黒アーク


26代目スレ 2008/11/29(土)

俺は、何してたんだっけ・・・・・・?

ああ、そうだ。確かとても嫌な事があって、悲しい思いをして、そしてもうどうしようもなくなって・・・・・・

世界を壊すことにしたんだった。

そこは戦場だった。
倒すべき存在を目の前に、武器を構える大勢。そしてそれを迎え撃つ存在。
だが、その戦場はあまりに奇妙だった。なぜなら、その迎え撃つ存在は、武器を構える大勢に対して
あまりにも小さく、脆弱に見えた。
なのに、浮き足立っているのは大勢の方だった。
「全機攻撃態勢!なんとしても奴の進行を止めろ!」
「各小隊、攻撃準備完了!」
「これ以上はやらせないぞ、化け物め!」
口々に飛び交う言葉と共に、機動兵器の群れは攻撃態勢を整える。
(ウゼェなあ・・・・・・)
小さな男。とはいえ、機動兵器と対峙しているからこそ小さく感じられるが、別段体格が小さいわけでもない
中肉中背よりはややしまりの無い体の歳若い男は、自分に向けられる武器を胡坐をかきながら眺めた。
銃口が60mmを超える、もはや砲と呼んでも差し支えない大型の銃から、秒間数百の弾丸が吐き出される。
ショックアブソーバーの付いている機動兵器の腕に支えられていなければ、反動だけでビルすら倒壊する
そんな巨大で圧倒的な破壊力の群れが、ちっぽけな存在に向かっていく。
だが、その破壊は男に触れることは無かった。
別に男がそれを回避したわけでも、何かしらの防御手段を講じたわけでもない。
ただ、当たらなかったのだ。
「攻撃が当たるってのが絶対じゃないなら、当たらない可能性があるって事だよな」
「攻撃の手を緩めるな!物量で押せば、奴とて!」
視界いっぱいの攻撃。でも、無駄だ。やはり弾丸は男に当たらない。舞い上がる瓦礫すらも。
男は退屈そうにつぶやく。
「あー、周りのは大半がMSとPTだな。なら動力は核融合炉だから・・・・・・へいよっと」

次の瞬間、男の周囲を取り囲んでいた機動兵器の9割が動力の暴走で自爆した。
それを眺めながら、男はため息混じりにつぶやく。
「丁寧にシーリングしてもさあ、針の穴一つの隙間が開くだけで」
男は握りこぶしをつくり、そしてそれをパッと広げた。
「ボン!だもんなあ。まあ、核融合炉なんて核爆発しねーってだけで、中身はホッカホカの
 溶鉱炉みたいなもんだしなあ」
(一応、実家が兵器会社だったから覚えたけど、なんつーかねえ。珍しく覚えた知識が
 こーんな事にしか使えないからなあ)
男は、呆然とそんな事を思った。
(んまあ、別にもう関係ねーよなあ。あとさあ、やっぱスーパーロボットはどうも構造がわかんねーから)
周囲のPTとMSが大半全滅した中、残骸から舞い上がる炎の中に浮かぶ鋼鉄の巨人がいた。
その鋼鉄の巨人達を見つめて、男はつぶやいた。
「やっぱ、スーパー系は無理か。しかしまあ、たかがジキミ相手にまた随分とご大層なこったな」
そして男。アークはゆっくりと腰を上げた。

全てのスーパーロボットが破壊されるのに、さほど時間はかからなかった。
「たくっ、なんつーか終焉の銀河って感じだなあ」
アークは周囲に横たわるスーパーロボット達の残骸を見つめながらつぶやいた。
(もっとも、俺はあんな6本腕のマッチョじゃねーけど)
そして、これだけの惨事を引き起こしながら、自分がそんなどうでもいい事しか考えていないことに
改めて驚いた。ただし、それ以上の感情はもう起こらない。
(なんだったんだろうな、確かに嫌な事があったんだけど)
その時、空間の歪みが上空に。そして魔方陣が地上に現れ、2体の黒い魔神が現れた。
「やれやれ・・・・・・ね。まさかあなたに、ここまでされるなんて」
「もはや躊躇のしようもない。世界を滅ぼす存在と成り果てた、貴様を野放しにはしない」
クォヴレーとイングレッタは同時に言った。
「因果を辿って」
「無に返れ」
矢継ぎ早に放たれる二人の平行世界の番人の言葉。その威圧感は禍々しい機体と相まって
空間すら揺るがすほどの力強さがあった。
だが、アストラナガンディス・アストラナガンその2機を前にして、アークの表情はやはり変わらない。
ただ無言で拳銃を取り出すと、2回トリガーを引いた。

ディス・アストラナガンの目から赤い輝きが消え、そしてコクピットからの声が無くなった。
その状況を見て、アストラナガンの中でイングレッタは冷や汗を流した。
「当たらなかったものを当たったことにする確率変動弾なら、確かに見たことがあるけど、
 コクピット内と動力に直接っていうのは反則よね」
それにアークは銃の反動でしびれる腕を押さえつつ、ふうっと息をつく。
「出来るもんだなあ。で、どーすんの?どっか別の世界にでも逃げたりする?」
「あら、それを許してくれるって事は、一応優しさは残っているのかしら?」
「優しさね・・・・・・」
(意識したことなんて別に無い。ただ、なんとなく気を遣ったりしたことはあったなあ。
 それに、そもそもこんな事をやろうなんて思いもしなかったけど)
アークはどうにも頭がスッキリしない感覚を覚えながら、ただそれもどうでもいいと思い
「ま、逃げてもいいけど、絶対逃げないだろ」
「ええ」
「んじゃ、バイバーイ」
アークは2回引き金を引いた

動きを止めた2体の黒い機体。アークはそれを物悲しそうに眺めた。
(もしかしたら、止めて欲しかったのかもしれないな)
だが、もう止めてくれる存在は無い。アストラナガンとディス・アストラナガンを倒すのに
銃弾たった4発。世界を壊すのにも、さほど苦労は無いはずだ。
(もう、面倒だ)
「さっさと壊して、終わりにしようか」
「おや?まだ私がいますが?」

その声にアークは思わず口元がにやけ、そして全身にどこか温かい高揚感が宿るのを感じた。
「おいおい、どーいう風の吹き回しだよ。シュウヤ」
その問いに、これだけの惨事を見渡しながら、シュウヤもアークと同じく笑う。
「どうもこうも、バカな友人に説教してやりにきたんですよ」
「お前に説教されちゃあ、俺もいよいよ終わりだな」
「ククク、教室でこんにゃくオナニーの仕方を聞いてくる御馬鹿さんは、最初から終わっていますよ」
「トイレで汗を拭く時にハンカチと間違えてパンツ(女性用)をポケットから取り出すアホに言われたくネエよ」
「間違えて?何をですか?」
「オーケー、もう喋るな」
数千の屍の山の上で、燃え盛る炎をバックにしていなければ、中の良い友人同士の
他愛も無いバカ話。お互い、口元に浮かべた笑みはまぎれもなく、友人同士の他愛も無いものだった。
だが
「まあここまでやった以上、もう後戻りはできねーんだよ」
「どんな中二発言ですか?」
「んなこと言って、どうすんだ?おまえ周りの絶景がみえねーのか?」
「んん?じゃあこんなのどうでしょう?」
次の瞬間、シュウヤの後ろにダークブルーと金色の禍々しい機体が現れた。
「グランゾン・エターナル。さあ、世界の終わりという1度しかないシチュエーション、楽しんでいきましょう」
「お前のほうが中二じゃねーか!なんつーもん持ってきやがった!」
「おやおや、そう言いながら、だんだん楽しそうになってきたように見えますが?」
シュウヤにそう言われて、先ほどまでの面倒で憂鬱だった気分が少し晴れているのにアークは気づく。
だが、それを認めるのがなんだか気に入らなくて、アークは袖から小さな爆弾を山のように取り出した。
「くだらねえこと言ってねーで、さっさと俺を止めねーと世界を終わらせるぞ」
「おやおや、ではあなたを倒した後にあなたがメチャクチャにした世界の上に
 私の王国を築いてやりましょう」
「ハハハ」
「ククク」
「「ヒャーハッハッハッハ!」」
「邪神降臨!」
「全ての存在を消し去ってやるよ!」
巨大な力が全てを飲み、全てを捻じ曲げる力がそれを強引にかき乱した。
そして全てが光の中に消えた。

イングレッタ「終了よ」
アーク「・・・・・・ああ、そうだった」
アーク(確かイングレッタが俺に、自分の力の危険性を認識させるためにアストラナガンのシミュレーターで
    体感テストをさせてあげるとか言い出して、それでアストラナガンのコクピットでシミュレートを)
アーク「なあ、俺ってそこまで危険なのか?」
イングレッタ「あれは最悪の可能性よ。世界に絶望して、信じられる存在も無くなって、世界を壊すことを望んだ
       単なる破壊の権化。この世界であなたがあんな危険な存在になることはまずありえない」
アストラ「ついでに言わせて貰えば、我らは対因果律制御用の防御が事前になされている。
     前半のPT、MSおよび特機の全滅までは、汝の力が極限まで高まれば可能だが、それ以降は無理だ。
     確率変動弾は我らに届くことは無い」
イングレッタ「それ以前に、あそこまでの力が現状のあなたには無い。机上の空論のうえで机上の空論を成り立てる
       そんな絵空事よ」
イングレッタ(もっとも、実際にPTやMSの核融合炉のシーリングのシステムを把握している以上
       現状でも、それらと戦えばあるいは)
アーク「じゃあ、最後のシュウヤは?」
イングレッタ「あのままのテンションでシミュレーションを切り上げたら、しばらくひどい鬱状態に陥るから
       徐々にシミュレーションの感度を変えて、ハイなテンションでシミュレーションを終了したのよ」
アーク「ああ、そーいうわけね。ハハ・・・・・・」
イングレッタ「どうかしたの?」
アーク「いや、最後シュウヤに救われたような気がしてさ。たとえ何があっても、ああやってバカな俺を止めてくれる奴が居たら
    俺はたぶん踏みとどまれると思う。そしたらなんか安心した」
イングレッタ「そう。まあ安心しなさい。私たちだって、あなたを止めてあげる事くらいできるわ」
アストラ「その時が訪れればな。そして、訪れないことを切に願う」
アーク「そーだな。んじゃ、はやいとこ飯つくるか。遅くなると咲美が飯作り出しちまうから」

学校
シュウヤ「ククク、久々に私の勝ちですよ!」
アーク「ヤベェ、シュウヤに負けるとか今日はなんか隕石でも降るんじゃねーか?」
シュウヤ「失礼ですね。まあいいでしょう。では久々に自分の教室で授業でも受けてきますよ」
アーク「いつもそうしろよ」
レタス「らしくないですわね。わざと負けるなんて」
アーク「んー?いやいや、個人的に勝手に縛りプレイをして負けたわけで、手は抜いてねーよ?
    つーか、それくらいあいつも気付いてたし」
レタス「そのわりに、随分と喜んでいましたが」
アーク「勝ちは勝ちだからな。お前らみたいに美学もって勝負なんかしてねーし。
    おっちゃんも言ってたぜ。勝った奴の勝ち。それ以外、勝負の世界にねーんだとさ」
レタス「それなら、なぜ縛り有りで?」
アーク「たまにはそんな気分にもなるわけ。具体的に言うとチート使ってゲームクリアしちまった後とか」
レタス「はあ?」
アーク「まあ、友達は大切にしようかなと、めずらしくアーク・アルトリートさんは思った訳ですよ
    世界が続いていることの、なんて素晴らしいことか」
レタス「頭でも打ちましたか?」

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最終更新:2009年10月17日 13:02
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