22代目スレ 2008/03/03(月)
ラミア「たるんでる」
ゼラド「どうしたんですか?」
ラミア「たるんでる。お前たちたるみすぎだ。
正月休みで洒落にならない太り方をして、痩せようとは思うものの
一度広がった胃袋はなかなか縮んでくれず、
寒いうちは厚着してるからいいやとか、自分を甘やかすにもほどがある」
レイナ「なぜじっとあたしを見てるんですか!」
ラミア「アルベロ先生がソミン祭ではっちゃけてる間、お前たちはいったいなにをやっていたんだ」
レイナ「なにしてるんですか、アルベロ先生」
ラミア「先生はな、先生はな、ずっと前からこの、3学期という時期が好きじゃなかった。
日数も少ないし、目立ったイベントもないし、無難に過ごしていれば春休みだという、このふぬけた空気が。
ゆえに私はお前たちに選択を迫る。
ソミン祭か寒中水泳大会か、どちらかを選べ!」
レイナ「その2択はなんなんですか!?」
ラミア「裸エプロンか水着か、どちらかを選べ!」
レイナ「ソミン祭を勘違いしています!」
ミナト「ソミン祭でお願いします!」
レイナ「黙ってろ!」
ラミア「わかった。すぐにアルベロ先生に裸エプロンの用意をしてもらう」
ミナト「寒中水泳で、寒中水泳でお願いします!」
ラミア「もうめんどくさいから、成績上位者には残りの単位をくれてやる。
できたらもう、このクラス全員上位に入って、先生を一足早い春休みに突入させるんだ」
レイナ「めんどくさいんだ! めんどくさいだけなんだ!」
ミナト「先生! ポロリは、ポロリはあるんでしょうか!」
ラミア「ポロリはないが、トリイミユキのモノマネはあるかもな」
ミナト「ヒャッホォォォォォォウッ!」
レイナ「なんでトリイミユキでテンション上がるの!?」
【大会当日 海辺】
ミナト「さぁ始まりました。そろそろ暖かくなってきたにもかかわらずの寒中水泳大会!
司会は私、前回寒中水泳大会時には爽やかキャラで売っていたことを、
ついさっき思い出した
ミナト・カノウがお送りします!」
マキネ「ソミン祭りはニホンの東北地方を中心に1000年近くも続いている裸祭りのこと。
全裸の男どもが『ジョヤサ』とか叫びながら五穀豊穣を祈る様は非常に雄壮なものです。
地元の人間でなくても届け出さえすれば参加できるんだけど、
露出趣味の変態とかホモが紛れ込んだりするもんだから、近年問題になっている!」
ミナト「なぜソミン祭の解説をしているのでしょうか!
解説は、迷走がタンクトップ着てつっ走ってることでお馴染み、
マキネ・アンドーさんです!」
マキネ「えーと、ルールは単純だね。
この浜辺からスタートして、あっちに見える小島まで泳いでもらう。
なお他人への進路妨害、および海の中でオシッコしちゃう等の行為はルール違反ってことになってるから」
ミナト「前回のは、寒中水泳という名の乱闘大会でしたからね」
マキネ「特に海の中でオシッコ等しちゃうような人道にもとる行為は、
発覚した瞬間失格になるから、みんな必ずトイレを済ませといてね!」
ミナト「オシッコの心配をし過ぎだよ!」
マキネ「大会の様子は、あたしと、この横にいる変質者が、
気球の上から最盛期のアンジャッシュに勝るとも劣らないクォリティでお送りしたいと思います!」
ミナト「アンジャッシュはハードル高いよ!」
マキネ「アンジャッシュはトーキョー出身のお笑いコンビ。
その計算し尽くされたコントとは裏腹に、バラエティ番組での輝かなさには定評がある。
一説には、まだ最盛期は訪れていないのではないかと」
ミナト「なんでアンジャッシュの解説をし始めてるんだよ!」
マキネ「さぁ、選手入場です!」
ワアァァァァーッ!
ミナト「でかぁぁぁーいっ! 説明不要!
ゼラド・バランガ!
揺れています! 歩くたびに胸とほっぺが揺れています!
白い素肌に、ブルーのセパレーツタイプの水着がよく映えております!」
マキネ「あえてビキニタイプでない思い切りの悪さが、
逆に熟しきってない感を出していて高得点です!」
ミナト「マキネさんの解説は、いったいどこからの視点なんでしょうか!」
ワアァァァァーッ!
ミナト「
レイナ・レシタールです! こちらはワンピースタイプ!
胸のサイズもさることながら、全体的なバランスのよさを光沢のある素材が演出しています!」
マキネ「いえ、あのウェストまわりのラインは明らかに不自然です!
水着内部にコルセット的ななにかがぎっちり詰まっていることは想像に難くありません!」
ミナト「怖いです! 女性は同性に容赦しません!」
マキネ「で、司会のミナトさんは、初期の彼女のどんなとこが好きだったんでしょうか」
ミナト「初期すぎて忘れました!」
マキネ「うわ、最低!」
ワアァァァァーッ!
ミナト「美尻! 美脚!
ユウカ・ジェグナン!
褐色の肌に、やたらちっこい白いビキニを合わせるという攻撃的な装いで登場です!
それにしても、寒中水泳だというのに、ひとり残らず泳ぐ気ゼロの水着なのはどういうことなんでしょうか!」
マキネ「もうかなり暖かいし、オキナワあたりの小学生はもうフツーにバチャバチャ泳いでそうな気がします!」
ミナト「えー、出席日数が明らかに足りていないユウカさん。
ここはなんとしてでも単位が欲しいところでしょう」
マキネ「資料によると、幼少時からダンスで鍛えていたものの、
ここ数年はパンクとかいって不摂生の限りを尽くしているとのこと。
スタミナ面で大きな不安があります!」
ワアァァァァーッ!
ミナト「
レタス・シングウジ! まさかのスク水だぁーっ!
しかもゼッケンには『れたす』とか、平仮名で書いてあります!」
マキネ「落ち着いてください! 脚を! 脚を見てください!
パンストはいてます! いったいなにを考えているんでしょうか!」
ミナト「手足の細さとか肌のきめ細かさとかぶっ飛ばすようなインパクトです!
もはやサービス通り越して、ちょっとバカにされてるんじゃないかというような気までします!」
マキネ「おそらくバカにしているのでしょう!」
マキネ「さぁ出場選手が出そろいました!」
ミナト「こんだけ!? 少なくないでしょうか!」
マキネ「だったら端っこの通路からゾロゾロと出場してる男連中でも描写していてください!」
ミナト「ゴメンこうむります!
ところでマキネさん、ここはマキネさんも空気読んで水着姿になる必要があるのではないでしょうか!」
マキネ「いえ、あたしは逆に、ウィンドブレーカーを羽織りたいと思います!」
ミナト「大変です! マキネさんは方向音痴です! 人生の迷子です!」
マキネ「なお、ここまでで隣りにいる変質者があたしの脇チチをチラ見すること15回! キモいです!」
ミナト「違います、17回です! どんなもんだい!」
マキネ「どんなもんだいと来ました! 予想外の敗北感です!」
ミナト「おっと、スタートのホイッスルが鳴るようです!」
アクア「えぇと、えぇと、ヒットエンドラーン、ヒットエンドラーン、
バッティングセンターでバ、ン、ト」
パァンッ!
ミナト「いじりません! あえていじりません! 放置していきましょう!」
マキネ「物怖じしながら行われるトリイミユキは、ひどくかわいそうなひとにしか見えませんでした!」
ミナト「さぁ選手、いっせいに水の中に入ります!
誰ひとりとして寒がっていません! 寒中水泳なのに!」
マキネ「水温、もうかなり温かいようです!」
ミナト「では我々も、気球の上から選手たちを追いたいと思います!」
【30分経過】
ミナト「えーと、あれ、長くねぇ?」
マキネ「我々は現在、先頭集団と思われる一段の上空に浮いています。
まず、トップはパチャパチャとバタ足してるだけなのに異様に早いゼラド選手、
次に、わりと無難な泳ぎ方してるレイナ選手、パンストでスイスイ平泳ぎしてるレタス選手、
かなり遅れて、序盤バタフライでぶっ飛ばしたものの、あっという間に失速し、
あとは落ちるのを待つばかりという感のあるユウカ選手」
ミナト「いやいや、なんでこんなときだけ普通に解説してるんだよ。
おかしいよ。ゴールの小島がどこにも見えなくなってるだろ」
マキネ「それはミナトの目が濁ってるからじゃないの」
ミナト「濁ってはいねぇよ!」
マキネ「いや、濁ってるよ。相当濁ってるよ。
特売のシール貼られた直後のアジのヒラキみたいだもん」
ミナト「じゃ、もういいよ濁ってるで!
お前の目には小島が見えるのかよ!?」
マキネ「えぇと、あれ、見えないや。小島も人生の希望も」
ミナト「人生の希望は探さなくていいんだよ!」
【海の上】
レイナ「ねぇ、ちょっと、ゼラド! ストップストップ!
なにかおかしくない!?」
ゼラド「うん。寒中水泳のはずなのに、意外なほど寒くない」
レイナ「そうじゃなくて、ゴールが見えないじゃない!」
ゼラド「やだぁ、もう、ゴールインだなんて、わたし、まだそんな」
レイナ「こんなときにボケないで!」
レタス「たしかに、おかしくてよ。せいぜい2、30分でゴールできそうな距離でしたのに」
ユウカ「人生にゴールなんか決めちゃいけないのよ。
ここがゴールだと思った瞬間、人間は自分にリミッターを作ってしまうの」ハァハァ
レイナ「すでに限界いっぱいいっぱいの顔したひとは黙ってて!」
ゼラド「いつの間にか、ほかのみんなも見えなくなってるし」
レイナ「ねぇ、ちょっと、マキネ! ミナト!
こっちのコースで合ってるのぉーっ!?」
マキネ「なにー? そっちも人生の希望が見えないのぉー!?」
レイナ「なにいってんの!? なんで海のまっただ中で人生の希望探さなきゃなんないのよ!」
ユウカ「見えない。たしかに見えない。ドリームもホープも。
いま、喜望峰から出航したスレイブたちの気持ちが手に取るようにわかる」
レタス「ゴールへは、こちらの方向で合っているのでしてー?」
マキネ「なんであたしたちにそんなこと訊くのぉーっ?」
ミナト「俺たち、ゼラドたちのあと追っかけてただけだぜー?」
レイナ「ちょっと待ってよ。あたしたち、あんたたちが先導してるんだと思って着いてきたのに!」
マキネ「買いかぶんないで欲しいね!
ここにいるのは、人生踏み外した男と、人生の方向性がまったく見えてない女だよーっと!」
レイナ「しまったぁっ! もっと早く気付くべきだった!」
【気球の上】
マキネ「なんか、遭難しちゃったみたいだね」
ミナト「軽くいうなよ! 大変じゃねえか!」
マキネ「大丈夫だよ。こんな目立つ気球が消えちゃったんだから、先生方だって探してるさ。
ケータイで連絡取って」
ミナト「よかった。ケータイ持ってきてたのか」
マキネ「ばっちり圏外だったよ」
ミナト「ダメじゃねえか!」
マキネ「とにかく捜索は出てるだろうから。
みんなー、それ以上泳がないで、じっとしててー! ヘタに動くとますます迷子になるからー!」
ミナト「迷子馴れしてるな、お前!」
【30分経過】
レイナ「来ないね、救助」
レタス「海は広いですから」
ゼラド「おなか空いたなぁ」
レイナ「こんなときになにいってるのよ」
ゼラド「ひゃうん! やめてよ、レイナぁ~」
レイナ「なにいってんのよ」
ゼラド「いま、わたしの足つついたでしょ?」
レイナ「つついてないわよ。わたし、こんなときに悪ふざけする趣味ないわよ」
レタス「誰かが、水に潜ってつついたのではなくて?」
レイナ「でも、ユウカはだいぶ前に力尽きていまにも水没しそうな感じでプカプカ浮いてるだけだし」
バチャッ
ユウカ「いま、水の下を見たらノンよ」
レイナ「なによ、急に顔上げて」
スゥーッ
レタス「ええと、いま、なにか大きな影がわたくしたちの足元を通り過ぎていきましたけれど」
【気球の上】
マキネ「あっ、このへんたまにサメ出るから気を付けてねー!」
ミナト「そんなとこで寒中水泳やるなよ、うちの学校!」
マキネ「大丈夫だって。このへんのサメは大人しいから、ヘンに刺激しなきゃ襲ってはこないって。
みんなぁーっ! 生理始まってるヒト、いないよねぇー!」
ミナト「お前の中にデリカシーって単語は入ってないのかぁっ!」
レイナ「そっちの方で、サメに対抗できるものとか積んでないのぉー?」
マキネ「50匹分のマグロ肉ならあるけどー?」
ミナト「なんか生臭いなぁって思ってたら、そんなもん積んでたのかよ!」
マキネ「あたしも、どうせミナトの体臭だと思って気にしてなかったんだけど、
見たらなんかマグロ肉だった」
ミナト「お前、おれのことを生臭いと思ってたのかよ!」
マキネ「でも、海産物的な臭いはわりと普段からさせてるよ」
ミナト「普段からなのかよ! いっとくけどな、俺、いまちょっと傷付いたからな!
だいたい、なんでそんなもんがあるんだよ!」
マキネ「『オープン・ウォーター』って映画なんだけどさ。
低予算のくせにサメの映像がやけに生々しいから、『どうやって撮ったんだ』って議論になったんだよね。
で、スタッフに訊いてみたら50匹分のマグロ肉バラ撒いたらサメ来たって」
ミナト「それ、出演者はよくOKしたな!」
マキネ「『ブレア・ウィッチを超えた』って評判だよ」
ミナト「『ブレア・ウィッチ』とは恐怖の種類が違うじゃねえか!」
レイナ「ちょっとあんたたち! なに関係ないこと話してんのよぉーっ!
自分たちは気球の上だから安全だと思ってぇーっ!」
ミナト「被害妄想だよ! そんなふうには思っちゃいないよ!」
マキネ「あたしらも、もうすぐ気球の上にいらんなくなるからー!」
ミナト「え、ちょっと待てよ。それ、どういうことだよ」
マキネ「だって、もともと長くて1時間くらいしか浮く予定なかったもん。
燃料はとっくの昔に尽きてるよ。この気球、いま根性だけで浮いてる」
ミナト「そういうことは早くいえーっ!」
マキネ「あ、根性尽きた」
ばちゃーん!
ミナト「えぇっと」
レイナ「あんたたち」
レタス「上から好き勝手いってくれたものでしてね」
マキネ「みんなぁ~、ミナトが、ミナトがあたしの脇チチを舐めるような視線でぇ~」バチャバチャ
ミナト「あっ、コイツあっさり裏切りやがった!」
ユウカ「ストップ。そこから先、近づかないで。
彼女、タンクトップが透けて先っちょ近辺が非常にエロいことになってる」
レイナ「ブラしてきなさいよ、あんた!」
マキネ「だってしょうがないじゃん! 2日目は張っちゃって痛いんだよ!」
レタス「お待ちください。2日目というのは、まさか」
マキネ「あ、大丈夫大丈夫。あたし軽い方だから、もう止まってるって」
レイナ「もうヤダぁ! フィクションの世界じゃ生理なんてあってないような扱いなのに、
なんでそんなとこだけリアルなのよぉ!」
マキネ「ドンマイ。性教育マンガの登場人物だって、顔合わせるなり生理の話してるじゃん」
レイナ「あんた性教育マンガの登場人物じゃないでしょう!」
マキネ「でもさ、開口一番ナプキンの話し始める後輩と、
懇切丁寧にナプキンの扱い方教えてくれる先輩って、普段どういう関係なのか興味わくよね」
ミナト「なあ、そのへんにしといてくれねえか! 男の俺はすでにドン引きだ!」
レイナ「それでなくても、マキネたちと一緒にマグロ肉まで海面に落ちたっていうのに!」
びちびちびちびちっ!
ゼラド「わぁー、サメさん、ものすごい元気だぁ」
レイナ「ミナト! あんたなんとかしなさいよ!」
ミナト「ムチャいうな! サメ舐めんな!」
マキネ「オリンピック選手でも、人間はせいぜい時速8kmでしか泳げない。
対するサメは、時速30kmは出せる!」
ミナト「ほら見ろ! ここで恐怖感あおるようなこと言い出すマキネもどうかと思うけど!」
レイナ「あんたパンチ得意とか吹聴してるでしょう!
サメの目玉から手ぇ突っ込んで脳ミソ握りつぶすくらいのことしてみなさいよ!」
ミナト「もはやパンチの領域を超えてるよ!
俺はわりと凡人だぞ! そんなことできるわけねえだろ!」
マキネ「あ、APS水中銃ならあるけど」
レイナ「そういうものがあるなら、マグロ肉より先に出しなさいよ!」
ユウカ「貸して」
パン! パン! パン!
ユウカ「彼のために、あたしは今日もまたひとりナチを撃つ」
レイナ「あっという間にサメ撃ち殺した手際は見事だけどさぁ、
浮かんできた死体をウキワ代わりにつかむのはどうかと思うわよ?」
ユウカ「もうとっくにリミッターはオーバーしてる。1ミリも泳げる自信がない」
序盤のザコ掃討には無類の強さを発揮するものの、
ボス戦では完全に息切れしてる。あたしはそういう血族の女」
レタス「どうもあなたは、土壇場で頼りになりませんね」
ユウカ「スタンショック職人にいわれたくない」
レタス「ペース配分のできない方は置いておいて。
あまりノンビリはできない状況でしてよ。
1頭は撃ち殺したといっても、海面には依然マグロのぶつ切りが浮いていますし」
ユウカ「APSの弾数は26発。いま3発使って、残り23発。
お世辞にも命中精度の高い銃じゃないから、無駄弾は使えない」
ゼラド「お腹も空いたし」
レイナ「あんたそればっかりね」
ゼラド「ねえ、フカヒレってサメからできてるんだよね?」
レイナ「だからどうだっていうの!?
サメ撃ち殺した時点ですでにギリギリなのに、この上なにをする気なの!?」
レタス「しかし、食料の問題は重要でしてよ」
ミナト「なぁ、いいか?」
レタス「あなたはいいから、わたくしたちと一定の距離を保っていてください」
ミナト「いや、それは構わないんだけど。
なんか、向こうからクルーザーみたいの来てるんだけど」
レイナ「ホント!? 助けてもらえるかも!」
ゼラド「おーい! おーい!」
【クルーザー上】
ミツハル「おや? あれは
OG学園の生徒さんたちじゃないか?」
マーズ「あー、ホントだ。もー水遊びしてるんだ。気ぃ早いなー。
おーい、おーい、やっほー!」
ミツハル「おいおい、はしゃぐんじゃないよ。
政情不安の国に金塊さばきに行く途中だろ?」
【海の上】
ドドドドドド
ゼラド「行っちゃった」
レイナ「ものすごいにこやかに手ぇ振られたわね」
ユウカ「たぶん、気の早い海水浴にテンション上がってる一団だと思われた」
レタス「あなたがそんな浮かれた水着を着てるからではなくて?」
ユウカ「だって、セクシーな感じの水着で目立ったら人気者になれると」
レタス「いっときますけど、あなたクラスで浮いてますからね。
ほかの子は『まんがタイムきらら』に出てきそうなタイプなのに、
あなたひとりだけ『ヤングチャンピオン』のグラビアのような感じで」
ユウカ「ノン、やめて。あたしのことは構わない。
でも『ヤングチャンピオン』のグラビアをディスらないで」
レタス「『ヤングチャンピオン』のグラビアになんの義理があるのでして、あなたは」
レイナ「あー、もう、やめなさいやめなさい。
あんたたち、おなじクラスなんだから少しは仲良くしなさい」
ミナト「アナーキストとブルジョアのお嬢さんじゃ、相性最悪だよなぁ」
【30時間経過】
ゼラド「うわぁー、夕陽が真っ赤だぁー」
レイナ「はしゃいでる場合じゃないわよ。
このまま陽が暮れたら水温がさらに下がって、命にかかわるのよ」
ユウカ「もう、足の方の感覚なくなってきた」
レタス「なんだか、冷えてきました」
マキネ「しょうがないな。緊急事態だから、海の中でオシッコしちゃってもいいよ」
ミナト「お前、どんだけオシッコにこだわってるんだよ!」
マキネ「ガマンしてるんだよ、あたしが! 気球に乗った直後から!」
ミナト「そんなに長時間ガマンしてたのかよ! いいよ、もうここでしろよ!」
マキネ「なんかマニアックな要求してきたぁ~」
ミナト「そんなつもりでいったんじゃねえ!」
マキネ「あ、でも、やばい。カミングアウトしたら、ガマンの堤防がくずれてきた」
レイナ「ちょっと、よしなさいよ。せめて少し離れなさいよ」
レタス「ビニール袋ならありましてよ」
マキネ「それでなにしろっていうのさぁ~」
レイナ「ちょっと待って。あんた、なんでそんなもん持ってるの!」
レタス「わたくしが、ただの趣味だけでスク水などを着てきたとでも思っているのでして?」
レイナ「趣味ではあるんだ」
レタス「わたくしはマジシャンです。他人からの要求に応えられるように、
常にマジックのタネを隠し持っているのでしてよ」
ゼラド「じゃ、そのパンストにもなにか意味が!」
レタス「いえ、これはわたくし、冷え性なので」
レイナ「あんた、冷え性対策間違ってる! そもそも寒中水泳に参加しちゃダメじゃない!」
ゼラド「とにかく、なに持ってるか見せてくれない?」
レタス「トリックカード、トリックダイス、テグス糸、針金、サムチップ」
レイナ「スク水のゼッケンが不自然にボコボコしてると思ったら、そんなにいろいろと。
しかも、なにひとつとして役立ちそうもないし」
レタス「それから、下剤」
レイナ「マジックに下剤関係ないんじゃない?」
ゼラド「懐中電灯かなんかあったら、救難信号送れたのにねえ」
ユウカ「マッチかなにかあったら、そこに浮いてる気球の残骸燃やして、ノロシでも上げられたのに」
レタス「マッチは、あっても湿気ているのではなくて?」
ゼラド「こういうときハザリアくんあたりがいたら、やいのやいのいいながら知恵出してくれるんだけどなあ」
マキネ「いまいるのは、水着美女に囲まれてうっすら半勃ちしてる変質者だけだし」
ミナト「俺をデフォルトで変質者呼ばわりすんのをやめろ!
半勃もしてねえ! むしろ長時間海に浸かって、かつてないほど縮んでる!
マジで! ほんと、ちょっとひくぐらい縮んでる! 『あれ、なくなってるんじゃね?』ってくらい!」
ユウカ「オーライ。取りあえずゴー・アウェイ。妊娠したら困る」
ミナト「こんなことで妊娠してたまるか! 生命の神秘舐めるな!」
マキネ「だって、出てそうだもん。カウパー的な液が」
ミナト「お前、それ全然伏せてねえからな!」
レイナ「ミナト、あんたパンチ得意なんでしょ!
海面ぶん殴って水柱上げるとかして、救助呼びなさいよ!」
ミナト「俺のパンチに期待し過ぎだよ! そんなことできるわけねえだろ!」
レイナ「戦闘デモで宇宙ぶっ壊すようなご時世に、水柱くらい上げられなくてどうすんの!」
ミナト「なにいってんだよ、そんなことできんのはラスボスクラスだけだよ!」
レイナ「も、いいから! 裏切ってラスボスになんなさい!
戦闘前セリフでなんか気の利いたこといってあげるから!」
ミナト「ざけんな! こんなことでラスボス化してたまるか!」
ユウカ「オーライ、落ち着いて。あたし、ダメモトでエルドラン呼んでみる」
ミナト「お前こそ落ち着けよ! エルドラン呼んでどうすんだ!」
レタス「そうですわ。よしんばエルドランが来ても、なんの役にも立たなくってよ!」
ミナト「そういうことでもねえ!」
レタス「せめてガ・オーンを」
ゼラド「もー! みんな落ち着こうよ! パニック寸前だよぉ~!」
レイナ「マキネ! 『オープン・ウォーター』って映画じゃ、どうやって助かったの?」
マキネ「えー、ネタバレしちゃっていいの?
実話を元にした映画だそうだから、あんま期待すんなとしかいえないよ」
レイナ「もうダメだぁーっ!」
ゼラド「あ、ねえ、レタスちゃん。この針金、なんだかすごく柔らかいね」
レタス「ええ。一見ただの針金ですが、形状記憶合金でできているのです。
ホットコーヒーなどをかけて、お客がひいたカードの柄などに変形させるマジックに使うのでしてよ」
レイナ「ゼラド、針金で輪っか作って遊んでる場合じゃ」
ゼラド「うん、と。小学生のころなにかの雑誌で見たんだけど。
こう、針金で輪っか作って水張ると、虫眼鏡の代わりになるって」
レイナ「そうか! 焦点を合わせて火をおこせば、パラシュートの残骸を燃やせる!」
レタス「急いで! 日没まで間がなくってよ!」
【浜辺】
ラミア「なに、北東の方角からノロシらしきもの!?
わかった。すぐに救助を向かわせる!」
ルアフ「すぐにL&Eに連絡! ダイバーフレーム積んだエクサランスをまわしてもらうんだ!」
ヒューゴ「ダメです! エクサランスはとっくの昔に解体済みだし、
そもそもこの世界にはダイバーフレーム存在してないっぽいです!」
ルアフ「わぁーっ! なんで律儀に解体なんかしちゃってるんだよ、あの兄妹は!
もういい! アルマナに連絡! ガンエデンまわせ!
戦闘デモで地球ぶっ飛ばしてやる!」
アクア「落ち着いてくださいルアフ先生! 戦闘デモで地球ふっとばしてもなんにもなりません!」
ルアフ「レイナぁーっ! おとーさんが助けに行くからねーっ!」
アイミ「あたし、優勝したんだけど、ミナト、実況してくれなかった・・・・・・」
最終更新:2009年10月17日 12:31