26代目スレ 2008/10/23(木)
【道ばた】
タカヤ「う~ん、やっぱり農家って、土地がないと難しいんだな。
いったい、安定した人生を送るにはどうしたらいいんだろう。
バイトしながら試験勉強するのはキツいけど、やっぱり公務員かなあ。
軍隊はちょっと抵抗あるけど、警察とか消防署とか・・・・・・」
ペキン ペキン
タカヤ「そういえば、学校で希望者向けに公務員講習やってたな」
ザクッ ザクッ
タカヤ「大学は出ておいたほうがいいのかな。
でも、どっちかっていうと早く社会に出て働きたいんだよなあ」
ガッ ガッ
タカヤ「なにしてるんだ君は」
レタス「違法駐車している高級車のエンブレムをへし折ったり、
タイヤに穴を開けたり車体に傷を付けたりしているのでしてよ」
タカヤ「もの凄く車体が黒塗りでスモークフィルムかかってるじゃないか」
レタス「思えば、ここ最近のわたくしは最低でしたのよ。
お正月を迎えるまで、びた1日働く予定がないんですのっ・・・・・・!」
タカヤ「そこのコンビニでバイト情報誌配ってるよ」
レタス「しょぼい博奕と、意外とカロリーの高い野菜ジュースの日々っ・・・・・・!」
タカヤ「低カロリータイプのを飲めばいいと思うよ」
レタス「そんな毎日のうっぷんイライラがつのれば、
プラーと外へ行き、
違法駐車している高級車にイタズラしてまわるという」
タカヤ「単に非生産的なだけじゃなくて、他人の足まで引っ張ってるよね」
レタス「この苦境を切り拓くために有効な手だてを、考えつかなかったんですの」
タカヤ「働くしかないんじゃないかな」
レタス「どうせこんなクルマを乗り回しているようなひとなんて
ろくでもない、弱者を踏みつけ、暴利をむさぼり、
脱税しまくっているんですのよ。
このくらいの報いは当然・・・・・・。
悪事は巡り巡って、いま元に帰ったんですのよ」
タカヤ「巡り巡って、やっぱり君のところに戻ってくるんじゃないかな」
がしっ
メカブーストダンガルン「兄ちゃん姉ちゃん、ちぃと一緒に来てもらおうか」
レタス「あら」
タカヤ「逃げるべきだった・・・・・・、すぐにっ・・・・・・!」
【海岸】
タカヤ「薄々感じてはいたんだけど、君はひょっとしてバカなんじゃないのかな」
レタス「ウフフ、ありがとうございます。
ギャンブルバカだなんて、最高の褒め言葉でしてよ」
タカヤ「いや、上にギャンブルとか付かなくて」
レタス「ウキウキしませんこと? これから始まる、エクストリームなギャンブルに」
タカヤ「あのね、俺たちいま、壊れてもよさそうなボログルマに乗せられて、
うしろのトランクに、なにかズシンとした感じの、
すごくイヤな形した袋積まれてるんだけど」
レタス「向こうとて勝負の世界に生きる方々。
きっと勝負を受けてくださるに違いありませんわ」
タカヤ「そんな、ギャンブルマンガの登場人物じゃないんだから」
ガチャ
メカブーストダンガルン「兄ちゃん嬢ちゃん、腕ぇ出してもらおうか」
タカヤ「俺たちになにをする気だっ!」
メカブーストダンガルン「ヘタぁ打っちまったバカップルが、
もう逃げられねえと勘弁してクルマごと海ポチャ。
血管からはアルコール反応がたんまり。
なぁに、年に何回もある事件だ。
バカがバカやって死んだだけじゃ、サツぁ動かねえよ」
タカヤ「あのぉ、話を聞いていただけないでしょうか」
レタス「あなたも勝負師なら、ここはギャンブルで話を付けませんこと?」
タカヤ「君はひょっとして、もの凄いバカなんじゃないのかな!」
メカブーストダンガルン「ごめんな。おじちゃん堅実にヤクザやってるから、
ヘンなギャンブルなんかやらねえんだわ」
タカヤ「ほら見ろ! 現実なんてこんなもんなんだ!」
レタス「あらつまらない。こんなつまらない現実などいらなくてよ」
タカヤ「あっさり現実を見限らないでくれ!」
メカブーストダンガルン「ようわからんけど、腕出し」
タカヤ「あの、だから」
メカブーストドミラ「ククク・・・・・、一興・・・・・・、それもまた一興・・・・・・っ!」
メカブーストダンガルン「社長!」
メカブーストドミラ「若者には大きな可能性がある・・・・・・。
こんなところでその命を散らしてしまうのは、あまりにも不憫・・・・・・。
だから、やってみようではないか。
心の・・・・・・瞬発力・・・・・・持久力・・・・・・その性質傾向を・・・・・・、
計るための・・・・・・ギャンブル・・・・・・っ!」
ざわっ・・・・・・
タカヤ「いたよ、ギャンブルマンガの登場人物」
【事務所】
メカブーストドミラ「ゲームはポーカーで、よろしいかな?」
レタス「よろしくてよ。
ただし、賭け金の上限は、なしということで」
ざわっ・・・・・・
タカヤ「バカッ!」
レタス「あら、怖いのでして?」
タカヤ「いくら持ってるのか知らないけど、相手は」
レタス「ぐっとこらえて、そこにお座りになってくださいな」
タカヤ「ちょっと待て、俺もやるのか?」
レタス「あら、やらないのでして?」
メカブーストドミラ「なにをしておる。早く座らぬか」
メカブーストダンガルン「え、社長、私もですか?」
メカブーストドミラ「唾棄っ・・・・・・! 怯懦っ・・・・・・、唾棄すべしっ・・・・・・!
儂らは元々博徒っ・・・・・・!
思考・・・・・・戦略・・・・・・逡巡・・・・・・決断・・・・・・っ、
一瞬の緊迫っ! そして歓喜っ・・・・・・! 安堵っ・・・・・・、虚脱っ・・・・・・!
この喜びを知らぬ者など・・・・・・いらぬっ・・・・・・!
重要なポストなど任せられん・・・・・・。
あり得るかもな・・・・・・、降格っ・・・・・・、処分っ・・・・・・!」
メカブーストダンガルン「わかりました、やりますっ、やりますから!」
メカブーストドミラ「では、親は儂から。
カードはひとりずつ順番にシャッフルして山を中央に置く・・・・・・。
順番は、儂から時計回りに、お嬢ちゃん、ダンガルン、お坊ちゃん・・・・・・
持ち点は各々チップ100枚から・・・・・・」
タカヤ(分断された。隣り合ってのイカサマを警戒されたのか)
メカブーストドミラ「では儂から。50枚、ベット」
ざわ・・・・・・っ!
タカヤ(ポーカーは、
吊り上げられていく賭け金に対応できないと判断したら勝負を下りることが可能っ・・・・・・。
つまり、ゴミ手でもハッタリひとつで勝ち通すことができるゲームっ・・・・・・!
ゆえに最初の一手は『見』っ・・・・・・!
無難に小さく張って、相手の出方を見るのが定石っ・・・・・・!
いや、これで見極めているんだ・・・・・・、この大張りでっ・・・・・・!
狼かっ・・・・・・! 兎かっ・・・・・・!
兎と見なされたら、アウツ・・・・・・!
こちらのハッタリにはまず乗ってこないっ・・・・・・!
ただ、噛み砕かれるのみっ・・・・・・!
強気・・・・・・、ここは強気の一手・・・・・・っ!)
タカヤ「ぐっ・・・・・・!」
タカヤ(これでレイズできたら、どれほど博奕は楽かっ・・・・・・!
単純じゃないんだっ、これは、スタートダッシュなのかも知れないっ・・・・・・!
初手からそこそこの手で・・・・・・、ほかの面子にエンジンがかかりきる前に、
振り切る戦略なのかもしれない・・・・・・。
こちらは8のスリーカード・・・・・・っ!
向こうの手はなんだっ・・・・・・?)
メカブーストドミラ「ククク」
タカヤ(読めないっ・・・・・・、まるで読めないっ・・・・・・!
ポーカーを指定してきたということは、『ポーカーに自信がある』ということっ・・・・・・!
ポーカーフェイスは基本! 当たり前っ・・・・・・!
この勝負、初手から分が悪いっ・・・・・・!)
レタス「ドロップ」
メカブーストドミラ「おやおや、意外と慎重なお嬢ちゃんなのじゃな」
レタス「わたくし、慎ましやかですのよ」
メカブーストダンガルン「ええと、こちらもドロップで」
タカヤ(ダメだ、レタスさんっ・・・・・・。
弱気を見せれば、『組み易し』と判断されるだけっ・・・・・・!
ダメッ! ここは強気で行かなきゃダメっ・・・・・・)
メカブーストドミラ「さて、お坊ちゃんは」
タカヤ(あの顔を見ろっ・・・・・・。
ゆっくりじっくり楽しみたいっ・・・・・・いたぶりたいっ・・・・・・、
勝負を早仕舞いさせることなんてあり得ないっ・・・・・・!
ブラフっ・・・・・・、これはブラフっ・・・・・・!
強気っ・・・・・・、ここは強気でっ・・・・・・!
たとえ負けても、勝負の流れを向こうに渡すわけにはいかない・・・・・・っ!)
タカヤ「レイズだ」
メカブーストドミラ「クククっ・・・・・・」
パサ
メカブーストドミラ「見事・・・・・・、なかなかに見事っ・・・・・・!」
タカヤ「5のワンペア・・・・・・、俺の勝ち・・・・・・」
メカブーストドミラ「なかなかどうして、一瞬狼の目になりおる。
しかしながら、たった一戦でその、全身の汗っ・・・・・・。
狭量・・・・・・、あまりにも狭量っ・・・・・・!」
タカヤ(耳を貸すなタカヤっ、負け惜しみっ・・・・・・ただの負け惜しみだからっ・・・・・・)
レタス「ウフフッ」
メカブーストドミラ「どれどれ・・・・・・、お嬢ちゃんの手札はブタ・・・・・・、
そしてお主は、なんじゃ、6のワンペア・・・・・・。
怯懦っ・・・・・・、ひ弱っ・・・・・・。
お坊ちゃんには及ばずとも、儂には勝てたというに・・・・・・」
メカブーストダンガルン「だから社長、私、あんまりギャンブルは」
ざわっ・・・・・・ ざわっざわっ・・・・・・
タカヤ(2戦目、フォーカードで社長の勝ち・・・・・・。
3戦目はフラッシュで俺の勝ち・・・・・・。
いまのところトップは俺・・・・・・、しかしっ・・・・・・!)
レタス「ウフフッ」
タカヤ(どういうことだ? レタスさんは振るわない・・・・・・。
マジックを使っていないのか? いや・・・・・・)
メカブーストドミラ「ククク・・・・・・、まっこと、珍しいこともあるものじゃ」
メカブーストガビタン「あの、社長」
メカブーストドミラ「キングのワンペア・・・・・・。
儂はクィーンのワンペア・・・・・・。
これで3度目じゃな・・・・・・、儂とおなじ役で・・・・・・、なんか微妙にちょっと勝ってなくね?」
ざわっ・・・・・・!
タカヤ(若者言葉っ・・・・・・! 微妙にっ、若者言葉になったっ・・・・・・!
無理してたのか・・・・・・、年寄り口調、無理してたのかっ・・・・・・!
それはそれとしてっ、
2回も3回もおなじ役が出てくるのは不自然っ・・・・・・、あまりにも不自然っ・・・・・・!
おそらくこれはレタスさんが仕込んだイカサマっ・・・・・・、
でも、なんのためにっ・・・・・・!)
メカブーストダンガルン「社長、私は」
メカブーストドミラ「よしよし、しているとも・・・・・・、信頼っ・・・・・・!
お主は忠実なる部下なのじゃからなっ・・・・・・、儂のっ・・・・・・!」
タカヤ(社長が、部下の妙に堅実なヤクザに疑念を抱いている・・・・・・。
これか? ふたりを疑心暗鬼に陥らせ、同士討ちに追い込むっ・・・・・・!
でも、そんなに上手くいくのか?
レタスさんの持ちチップは残り少ないっ・・・・・・。
揉め事が起こる前にレタスさんがパンクする可能性が大っ・・・・・・!
若干バカかもしれないけど、レタスさんだって女子高生の端くれっ・・・・・・!
なんか押しの弱いヤクザより優先順位が下ってことはないだろう・・・・・・。
抜けられるのかっ・・・・・・? この、分の悪い賭けの迷宮からっ・・・・・・!?)
メカブーストダンガルン「ドロー」
メカブーストドミラ「待て」
ざわ・・・・・・
メカブーストダンガルン「社長、これは」
メカブーストドミラ「貴様、シャッフルのとき、一枚握りおったな・・・・・・。
手札を見せてみろ・・・・・・。
スリーカード・・・・・・、またしても、儂とおなじっ・・・・・・!」
メカブーストダンガルン「社長、違うんです社長!」
タカヤ(余計なことを・・・・・・。
これ以上役がかぶり続ければ疑われると思って、防衛戦を張ったのか・・・・・・。
安易っ・・・・・・! あまりにも安易っ・・・・・・!
おかげで、社長の警戒心が最高潮にっ・・・・・・!)
メカブーストドミラ「興醒めっ、興醒めじゃっ・・・・・・!」
メカブーストダンガルン「社長!」
メカブーストドミラ「仕切り直しじゃ・・・・・・。
掛けに、これを乗せてな・・・・・・!」
ゴトン
ざわっ・・・・・・
ざわっ ざわっ・・・・・・
メカブーストダンガルン「社長、これは」
メカブーストドミラ「お主は見たこたがなかったのうちの商品じゃ。
この拳銃をホルスターに入れて、腰から下げてもらうっ・・・・・・。
弾は一発だけ込められておる・・・・・・。
負けた側はこの拳銃を差し出すっ・・・・・・、
面白かろ、この、趣向っ・・・・・・!」
タカヤ「なんだってぇ~っ!?」
レタス「ウフフッ」
メカブーストドミラ「いうなれば、武装ポーカーっ・・・・・・!」
タカヤ「正気か!」
メカブーストドミラ「いたっての。面白いではないかっ・・・・・・!
髪の毛一本でつるされたダモクレスの剣というわけじゃっ・・・・・・!」
タカヤ「こんな遊びで、命のやり取りなんてっ・・・・・・!」
メカブーストドミラ「ククク、物騒なことをいうお坊ちゃんじゃ。
勝ったからといって、必ずしも引き金を引かねばならぬという義務はないっ・・・・・・。
余興っ・・・・・・! 余興に過ぎぬっ・・・・・・!」
タカヤ「でも、負けた側が大人しく拳銃を差し出すとは思えない!」
メカブーストドミラ「道理っ・・・・・・! たしかに道理っ・・・・・・!
この勝負にレフェリーはおらぬ。
プライドがっ・・・・・・、ギャンブラーとしてのプライドだけがレフェリーっ・・・・・・!」
ざわっ・・・・・・ ざわ・・・・・・っ
タカヤ「なにがギャンブラーだ、なにがプライドだっ・・・・・・!
撃ち合いになるのは火を見るよりも明らかっ・・・・・・!
どうする。いきなり暴れて、どさくさに紛れて逃げるか、
幸い、俺の席は出入り口を背にしてる・・・・・・。
ダメッ! ダメッダメッ・・・・・・!
2人をはさんで、レタスさんの席は奥っ・・・・・・!
仮に俺が拳銃を取っても、弾丸は1発きりっ・・・・・・!
2人をかいくぐってレタスさんを連れ出すのは、困難っ、ほぼ、不可能っ・・・・・・!
それに、社長が正面を狙うとは限らないっ・・・・・・!
あっちの妙に堅実なヤクザはギャンブルをあまりやらないっていうし、
いまの手並みを見れば、
鮮やかなイカサマなんかできるわけがないって判断するのが普通っ・・・・・・!
となると疑惑を向けられるのはっ・・・・・・!?」
ざわ・・・・・・・・・・・・
タカヤ「あっ」
ざわっ ざわっざわっ・・・・・・
タカヤ「あっ、あぁっ・・・・・・!」
タカヤ(俺・・・・・・か・・・・・・?
通常、イカサマとは『勝つため』に行われるもの・・・・・・!
『相手を勝たせるイカサマ』なんて、想定の外っ・・・・・・!
そして、勝っているのは、俺っ・・・・・・!)
タカヤ「レタスさん」
レタス「なにか?」
タカヤ(君は、俺を壁に仕立て上げたのか・・・・・・!?)
タカヤ「耳掃除くらい、してもらうからな」
レタス「ま、せせこましいかたですこと」
メカブーストドミラ「凄い汗じゃの、若いの・・・・・・。
そう、心配することはあるまいて・・・・・・。
1発きりの弾丸は、勝負の興を盛り上げるための、いわば小道具っ・・・・・・!
本当に撃つような狼藉者もおるまいて・・・・・・。
もしもいるなら・・・・・・」
ゴトン
メカブーストドミラ「撃てばよい・・・・・・、先にっ・・・・・・!」
ざわ・・・・・・ ざわっざわっ・・・・・・
メカブーストドミラ「なにもありはせぬ、難しいことなど・・・・・・。
このラッチを押せばシリンダーが出る・・・・・・。
弾丸を1発目にセットしてっ・・・・・・」
チャッ
メカブーストドミラ「ダブルアクションっ・・・・・・、
引き金さえ引けば、弾が出るっ・・・・・・!
簡単・・・・・・、簡単っ、至極っ・・・・・・!
あとは、狼藉者より速く抜くだけっ・・・・・・!」
タカヤ「ハーッ、ハーッ」
タカヤ(妙な動きを見せれば、撃たれるっ・・・・・・!
俺は拳銃の扱いなんか知らない。早撃ちなんかできるはずがないっ・・・・・・!
どうする・・・・・・? テックセットは・・・・・・?
あれ、そういえばテックセットってどうやるんだろう。
クリスタルとか持ってた覚えないし。
そもそも、俺、なんでテックセットなんてできるんだろう・・・・・・?
ダメッ、ダメダメっ・・・・・・!
いざっていうときにテックセット不能なんてことになったら、アウツッ・・・・・・!)
メカブーストドミラ「では、各自リボルバーをホルスターに納めて、
コールっ・・・・・・!」チャッ
レタス「コール」チャッ
メカブーストダンガルン「ええと、コール」チャッ
タカヤ(もう、逃げちゃおうか・・・・・・。
考えてみたらレタスさんと特別親しいってわけじゃないし、
レタスさんは自業自得もいいとこだし、
だいたい俺には、面倒見なくちゃいけない面倒くさい家族がたくさんいるんだっ・・・・・・。
ないんだっ・・・・・・、無理に付き合う理由なんかっ・・・・・・!)
メカブーストドミラ「ククク・・・・・・、どうした、乗らんのか・・・・・・?」
レタス「ドロップするのでして?」
タカヤ「うっ、うぅっ・・・・・・!」
タカヤ(どうする・・・・・・、引いて、どうするっ・・・・・・!
待っているのはっ、暗澹としたっ、自己嫌悪の日々っ・・・・・・!
やるんだっ・・・・・・!
どんなに分の悪い賭けでも、乗らなきゃならないときがあるっ・・・・・・!
明日をっ・・・・・・! 誇れる明日をつかむためっ、この手にっ・・・・・・!)
タカヤ「コール」
タカヤ(こっちの手札はクィーンのフォーカード・・・・・・、
そうそう負ける手じゃないっ・・・・・・)
メカブーストドミラ「ドローは、いらぬ・・・・・・」
タカヤ(社長はカード交換なし・・・・・・、
この局面でそれは・・・・・・、相当な自信の現れっ・・・・・・!
『高い』のか? 相当高い役が揃ったのか、クィーンのフォーカードよりっ・・・・・・!?
いや、落ち着けタカヤ。
この勝負、ポーカーの結果いかんによらず、撃ち合いになるっ・・・・・・!
ポーカーは前座っ・・・・・・! 前振りっ・・・・・・!
撃ち合いの前に、いかに精神的優位に立てるかの、駆け引きっ・・・・・・!
噛むかっ・・・・・・、噛まれるかっ・・・・・・!
ここは、噛み砕くっ・・・・・・!)
タカヤ「ゼロっ・・・・・・ドローっ・・・・・・!」
メカブーストドミラ「では・・・・・・、行こうではないか・・・・・・、オープンとっ・・・・・・!」
パサッ
ざわっ!
タカヤ(社長の手はクィーンのフォーカードっ・・・・・・!
あり得ないっ! ひとつのデッキに、クィーンは4枚っ・・・・・・!
あり得るはずのない2組のフォーカードっ・・・・・・!
疑われるっ! イカサマっ! どうするっ・・・・・・!?)
ガタンッ
メカブーストダンガルン「くっ」チャッ!
メカブーストドミラ「血迷うたかっ!」チャッ
タカヤ(妙に堅実なヤクザの手札がこぼれたっ・・・・・・!
役は、こちらもクィーンのフォーカードっ・・・・・・!
撃たれる前に撃つっ、それが2人の選択・・・・・・!
俺はっ、俺はどうするっ・・・・・・!)
がしっ!
メカブーストドミラ「こやつっ・・・・・・!」
メカブーストダンガルン「シリンダーをっ・・・・・・!」
タカヤ(リボルバーっ! ダブルアクションっ! 撃鉄は起きていないっ・・・・・・!
シリンダーをつかんでしまえばっ、引き金は引けないっ・・・・・・!)
タカヤ「レタスさん、逃げろっ!」
レタス「このときを待っていたのでしてよ」
カチャッ
レタス「手を挙げていただけませんこと? 社長さん」
メカブーストドミラ「小娘っ!」
レタス「タカヤさんの手を振り払って、撃ちますか?
しかしながら弾丸は一発きりっ・・・・・・、
わたくしを撃てばそちらの方が、そちらを撃てばわたくしが、あなたを撃ち抜きましてよ」
メカブーストドミラ「愚劣っ・・・・・・、愚昧っ・・・・・・! 暗愚っ・・・・・・!
この事務所で儂になにかすればっ、外で控えている者共がっ・・・・・・!」
レタス「ウフフッ、社長さん、あなたに失策があったとしたら、
マジシャンをテーブルにつけてしまったこと・・・・・・!
マジシャンにとってテーブルは、絶対的な領地っ・・・・・・!
勝負が始まった時点で、あなたの命運は決まっていたのでしてよ・・・・・・」
メカブーストダンガルン「外に控えている連中は、すでに我々のチームが制圧している。
観念するんだな、メカブーストドミラ」
メカブーストドミラ「ダンガルンっ、裏切るかっ!?」
メカブーストダンガルン「コロニー統合警察潜入捜査官、ダンガルンだ。
メカブーストドミラ、拳銃不法所持の現行犯、
および銃密売の容疑で逮捕する!」
メカブーストドミラ「うっ・・・・・・、うぐっ、うぐぐっ、あり得なくねっ?」
タカヤ「また・・・・・・、若者口調にっ・・・・・・!」
【事務所の外】
ファン ファン ファン ファン ファン
メカブーストダンガルン「ご協力、感謝いたします」
タカヤ「なに考えてるんですかっ! 警察が民間人の女の子を巻き込むなんてっ!?」
レタス「わたくしが協力を申し出ましたのよ」
メカブーストダンガルン「勘弁してくださいよお嬢さん、
あんなやり方をするだなんて聞いていませんよ」
レタス「だって、事前に教えていたら、あなたの挙動は白々しくなっていたのではなくて?
それに、いくら潜入捜査を続けても尻尾ひとつつかめないと泣きついてきたのはそちらでしてよ」
メカブーストダンガルン「それはそうですが、それにしても」
レタス「さ、もうお行きなさい。
奥さまが、もう臨月に入るのではなくて?」
メカブーストダンガルン「はっ、お母さまに、よろしくお願いいたします!」
タカヤ「あのひと、子供が産まれるのか?」
レタス「ええ、奥様は元トロイエ隊の方で。
子供が産まれるときに父親が側にいないという状態は、望ましくなくってよ」
タカヤ「なあ、君は、手札を操っていたんだろう?」
レタス「もちろん。パーフェクト・シャッフル、
プル・スルー、プッシュ・スルー、ザロウ・シャッフル・・・・・・、
一度でもマジシャンにシャッフルをさせた以上、手札はいくらでも操れますのよ」
タカヤ「どうして、俺を妙に勝たせたりなんかしたんだ」
レタス「あら、どうせならお勝ちになった方が愉快だと思って、
気を遣って差し上げましたのに」
タカヤ「冗談じゃないよ。あの局面で疑われるのは俺じゃないか。
俺は、君を見捨てて逃げようとも考えたんだぞ!」
レタス「あら、わたくしはてっきりお逃げになるものだと思っていたのですけれど」
タカヤ「そういうわけにもいかないじゃないか!」
レタス「ウフフッ、まさか、わたくしを心配いたしましたの?
そんな必要はまったくありませんのに。
マジックとは技術。運否天賦などない、盤石の技っ。
マジシャンがテーブルについたとき、すでにトリックは完成していますの。
あの社長がギャンブル狂であることも、
ポーカーに使うカードの銘柄も、
常に場にいる全員にシャッフルさせることも、
イカサマを疑い出すと武装ポーカーを始めることも、
拳銃は常にリボルバーで、弾丸を一発だけ入れることも、すべて調査済みでしたのよ。
ギャンブル性があったとしたら、
そう、社長がギャンブルに乗ってくるか否か、それだけ」
タカヤ「そこが一番危ないポイントじゃないかっ!」
レタス「ウフフッ、そうでなくては、つまらないじゃないですの。
わたくしが生まれ育ったコロニーという場所は、
天気も、季節も、すべてが管理されていましたの。
そんな中で、不確実なものはギャンブルだけっ・・・・・・!
盤石なトリックと、脆い博奕っ・・・・・・!
この組み合わせだけが、わたくしの脳を熱く熱く昂ぶらせますのよ・・・・・・!」
タカヤ「君はっ!」
パシンッ!
タカヤ「バカッ! わかってるのかッ!
一歩、いや、半歩間違えていれば、君はひどいことになっていたんだぞッ!」
レタス「ウフフ、手をあげるだなんて、あなたらしくもない」
タカヤ「謝ったりなんかしないからな」
レタス「あなたもギャンブラーなら、ギャンブルで話をつけてはいかが?」
タカヤ「まだ懲りないのか君って子はっ!」
レタス「あら、この勝負は受けていただかないと困りましてよ。
わたくし、あなたのお耳など掃除したくありませんの」
ざわ・・・・・・
タカヤ「ひと勝負だけ・・・・・・、負かしてやるっ・・・・・・!」
ざわ・・・・・・
ざわっ・・・・・・ざわっ・・・・・・
最終更新:2009年10月17日 12:48