OG町ラーメン戦争


26代目スレ 2008/10/30(木)
 【バス停】
ゼラド「クリハ、ほんとどこ行っちゃったんだろ。
 イケブクロ餃子スタジアムにもいなかったし」
レイナ「え、あんたあれ、クリハ探してたの?
 普通に餃子食べてただけじゃない」
ゼラド「餃子食べて、クリハ探して、クリハ探して、餃子食べて、
 餃子を食べつつもクリハを探して、でも見つからないから餃子を食べて」
レイナ「はいはい、もういいから、急ぎましょ。
 夜行バスが遅れちゃったから、大遅刻よ」
ゼラド「もうお昼過ぎだよ。
 どうせ大遅刻なんだから、のんびり歩いて行こうよ」
レイナ「あんたはもう、ほんとのんびりしてるんだから」

 チャリーン チャリーン チャリーン
レイナ「あら、なにかしらあの人だかり」
ゼラド「わ、いい匂い! ちょっと行ってみようよ!」
レイナ「あっ、もう、あんたは、ちょっと、待ちなさい!」

 【店先】
マリ「なに斬るかわかんないよ。見えないんだからさ」
 チャキーン!

ゼラド「マリちゃんだ」
レイナ「そういえば前に座頭市役やってたけど、
 なんでいま『ICHI』ごっこなんかしてるのかしら」
ゼラド「わっ、すごい!
 目ぇつむったままニンジン放り投げて、ラーメンの上に落ちたときにはもう切れてる!」
レイナ「よく見なさいよ、あれ、最初からニンジンに切れ込み入ってるのよ。
 落ちたときのショックでバラバラになってるだけよ」
ゼラド「マリちゃん、なんであんなパフォーマンスしてるんだろう」

ヴィレアム「ゼラド! こんなところにいたのか!」
ゼラド「あれ、ヴィレアムくん?」
レイナ「なんでこんな時間に外いるのよ。学校は?」
ヴィレアム「その店に近づいちゃダメだ、こっちへ!」
ゼラド「え、なに? なにぃ?」

 【ラーメン屋 エスタブリッシュメント】
ルナ「おお、ゼラドが着いたか」
キャクトラ「待ちかねておりました」

ゼラド「ルナちゃん? なんでラーメン屋なんてやってるの?」
ヴィレアム「なにいってるんだよゼラド。
 社会科と家庭科の実習で、生徒たちの手で実際にラーメン屋を経営するって、
 先週から決まってたじゃないか」
ゼラド「え、そうだっけ?」
ルナ「お主たちがいなかった午前中の間に、
 班分け、店舗の準備、メニュー決め、食材の仕入れなどは済ませておるぞ」
レイナ「あたしたちほんの半日いなかっただけなのに、
 短期間でどんだけ作業進んでたの!?」

トウキ「オーダー入りましたぁ、中華そば一丁ーっ」
スレイチェル「承知!」コトン

ゼラド「わ、わ! これがルナちゃんたちの店のラーメン?」
レイナ「でも、ずいぶん地味じゃないですか?
 具はネギがひとつまみだけだし、
 スープだってなんか少ないし」
スレイチェル「フフ、そういうなら、少し試食してみるか」コトン コトン

 ずるずるずるずる

ゼラド「わっ!」
レイナ「あら」
ゼラド「凄い凄い! 
 このスープ、味わい豊かなのに、口に入れた感じが凄くサラサラしてる!
 これ、お魚さんでダシ取ってるんですよね?
 でも生臭さが全然ないし、ヤな後味もない!」
レイナ「麺の歯ごたえがすごいプチプチしてるじゃない!
 この麺、この麺! なんかもう、ハンパなく美味しいんですけど!」
スレイチェル「フフフ、我らが『エスタブリッシュメント』では、
 麺そのものの味で勝負している!
 極限まで研ぎ澄ました麺にとって、もはやスープや具はノイズに過ぎないのである!」

ルナ「スープは大量の煮干しとサバ節だけでダシを取っておるのだ。
 具は少ないから、価格を安く抑えられる」
キャクトラ「一食あたりの利益は少なくなってしまいますが、
 3交代制で24時間営業にすることでカバーしています」
ヴィレアム「時間帯によって客層が変わるから、朝昼晩で別々のメニューを用意しているんだ。
 ゼラドたちが食べたのは昼メニューで」
ルナ「夜は家族連れに向けて、
 ネギ、モヤシ、味玉、チャーシュー、のり、ワカメ、角煮、ワンタンなど、
 トッピングをお客さまのお好みで選択していただくことによって、
 老若男女、幅広い客層に対応できるシステムにしているのだ」
トウキ「子供用の小鉢なんかもあるんだぞ」
レイナ「でも、朝っぱらからラーメン食べるひとなんているの?」
ルナ「最近は『外朝族』といって、
 朝早くに家を出て会社近くで朝食を摂るサラリーマンが増えておるのだ」
ランディ「でも、やっぱり朝からラーメン食べる人はなかなかいないから、
 この春雨を出してる。
 緑豆製の麺は低カロリーでもきっちり元気に出るんだぞ。
 1日1食を春雨に変えるだけでも血圧、血糖、中性脂肪、
 高比重リポ蛋白の数値が改善されて、メタボ対策に最適なんだ」
ゼラド「Pちゃんくん、全然太ってないのに、
 なんでそんなにメタボ気にしてるの?」
ランディ「どうだ? レイナも春雨食に切り替えてみないか」
レイナ「なんで迷うことなくあたしに勧めるのよ」
ランディ「見りゃわかるよ。
 お前もマキネからデブ養成メニューを課せられてるんだろ?」
レイナ「見りゃわかるって、どういう意味よ!」

ゼラド「そっかぁ、じゃ、マリちゃんが大道芸やってたのも、
 お客さん呼び込むためだったのかなあ?」
ルナ「ハザリアのところか」
キャクトラ「あの方たちの話は、聞きたくありません!」
ゼラド「どうしちゃったの?」

スレイチェル「なにで釣ったのかわからないが、向こうはマーズを引っ張り込んだ」
トウキ「駅前の一等地に店構えてるけど、
 地上げ同然のやり方で強引に巻き上げたっていうぜ?」
ルナ「下衆な見世物で客を呼び込み、出すラーメンたるやとんでもない粗悪品だと聞く!」
ランディ「メニュー見たけど、カロリーのことなんかまったく考えてなかったよ」
キャクトラ「値段も不自然に高いのです!」
スレイチェル「しょせん、彼らは儲けのことしか頭にないのである」
ルナ「我欲を満たすためならなんでもやる、とんだ無法者どもだ!」
ヴィレアム「残念だけど、もうあいつらを仲間とは思えないよ」

ルナ「あのような者たちに負けるわけにはいかぬ!
 さ、ゼラドたちも厨房へ!」
ゼラド「ちょっと、ちょっと待って!
 ハザリアくんたち、ほんとにそんなことしてるの!?」
ルナ「そう聞いておる」
ゼラド「でも、見てみないとほんとかどうかわかんないよ。
 わたし、ちょっと行ってくる!」
ルナ「待て、ゼラド!」
キャクトラ「危険です! あちらには口の達者な人間が揃っています!
 うっかりすると丸め込まれてしまいますぞ!」
レイナ「心配しないで。あたしも付き添うから」

 【ラーメン屋 ぶっちぎりアウトサイダーズ】
マリ「なにトッピングするかわかんないよ。見えないんだからさ」

ユウカ「あたっし♪ もっと遊んで♪ もっと愛されったいわぁ~♪
 イイ子ちゃんなんて 気取れない♪
 ゾクゾクしたい♪ そぉれがリアルでしょ~ぉ~♪」

マキネ「まずはあんたの腹に刻みネギと背脂を刻み込む!
 アハハハハ! そう、それだよ! まさに至福のネギ盛り背脂豚骨ラーメン!」

 ワアァァァァァッ!

ゼラド「うわー、すごい」
レイナ「ほんと、派手ねえ」
マリ「ア、ゼラドじゃないか。どこ行ってたんだ」
ゼラド「マリちゃん、あの、ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
レイナ「この店なんだけどさ」
マリ「ああ、それならハザリアに訊いてくれ。
 厨房にいると思うから」

 【厨房】
 バシーン! バシーン!
ハザリア「麺はこちらでばんばん打っていく!
 貴様らはとにかく客を呼び込め!
 歌え! 踊れ! 騒げ! 繁殖期の昆虫のようにきらびやかに!
 店に引っ張り込めさえすればこちらのものだ!
 たちどころにこの麺の虜にしてくれる!」

 バシーン! バシーン!
ハザリア「カノウ兄弟の、まんまとアキモトヤスシのカモになってる方は
 もっと腰を入れて麺を打たんかぁっ!
 カネが必要なのだろうが貴様は、ああ!」
ミナト「うぅっ! AKB48の新曲『大声ダイヤモンド』!
 通常版はアナザージャケットが19種類!
 イベント版の特典ナマ写真は全90種、
 でもCD一枚買って付いてくるのはランダムで1枚だけ・・・・・・っ!
 教えてくれ、俺はいったい何枚『大声ダイヤモンド』を買えばフルコンプできるんだ。
 フィリオ先生は最低でも160枚前後とかいってる・・・・・・っ!」
ゼラド「CDは、1枚買えば十分だと思うよ?」
レイナ「えげつない商売してんのね、AKB48は」
マーズ「やーもー、タイホしていーレベルのアコギさだと思うけどねー、おれぁー」ガチャンガチャン
ゼラド「あ、マーズくん、ちょうどよかった」

レイナ「この店、とんでもなく手ぇ抜いたラーメン出してるって聞いたんだけど」
ハザリア「アホを抜かすな。
 手を抜いて麺を手打ちをするなど、むしろ難しいわ!」
ゼラド「それもそうだよね」
レイナ「ずいぶんいいところに建ってるけど」
マーズ「あー、FXにハマってた経営者がトンじまってねー、
 おれが空きテナントをカンリしてたの。
 ここ最近の景気じゃ、どーせとーぶん借り手は付かねーし、
 遊ばせとくのももったいねーから、こちらさんに安く貸してんだよー」
レイナ「地上げしたって聞いてたけど?」
マーズ「カンベンしてよー。
 なーんでそんな、人件費かかる上にリスクのたけー違法行為しなくっちゃなんねーのさ。
 物件ぶん取りてーんなら、法律をタテに合法的にぶん取るよー、おれぁー」
レイナ「うん、もう一段タチが悪かった」
ゼラド「でも、ラーメンの値段がずいぶん高いみたいだけど」
ハザリア「フカヤのネギ! カゴシマの黒豚! サンリクのワカメ!
 ミヤザキの地鶏! ホッカイドーの海老、カニ、コーン!
 いずれも俺が全国を行脚し厳選した産地直送の食材を使っておるのだ。
 それなりの値段はする!」

マーズ「でもさー、スレイチェルちゃんがヨソに取られちまってるイジョー、
 味じゃ一歩及ばねーでしょ?
 だから、当『ぶっちぎりアウトサイダーズ』じゃー、
 クーカンを含めた、ソーゴーテキな『食のエンタテイメント』をゴテーキョーしておりまーす。
 外食するゼッタイ数が減っちまってるこのご時世、
 キチョーな一食一食を面白おかしく過ごしてもらおーとゆーコンセプトさ」
ハザリア「舞台演出で培った俺の腕の見せ所だ。
 まずは、盲目の女剣士がメクラ滅法に剣を振るってトッピングしているというテイの、
 『メクラ剣法ラーメン』!」
マリ「だから、放送禁止用語はやめろって」
ハザリア「トマトやミルクなど洋風の食材を取り入れた『SCANDALラーメン』!」
ユウカ「レシピ自体がスキャンダール♪」
ハザリア「ガッツリ行きたい肉体労働者向けに、
 『肉体に豚骨と刻みネギと背脂を刻み込むラーメン』!」
マキネ「うっ、うっ、体育祭のときは屁の役にもたたなかったハザリアが」
ハザリア「厨房で屁とかいうでない!」

ミナト「なあ、俺が考案した、『乙女パスタに感動ラーメン』は?」
ハザリア「あんなゲテモノ、客に出せるか」
ミナト「ペペロンチーノにチーズ入れたっていいだろぉ~!?」
ハザリア「カノウ兄弟の、AKB48破産は時間の問題の方に接客させるわけにはいかんから、
 裏方で麺打ちに専念させておる」
レイナ「そこはちょっとヤな要素ね」

ゼラド「えぇっと、あれぇ~? 話が違ってるなぁ~?」
レイナ「ぱっと見ゲテモノだけど、けっこうちゃんと考えられてんのね」
ハザリア「どこのどいつだ、事実無根の風評をばらまいておるのは」
ゼラド「えっと、ルナちゃんたちから聞いたんだけど」

ハザリア「チッ、見下げ果てた連中だ」
マリ「ほんとに、変わっちゃったんだな」
ユウカ「ネガティブキャンペーンなんて、やってくれんじゃない、あのプリンセスも」
ミナト「向こうは、竜巻亭のブランドイメージの上にアグラかいて殿様商売してんだよ」
マキネ「スッカスカの貧乏くさいラーメン出しちゃってさ!」
マーズ「値段がミョーに安いのも不自然だねー。
 チューゴク産使ってんじゃねーのぉー?
 信じらんねー! このご時世にチューゴク産食材食わせるなんざぁー、
 お客サマに死ねってゆってるよーなもんじゃねーの!」
マリ「無理に24時間営業にして、店員を奴隷みたいにこき使ってるっていうし」

ハザリア「腐敗した権力者ほど醜悪なものはない!
 この俺が粛正してくれるわ!
 さぁ、なにをしておる! 貴様らもさっさと着替えて戦列に加わらんか!」
ゼラド「待って、待って! わたしたち、ハザリアくんたちの班じゃ」
ハザリア「なんだと! すると貴様ら、ルナめらの手の者か!」
ゼラド「違う! 違うよ! わたし、スパイなんて!」
レイナ「あたしたちちょっと遅れてて、
 OG町でこんなラーメン戦争勃発してること自体知らなかったのよ!」
ハザリア「ええい、黙れ、黙れよ!
 貴様ら、いったいどちらの味方だ!」

???「どちらでもないでやんすカァー!」
ハザリア「なにやつっ!?」
暗黒鳥人の子(♂)「昔の学園ドラマ風新聞部員、暗黒鳥人の子(♂)!
 そしてそのお二人は、あっしの同僚でやんすカァー!」
レイナ「なぜ語尾に『カァー』と!?」

ハザリア「なんだ、取材か。黙っているとは、貴様らもひとが悪い」
ユウカ「シークレットで取材なんて、ミシュランチックなのね」
ゼラド「え? ええと」
暗黒鳥人の子(♂)「さ、編集会議が始まるでやんすカァー」

 【学校】
暗黒鳥人の子(♂)「やれやれ、危ないところだったでやんすカァー。
 袂を分かったとはいえ、元部長になにかあったら、
 あっしの現場記者魂に傷がつきますカァー」
ゼラド「そっか、レイナも諜報部っていう名前の新聞部だったよね」
レイナ「こんなカァーカァーいう暗黒鳥人知らない」
暗黒鳥人の子(♂)「元部長の諜報は、個人情報暴き立てて喜んでるっていうか、
 ただの覗き趣味っていうか、あっしのポリシーにそぐわなかったんでやんすカァー。
 あっし、報道というものは真実をまっすぐに切り拓くものだと心得ているでやんす!」
ゼラド「なにげに熱い記者魂の持ち主だ!」
レイナ「あんたさっきから元部長元部長って、
 あたしの方が邪道みたいにいわないでよ!」
ゼラド「ところで、どこに行くの?」
暗黒鳥人の子(♂)「もう着きましたでやんすカァー。こちらへ」

 カラカラカラ
 【新聞部の部室】
???「待ちかねていました」
ゼラド「あっ、あなたは一体!」
レイナ「なにその、いまにも絶対遵守のなんかを発動させそうな仮面」
???「汁のカリスマ、とでも名乗っておこうかしら」
ゼラド「ごく。その仮面の下にはどんな素顔が!」
レイナ「ああ、はいはい、わかんないわね。
 ミスターブシドーの正体並に謎に包まれてるわね」
ゼラド「やけにツルンとした感じの胴当ての下には、なにが隠されているんだろう!」
レイナ「たぶん、なにも入ってないと思うわよ」

汁のカリスマ「いま、OG町はラーメン戦争の渦中にあります」
ゼラド「いったいどうなってるの? なんでみんな、あんなにいがみ合ってるの?」
レイナ「普段から仲良しじゃなかったけど、あの様子はちょっと異常よ」
汁のカリスマ「この混乱を消し止められるのは、あなたたちだけだと思います」
ゼラド「わたしたちが? どうして」
汁のカリスマ「バランスとカオスは表裏一体、
 エントロピーの増大が世界に平穏をもたらすこともあるのよ」
ゼラド「なにがなんやらわかんない!」
汁のカリスマ「暗黒鳥人の子(♂)さん」
暗黒鳥人の子(♂)「がってん承知の助! カァ!」

 カラカラカラ
ゼラド「これって、屋台! ラーメンの屋台なの!?」
レイナ「まさか、あたしたちにもラーメン屋やれっていうの?」
汁のカリスマ「ほかに手だてはありません」
レイナ「や、もうちょっと、ほかにあるでしょ?」
ゼラド「でも、わたしは食べるの専門だし、
 レイナだって、とてもお客さんに出せるほどお料理上手くないよ」
レイナ「ああ、はいはい、申し訳ありませんでした!」
汁のカリスマ「心配は無用です。これを」カサッ
ゼラド「これは!」
汁のカリスマ「頼みましたよ・・・・・・、汁の勇者たち!」
ゼラド「待って! あなたは一体!?」
レイナ「あんた本気でわかんないの!?」
汁のカリスマ「わたしは汁のカリスマ。創汁の芸術家」

 【校庭】
レイナ「それ、なに渡されたの?」
ゼラド「レシピだよ。
 セイヨウサンザシ、ホンオニク、ローヤルゼリー、ナルコユリ、
 ドクダミ、ウナギ、マグロの目玉、セロリ、ムカデ、イモリ、マムシ・・・・・・!
 これでなにができるか皆目見当もつかないけど、きっとものすごくマズくなるよ!」
レイナ「汁ね。あたしの予想だと、
 すごくマズいけど健康効果はバツグンな汁ができる」
ゼラド「つまり、いまさら美味しいラーメン作ろうとしてもどうせ無理だから、
 逆に、究極にマズいラーメン作れっていうことだよ!」
レイナ「そんなことして、なんの意味があるのよ」
ゼラド「きっとなんかあるよ!」
レイナ「ねえ、あんた、あんな胡散臭い仮面かぶったのを、なんで信じられるの?」
ゼラド「どうしてなんだろう。不思議なの。
 あの仮面のひと、初めて会うはずなのに、ずっと昔から知ってたような気がする」
レイナ「はいはい、奇遇ね。
 あたしなんか、幼稚園に入る前から知り合いだったような気がするわよ」
ゼラド「よし! じゃあいまから仕込みに入って、
 明日の朝から早速屋台を出そう!」
暗黒鳥人の子(♂)「あっしも助太刀いたしますカァー!
 チラシとかめっさ刷ってくるでやんすカァー!」
ゼラド「暗黒鳥人の子(♂)くんは、どうしてわたしたちに協力してくれるの?」
暗黒鳥人の子(♂)「嬉しいから、でさぁ。
 あっしはこんな身体で生まれちまいやしたけど、
 この身体のおかげで愛する故郷を守ることができるんですカァー!
 だからいまは、この身体に感謝してるんですカァー」
ゼラド「暗黒鳥人だ!
 あなた、サルファでなんかカッコいいこといってた暗黒鳥人さんの子供だったんだね!」
レイナ「べつに、鳥人でなくてもチラシは刷れると思うけど」

 【翌朝 学校そばの路地】
風見博士を彷彿とさせる頭髪の子供「うおっ、すげぇマズい!」
キラケン並にかわいい子供「男泣きもののマズさですぜ、こりゃー!」
風見博士を彷彿とさせる頭髪の子供「これを完食してこそ、天才にして世界一の度胸!」

ゼラド「案外好評だね」
レイナ「小学生の度胸試しに使われてるじゃない」

ヴィレアム「ゼラド! これはいったい、どういうことなんだ!」
ゼラド「あ、ヴィレアムくん、わたしたち」
ヴィレアム「なにをやっているんだ!
 さ、すぐに『エスタブリッシュメント』に戻るんだ!」
ゼラド「それはダメだよ!
 わたし、どっち側にも付けない!」
ヴィレアム「だからって、マズさがウリのラーメン屋台なんか出してどうするつもりなんだ!」
ゼラド「わかるけどっ! ヴィレアムくんのいうこともわかるけど!」
ヴィレアム「ゼラドのやっていることは、
 いたずらにOG町ラーメン勢力図を混乱させるだけなんだぞ!」
ゼラド「でもっ、このまま進めば、お互いのラーメンを認めない者同士が、
 再現なく争うばかりになっちゃう!
 そんなものでいいの! わたしたちのOG町は!」
レイナ「ね、なんでラーメンにそこまで本気なのって、訊いちゃいけないのよね?」

暗黒鳥人の子(♂)「元部長~! バランガさぁ~ん!
 チラシが刷り上がったでやんすカァー!」
ゼラド「えっ!?」
暗黒鳥人の子(♂)「どうしたんでやんすカァ?」
ゼラド「ヴィレアムくん、わたしたちまだチラシも配ってないのに、
 どうしてこの店がマズいラーメン出してることを知ってたの?」
ヴィレアム「え? それは、なんか、道歩いてたら噂話が聞こえてきて」
ゼラド「ねえ! あなたたちは、どうして屋台に来たの!?」
風見博士を彷彿とさせる頭髪の子供「え、学校来る途中で」
キラケン並にかわいい子供「ヘンなおじさんに聞いて」

 【イスルギフード社長室】
ミツハル「おやおや、これは驚きだ。
 まさか僕に辿り着くとはね」
ゼラド「わたしたちの屋台に来てくれた子供たちから聞きました。
 あなただったんですね!
 あなたが、ラーメン屋さんにサクラを送り込んで、
 なんやかんやして、みんながいがみ合うように仕向けたんですね!?」
レイナ「なんやかんやって、なによ!?」
ゼラド「なんやかんやは、なんやかんやだよ!」
ミツハル「ふふふふ、その通り。
 僕が道行くオッサンやオバサンや子供たちに小銭を握らせて、
 各ラーメン店でわざと敵対店の情報を声高に喋るように依頼したのさ。
 なぁに、ちょっとした人材活用法のひとつさ。
 みんな仲良くお手々繋いでやらせるより、
 いくつかのチームに分けて競わせた方が、ずっと業績が上がるんだ」
レイナ「勝手に明かした!」
ミツハル「だって、バレたところでべつに僕は困らないもん。
 君らの店が儲かったところで、僕には一文も入らないわけだし。
 商売の先輩として、ちょっぴり助け船を出してあげただけさ」
レイナ「ウソよッ!
 あんたにそんなボランティア精神、あるわけないじゃない!」
ミツハル「おいおい、まるで悪党を追い詰めているような口ぶりじゃないか。
 あのねえ、前にもいったと思うけど、
 善とか悪とか、僕はそんなみみっちい価値観なんか持ち合わせちゃいないんだ。
 僕は僕の信念に従って行動しているだけさ」
ゼラド「みんなをケンカさせる信念なんて、間違ってますよ!」
ミツハル「落ち着きたまえ。女の子がそんな顔するもんじゃないよ。
 なぁに、そんなにいきり立つほどのことじゃないよ。
 僕にしてみれば、ちょっとした予行演習さ。
 なにしろ僕は、将来大きなカネと権力を握らなきゃならなくなったからね。
 来たるべき時のために、身に付けておかなくちゃじゃないか。
 人間の扱い方ってやつをさぁ!」
レイナ「へえ、それで、政界にでも打ってでるつもりですか」
ミツハル「あはははは、それも悪くないね」
ゼラド「そうまでしておカネと権力を手に入れて、なにになるっていうんですか!?」
ミツハル「いっただろう。僕は僕の信念に従って行動してるって。
 『漫画・アニメ・ゲーム表現規制法』、
 あの悪法を、この手でぶっ潰す!」

ゼラド「え・・・・・・?」
レイナ「バカじゃないですかバカじゃないですかバカじゃないですか」
ミツハル「ああ、呆れるがいいさ呆れるがいいさ!
 どうせ君らみたいに明るい青春謳歌してる人間には、
 休み時間中ずっと机につっぷして寝たフリしてた僕の気持ちなんかわかりっこないんだ!
 僕にとっては死活問題なんだよ!
 ギャルゲやエロゲがなくなってしまったら、僕はどうなってしまうんだ!
 僕に優しい言葉をかけてくれる女の子は、地球圏にひとりもいなくなってしまうじゃないか!」
レイナ「どんだけ現実に絶望してるんですか」
ゼラド「声優さん雇うとかじゃ、ダメなんですか」
レイナ「あんたも、なにげにヒドい提案するのね」
ミツハル「声優さん本人と演じてるキャラじゃさぁ、ほら、ちょっと、違うじゃん?」
レイナ「めんどくさっ!」

ミツハル「ああ、そうだそうだ。君ら、さっきからなにか勘違いしてるようだね。
 僕はたしかにサクラを送り込んだけど、ネガティブキャンペーンなんて打ってないよ。
 逆に、敵対店を褒めさせたのさ。
 あっはっはっは、面白い実験結果だったよ!
 相手に負けまいという気持ちが、単なる噂話を拡大解釈させてしまったんだねえ!
 業が深いじゃないか、人間ていう生き物は!」
ゼラド「でもその性質を利用したあなたは、卑劣ですよ!」

 バタンッ
暗黒鳥人の子(♂)「元部長、バランガさん、大変ですカァー」
ゼラド「暗黒鳥人の子(♂)くん! いったいどうしたの!?」
レイナ「こいつ、頑なに元部長と呼ぶのをやめない!」
暗黒鳥人の子(♂)「『エスタブリッシュメント』と『ぶっちぎりアウトサイダーズ』のスープに、
 とてつもなくマズい汁が混入していたんでやんすカァ~。
 いま、両店ともに校庭にそろい、一触即発の事態に・・・・・・っ!」

 【校庭】
ハザリア「これは間違いなくクリハ汁の味!
 しかも、スープとおかしな反応を起こして、
 俺の舌にも受け付けぬマズさになっておるではないか!
 クリハが失踪中のいま、クリハ汁を所有しているのはバルマー貴族のみ!
 そして俺のストックはだいぶ前に尽きておる。
 となると、汁を混入させたのは貴様らということになるなぁっ!」
ルナ「そのいいがかり、そっくりそのまま返してやる!」
ハザリア「玉座をケツで磨くしか能のない王族などいらぬわ!
 せめてもの情けだ、俺の手で裁かれろ!」
ルナ「貴族にあるまじきお主の無法ぶり、もはや捨ててはおけぬ!
 私みずから粛正してやる!」
ハザリア「やぁっしぃわ! 必中でSP30消費しろ!」
ルナ「朝から晩までマリーマリーと呟き続けるがよい!」
ハザリア「そんなケツに傍線付いた名前など呼べるかッ!」

マリ「残念だよ。お前たちがここまで道を踏み外すなんて」
ヴィレアム「いまでも信じたくはない。
 お前たちは、ここまでの外道になってたとは思わなかった」

ユウカ「残念。シャイなベーシストだとばっかり思ってたけど、
 しょせんあんたはロイヤルドッグだったのね」
キャクトラ「体制を否定するあなたに、私の気持ちはわかりません!」
ユウカ「ほんとは、権威って名前のガッデスのケツにキスしたいだけのくせに」
キャクトラ「狂犬です、あなたは」

マーズ「ガッカリだよスレイチェルちゃん!
 いくらアンポンタンだっつっても、アキナイとオリョーリにゃー
 マジメなひとだと思ってたのによーっ!」
スレイチェル「スレイチェルこそ、幻滅させられた。
 やはりお前は、芯からの銭ゲバだったのだな!」

トウキ「おなじCD何枚も何枚も買ってんじゃねえよ!」
ミナト「うるせえ! 
 オオホリめーたんの『甘い股関節』が売上1万枚達成しなかったらなあっ!
 めーたん卒業させられちゃうんだぞぉっ!
 そんなもん、買うしかないじゃねえか!」
トウキ「いまどきサムエル商法に引っかかってんじゃねえよ!」

マキネ「いい加減観念して太りなよ!」
ランディ「いい加減観念して俺を家に上げろ!」

ゼラド「みんな! 話を聞いて!」

ハザリア「ぬっ!?」
ルナ「ゼラド?」

ゼラド「わたし、両方のお店見てきたよ!
 『エスタブリッシュメント』は安くて健康によくて美味しいラーメン作ってるし、
 『ぶっちぎりアウトサイダーズ』は派手で豪華で楽しいラーメン作ってた!
 方法は違うけど、どっちも真摯にラーメンと向かい合ってたんだよ!
 いがみ合う理由なんか、ひとつもないんだよ!
 みんな、あまりにもラーメンに一生懸命で、
 ミツハルさんが流した噂を勘違いしちゃっただけなんだよ!」

ハザリア「黙れ、黙れよ!」
ルナ「ゼラドは口を出すでない!」
ゼラド「えぇっ!?」
ハザリア「俺はこの舌で確認したのだ。
 スープにはたしかにクリハ汁が混入していた!
 これを勘違いなどと、眠たいことをいうつもりか、ああ!?」
ルナ「我々の店は24時間営業、あやうく汁入りのスープを客に出すところだったのだぞ!」

ゼラド「えと、それは」
???「汁を混入させたのは、わたしよ」
ハザリア「ぬぅっ!?」
ルナ「なにやつっ!?」
???「わたしは汁のカリスマ。創汁の芸術家」
ハザリア「汁の・・・・・・、カリスマだと!」
ルナ「その仮面の下の素顔はいったい!?」
レイナ「ねえ! あんたたちマジなの?
 みんなでつるんであたしをからかってるんじゃないよね!」

汁のカリスマ「もう一度、その汁混入ラーメンを舐めてみなさい。
 最高の麺、最高のスープ、最高の食材、最高の演出。
 でも、汁が数滴混じっただけでその有様よ。
 いまのあなたたちの姿が、そのラーメンだとは思わない?」
ハザリア「我々の姿、だと・・・・・・」
ルナ「この、頭痛がするほどのマズさが」

ゼラド「そうだよ! いまのみんなは、マズいラーメンそのものだよ!
 違うよ! こんなのは違う!
 こんなの、わたしが好きなみんなじゃない!
 わたしの好きな町はこんなんじゃない!
 わたしたちのブクロは、こんなんじゃなかったはずだよぉーっ!」

レイナ「そりゃそうよ! ブクロじゃないもの!」
ルナ「ブクロ・・・・・・、ゼラドの、ブクロか」
ハザリア「我々は、忘れていたのかも知れぬな。あのころのブクロの輝きを」
レイナ「なんでブクロで納得しちゃうの!?」

ハザリア「それにつけても汁のカリスマとやら、貴様はいったい何者だ!?」
汁のカリスマ「わたしは汁のカリスマ。
 過去に大罪を侵したことにより、永劫の汁の中で泳ぎ続ける女」
ルナ「その大罪とは、いったい!?」
汁のカリスマ「わたしの罪とは」
 パカ
トウキ「あっ、お前は!」
クリハ「トウキくん、あなたを愛してしまったこと!」
トウキ「バカヤロウ! だったら俺も、希代の大罪人だ!
 お前を、クリハ・ミズハって名前の女の子を愛してしまった!」
クリハ「トウキくんっ!」
トウキ「クリハーっ!」

 がしっ

クリハ「うぅっ、ひっく、ごめん、ごめんね、トウキくん」
トウキ「いいんだ、いいんだクリハ。ちょっとだけ、長い散歩だったな」
クリハ「ただいま」
トウキ「お帰り、クリハ」

レイナ「なにこれ」
ゼラド「恋って、素敵だね!」
暗黒鳥人の子(♂)「ヒューヒュー、ふたり、キスしちゃえよぉ~」
レイナ「これ、なんの話!?」

 【OG町西口公園前】
ユウカ「デタラメのダウナーかわしてーるぅ~♪ 僕の声がきこえてぇ~るぅ~♪」
ハザリア「さて、微妙に懐かしいエンディングテーマが流れておるが」
レイナ「あんた、いまどういポジションなのよ」
ユウカ「人間ジュークボックス?」

ハザリア「我々のラーメン戦争はまだ終わったわけではない」
ルナ「ああ、邪心を払い、今度こそ真摯にラーメンと向き合おう」
ゼラド「わたしたちも、がんばってマズいラーメン売ろうね!」
レイナ「え、それまだ続けるの!?」
ハザリア「そして取り戻すのだ。クボヅカが輝いてたころのブクロを!」
レイナ「だから、なんでブクロ!?」

ゼラド「ブクロ最高ーっ!」
ハザリア「アイ・キャァン・フラーイっ!」
ルナ「あ、えと、あいだぶぉーじーてぃー・・・・・・」
レイナ「ルナは困っちゃうなら乗らなきゃいいじゃない!」

ゼラド「わたしたちはこの町を愛してるーっ!」

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最終更新:2009年10月17日 12:33
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