マキネ「だぁって、あたし元々バリバリの尊皇攘夷派だしぃ~、
 なのに新撰組は知らないうちに佐幕派になっちゃってるしぃ~、
 あんたらノリがマジ過ぎて若干ひくしぃ~
 ちょっとお相撲さんとケンカしただけで部下に正座させられるしぃ~」
ゼラド「お相撲さんとケンカしたのは全面的に芹沢さんが悪いよ!」
ハザリア「さて、それでは安楽死したがっていた梅毒病みをまわしてやった恩を返してもらおうか。
 貴様、水戸のずいぶんいいとこの血筋だそうだな」
マキネ「諸説あるけど?」
ハザリア「しかし、現将軍に顔が利くのは確かだろう」
マキネ「まぁ、天狗党の後輩だしね。
 あ、そっか、あんたんとこのお師匠さん、現将軍と仲悪かったんだっけ?」
ハザリア「でなければ、貴様など生かしておくものか。さあ、将軍に口添えしてもらおうか」

 【薩摩藩邸】
スレイチェル「それで、大政奉還というわけか」
ハザリア「ウム。将軍は政権を返上した」
スレイチェル「冗談ではない! これはなんだ。新政府の中に、将軍の名があるではないか!」
ハザリア「曲がりなりにも300年幕府を維持してきた連中だぞ。
 あっさり人員削減するのはあまりにもムダだ。
 いいから、使えるものは使っておけ」
スレイチェル「そうはいくか! 我々は幕府によって300年冷や飯を食わされてきたのだ!」
ハザリア「アホか! いいか、この先、どうせどこぞの国ともめ事が起こるだろう。
 そういうときにだな!
 『革命のたびにギロチンとかマジ野蛮だし、うちら無血革命とかマジ進歩的だし』
 とか、ワガママな口喧嘩を展開できるではないか!
 いっときの感情で100年の”あどばんてぇじ”を捨てるような愚を犯してはならん!」
スレイチェル「しかし、将軍を生かしておいては後々戦いの火種になる!」

???「西郷、たいがいにせんか」
ハザリア「レイナ小五郎! 心道無念流斉藤道場の塾頭時代、
 その動きの素早さから『小次郎・ザ・イナゴ』と呼ばれ、若干バカにされていたレイナ小五郎が!」
スレイチェル「池田屋騒動のとき、誰よりも華麗な逃走をかましたことから、
 『小次郎・ザ・逃げの』と呼ばれ、若干バカにされていたレイナ小次郎が!」
マリ「池田屋騒動のあと、一分の迷いもなくコジキに身をやつして潜伏したことから、
 『小次郎・ザ・コジキ』と呼ばれ、若干バカにされていたレイナ小次郎が!」
ハザリア「眠っておる!」
レイナ「動乱も長く続きすぎた。ここから先はもう疲弊しか残っていない。
 このへんで手を打とうじゃないか。
 小五郎が無断でアルセーヌ・ルパンと対立したり、
 金田一さんがフカキョンと共演する未来のために」
スレイチェル「眠っているときだけ妙にマトモなことをいうことから、
 『小五郎・ザ・眠りの』と呼ばれるレイナ小五郎がそういうのなら」
ハザリア「よろしい! そして俺は地元でデカい顔をする!」
レイナ「あれ? あたし、なにを」
ゼフィア「しかし、人の心はそれほど物わかりがよくはない」

 【近江屋】
ハザリア「ぶわっくしょいっ!」
マリ「風邪か?」
マーズ「シャモ食えば治るよ。シャモ買ってくるよシャモ」
ハザリア「なぜあくまでもシャモを食わせようとする」

 バタバタバタッ
ゼラド「どいて、土方さん!」
ヴィレアム「待てって」

 バンッ
ゼラド「御用改めだよ!」
ハザリア「まだそんなこといっておるのか」
ゼラド「幕府が、江戸の薩摩藩邸を焼き討ちしたよ」
ハザリア「なんだと!」
ゼラド「朝廷が発表した新政府の中に、将軍と幕府側の名前はなかったの」
ハザリア「岩倉あたりの差し金か。
 バカめ。何万にもの家臣を抱えている幕府に、そんな決定が受けいられるものか!
 行動を起こすことぐらい、わかるだろうに!」
ゼラド「幕府は朝敵になっちゃった。
 もうどうにもならないよ。戦争が始める。
 わかるでしょう。これはあなたがやったことだよ。
 どんなに立派なことをいってても、あなたの存在はひとを殺すの!」
ヴィレアム「よすんだゼラド! こいつを斬ってもなんの解決にもならない!」
ゼラド「でも、これ以上の混乱は止められるよ!」
マリ「やめてくれ! こいつはそんな大それたこと考えてるわけじゃないんだ!
 ただちょっと、地元でデカい顔したかっただけのヤツなんだよ!」
ゼラド「みんなどいて! 邪魔をしたら斬るよ!」
ヴィレアム「イヤだ! これ以上ゼラドにそんなことさせられない!」

ハザリア「ほたえな!」
ゼラド「っ!」
ハザリア「あぁ、つまらんつまらん、実につまらん世の中だ。
 時代遅れの人斬りどもが。そんなに斬り合いたいなら、存分に斬り合うがいい!
 勝った方に斬らせてやる。
 俺とて、こんな時代の道化を演じるのはもう飽き飽きだ!」
マリ「バカっ、お前なんてことを」
ゼラド「土方さん、そこをどかないならっ!」
ヴィレアム「イヤだ! ゼラド相手にそんなことできるわけ」
イングレッタ「いいえ、やってもらわないと困るわ」

 ニャーン

ヴィレアム「若い母さん?」
ゼラド「黒猫?」
イングレッタ「ほかの人間には黒猫に見えてるのよ」
ゼラド「えいっ、えいっ!」
 スカッ スカッ

ヴィレアム「若い母さん、カタナがすり抜けてるけど」
イングレッタ「これ以上は介入できない。あなたがやるしかないのよ」
ヴィレアム「いったいなんでこんなことに」
イングレッタ「ここは、ゼラドが見ている夢のようなところよ。
 あなたはたまたま取り込まれてしまっただけ」
ヴィレアム「ゼラドがあんなに好戦的なのはどうして」
イングレッタ「仲間を守る、町を守る、ゼラドのそういう部分が肥大してしまった姿が、あれよ。
 元に戻すには、拠り所としているカタナをへし折ってやる必要がある」
ヴィレアム「でも、いまのゼラドは天然理心流の」
イングレッタ「できるのはあなただけなのよ」
ゼラド「土方さんっ、いつまでもどかないならっ!」

 ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ!
ヴィレアム(突き!? 一瞬で3つ入れてきた!
 このゼラド、鬼の子か!?)
ゼラド「ちえぇいっ!」

 ザシュッ
ヴィレアム「やめるんだゼラド! お前は、そんな子じゃないだろ!」
ゼラド「そんな子じゃないそんな子じゃないって、
 いったい土方さんがわたしのなにを知ってるの!」
ヴィレアム「えっ」

 カンッ! カンッ! カンッ!
ゼラド「守られたままなのはイヤっ! 戦いに行ったひとを待ち続けるのもイヤっ!
 わたしは、自分で戦える!」
ヴィレアム「でもゼラド、クォヴレーさんは」
ゼラド「誰よそれ!」
ヴィレアム「えっ?」

ゼラド「げほっ、げほげほっ」
ヴィレアム「ゼラド? 血を吐いてるじゃないか」
ゼラド「関係ないでしょ」
ヴィレアム「関係なくなんかない!」

イングレッタ「長い間幻想の中で遊びすぎたのよ。
 これ以上続けていれば、ゼラドは沖田総司に取り込まれる」
ヴィレアム「じゃ、労咳で」
イングレッタ「いいえ、ファーストキスの相手がナカイキイチになるわ」
ヴィレアム「それはそれでダメだ!」
ゼラド「ちえぇぇぇぇいっ!」

ハザリア「足を上げて踏み下ろせぇっ!」
ヴィレアム「えっ!?」

 ペキンッ!

 【北海道】
ハザリア「天然理心流は足を狙う。
 だから拍子さえ合えば、カタナを踏み折ることが可能だ。
 北辰一刀流や直心影流にそんな技はないから、誰もそんな発想はしなかったがな」
ゼラド「う~ん」
ヴィレアム(ゼラドの身体が軽くなっていく。
 夢から覚めかけてるのか。そうすると、この世界は消えるのかな)

ヴィレアム「お前たちは、これからどうするんだ」
ハザリア「どうもせん。俺は脳をやられている。もう、いかぬ」
マリ「弱気になるなよ、お前らしくもない」
ハザリア「あとできることといえば、皇后の夢枕に立つことくらいだ」
マリ「皇后の安眠を妨害しようとするなよ」
ハザリア「いざというときのための潜伏先として、三浦郡に呉服屋を作っておいた。
 今後は行商でもやるか」
マリ「エ?」
ハザリア「行商人と再婚されてたまるか」
マリ「しないよ、再婚なんか!」

ハザリア「知れば迷い 知らねば迷わぬ 恋の道」
ヴィレアム「は?」
ハザリア「貴様の俳句はネタかと思うくらい下手だが、嫌いではないぞ」
ヴィレアム「お前にいわれたってなぁ」

 カァー カァー
ヴィレアム「あ」
ハザリア「三千世界の鴉を殺し、主と朝寝がしてみたい、と」

 【翌朝 学校】
ゼラド「昨日新撰組の本読んでから寝たら、ヘンな夢みたの。
 あれ、でも、どんな夢だったっけ?
 新撰組が出てたのは覚えてるんだけど」
ヴィレアム「ゼラド、その夢はもう、見なくていいんだ」

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最終更新:2009年10月17日 12:16
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