BLUEvsSILVER


23代目スレ 2008/05/04(日)

レラ「・・・・・・や、・・・・・・ぞ」
キャクトラ「は、『シブヤだ。シブヤ行くぞ』とは、また急なご提案ですね」
ヴィレアム「どうしたんだよ」
レラ「・・・・・・ダサッ」
キャクトラ「『ダサッ』だそうだ」
ヴィレアム「うん。いまのは聞こえた」
レラ「・・・・・・だ、・・・・・・る!」
キャクトラ「『もう限界だ。お前の私服はダサ過ぎる』と。
 はぁたしかに。友の私服は常に色がくすんでいて、
 いったいどこで買っているのかと私も常々不思議で」
ヴィレアム「どこって、服はいつも、母さんがファッションセンターしまむらで」
レラ「・・・・・・な、・・・・・・ろっ!」
キャクトラ「『もうバンドの士気に関わるからな。
 シブヤ行って、少しはこざっぱりとしろっ!』との命令口調だ。
 あっ、レラ殿、待ってくださいな」
ヴィレアム「そんなにダサいかなぁ、俺の服」
レラ「・・・・・・ダサッ」

 【シブヤ ブティック『コバルト』】
店員「ありやとやんしたー」

 ウィーン
ヴィレアム「一通り買ってみたけど、なぁ、これほんとにオシャレなのか?
 こんな緑色のジャケット、
 めんどくさい文明論とかぶちかましてくる初老のオッサンくらいしか着てるの見たことないぞ」
レラ「べ・・・・・・ら、・・・・・・だ」
キャクトラ「『べつべつの売り場で店員にいわれるがままに買うから、そんな異様なコーディネートになるんだ』とのご指摘だ。
 はぁ、たしかに、あっちをフラフラこっちをフラフラ、
 目標を見定めていないというか、がむしゃらに追いかけているうちに元の目標を忘れているというか、
 なんというか、友の人生の縮図を目の当たりにしているような気分でしたが」
ヴィレアム「もはや通訳の域を超えてるからな!
 お前、レラの通訳にかこつけて毒吐くのはやめろ!」
レラ「も・・・・・・、い・・・・・・、・・・・・・だ、・・・・・・ろ」
キャクトラ「『もう服はいい。次は美容院だ。そのモッサリした髪をどうにかしろ』
 と、レラ殿次なるご提案だ」
ヴィレアム「一日のうちに次から次へといわれても、
 人間、そんな急には変われないよ」
キャクトラ「『危機感を持て!』とレラ殿からの警告だ!」
レラ「・・・・・・は?」
ヴィレアム「いや、いま、レラ喋ってなかったよな?」
キャクトラ「しかしな、友よ。この際だからいうが、
 友は少し根気が足りないというか気力が上がりにくいというか」
ヴィレアム「腰を据えて説教し始めるなよ。
 お前、なんだそれ。新種の逆ギレか?」
キャクトラ「ともあれ、そのモッサリした髪は少し整えた方がいいぞ。
 さ、美容院に行こう」
レラ「・・・・・・だ」
キャクトラ「『なにひとごとみたいにいってるんだ。
 ついでにお前も、負けず劣らずモッサリした髪をどうにかしてこい』ですか?
 ははは、そうですねえ。少し伸びてきましたし、そろそろ散髪どきだと思っていたところです」
レラ「・・・・・・な」
キャクトラ「ははは、『散髪とかいうな』とは異な事をおっしゃる。
 髪を切ることを散髪と呼ばずしてなんといいましょうか」
レラ「・・・・・・」
キャクトラ「おや、どうされたのですかレラ殿。ため息などつかれて」


 【美容院 『ウルトラマリン』】
美容師「またどうぞー」

 ウィーン
ヴィレアム「どうするんだよ! 頭、こんなに真っ青にしちゃって!」
キャクトラ「それは友が、美容師さんとのカウンセリングの途中で
 めんどくさくなって『はい』しかいわなくなったからだ。
 しかし、さわやかな色合いになって、結果的によかったではないか」
ヴィレアム「涼しい顔しやがって! お前は普通に髪切っただけだからいいよ!」
レラ「・・・・・・だ」
キャクトラ「『なかなかいい感じだ』と、レラ殿もサムズアップをなすっている」
ヴィレアム「これじゃ学校行けないよ!」
レラ「・・・・・・ろ」
キャクトラ「『ヅラでもかぶっていればいいだろ』とはレラ殿のアイデアだ。
 はて、青い髪とは、そんなに恥ずかしいものですか?」
レラ「・・・・・・な」
キャクトラ「『お前たち、髪切って色おなじにしたら、
 ほとんど見分け付かないな』というご感想ですか。
 はぁ、それはもう、親戚のようなものですから」
ヴィレアム「なぁ、たまに思うんだけどさ、
 お前の訳って、明らかにレラ本人が喋ってるより長いことあるよな」

 キキーッ
女の子の声「きゃぁーっ!」

キャクトラ「危ないっ! 横断歩道にトラックが!」
ヴィレアム「信号は赤だっていうのに!?」ダッ

 キキキーッ

ヴィレアム「はぁ・・・・・・、はぁ・・・・・・、大丈夫か?」
女の子「うぅ~」
ヴィレアム「まったく、居眠り運転か!?」
女の子「あーん、あーん!」
ヴィレアム「おいおい、泣くなよ。もう大丈夫だから」
レラ「・・・・・・ぞ」
キャクトラ「『なに油売ってるんだ。行くぞ』とレラ殿はすでに歩き出していらっしゃる」
ヴィレアム「おい、でもこの子が」

 ウー ウー ウー!
キャクトラ「パトカーが来る。警察沙汰になったら面倒だ。行こう、友よ」
ヴィレアム「あ、あぁ、じゃ、どこか痛かったら、病院行くんだぞ?」
女の子「あ・・・・・・」


 【翌朝 学校】
レイナ「ね、今朝の記事みた?」
ゼラド「え、なに」
レイナ「ほら、これよ。『青いタイムダイバー、暴走トラックから少女を救う!』だって」
ゼラド「え~、これ、お兄ちゃんじゃないよぉ~」
レイナ「あら、そうなの?
 たまたま居合わせた新聞記者がとっさに撮った写真だから、けっこうピントずれてるんだけど。
 あんたよくわかるわね」
ゼラド「体格が全然違うもん。
 お兄ちゃんはもっと、キュッと引き締まってて、熟しきってない果物みたいに硬そうで、
 でもまぁるい輪郭したお尻だもん!」
レイナ「クォヴレーさんも、まさかお尻で見分けられるとは思わないでしょうね」
ゼラド「う~ん、でも、これ、誰なのかなぁ?
 イングラムさんが取り憑いたって、体格までは変わんないはずだし」
レイナ「ただの地方記事だし、記者もテキトーに書いたんじゃないの?
 この町じゃ、ヒーローっていったらタイムダイバーみたいなとこあるし」

ヴィレアム「え?」
レイナ「あら、どうしたのよ。そんなとこにボケッと突っ立って。
 しかしあんた、今日はまた一段と頭がモッサリしてるわね」
ゼラド「カツラかぶってるみたいになっちゃってるよ? 床屋さん行ったほうがいいよ」
キャクトラ「おはようございます。なんです、朝から賑やかですね」
レイナ「あら、こっちはずいぶんサッパリしちゃって」
ゼラド「キャクトラくん、そうするとお兄ちゃんそっくりだね」
レイナ「ね、キャクトラ。この青タイムダイバー、あんたなんじゃないの?」
キャクトラ「ああ、昨日の。違いますよ、これは」
ヴィレアム「シッ!」
キャクトラ「どうした、友よ」
ヴィレアム「俺が、タイムダイバー?」
キャクトラ「友よ?」

レラ「・・・・・・Manhattan・・・Joke♪ ・・・・・・Manhattan・・・Joke♪
 ・・・・・・支え・・・・・・きれない♪ ・・・・・・ハート♪」

 【バランガ家】
イングラム『おいおい、ニセモノ出現だってよ』
クォヴレー「お前、昨日の夕方、どこかに行っていたな」
イングラム『俺じゃないよ。
 そうそうホイホイ取り憑けるもんじゃないって、お前知ってるだろ?』
クォヴレー「なら、なにをしていた」
イングラム『それよっか、どうするよこれ』
クォヴレー「どうもしない」
イングラム『なんだ、いいのかよ』
クォヴレー「べつに悪いことをしているわけではないだろう」


 【新聞記事】
  『青いタイムダイバー 燃え盛るビルから母子を救出!』

 【新聞記事】
  『またも青いタイムダイバー 銀行強盗を制圧!』

 【新聞記事】
  『またまた青いタイムダイバー 万引き犯を縛り上げる!』

 【経済新聞】
  『大人気! 青いタイムダイバー仕様グリーンジャケット発売!』

 【スポーツ新聞】
  『お手柄青いタイムダイバー グラビア嬢のポロリを阻止 か?』

レラ「♪Super・・・hero・・・ ♪The・・・hero・・・of・・・today・・・
 Everyone・・・wishes・・・they・・・could・・・be・・・like・・・me・・・♪
 Smart・・・and・・・cool・・・♪
 They・・・need・・・a・・・helo・・・somebody・・・who・・・is・・・just・・・like・・・」

 【学校】
ハザリア「フハハハ! 『タイムダイバー BLUE VS SILVER』と来たか!
 おい、ゴードンさんはなんといっている?
 赤いジャケットでも羽織り始めたか」
ゼラド「お兄ちゃん、そんな趣味の悪いの着ないよ」
ハザリア「しかし緑色というのも、実際見るとキツいものがあるぞ」
レイナ「そんであんたは、なんでピンクのジャケットなんか着てるのよ」
ハザリア「スラップスティックだろう」
レイナ「どんだけ80'sルパン三世好きなのよ」
ハザリア「しかし、この青いタイムダイバーは、ちとおかしいな。
 写真によって微妙に体格が違うし、たまに、やけにちっこかったりもする」
レイナ「もともとそんなんだったじゃない、タイムダイバーって」
ハザリア「どんなんなのだ、タイムダイバーとは」
ゼラド「どんなんなんだろ、タイムダイバーって」

 【練習用スタジオ】
ヴィレアム「いまや、タイムダイバーっていったら世間的に俺たちのことだろ?」
キャクトラ「しかし友よ、我ら、タイムにダイブしていないし」
ヴィレアム「認知度上がってるじゃないか。
 最近はもう、『青い』って付けられなかったりするぞ、俺たち」
キャクトラ「いやいや、しかし友よ、やはりタイムダイバーはタイムにダイブしてなんぼでは」

レラ「・・・・・・ダバダバダバダバダバダバ♪ ~TIME DAYBAR♪」
キャクトラ「レラ殿、タイムダイバーのつづり、違ってませんか」
ヴィレアム「次のヤマはこれだ。大きいぞ。
 『Az-130A社』で、秘密裏にバイオロイド兵の密造密売をやってるっていうんだ。
 証拠になる帳簿を盗み出して、世間に公開してやれ!」
レラ「・・・・・・ダバダバダバ♪ TIME DIEVER♪」
キャクトラ「レラ殿、タイムダイバーのつづり、違ってませんか」

ヴィレアム「なにも、殴り合いでクォヴレーさんに勝つことはないんだよ。
 第一、そんなのゼラドが喜ばない!
 だから、クォヴレーさんとおなじか、それ以上の成果を上げる!
 そうすれば、俺が、俺がこの町のタイムダイバーだ!」


 【バランガ家】
イングラム『おっ、どうした。そんな格好して』
クォヴレー「青いのを止めてくる」
イングラム『なんだよ、ニセモノのほうが有名になってきたもんだから、ジェラシってるのか?』
クォヴレー「そうじゃない」
イングラム『じゃ、なんでだよ。べつに悪さしてるわけじゃないだろ、ブルーちゃんは』
クォヴレー「ことが大きくなりすぎている。
 マフィアもヤクザも、もとは自警団だった。
 それが大きくなっていくうちに、個人の意志を離れて恐ろしいものに変わっていく。
 いまの青いタイムダイバーは、危険だ」

 【Az-130A社】
パンツァーゾルン「待て、待ってくれ! それは!」
ヴィレアム「よし、書類は手に入れたぞ。あとはこれをマスコミに」
キャクトラ「待て友よ! 窓に! 窓に!」

 ガシャァァァァンッ
クォヴレー「お前か、青いタイムダイバーは」
ヴィレアム「銀色、古いタイムダイバーか!」
クォヴレー「それを渡せ。そして、すぐにここから逃げるんだ」
ヴィレアム「渡すのはあんただ! いまや、タイムダイバーは俺の称号だ!」
クォヴレー「タイムダイバーの肩書きに未練も愛着もない。
 しかし、いまのお前に譲るわけにはいかない」
ヴィレアム「なんであんたに、そんなこと決めつけられなくちゃならないんだ!」
クォヴレー「すでにお前は、自分の意志を失い始めている」
ヴィレアム「いつまでも、フラッといなくなるあんたに頼ってるわけにはいかないんだ!
 ここは、俺たちの町だ! 俺たちが守る!」
クォヴレー「間違ってはいない。しかし、危険だ」
ヴィレアム「俺がタイムダイバーだ! 俺が、OG町のタイムダイバーだ!」

 ジリリリリリ
バイオロイド兵「!」
バイオロイド兵「!」
バイオロイド兵「!」
パンツァーゾルン「ひとりたりとも逃がすな!」

キャクトラ「友よ、囲まれた!」
ヴィレアム「この書類はお前が持て。なんとか包囲を突破して、新聞社に向かうんだ」
キャクトラ「友は」
ヴィレアム「やばいんだよ、笑いが止まらないんだ。
 ここであのひとに勝ったら、俺は、タイムダイバーに」
キャクトラ「友よ、お前は」

クォヴレー「どうした、タイムダイバー。
 このくらいで高揚していては、見込みがないぞ」
ヴィレアム「はっ、ははっ、はははははーっ!」

 ガシャァァァァァン



 ポツ       ポツ    ポツ
      ポツ         ポツ    ポツ

ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

ヴィレアム「うぅっ」
キャクトラ「うっ、くっ、大丈夫か、友よ」
ヴィレアム「く・・・っ、くそっ、くそっ、くそぉっ!」
キャクトラ「友よ!」
ヴィレアム「2階の窓から突き落として!
 それで俺たちをバイオロイド兵から守ったつもりなのか!
 俺とは、対決すらしてくれないっていうのか!!」
キャクトラ「友よ、クォヴレー殿は、我々を止めようと」
ヴィレアム「わかってる! わかってるんだ、そんなことは!」
キャクトラ「友よ、いまさらだが、私はどこかわからなくなってきているところだった。
 たしかに最初は、痛快であったし爽快であった。
 タイムダイバーの名を騙っているとはいえ、
 正義を行いつづければ、同等のものになれると思っていた。
 しかし、次第におかしくなっていった。
 いったい、いまの我々は、正義を行っているのだろうか。
 犯罪を求めてさまよっているだけではないのか」
ヴィレアム「わかってるさ。新聞に載るたびに、高揚した、胸が躍った。
 そうだよ。俺は、いつからか犯罪を喜んで出迎えていた。
 どこかで犯罪を待ち望んですらいた。なんていう卑しさなんだ。
 結局俺は、タイムダイバーなんていう器じゃなかったんだ」
キャクトラ「友よ、私はそれでも、タイムダイバーの名前に憧れている」
ヴィレアム「くじけないんだな、お前は」
キャクトラ「友よ、私はなにより、お前を尊敬している」

 ザアァァァァァァー
レラ「・・・・・・LoveSquall♪ ・・・・・・も・・・・・・逃がさな・・・・・・♪
 だけど・・・・・・♪ あなたの心は・・・・・・♪ 風・・・・・・♪」



 【マンション】
キャリコ「おやぁ? 珍しいな。どうしたんだい? キャクトラ」
キャクトラ「お父さん、友が、友が泣くところをみたのです」
キャリコ「おやおや、そりゃまた、どうしたんだい」
キャクトラ「あれは、慟哭というのでしょうか。その姿を見たとき、私は圧倒されたのです。
 私は、あそこまで強烈な熱意を持っているのだろうか。
 ただ、友の尻にくっついていただけではないかと。
 そう思うと、とても恥ずかしいんです」
キャリコ「なぁキャクトラ、知ってるかい?
 ルパン三世って、最初はシンジュクのヒッピーだったんだ」
キャクトラ「それは、最新の?」
キャリコ「いや、最古さ。最古も最古、パイロットフィルムもできてない、企画書段階での話さ。
 平和だけど退屈な日々を過ごしていた青年が、
 ある日突然大シンジケートに迎え入れられて、アルセーヌ・ルパンの孫に祭り上げられたんだ。
 もちろん、彼は最初から超人だったわけじゃない。
 ロリっ子に助けられてみたり、複数人の師匠的な存在に会って、次第次第にルパン三世になっていったんだ。
 キャクトラ、お父さんも、最初からお前のお父さんだったわけじゃない。
 クォヴレーに負けた。だからお前の父親になれたんだ」
キャクトラ「お父さんも」
キャリコ「行ってきなさい。行って、盛大に負けてきなさい。
 息子よ、お父さん、ビールをあけて待っていよう」
キャクトラ「うん、行ってくる」
キャリコ「行ってらっしゃい」

 ザアァァァァァァー


 【学校】
ゼラド「あれぇ? ヴィレアムくん、まだ残ってたの?
 あれ、そういえば今日、欠席してなかったっけ」
ヴィレアム「運命だって、そう思ったんだ」
ゼラド「どうしたの? 怪我してるの?」
ヴィレアム「毎日、平和だったけれど、なにもなかった。
 なにもしてない、なんの成果もない、なんの進歩もない。
 きっと、だからあの写真がものすごくまばゆく見えたんだ。
 俺は、そのまばゆさに目を奪われてしまったんだ」
ゼラド「どうしたの、ヴィレアムくん?」
ヴィレアム「ゼラド、クォヴレーさんが好きか?」
ゼラド「えっ、なに、突然」
ヴィレアム「タイムダイバーが好きか?」
ゼラド「えっ、えぇっ!?」
ヴィレアム「タイムダイバーを、愛しているのか?」
ゼラド「あっ、愛とか、そういうわれると、ちょっと困るけど」
ヴィレアム「答えてくれ。お願いだ」
ゼラド「ええと、うん、わたしは、お兄ちゃんのこと、好き、だよ?
 タイムダイバーだからかどうかはよくわからないけど、
 お兄ちゃんはいつも優しくて、わたしのこと、守ってくれたよ」
ヴィレアム「俺は、ここのところ学校を休んでた」
ゼラド「うん、そうだったね。病気でもしてたの」
ヴィレアム「熱病なんだ」
ゼラド「えっ、それ、大丈夫なの!?」
ヴィレアム「この熱を、どこかで心地いいって思ってる、
 そういうところが未熟なんだ、俺は」

ゼラド「ヴィレアムくん? あれ、ヴィレアムくん?
 いない。どこいっちゃったんだろ。大丈夫かな。
 あれ、なんだろ、これ、カツラ?」



 【校庭】
 ドサッ
ヴィレアム「キャクトラっ!? お前、どうしたんだ」
キャクトラ「ああ、負けてきた」
ヴィレアム「おい、この傷! すぐに病院へ!」
キャクトラ「それよりも友よ、これを」
ヴィレアム「これは、手紙?」
キャクトラ「クォヴレー殿からだ」
ヴィレアム「これは!」
キャクトラ「クォヴレー殿は、お前を待っている」
ヴィレアム「うっ、うぅっ! うぅ~!」
キャクトラ「友よ?」
ヴィレアム「なんて、なんて大きなひとなんだ!
 俺に! こんな俺を待っていてくれてる!
 ああ、そうだ。俺はあのひとを尊敬してる。だから、誰よりも憎いんだ!」
キャクトラ「行くのか、友よ」
ヴィレアム「当たり前だ、当たり前だ!」

レラ「♪How・・・many・・・miles・・・to・・・Babylon?
 Three・・・score・・・miles・・・and・・・ten♪
 Can・・・I・・・get・・・there・・・by・・・candle-light?
 Yes・・・and・・・back・・・again・・・♪」


 【郊外】
 ザァァァァァァー

ヴィレアム「感謝しているんです」
クォヴレー「わだかまりを残したくない」
ヴィレアム「俺は、どこか焦っていたんです。
 なにも起こらない、なにもできていない毎日だった。
 俺はずっと、何者でもなかったんです。
 そうです。きっと、だからです。俺は何者かになりたかった」
クォヴレー「そういう気持ちには覚えがある。
 生まれたとき、何者でもなかった。ただのバルシェムだった。
 自分が何者なのか、考えることすらできなかった。
 しかし俺は、タイムダイバーになった。
 前言を撤回しよう。俺は、タイムダイバーという名前にそれなりの愛着を持っている」
ヴィレアム「せっかくあなたがくれたチャンスです。
 その名前、全力で奪わせていただきます!」
クォヴレー「タイムにダイブしているからタイムダイバーなのではない」

 カッ

レラ「幸せを訪ねて・・・・・・♪ 私は行きたい・・・・・・♪
 いばらの道も・・・・・・♪ 凍てつく夜も・・・・・・♪
 炎と燃えさかる・・・・・・♪ あなたに・・・・・・だけ・・・・・・♪」


 ザァァァァァァー


 【一週間後 イケブクロ】
 キキーッ!
ルル「きゃぁーっ!」

 キキキキキーッ!!
アオラ「ルルっ、大丈夫だったか!?」
ルル「え、ええ、このかたが」
アオラ「あっ、あなた、最近噂の、青いタイムダイバーじゃないですか?」
???「いや」
ルル「では?」
???「俺はタイムダイバーじゃない」

 バッ!

 テレッテレッテレッテレ~♪ テレッテレッテレッテレ~♪
キャクトラ「・・・・・・!」ベッ♪ ベッ♪ ベッ♪
レラ「・・・・・・!」ズダダダダッ!

 SOUSHITSUせよ! SOUSHITSUせよ! SOUSHITSUせよ!

ヴィレアム「真ぁっ赤な♪ 果実は♪ あの子の♪ ほぉっぺさ♪」
キャクトラ「やさしぃくぅ~♪ つまみあげてぇ~♪」
レラ「・・・・・・くれと・・・・・・ねだる・・・・・・♪」ズダダダッ

ルル「ヴィレカイザーさんですわぁーっ! ヴィレカイザーさんがご降臨あそばされましたわぁーっ!」
アオラ「なんて気持ちのいい歌声なんだぁーっ!」
ルル「たとえるなら、暑い夏の日の朝に飲む、熱々のみそ汁ですわぁーっ!」
アオラ「俺的に、それはなしだぁーっ!」
ルル「肝に銘じておきますわ、アオラさまぁーっ!」

ヴィレアム「おぉとこにはぁ~♪ 自分のぉ~名前がぁ~あるぅ~♪」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年10月17日 13:16
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。