28代目スレ 2009/04/24(金)
激闘の末、568系統生命体が消滅寸前の状態にあるのは明らかだった。
だから、突然その身体を直径一メートルの超高密度体に変えたのは、最後のあがきと見ていいだろう。
あまりのサイズ差に、ラアム・ショットガンがいっさい当たらない。小規模な位相空間
をまき散らしながら移動するから、ガンスレイブたちも追いつかない。
突然、コックピットハッチが開いた。大切なものがすぽんと抜ける感覚に、思わず「あ」
と声を漏らす。
「いけません、ご主人様!」
主人が、極限刃を備えたナイフを手に単身超空間に飛び出していく。
荒れくるう時空震にさらされ、装甲板が次々と剥がれていく。魔導筋肉繊維が剥き出し
になった腕を伸ばす。ダメだ。小刻みな位相空間により、触ることもできない。
「来るなッ!」
主人が、思いのほか厳しい声を飛ばした。
「お前は先に帰還していろ。やつは俺がカタをつける」
「でも!」
「待っていろ。必ず帰るから」
最後の言葉は、空間に積分されて銀の色に変換されていった。
あれから、どれだけの時間が経ったのだろう。
数秒かもしれない。数年間かもしれない。
「なあ、あんた」
声をかけてくるのは、これで何人目だろう。
「いつまで、そうしているつもりだい」
「ご主人様が帰っていらっしゃるまでです」
「そのご主人様は、いつ帰ってくるんだい」
「わかりません」
「わからないのに、そうしてるのかい」
「当然です」
「困るんだよなあ」
「お構いなく」
「そういうわけにもいかないんだよ」
肩に手を載せられる。その手を、払いのける。自分に触れていいのは主人だけだ。
「本日未明、OG町内のOG公園内が全裸の女性に占拠され、現場は一時騒然としました。
付近の住民によると、女性は全裸の状態で公園に現れ、
『ここです、ここです』と叫びながら20回ほど発光体を空に打ち上げたそうです。
通報を受けた警官が職務質問したところ、『全裸のなにが悪い』、『絶対にここを動か
ない』、『ここでご主人様を待つ』などと叫んで抵抗しました。
当局では新たな新興宗教による洗脳を視野に入れ、女性の身元を洗う動きだとのことです」
最終更新:2009年10月17日 13:03