22代目スレ 2008/01/20(日)
ラミア「ではこれより、宇宙船乗組員資格試験の最終試験を行う。
コンピューターによって選出された11人でグループを作り、実技をやってもらう。
テスト会場は、そこの窓から見える宇宙船だ。
なにをやるかは行けばわかる。
では出発しろ」
ラミア「古いセリフだが、グッドラック」
【エアロック内】
マリ(2年生のこの時期に宇宙船乗組員資格が取れるっていうのは聞いてたけど、
実技試験があるっていうのは知らなかったな。
いったい、なにやらされるんだろ)
マリ(オレンジ色の安全照明だ。もうヘルメットを取っていいのかな)
???「ちょっと、おかしくない?」
???「人数が足りないのではなくて?」
???「11人いないぞ!」
マリ「待て、みんな、落ち着くんだ。まずヘルメットを取ろう」
レイナ「コンピュータのミスかしら」
タカヤ「誰か、宇宙船までたどり着けなかったのかも」
レタス「しかし、もうエアロックのハッチは閉まっていましてよ」
マリ「船内に続くドアもあかないし、いったいどうなってるんだろ」
ゼフィア「コンピュータのミスかもしれん」
レイナ「なんで上級生がいるんですか。2年生の試験ですよ?」
ゼフィア「去年は体調を崩していてな。試験を受けられなかったのだ」
マーズ「早いとこ、せんせーがたがいるステーションに連絡取ろーよ。
うちゅーでの迷子は怖いよー?」
レイナ「部外者ーっ! そしてロボーっ!」
マーズ「ちゃんと外部からの受験票は持ってんよー」
レイナ「あんた、宇宙船生まれの宇宙用でしょう。
なんでいまさら宇宙船乗組員資格なんか取りに来てるのよ!?」
マーズ「条例が変わっちゃったんだよ。
AI搭載のロボも、資格持ってないと船外作業できねーんだって!
屈辱だよ屈辱! 潜水艦がスキューバの資格取りに来てるよーなもんだよ!」
タカヤ「とにかく、おかしいよ。マーズがいうとおり、先生方に連絡を」
ーブツッ
スピーカー『あー、あー、テスッ、テスッ。ごきげんよう、諸君』
マリ「なんだ? この声、変声機を使ってる?」
スピーカー『説明は一度のみ。質問は受け付けない。
どうか諸君、集中力を持ってお聞きいただきたい。
これから、諸君にはギャンブルをやってもらう。
賭け金は、命・・・・・・! そう、まさに、命がけの、ギャンブル・・・・・・っ!』
・・・・・・ざわっ・・・・・・ざわっざわっ
タカヤ「冗談じゃない」
レイナ「誰がそんなものやるっていうのよ!?」
スピーカー『いいや、やってもらう。やらざるをえんのだ、諸君は・・・・・・っ!
なぜなら、すでに・・・・・・! 置いているのだよ・・・・・・!
賭け金を、テーブルに・・・・・・! 諸君らは・・・・・・っ!』
・・・・・・ざわっ!
ゼフィア「ぐっ・・・・・・!」
タカヤ「ゼフィア先輩!」
スピーカー『諸君らが着ていた、宇宙服だよ・・・・・・。
仕掛けさせてもらったよ。皮膚感染する、毒を・・・・・・っ!
効き目には個人差があるが、いずれは諸君もこうなる。
そう、彼のように・・・・・・!』
ゼフィア「苦し・・・・・・」バタッ
マリ「なんてことを!」
マーズ「毒ね、おれはロボだから、かんけーないかな」
スピーカー『そこのロボ君には、ミクロサイズの爆弾を吸い込ませてある。
小さなものだが、その柔らかそうな上半身が吹き飛ぶには充分な威力のをな』
マーズ「んげっ」
レタス「種目は?」
レイナ「ちょっと、レタス!?」
レタス「ギャンブルにも、いろいろと種類がありましてよ。
なんでして? ポーカー? ルーレット? 花札? 限定じゃんけん?」
スピーカー『いやいやお嬢さん、失望させて申し訳ないが、それらにはすべて複雑なルールがある。
そして、全員がルールを知っているとは限らない。
それでは、あまりにも不平等・・・・・・っ!
そこで我々が用意するのは、単純至極な、遊戯・・・・・・っ!』
マリ「その、大げさな喋り口調はなんなんだ」
スピーカー『エアロックの隅を見てみたまえ。小箱があるだろう』
レタス「これでして? 入っているのは、コインが一枚きり」
スピーカー『そう、それだよ。それこそが、このギャンブルの、唯一無二の道具・・・・・・!
コインを投げて、右か左かを相手に当てさせる。
ルールはたったこれだけ! 実に、単純明快・・・・・・っ!』
・・・・・・ざわっ・・・・・・ざわっざわっ
スピーカー『諸君らは全部で6人。
しかし、我々が助けて差し上げられるのは5人まで・・・・・・っ!
すなわち、1人には死んでもらう! 確実にな・・・・・・!
心配することはない。我々は殺人鬼ではない。死んでもらうのは1人でいい。
1人が死んだ時点で、全員を解放し、解毒剤を渡そうじゃないか。
犠牲者となる1人を決定する手段が・・・・・・、コイントス・・・・・・っ!
面白かろ? この・・・・・・、趣向・・・・・・!』
マリ「吐き気がする」
タカヤ「お前は何者なんだ。どうして、こんなことを!?」
スピーカー『質問は受け付けないといったはずだが、寛容の心を持って受け止めよう。
君らの親族に恨みを持つ者だよ・・・・・・』
マリ「
バルマー? ゾヴォーグ? でも」
タカヤ「たしかに、だいぶ滅ぼしたり追い出したりしてるけど」
レタス「まさか、お父様に限ってそんなことは」
レイナ「まさか、あのバカオヤジ!?」
マーズ「うちは、インファレンスおじちゃんたちが、だいぶやらかしてっからなー。
あー、あとシホミおばちゃんが天魔降伏で冥闘士をたいりょーに」
レイナ「時と場合考えてボケなさいよ!」
スピーカー『では、諸君らの健闘を祈る・・・・・・!』
・・・・・・ざわっ・・・・・・ざわっざわっ
レイナ「ちょっとレタス、あんたどういうつもりなのよ。
どうして犯人のいいなりになるようなこと」
レタス「ゼフィア先輩の容態を見るに、毒ガスの話は真実だと考えるのが賢明でしてよ。
さらに、スピーカーを使ったり、あらかじめコインを用意していたことから、
この宇宙船のシステムは、すでに犯人側によって掌握されているのではなくて?」
タカヤ「へたに刺激すれば、問答無用で宇宙空間に放り出されるかもしれないわけか」
マリ「電話は、ダメだ。通じない」
レイナ「ちょっとロボ、あんた宇宙用でしょ?
ひとっ走りして、助けを呼んできなさいよ」
マーズ「そりゃー、おれはへーきだよ。
でもでもー、ロボット三原則第1条により、そのめーれーはじっこーできませーん」
レタス「コントロールボックスは反応なし。
私たちは、このエアロック内に閉じこめられてしまっているのですわ」
マーズ「毒が仕掛けられてるってんだから、うちゅー服は着らんないでしょ?
そんな普段着のまま、うちゅー空間に向けてドアあける気?
ちょっと息止めただけで、どーにかなるもんじゃねーよ。
腹圧で破裂して、だいぶグロいことになっちゃうよー?」
ブブブブ
マリ「なんだ? ケータイのバイブ機能?
さっきは通じなかったのに、なんで? しかも番号非通知で」
ハザリア『俺だ』
マリ「いま、お前に構ってる場合じゃ」
ハザリア『いつまで通話できるかわからんから、手短に話すぞ。
なんだかわからんが、俺は薄暗い部屋に監禁されている。
室内にはなぜかテレビがあって、貴様らの様子が映し出されている。
とにかく、事件の全貌がまるで見えん!
貴様、たしか骨伝導式の小型イヤホンマイクを持っていたな。
髪の毛に隠れるようにして、それを装着しておけ。
俺からの通話に応えるときは、小声でな。周囲に気取られんように』
マリ「なんでそんなことを」
ハザリア『この茶番を仕組んだ人間が、貴様のそばにいる可能性もあるのだ。
警戒しろ、注意を忘れるな、そのケータイだけが貴様の命綱だと知れ。
そう、つまり、そのケータイはダブルサテライトキャノンで』
マリ「うるさいよ」
ハザリア『もっとも注意すべきは、スズキアミの親父だ』
マリ「切るぞ?」
ツーツーツーツー
レイナ「電話、通じたの?」
マリ「いや、なんか、切れた。ダメだ、もう通じない」
【密室】
甲「んっ、んん・・・・・・」
乙「目が覚めたか」
甲「あなたは?」
乙「知らん。わからん。
目が覚めると、部屋の中央には死体がひとつ、
向かい側には両手両足を縛り付けられた女が一人。
その頭上にはアナログ式の壁掛け時計。時刻は10時。午前か午後かはわからん。
妙に反響する部屋だな。声が、なんだかおかしな感じだ。
以上だ。あとは、自分の名前すら思い出せん。記憶喪失というものか」
甲「えっ、なにこれ。頭も金具かなんかで固定されて、動かせない」
乙「俺の方もおなじだ。自分の身体すら見られん。
おい、俺はどういう外見をしている」
甲「まず、男の人。歳はたぶん、18、9。老けて見えるだけで、もう少し若いのかも。
背は高い方だと思う。髪は銀色、ていうか、灰色?
薄暗いからよくわかんないけど、かなり血色が悪い。インドア派な感じ」
乙「俺から見える貴様は、女だ。髪は銀色。
年の頃は14、5。童顔なだけで、もう少し上かもしれん。
学校の制服のような服装をしている。おそらく学生なのだろう。
全身にうっすら皮下脂肪が乗っているが、ウェストは妙に細く、胸はやたらにでかい。
それから、頬がやけにぷにぷにしている」
ーブツッ
スピーカー『あー、あー、テスッ、テスッ。ごきげんよう、諸君』
乙「なんだ?」
スピーカー『諸君たちは今、自分の名前すら忘れたまま監禁されている。
さぞかし不安だろう。恐ろしいだろう。心細いだろう」
甲「ここはどこ? あなたは誰? わたしは誰なの? もう、なにもかもわからない!」
スピーカー『すべて、不足なく答えよう。
ただし、条件がある。次の問いに答えたまえ。
一度しかいわん。質問は受け付けない。
どうか諸君、集中力を持ってお聞きいただきたい。
君らが見る死体が、合計ふたつになるのは、何時のことか?』
甲「なに、それぇ」
スピーカー『答えは、記憶を取り戻せばおのずとわかるはずだ。
では、諸君らの健闘を祈る・・・・・・!』
【エアロック内】
レイナ「とりあえず、ポーズとしてコイントスをするのね?」
タカヤ「そうだけど、その前にレタスさん、上着を脱いでくれ」
レタス「あら、唐突なアプローチをなさるのね」
タカヤ「君にはマジシャンの腕があるんだろう?
疑いたくはないけど、上着にどんなもの隠し持ってるか」
レタス「構わなくてよ?」スルッ
レイナ「って、腕細ッ! 肌きめ細かッ! なんなのよ、もう、最近出てきた子たちは」
レタス「預かっていてくださる?」
タカヤ「重ッ!? いったい、なにが入ってるんだ」
レタス「女の秘密を暴こうとするのは、マナー違反でしてよ?」
タカヤ「じゃ、始めようか。
ゼフィア先輩はゲームなんかできる状態じゃないから、そこで横になってもらって。
残りで輪になって、時計回りに」
タカヤ→マリ→マーズ→レイナ→レタス→タカヤ
タカヤ「この順番で、いいかい?」
マリ「べつに、構わないけど」
タカヤ「それじゃ、まずは俺から。はい、コバヤシさん」
マリ「ええと、右」
タカヤ「当たり。コバヤシさん勝ち点1。
マーズ、記録しておいてくれ」
マーズ「あいよ」
マリ「次はわたしだ。ロボ、どっちだ?」
マーズ「えーと、お椀持つ方」
マリ「左っていうことか? ストレートにいえよ。
はい、外れ。ロボ負け点1」
マーズ「ふんじゃー、次はおれね。ほい」
ピンッ
マーズ「あいあい、右か左か、どーっちだ?」
レイナ「ちょっと、コイン床に投げるなんて!」
マーズ「コインを投げて、右か左か当てさせろって。
スピーカーさんがゆってたのは、そんだけだよ。手で握れなんて、きーてない。
おれロボだからさー、コマンドはせーかくに打ち込んでくんねーと」
レイナ「無効よ無効!
あんた、あたしが右って答えたら、自分の身体より左にあるから左だとか屁理屈こねる気でしょ!?」
マーズ「左って答えてたら、部屋の中心線より右にあるから右って答えただろーね」
レイナ「ダメッ、ダメダメッ! 通らない・・・・・・、そんなのは!
コインは右手か左手かに握ること! いいわね!」
マーズ「あいあい、じゃー、あらためて。
はい、どーっちだ」
レイナ「ええと」
マーズ「ペナルティ代わりに、コインがどっちにあるか教えてあげよーか」
レイナ「いらないわよ。どうせウソでしょう」
マーズ「おれはロボだから、ウソはいわねーよ。
えーっとね、太陽が東から昇るなら、太陽が東から昇らない場合、右だよ」
レイナ「また! わけのわかんないことばっか!
えぇと、太陽が西から昇るわけないから、左ね! 左!」
マーズ「はいザンネン。右だよ」
レイナ「あんた、ウソつかないとかいって!」
マーズ「ウソなんかついちゃいねーよ。
『太陽が東から昇る』っていうのは真として成り立ってるから、
『太陽が東から昇らない場合、コインは右』ってゆーのも成り立つの。
あのね、『Aならば、(Aでないならば、Bである)』ってゆーのは、論理学じゃ常に真として扱われんの。
よくある、IQサプリ的なサムシングだよ」
レイナ「ああ、もういや! このロボ!」
マーズ「レイナさん、負け点1ね」
【密室内】
甲「死体の合計がふたつになるって、どういうことかなあ」
乙「しかし、我々の中間地点に転がっている死体はひとつきりだ」
甲「殺して増やせっていうことかな」
乙「怖いことをいう女だな、貴様は」
甲「でも、こんながんじがらめに縛られてちゃ、ムリだよね」
乙「・・・・・・ぐっ!」
甲「どうしたの?」
乙「おい、貴様は人殺しか?」
甲「訊かれても、記憶がないから答えようがないんだけど」
乙「今、頭の中に数枚のイメージが浮かんだ。
貴様がひとを殺しているところだ。ナイフでメッタ刺しにしている。
殺されているのは、銀色の髪をした女」
甲「待って、それは催眠術みたいなものなんじゃないかな!
わたしたちの記憶を消したみたいな」
乙「どうも、このイメージの中にいる銀髪の女は俺の血縁者のような気がする。
姉か、妹か、母親か。ダメだ。わからん」
甲「殺されてるのって、この、目の前に転がってる?」
乙「いや、暗くて、よく見えない。白い服を着ているくらいしか。
女にしては大柄だが、では男かといわれると自信がない」
甲「こっちもおなじ。あっ、ちょっと待って。わたしの頭の中にも、閃いた」
乙「なにが見えた」
甲「見えたんじゃないの。文字、言葉?
『レベル7に到達せよ』」
乙「ギャグか?」
【エアロック内】
マーズ「コインが舞う! 舞いて削るは人の命・・・・・・!
まさに、この一投一投が、命がけの、勝負・・・・・・!
この時点で1位は全勝のレタスおねーさん・・・・・・!
次いで、地味に勝ちを重ねてるマリおねーさん! まんなかにおれ! 妙に引きが弱いレイナさん!
大きく引き離されて、全敗のタカヤおにーさん!」
マリ「どんだけノリノリなんだ。
いいから、さっさと右か左かいえよ。
さっきから思ってたけど、お前、コイン取るのも投げるのも、時間かけ過ぎなんだよ」
マーズ「だぁーって、どーせポーズでやってるゲームだし。
そんなマジメにやるこたねーよ」
レイナ「もう小一時間経ってるけど、いつまでやらせるつもりなのかしら、このコイントス」
レタス「犯人から時間の指定はありませんでした。
おそらく、犯人の気まぐれで打ち切られるのではなくて?」
ゼフィア「・・・・・・はぁっ、・・・・・・はぁっ」
タカヤ「ゼフィア先輩だって、このままにしとくわけにはいかないのに」
マリ「相変わらず、こっちからのケータイは繋がらないし」
マーズ「あいあい、じゃー、おれの選択。お箸持つ方。あれ、フォーク持つ方?」
マリ「右な。はい、お前の負け」
ブブブブ
ハザリア『よう、どうにかこうにか安全圏を確保しているようだな』
マリ(そういう意図でやってるんじゃない)
ハザリア『だが、油断は禁物だ。あまりゲームにのめり込みすぎるな。
俺は、そのエアロック内に犯人の一派が紛れ込んでいると睨んでいる』
マリ(根拠はあるんだろうな)
ハザリア『マーズが毒について指摘したとき、スピーカーの声はすかさず反応していただろう。
あらかじめ録音していたわけではないという証拠だ』
マリ(お前みたいに、外部からモニターしてたんじゃないのか?
だいたい、一番怪しいのはお前なんだよ。なんでモニターしてるんだ)
ハザリア『だが、それだけでは説明のつかんことがある。
あまりにもスムーズにゲームが始められたことだ』
マリ(たしかに、もうちょっとモメてもよさそうなものだよな)
ハザリア『何者かが場を操っているのだ。
運命共同体のような顔をして、舌なめずりをしている悪党がな。
そう、『スズキアミの親父』のような』
マリ(スズキアミの親父さんを、怪人かなんかみたいにいうな)
ハザリア『犯人が自殺志願者でない限り、必ずどこかに安全パイを持っているはずだ。
『スズキアミの親父』を探し出せ、暴き出せ、すべてを疑え。
そして、生き残るのだ」
プツッ、ツーツーツーツー
マリ(あいつめ、勝手にかけてきて、勝手に切るなんて。
あんなこといわれたら、全部が疑わしくなってくるじゃないか。
レイナはゲームに必死すぎる感じがあるし、
マーズはなんだかんだいってロボだから完全に死ぬ可能性は低い。
ゲームに乗るって言い出したのはレタスだし、タカヤが全敗してるっていうのも、なんだか不自然だ)
【密室内】
乙「思うのだが、俺はゲイなのだろうか」
甲「え、そうなの?」
乙「いや、わからんが。貴様のスカート、裾が少しまくれ上がっている」
甲「えぇ~」
乙「にもかかわらず、俺はなにも感じない。
男性として、これは少し不自然だ。よほど真性のゲイなのか」
甲「わたしが、ものすごいブスなのかな」
乙「比較対象がないからな、なんともいえん」
甲「ねえ、いま、ウンコしたい?」
乙「なにをいいだす」
甲「人間の性格っていうのは、ほとんどが1歳から3歳までの肛門期に決まっちゃうんだって。
一度に大量のウンコしたがる子は倹約家、こまめにウンコする子は浪費家みたいな。
フロイトさん的にいうなら、
ホモっていうのは太いウンコが肛門を通り過ぎてく快感を忘れられないひとなんじゃないかな」
乙「貴様、何者だ?」
甲「それで、ウンコしたい?」
乙「いや、特にしたくはない」
甲「そういえば、この状態でウンコしたくなっちゃったら、どうするんだろう」
乙「そういうことをいうな。ウンコしたくなるかもしれないだろう」
【エアロック内】
レタス「右ではなくて?」
レイナ「またぁ? レタス、あんたなんでそんなに強いのよ」
マーズ「だぁーって、レイナさん、けっこーわかりやすいもん。
眼球運動とか、ゲンコツの細かい緊張度合いから、横で見ててもわかっちゃうよ」
レタス「終わりは始まり。
ステージに立った時点で、観客はマジシャンの術中に陥っているのでしてよ」
マーズ「やっべー。このおねーさん、マジシャンだよ。
千里眼とつるんでテーマパークで大立ち回りした挙げ句、次の本でそっこーなかったことにされんばかりのマジシャンだよ」
レタス「マジックとは、マジジャンと観客との心理戦に負うところが大きいのです。
素人の目線を読むことなど、造作もないことでしてよ」
レイナ「レタス、あんたキク科野菜廃業してセロリにでもなるつもりなの?」
レタス「『リ』はいらなくてよ」
マーズ「そりゃ聞き捨てならねーよ!
リーさんはいるよ! ひつよーだよ! OGシリーズで大活躍の予感だよ!」
レイナ「なんであんた、リーさんに食い付いてんのよ」
マーズ「おれ、きっとどこかにいるって信じてる!
リーさんと妹さんとの間に出来た、捏造2世!」
レイナ「そういうのがまかり通ってたら、あんたこの場にいないからね?」
レタス「リーさんを冒涜するような話は、許さなくてよ」
レイナ「なんであんたまでリーさん大好きなのよ!?」
タカヤ「レタスさん、次は俺の番だけど、いいかな」
レタス「あら、失礼」
マーズ「この時点で、タカヤおにーさんは全敗・・・・・・!
もしここでゲームを打ち切られれば、アウツッ・・・・・・!
もちろん倒れたまんまのゼフィアおにーさんを差し出せば犠牲はまぬがれるけれど、
タカヤおにーさんの性格からして、そのセンはナシ・・・・・・っ!
まさに絶体絶命! 後がない状況・・・・・・! ざわっ!」
マリ「なんでナレーションみたいになってるんだ、お前」
レイナ「レタス! あんた仕掛けるときにもマジックを使ってるでしょう!?」
レタス「たしかに、コインズ・アクロスといって、
手を握ったままコインを右から左に移動させるテクニックはありましてよ。
指の裏側などにコインを隠すパームなど、物心ついたころから習得しています」
レイナ「それ、反則なんじゃ!」
タカヤ「いいんだ、レイナさん。
スピーカーはイカサマ禁止とはひと言もいってない。
それに、レタスさんはいま、両腕を剥き出しにしてる。腕時計すら着けてない。
こうなると、マジックというよりテクニックだ」
レタス「私は自殺願望など持っていません。
拾える命なら拾いたいと考えるのは、自然ではなくて?
全身全霊を使ってでも」
タカヤ「その通りだ。だから俺も」スッ
レタス「なっ!?」
レイナ「タカヤ、あんた!」
マーズ「おにーさん、しょーきなの!? 目をつぶるなんて!
いーかい? イカサマが容認されてる時点で、これはゲームなんかじゃねーんだ!
ロジックを組み上げて勝ちをさらう、頭脳戦なんだよ! ざわっ!
目を閉じるなんて、それはあまりにも運否天賦・・・・・・っ! ざわっ!
あまりにも分の悪い賭け・・・・・・っ! ざわっ!
あーっ! なんだよ、さっきからザワザワうるせーな!
言語プログラムのこしょーかっ!?」
レイナ「疑問覚えるのが遅い!」
レタス「目を閉じれば、目線を読み、コインを移動させることができなくなると考えたのでして?
悪くはない考え、しかし必勝法にはなり得なくてよ。
ただ、勝負が五分になっただけ」
タカヤ「それが、ギャンブルだ」
レタス「賭けるのですか、強運に」
タカヤ「右だ」
レタス「・・・・・・あなたの、勝ちでしてよ」
タカヤ「くやしい。けど、ヒリヒリする。これが、ギャンブル!」
マリ(なんだ? いま、かすかな違和感があった。
おかしいっていえばすべてがおかしいんだけど、いったいなにが?)
ブブブブ
マリ(着信? ハザリアから? 今度は番号通知で)
ハザリア『貴様か、ようやく繋がった』
マリ(お前な、こんなときに番号非通知にしたり通知にしたり、なにケータイの設定いじって遊んでるんだよ)
ハザリア『待て、貴様、なにをいっている。
いいか、俺はいま、なんだか暗い密室に監禁されている』
マリ(それはさっき聞いたよ)
ハザリア『バカな! 俺は、監禁されてから、いま初めて電話が繋がったのだぞ!』
マリ(エ?)
ハザリア『バカモノ! 貴様が受けていた電話はニセモノだ!』
【密室内】
甲「ゲイかどうかはわかんないけど、たぶんあなた、女の子と付き合ったことはないと思う」
乙「そうか?」
甲「だって、女の子に気遣いしようっていう気が全然見えないもん」
乙「そういう貴様も、男と付き合ったことはないと見える」
甲「なんでそう思うの?」
乙「いきなりウンコとかフロイトとか言い出すからだ!」
甲「偉そうな喋り方。でも、なんだかポーズみたいな感じがする。
ほんとはけっこう弱い人なんじゃないかな。
三島派か太宰派かでいうと、太宰派みたいな」
乙「貴様は、おそらく兄なり姉なりがいるのだろう。
どうにも子供っぽさが抜けきれていない」
甲「そっちも、けっこう子供っぽいと思うよ?」
乙「ところで貴様、右脚になにか汚れが付いていないか?」
甲「えぇ~、そんなこといわれても、動けないのに」
乙「待て。貴様いま、右脚を動かしたのか?」
甲「右って、わたしから見て右? そっちから見て右?」
乙「どちらでもいい。俺から見える貴様は、どちらの脚も動かしていない!」
甲「えっ、それって、どういう」
乙「そうか、そういうことなのか」
甲「あ、そっか。わかった、わたしも」
乙「わかってみると、気味が悪いものだな」
甲「あなたの名前は
ゼラド・バランガ。わたしが、自分だと思い込んでいた人物!」
乙「貴様の名前は
ハザリア・カイツ! 俺が、自分だと思い込んでいた人物だ!」
最終更新:2009年10月17日 12:29