25代目スレ 2008/09/17(水)
いつもは尊大な口を聞くこいつの顔が、いまは屈辱と焦燥に歪んでいた。
「いきたいのか」
返事はない。なにをいわれているのかわからない。そうとぼけるように黒目がきょろ
きょろと動くだけだ。白々しい。
「黙ってちゃわからないよ」
固く食いしばられた歯の隙間から、すすり泣くような声が漏れる。額から滲む汗が伝い
落ち、まつ毛の上で薄く濁った水滴になった。
「ほら、どうしたんだよ」
大柄な身体がぶるりと震える。
わたしは腹の中できゅっと縮み上がるものを感じた。
「いきたいのか。な、いきたいんだろ」
声もなく、荒れ気味の唇が大きく開いた。湯気の上がるような吐息が天井に向かって放
たれる。瞳を哀願の形に潤ませて、わたしでないとわからないような角度で浅く浅く頷いた。
「口に出していってくれないとわからないよ」
かぎ爪状に曲げられた指が宙を掻く。小刻みな吐息が徐々にペースを上げつつあった。
「ほら、どうしたんだよ」
髪の毛をざらりざらりと揺らして、かぶりを振られる。いわなくてもわかるだろう。
そう、目で訴えかけてくる。
止まらない。わたしは嗜虐の言葉を振り上げて、撫でるようなゆるやかさで振り落とした。
「いえよ。いってみろよ」
とがった喉仏を上下させて、わななく唇が掠れた呻き声を漏らす。
「いきたい」
「ン?」
聞こえないふりをしてやると、泣きそうな顔になった。
「いかせてくれ」
「ウフフ」
微笑みが漏れ出るのを、わたしは隠すことが出来なかった。
「ダメだよ」
なぜだか妙に優しい気分になって、わたしはざらついた頬を両手でそっと包んでやった。
「いかせないよ。>>819なんて」
絶望の声が漏れる。
なあ、屈辱に濡れるお前の顔が、わたしはちょっと好きなんだ。
最終更新:2009年10月17日 13:59